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第21章 世界を壊す秘宝
第492話 想定外の連続
しおりを挟む大聖堂内部、聖遺物安置室の戦いに、ダモクレス財団最高幹部・グナザイアという予定外の乱入者が現れたのと……ほぼ同じ頃。
他の場所ででも、予定外の来客……もとい、襲撃者による混乱が巻き起こっていた。
「それを……よこせ!」
「誰が、渡すかッ!」
黒装束に身を包み、壁を足場に跳ねて駆け寄ってくる……見た目一発暗殺者風の何者か。
その者が手に持った短槍で放った突きの一撃を、メガーヌは手甲で反らしていなし、すれ違いざまに反対の手に持ったダガーを一閃させて、襲撃者の首をかき斬る。
頸動脈と気道を寸断されて、吹出たちの海に沈む暗殺者。そこにメガーヌは、さらに追撃の踏みつけで首の骨を粉砕してから……次の相手に向き直る。
そのすぐ近くでは、同じような黒装束の男、あるいは女による攻撃を、マリーベルやムース、モニカが同様にかわして返り討ちにしていた。ミスティも同様だが、彼女は極力先頭には参加せず、投げナイフなどで援護したり、他のメンバーに守られる位置にいる。
魔法薬による変身の後遺症が残っていて、戦闘を行うのに問題があるから……ではない。
彼女が持っている『血晶』こそが、この暗殺者の集団の目的だからだ。
(情報が漏れていた? 『義賊』の襲撃を陽動に、私達が『血晶』を持ちだす計画が……そして、ここに『血晶』があるということ自体も……そうではないとしたら、現状を分析して即座にこの可能性に気付いて兵力を動かして……いずれにしても、こいつらは一体……?)
ミスティーユがいぶかしむように、まだまだ人数のいる暗殺者たちの群れを見回す。
実力は『タランテラ』の方が上だ。一番新入りのモニカであっても、問題なく応戦し、返り討ちにできている。
しかし、数が多い。次から次へと出てきて襲ってくる。もう20人近く倒しただろうに。
その時、水の魔法で作った刃で敵を真っ二つにしたムースが、その敵の懐から出て来た何かに気づき……ハッとして言った。
「……っ!? こいつら、チラノース帝国の工作員です! 武器の鞘にエンブレムが入ってる!」
その言葉で、全員がこの暗殺者たちの所属を知ることとなる。
他でもない、この『血晶』を血眼になって探していた、大陸北部の問題児国家。そこから送り込まれた工作員だった。
どうしてこの場所に『血晶』があると知ったのか、どうしてよりにもよってこのタイミングで襲撃をかけてきたのかなど、謎はまだまだあるが、今は置いておくこととした。
この者達の所属があの国であるならば、余計に『血晶』を渡すわけにはいかない。
「ふん、工作員が身元が割れるようなものを所持しているとは……落第点だな」
「自己顕示欲アリアリのあの国らしいっちゃらしいけど、ねっ!」
メガーヌとマリーベルが苦言を呈しながら、また1人ずつ暗殺者を仕留める。
このまま振り切れるか、と思ったその時。
「やれやれ……やっぱり一山いくらの工作員程度には荷が重かったご様子で」
正面にある、ドアが突如け破られ、1人の男が入ってきた。
まるで劇場で芝居をするかのような、赤を基調としたやや派手めな装束。頭の上には、黒いテンガロンハットが乗っていて……今、腰に差していた黒い刀身のサーベルを抜き放ったところ。
そして、それを一呼吸のうちに数度振り抜くと、その軌道から、闇をそのまま形にしたような漆黒の魔力刃が放たれる。
見えたその一瞬で、『あれはまずい』と、マリーベル達全員が判断し……撃ち落としたり切り払うのはやめて回避する。
