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第2章
第10話
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こちらを見つけたチンピラ冒険者たちは、俺たちの前まで肩を怒らせながら歩いてきた。
そのうち一人が、俺たち四人の姿を見回して、さっそく悪態をついてくる。
「ちっ、昨日の優男か。今日も一緒にいるってのは……なんだ女ども、色目を使ってそいつを誑かしたのか?」
「はあっ……!? ち、違う! 何をバカなことを言って! クリード先輩は、冒険者の先輩としてボクたちの面倒を見てくれているだけだ! お前たちみたいな下衆な男どもと一緒にするな!」
男の言いがかりを真に受けたユキは、ふざけるなとばかりに猛然と食ってかかる。
いやまあ、実際は言うほど違わないんだけどな。
ムサい男の冒険者よりは、可愛い女の子たちとパーティを組めたほうが華やかで楽しいよな、ぐらいには考えていたし、誑かされたと言われればそう間違ってもいない。
でもユキの中では、俺はもっと清廉潔白な人物ということになっているようだ。
まあいいか。
一方のチンピラたちは、ユキの言葉を聞いて不愉快そうに顔をしかめる。
彼らは地面に唾を吐きすてたりしながら、さらなるケチを吹っかけてきた。
「下衆とはずいぶんとご挨拶だな、気の強いお嬢ちゃんよぉ。でも俺たちだって、冒険者としちゃあお前らの先輩だぜ? それなりの礼儀ってもんがあるんじゃねぇのか、なあ?」
「守ってくれる色男をお得意の色目と体使って誑し込んだからって、でけぇ面してんじゃねぇぞメスガキども。テメェら自身じゃ何もできやしねぇくせによぉ」
「優男、テメェもこんな女どもは、さっさと見限った方がいいぜ。いいように利用されるだけ利用されて、要らなくなったらポイ捨てされんのがオチだ。こいつらそういう色の目をしていやがる。俺たちには分かるんだよ」
……なるほど。
どうやらこの三人、俺とユキたちとを引きはがしたいようだ。
俺さえいなくなれば、ユキたちを好きにできるとでも思っているんだろう。
腕っぷしで俺に敵わないことは昨日の段階で悟ったので、作戦変更というところか。
まあ、作戦も見込みも、間違ってはいないんだがな。
昨日一日でユキたち三人もレベルアップしたが、それでもまだ、このチンピラ冒険者どものほうが実力は上だろう。
俺の見立てでは、このチンピラ冒険者たちは、いずれも10レベル程度はある。
今のユキたちでは、自力でこの男たちに勝つことは難しい。
さておき。
セシリーはそんなチンピラたちに、とことん冷たい声をかける。
「残念だけど私、自分が尊敬しない相手に払う敬意は、持ち合わせていないの。特に発想が下劣極まりないクズどもにはね。あとポイ捨てだのなんだの好き放題言ってくれるけどね、私は受けた恩を仇で返すようなゴミに成り下がるつもりはないから、安心なさい」
……そうか?
昨日その「恩を仇で返す」に近いことを、セシリーからやられた気がしないでもないが……まあ揚げ足取りか。
それにまだ短い付き合いとはいえ、このセシリーという少女が、目の前の男たちの言うような悪女でないことは、俺にはもうなんとなく把握できている。
というか、そんな器用な嘘をつける娘じゃないと思う。
むしろバカ正直を拗らせたせいで、面倒くさい性格になってしまっているタイプと思える。
ま、セシリーが俺の目を欺けるほどの演技力を持った名女優だった場合にはその限りじゃないんだが──その場合は、相手が上手だったと思ってあきらめよう。
そして三番手に啖呵を切るのは、男たちの姿を見て、早々に俺の後ろへと逃げ込んだルシアだ。
「ぺっ、ぺっ。なーにが先輩っすか。見境いのないケダモノが、人間のふりしてんじゃねーっすよ。ケダモノはケダモノらしく、街の外で寝泊まりしていやがれっす。ささ、クリードの兄貴。こんなやつらコテンパンにのして、街の外に叩きだしてやってくださいっす」
ルシアはいっそすがすがしいぐらい、虎の威を借るチンピラの子分だった。
お前いっそ、あっちについたほうが似合ってるんじゃねぇの?
