[R-18] 奴隷のレッスン:騎士団所属の末っ子王子は、イケメン奴隷に身も心も奪われる

山葉らわん

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第一章 夜を往く帆舟(ふね)

3 余興のはじまり

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「王子、今宵はちょっとした余興を準備しましたぞ」
 ローエが顔をほころばせて云った。
 料理はどれも素晴らしかったし、デザートも美味しかった。であればその余興も楽しみだ。この土地の伝統的な民謡や舞踏が披露されるのだろうとノモクは期待した。
 使用人たちが床に真っ青な絨毯を敷いた。ノモクの目の前に、夜の静かな海原が広がった。ついで首から下を白い布で巻き、マスカレードマスクで目の周囲を隠した一組の男女が現れた。彼らは絨毯の中央に立った。それから壁のランプのひとつひとつに覆いが被せられ、明かりは長テーブル上の燭台だけとなった。
 静寂が食堂を包んだ。
 ローエが手を一度叩いた。
 ゼーゲンが立上り、聖典の文句に節をつけて朗々と唱えはじめた。
 ノモクは固唾を飲んだ。
 女が白い布を、その両端を両手に持ってさっとひろげ、蝋燭の青白い焔に囲まれたなかで、豊かなふくらみを持つ美しい裸かのシルエットを露わにした。そして女は、その場でぐるりとひと廻りし、正面に戻ってきたとき、白い布を宙へ投げた。すると男も自分の持つ白い布を展げ、同じようにぐるりと廻った。男も裸かだった。男は、すかさず女を白い布のなかに誘いこんで自分の白い布で互いの裸かを覆った。男と女が向かいあって抱きあった瞬間、女の白い布が海のおもてに落ちて波の泡となった。
「ほう」
 騎士たちのどよめきがこだました。それは、全裸の男と女が目の前で抱きあっているという事実に対する嘆声だった。ふたりが白い布をひろげたとき、その場にいた誰もが薄明りのなかで男女の中心に黒い影を認めたが、それはほんの一瞬の出来事だった。その巧みな演出に、彼らはこの先の展開に期待した。
 ノモクもまた驚いて言葉を失った。しかしその理由は色好みの騎士たちとはちがった。男女の流れるような一連の動き、焔に照らされた男女の裸かの輪廓りんかく、熟練の芸術家による彫刻のような男女の立ち姿に目を奪われたのである。
「王子をお誘いしたのは――」ノモクの耳許でローエが淡々と云った。「そろそろ男と女のことを識っていただかなくてはと思いましてね」
 男と女のこと?
 ノモクはローエの奥にいるギーフを覗き見た。ギーフにも、まだそのような経験があるとは思えなかったからだ。果たしてギーフは目を輝かせて、妖艶な舞踏を見ていた。ふいにギーフがノモクに顔を向けた。ギーフは、ニヤリと淫靡な笑みを投げかけてきた。
 海の面に泛ぶ男と女が自然に顔を近づけ、口吻くちづけを交わす。互いの顔の角度を交互にかえながらついばむ軽い口吻は、しかし男が女の背中を撫でまわす動きが大きくなるのにつれて、濃厚なものへとかわっていった。重なりあっては離れる唇と唇の隙間から、互いの口のなかを行き来し、絡みあう舌が見えるころには、白い布はふたりの肩から滑り落ち、腰の位置で、もどかし気にわだかまっていた。男と女は、これ以上はないほど胸から下をぴったりと貼りつけるように抱きあっていたので、女の豊かな乳房が男の胸の下でひしゃげていた。
 ゼーゲンが詠唱をかえた。朗々とした節から急かすような節になった。
 男と女は、白い布の下で巧みに脚を絡みあわせながら海の面を歩いた。濃厚な口吻は貪りあうような激しいものへとかわった。互いに体軀からだを押しつけ、こすりあわせ、離れると思わせて、またぶつかりあった。ときどき男が、女の落とした白い布を足先で蹴りあげ、海の面に波を立たせた。
 誰もが固唾を飲んで、裸かの男女を見ている。
 男が女の尻をすくいあげるように抱きあげたので、女は男の両肩に手を掛けてしがみ付いた。その拍子にたるんだ白い布が辷り落ち、男の尻が露わになった。岩から切りだされたようなたくましい尻が青白く光った。
 男は女と腰の位置をあわせると、腰を大きく揺らしはじめた。前後に、そして左右に。女もそれに呼応するように腰を揺らした。次第に女の口から吐息が洩れはじめた。
 ローエが云った。
「王子、とくとご覧ください。エシフが王子を悦ばせるために、ああやって女奴隷と踊っているのですぞ」
「え」
 ノモクは、踊っている男を見た。確かにエシフだった。仮面で隠されていても、あの肩を、あの胸を、あの腕を、しっかりと覚えている。
 ゼーゲンが、またも声色をかえた。こんどはカストラートの音域だ。聖典の文句が、天からの祝福のように響き渡った。
 それを合図に、エシフと女の長い口吻が終わった。 
「おお!」
 騎士たちが歓声を上げ、ノモクは言葉を失った。
 エシフと女がマスカレードマスクをはずし、さらには白い布も完全に取りさってしまったのだ。
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