それらは、すぐ背後にいた何人かの暗殺者に流れ弾として飛んでいき……まるでその空間ごと削り取るかのように、ほとんど無抵抗でその体を切り裂き、絶命させた。
その光景を見て、ひゅう、と口笛を吹く男。
「危機管理能力も優秀だねえ。俺のこの技、魔力の波動がほとんど外に出ないから、込められてる魔力量がわかりにくくて、大したことない技だって侮って死ぬ奴が多い初見殺しの技なんだけど」
その技の余波で、味方であろう暗殺者たちが何人か死んでいるというのに、気に掛ける様子もない男……バスクは、へらへらと軽薄な笑みのまま、しれっと言う。
(この男、たしか名前は『バスク・ジョローア』……それ自体は、偽名らしいが……『ダモクレス財団』の所属だったはずだ。さっきのシン・セイランの襲撃といい、これは……)
素早く頭を回転させるメガーヌ。
チラノース帝国は、『血晶』がここにある(かもしれない)という情報だけなら、裏切り者の俗物司祭のせいで一応つかんでいた。
そのため、それらしきものを手に入れるための裏取引は進めていたはずだ。その前に自分達が奪い取るつもりで、今回の計画を立てたのだが。
だが今回のコレは、明らかに『血晶』がここにあると、かもしれないではなく確信しているやり方だ。こんな数の工作員、もとい暗殺者を動員しているのだから。可能性で動かす規模ではない。
加えて、このタイミング。ソニアの襲撃に合わせての暗殺者達の派遣が、あまりに的確過ぎる。
事前にこの計画についての情報を得ているか、あるいは前々から備えさせておいて、機を見て一気に行動に移す準備をしていなければ不可能な動きである。
今回の計画は、本当にごく一部の者のみに知らされていたもの。情報漏洩は考えにくい。
しかし、それならばなぜここまでチラノース帝国が的確に動けたのか、結局不明だった。
だが、『ダモクレス財団』が絡んでいたとなれば話は別だ。
各国に、あちこちに、様々な形で深く根を下ろしているらしいかの秘密結社は、情報収集能力も並大抵のものではない。計画自体はともかく、聖女の視察の予定や、それに急遽ミナト達がついていくことになったという、『聖都』のセキュリティの穴を感知することも可能かもしれない。
そして、そのダモクレス財団と、チラノース帝国とが最初からつながっていたとしたら……
(財団から情報提供を受け、詳細はわからないまでも、近々何かあると見て戦力を送り込んでいた……何かあれば、すぐに動けるように……それで、あの女弓手やこの男も一緒に、か)
実際には、バスクはともかく、セイランは既にダモクレス財団を事実上抜けている。むしろ裏切り者扱いで追われる身なのだが、そのことをまだ彼女達は知らない。
出口を目前にして立ちはだかった強敵を前に、マリーベル達は歩みを止める。
後ろからは暗殺者達の残りが迫ってくる。挟み撃ちにされた形だ。
後ろの暗殺者達の方はどうとでもできるが、バスクの方はまずい。
1対1では間違いなく勝てないし、下手をすれば全滅もあり得る。そのレベルの相手だと、彼女達は判断していた。
そもそもこちらは、全滅しようがしまいが、ミスティーユが持っている暫定『血晶』――いや、もうここまでくると確定でいいのだろう。それを奪われれば負けなのだ。
(……最悪、『血晶』を持たせて誰か1人だけでも逃がさねば……)
本当に最後の手段ではあるが、残る4人を犠牲にしてでも任務を果たさなければならない。そんなパターンをメガーヌが頭の中に思い浮かべ、覚悟を決めようとした瞬間、
―――バリバリバリバリバリバリィ!!
