フツメンを選んだ筈ですが。

イセヤ レキ

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第一章 出会い(囲い込み)編

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本当は、「そうなの、デート中なんだ」って返事をしたかった。出来なくって、歯痒かった。
高校時代、学年で人気者のイケメン御曹司な同級生を振った時に「勿体ない」と嘆いていた友人は、私にその後こう言った。
「普通の男なんて、キララにアタック出来るわけないじゃん」
そして、私はこう言い返した。
「いいよ、素敵な普通の人見つけたら、私からアタックするから」
本当に出来るの?と言われて、頑張る、と言い切った私。でも実際は、そんな勇気は出なくて。
――悶々としていた私に転機が訪れたのは、それから更に一ヶ月経った時だった。
「ちょっとキララ!山田君が見知らぬ女と二人っきりでいるの発見したんだけど!」
「……え?」
繭ちゃんのその報告は、私にかなりの衝撃を与えた。
正直、山田さんと一番仲が良い女性は繭ちゃんで、次に自分だという自負があり、山田さんと二人きりになる女性は私か繭ちゃんのどちらかだけだと思い込んでいた。
「あ!ほらほらあそこ!!」
「……」
私の視線の先、繭ちゃんの指さした窓の先に、山田さんと親し気に話す女性がいた。
「誰だろあの人?フツメンの山田君モテ期到来か?……って、ちょっとキララ、大丈夫?」
「うん……」
「いや全然ダメじゃない!何か目に溢れてらっしゃいますけど!……ごめんキララ、余計な事言っちゃった。泣かないで?多分、知り合いか何かだよ」
「……うん」
慌ててフォローしてくれる繭ちゃんに申し訳なくなる。
山田さんに、とうとう彼女さんが出来てしまったのだろうか?私は自分の想いを山田さんに伝えることなく、膨らんでいく想いには蓋をして、これから忘れる努力をしなければならないのだろうか?
――だったら、さっさと告白して玉砕しておけば良かった。初めて好きになった人に、好きだって伝えられずに終わるくらいなら。
「キララ、私ちょっとあっち行って聞いてくるよ。待ってて」
「――繭ちゃん」
「ん?」
「私が自分で聞いてみる」
「……そう?大丈夫?」
「うん、教えてくれてありがとう」
逆に、踏ん切りがついた。私は瞳に溜まっていた涙を拭って、顔をあげる。……多分、今しかない。そんなの嫌だという、今の胸の中の感情が消える前に……この勢いのまま行かなければ、やっぱり怖気づいて今の心地好い関係を続けようとしてしまうかもしれない。
もしあの女性が山田さんの彼女じゃないなら、告白しよう。
そう、私は決心して。
「ちょっと行ってくるね」
「うん……頑張って!」
私の決意に気付いた繭ちゃんに後押しをされながら、私は自分の荷物を持って、三限目の選択科目の講義が始まる前に教室を抜けて、山田さんがいた方へと駆けだした。
「山田さん!」
私が山田さんの傍に行った時には、もうその女性はいなくて。
「戸枝さん?そんなに慌ててどうしたの?」
「今、山田さんが、女性といるのを、見掛けて……」
走ったせいで、息が苦しい。三限目が始まる合図が鳴り、辺りには人がいなくなった。
「ああ、登山サークルの友達だよ。彼女、普段は他のキャンパスにいるから、このキャンパスに慣れてなくて友達との待ち合わせの場所わからなくて困ってたんだって」
だから道案内してた、と笑って言う山田さん。私の胸には安堵の気持ちがいっぱいに広がった。
……彼女じゃない、みたいだ。
それが嬉しくて、でも喜びを感じてしまう事も申し訳なくて、ぐちゃぐちゃな気持ちのまま、その場にしゃがみ込む。
「戸枝さん!?どうした?具合が悪いの?」
私と視線を合わせる為か、私の傍にしゃがんでくれる山田さん。彼の手が私の背中にのり、そこから彼の掌の温かさが広がっていく。
「……です」
「え?」
「わ、私、山田さんが、好き、です……」
「……」
山田さんが、息を飲む音がした。どんな顔をしているのか見るのが怖くて、顔を上げられないまま私は続ける。
――なんて無様な、告白。ずっと自分でイメージしていた想像とは全然違う、告白。
……でもこれが、私の精一杯で。今まで私に告白してくれた人達も、実はこんな思いを抱えていたのかと思うと、今更ながら申し訳ない気がした。私は一生懸命続く言葉を紡ぐ。
「だから、傍に……いたくて、……付き合ってくれたら、嬉しい、です……」
「……ありがとう」
山田さんの言葉に、ようやく私はそろそろと顔を上げて、彼を上目遣いに盗み見た。
視線が合った彼は、嬉しそうに笑ってくれていて。
「俺も、戸枝さんが好きです。付き合えたらいいなって、ずっと思ってたんだ」
知り合ってから2ヶ月、私から勢いに任せて告白。
しゃがみ込んだままの、理想とはかけ離れたみっともない告白だったけれど……彼は驚きながらも、私を受け入れてくれた。
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