「「「――っ……!?」」」
突如として視界が白く染まり……マリーベル達に強烈な電撃が襲い掛かった。
宙空から何の前触れもなく発生したそれは、通路一帯を埋め尽くすほどの規模で放電され、そこにいた者達を、バスク以外全員感電させる。
どうやら、マリーベル達が死なないギリギリのラインで放たれた電圧だったようで、死ぬことこそなかったが、5人共動けなくなるほどのダメージを受け、その場に倒れ込む。内、モニカとムースは気絶してしまったようだ。
残る3人……マリーベル、メガーヌ、ミスティーユがどうにか意識を保って視線を上げると……何もなかった通路に、滲み出すようにして現れる1つの人影。
先程『グナザイア』が出て来た時とはまた違う透明化の魔法かアイテムのように見えた。
その人物は、白と黒のコートに身を包み、腰にレイピアのような長剣をさしていた。オールバックになでつけられた茶髪に、その頭に装着されたゴーグルが特徴的だ。
(っ……迂闊……! まだ、いたのか……)
(しかもアイツ、確か、アイツも『最高幹部』の1人……ウェスカーとかいう……)
バスクと暗殺者たちに意識が行っている間に、自身の姿を消した状態で現れ、即座に発動させた電撃の魔法で、自分達を一網打尽にした男……ウェスカーを前に、メガーヌとマリーベルは、この場はどうやっても勝ち目がないことを悟る。
『タランテラ』は全員、魔法攻撃に対して抵抗する訓練や、耐久力そのものを上げる訓練、たとえ不意打ちで攻撃を受けたとしても、気絶することなく意識を保ち続けるための訓練など……様々な訓練によって、タフネスも相当なものを会得している。
時には、自らが受けたダメージも無視して、痛みをこらえ、力が入らない体を無理やり動かし、命すら投げ出して任務を完遂するために。
「お疲れさん、ウェスカー。容赦ないねえ、女の子相手に」
「容赦していい相手でもありませんからね。ネスティア王国最強の特殊部隊『タランテラ』……なめてかかると痛い目を見ますから、初手で確実に無力化する必要がありました。戦っても負けることはないにせよ、何をしてくるかわからない相手というのは怖いものです」
そんな自分達を、たった一度の魔法攻撃で……しかも、死なないように絶妙に手加減して無力化するというのは、簡単なことではない……どころではない。
後ろの方を走っていた暗殺者たちも漏れなく巻き込まれている。ほとんどレジストに失敗し、全員死んだか気絶したようで、電撃で肉が焼ける嫌な匂いが漂っていた。
その光景を一瞬で作り出したウェスカーは、きょろきょろとその場を見回している。
そして……何の迷いもなく、『血晶』を持っているミスティーユの元にすたすたと歩いていく。
先の『グナザイア』という幹部から情報を聞いたか、はたまた何らかの手段でこの場で見破ったか……彼女が目的の者を持っていると確信しているように見える足取りだった。
近づいてくることにミスティーユも当然気付いていたが、体が動かなくては何もできない。
いや、出来ないことはないのだが……できなくされている。
彼女達『タランテラ』は、拘束され身動きが取れなくなった時……懐などに仕込んでいるマジックアイテムなどを手動で使えなくなってしまった時などに備えて、思念で起動できるアイテムをもいくつか持っている。
その中には、状態異常を解除ないし緩和するものや、敵に情報を渡さないため、自決するためのものもある。ものによっては、爆発などで敵を道連れにしたうえで。
しかし、体が動かないのみならず、そういった思考で動かせるアイテムも一向に反応しない。
(発動を妨害されている……今の電撃に紛れさせて、妨害系の術式をかけられていたか……!)
この動けない状態を解消することも、自爆してウェスカーを仕留めることもできない。
他に取れる手がないか、用意していたものを全て試してみたが、全滅だった。
犬系の獣人であるメガーヌは、カタリナと同様に変身することもでき、返信すれば魔法抵抗力も上がる……はずなのだが、それも発動しない。
『夢魔』であるマリーベルは、思念だけで無詠唱で発動できる精神系の魔法をいくつも習得しているが、どれも使えない。
単に体がしびれて動かないのではなく、肉体の動きを拘束する魔法か何かも一緒にかけられたのだろうと予想する。
(攻撃魔法に紛れさせて、あの一瞬で一体いくつものデバフを……訓練に加えて防御用のマジックアイテムまで装備し、相応以上の魔法耐性を手にしている我らがこのざまとは……)
あらためて、目の前にいる男の規格外さに戦慄するメガーヌ。
かなり前のこととはいえ、ミナトと互角に戦ったほどの戦闘能力を持ち、そのミナトからは『何をしてくるかわからなくて怖い』という、全力でブーメランになっている評価をされた男。
それがこの、ウェスカー・サービュナイトである。
そのウェスカーは、すたすたと歩いてミスティーユのところまで行くと、うつぶせに倒れている彼女をひっくり返して仰向けにし、胸のところを覆っているボディスーツをぐいっと引っ張る。
しかし、体に密着している上にかなりの強度があって破けない。
それがわかると、ウェスカーは手を手刀の形にして魔力を纏わせ、それを一閃させて服をあっさりと切り裂いた。
ミスティーユの豊かな胸がそれでこぼれて露わになり、見ていたバスクがひゅう、と口笛を吹いた。
ウェスカーは一切興味を示さず……胸元から零れ落ちた、握りこぶし大の宝石を目で追った。
形状自体は特別なものではなく、その辺に落ちている少し大きめの石のようなもの。しかし、その表面が見事に磨かれているような光沢を放っている上、血のような紅色をしている。
おまけに、強力ではないが不思議な魔力の波動を放っているそれは、明らかにただの鉱石や宝石ではないことが一目でわかる。
コロコロと転がって止まったそれを、恨めし気に顔をしかめるミスティーユ達の視線を受けながら、ウェスカーは手を伸ばして拾う…………
…………かに思われたが、
―――バキャッ!!
伸ばした手を引っ込めたかと思うと、ウェスカーは剣を抜いて、切っ先を真下に向けて振り下ろし、その石を砕いてしまった。
そのことに驚きを隠せないミスティーユ達。
同じように見ていたバスクも『あれ?』と意外そうな顔をしている。
それらの視線を受けながら、ウェスカーははぁ、とため息をついて、
「やれやれ、舐められたものだ。こんな偽物で私を騙せると思ったのですか?」
「あれ、それ偽物だったん?」
「ええ……大方、すり替えるか何かするつもりで用意していたのでしょう。実際にかなり希少な素材が使われていて、見た目で見分けるのは困難だったでしょうが……相手が悪かったですね」
「まあ、俺ら一応『血晶』がどういうもんか知った上で来てるもんな。そのつもりでお前が見りゃ……そりゃバレるか。で、本物は?」
「普通に考えれば、服が破れた程度で落とすような場所には仕舞いません……ここか」
ウェスカーは再びミスティーユに近寄ると……その襟元の飾りボタンの1つを引きちぎった。
そして、懐から出した、鍵のような形のマジックアイテムをそれに触れさせて起動させると……ミスティーユのボタンが一瞬光ったかと思うと、その場に、先程ウェスカーが破壊したのとまったく同じ形の石が……本物の『血晶』が現れた。
ミスティーユの襟元の飾りボタンは、収納のマジックアイテムになっていた。回収した『血晶』はそこにしまってあり、戦闘中に衣服が破けようが手足がもがれようが落とさないようにしてあったのだ。
首元は人体でも最大の急所の一つ。生き残るように動き回れば、そうそう攻撃は受けないようにできる位置である。
しかしウェスカーはそれを看破し、持ってきていたマジックアイテム……収納系のアイテムを強引に収納解除させ、中身のアイテムを引っ張り出す効果を持つそれにより、隠していた『血晶』をまんまと引っ張り出すことに成功したのだ。
強引に取り出したためか、勢いよく収納から飛び出し、床に落下した『血晶』を……今度のは縁起でもなく、本当に悔しそうにするミスティーユ達の視線の中、ウェスカーが拾おうとしてしゃがみ込んだ……その瞬間、突然ウェスカーが、何かに気づいたように目を見開いた。
そして、それとほぼ同時に、
「レールガンストライク!」
『虚数跳躍』によって、障害物を無視してウェスカーの背後に突然現れたミナトが、音速の数倍の速さと、暴力的なまでの電撃のこもった拳を突き出した。
直撃すれば、へたな龍だろうと一撃で木っ端微塵にして灰燼に帰す威力の拳である。
間一髪で障壁によってそれを防いだウェスカーは、しかしそれによって大きく弾き飛ばされて後退した。斜めに受け流すようにして展開した障壁もそれで砕けた。
その一瞬の隙に、ミナトは床に転がった『血晶』を回収し、こちらも収納系のマジックアイテムにしまう。
それを見たウェスカーは、僅かに眉間にしわを寄せる。『しまった』とでも内心思っているのだろうか。
「……これはこれは……お早いご到着で。今日は急な護衛任務で遠征に出ていたはずでは?」
「大急ぎで戻ってきたんだよ、ヤバいことになってるって連絡貰ったから。全く、毎度毎度ホントにお前らは迷惑なことしてくれる……ていうか、上のバカ騒ぎは何なのあれ? あれもお前らが何かやってアイツ暴れてんの?」
ため息交じりに、いかにも苛立って迷惑そうに言うミナト。
しかし、そのクレームに近い言葉を聞いたウェスカーは、気になる文言がそこに交じっていたようで、やや不思議そうにしながら問い返す。
「? アイツ、とは? 上で暴れているのは『義賊』のお嬢さんではないのですか? であれば、あなた方の計画の範疇でしょうに……」
「何言って……なるほど、お前らにとってもイレギュラーなわけね。あいつの参戦は。まったく、久々に会ったと思ったらなんでアイツあんな……」
呆れたようにミナトが言う。しかし、言い終えるよりも早く……突如、天井が轟音とと主に崩れ落ちてきた。
『やばっ!』と慌ててミナトは、床に転がっているマリーベル達を、崩落で落ちてくる瓦礫から守る。5人全員を抱えて下がるのは難しいので、拳の衝撃波で降ってくる瓦礫を全て粉砕して吹き飛ばした。
ウェスカーとバスクは、突然のことに驚きながらも普通に回避し、倒れていたチラノース帝国の工作員たちは……そのまま潰されていく。
そして、その荒々しい瓦礫の雨の向こうから……何かが舞い降りて、通路に着地した。
―――ガァァアアァアアッ!!!
「……!? これはこれは……まさか、こんなところで……」
「ホント、何でよりによって今、ここに来るんだかこいつは……」
そこにいたのは……黒い龍だった。
全身を、下手な鎧よりも重厚そうな黒い鱗に覆われ……しかもその鱗は、まるで装甲のように、腕や足、胸や頭の周辺がさらに重厚になっている。
頭から伸びる3本の角と、手足の爪……のみならず、指の付け根の部分からが琥珀色に染まっている。その指自体も鱗が変化した装甲のごとき甲殻に覆われ、まるで手甲具足だ。
尻尾は太く厚みがあり、しかし鋭さも同時に持っている。まるで大剣のよな尾だ。
背中には鋭い背びれのようなものが無数に並び、これも琥珀色。
黒色と黄色、ないし金色などの組み合わせは『警戒色』であり、相手に対して威圧感を抱かせるものだと言われているが、この龍の場合は、カラーリングだけでなく……たとえ素人であっても感じ取れてしまうほどの凄まじい存在感を放っている。
そしてこの龍……ミナトにとっては、因縁とすら言っていい関係の存在であり……よく知っている相手だ。
今まで幾度となく拳を交え、そのたびに勝利こそしてきたものの、倒しきって仕留めることはできなかった相手。いつしか奇妙な親近感すら抱くようになり、時には共闘(?)したこともあった。
「久しぶり……ではあるんだけど、お前の場合、再会を素直には喜べないんだよなあ……ゼット」
種族名……『ディアボロス亜種』。
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個体名……『ゼット』
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