が、ルシアの言うとおりにするわけではないが、俺もそれなりの態度を示しておいたほうがいいだろうなとは考えていた。
そのほうが、あとあと面倒がないだろう。
俺はユキ、セシリー、ルシアの三人を背後に守るように前に進み出る。
チンピラたちは、俺に近付かれて腰が引けた。
俺はそんな男たちに向かって言う。
「あのさぁお前ら。勘違いしているようだから、はっきり言っとくけどよ」
「な、なんだよ、優男」
それから後ろを向いて、ユキとセシリーに向かって、ちょいちょいと手招きして呼び寄せる。
ユキは「え、ボク?」と言って俺のもとに寄ってきて、セシリーも「な、なにをする気よ」とつぶやきながら俺の隣にやってきた。
それから俺は、チンピラたちのほうへと再び向き直ると──
左腕にユキの肩を、右腕にセシリーの肩を抱いて、二人を俺のもとに抱き寄せた。
「ふぇっ!? せ、先輩……!?」
「なっ、何を……!?」
狼狽する様子を見せるユキとセシリーに、「演技だ演技。合わせろ」と小声で伝えつつ、チンピラたちに向かって言う。
「ユキ、セシリー、ルシア──こいつら三人とも、俺の女だからよ。てめぇら俺の女に手ぇ出したら、ぶっ殺すからな」
「な、あっ……せ、先輩……『俺の女』って……!?」
「ちょ、ちょっと、クリード!?」
なおも慌てた様子を見せる、ユキとセシリー。
いやだから、演技だって言ってんだろ。
ちゃんと合わせろよ、嘘だってバレちゃうだろうが。
ちなみにルシアはというと、
「いやだもう、兄貴ったら。『俺の女だ』なんて本当のことを人前で言って。うち、恥ずかしいっすよぉ♪」
などと、打ち合わせ一つしていないのにのたまって、俺の背後でくねくねしていた。
わー、助かるぅ。
俺は加えて、驚き戸惑っているチンピラたちに向かって言い放つ。
「俺がこいつらの近くにいないときでも同じだぜ。俺の女に手ぇ出したやつは、地の果てまでも追いかけて、五体満足でいられねぇ体にしてやるからよ。分かったな。こいつらは俺のもんだ。テメェらが手ぇ出していいもんじゃねぇ。──分かったらとっとと消え失せろ、目障りだ」
「くっ……優男、テメェ覚えてやがれよ! いずれ後悔するからな!」
チンピラたちは、どうにかそれだけの捨て台詞を残すと、慌てて俺たちの前から逃げ去っていった。
ふぅ……やれやれ。
これでひとまず大丈夫だろう。
俺はユキとセシリーを腕の中から解放しつつ、二人に伝える。
「あいつらみたいなのは、ルシアの言うように、ようは本能だけで動いている獣みたいなもんだからな。ここは俺の縄張りだから近寄るな、近寄ったら殺すぞ、ぐらいの分かりやすい脅し方をしておいたほうがいいんだよ。だから一芝居打ったってわけだ」
「だ、だからって、いきなり同意もなく……! もう、びっくりしたんだから! クリードのバカ!」
セシリーがそう言って、ぷいっとそっぽを向く。
一方のユキは、
「ボクが……先輩の女……ボクはでも、先輩の、後輩で……でも先輩、ボクのこと、俺のものだから手を出すなって……それに、恋人みたいに、肩を抱かれたし……記憶がないけど、ベッドでも抱かれたみたいだし……そんな、どうしよう、ボク……でも、好きか嫌いかなら、どっちかっていうと……だし……いいのかな、ボク、これで……」
などと、うわ言のようにつぶやいていた。
若干怖いうえに、彼女の脳内の情報がおかしなことになっているようだが、大丈夫だろうか。
とまあ、そんなアクシデントがありつつも。
俺たちは街を出て、本題の第一迷宮入り口へと向かったのだった。
そのうち一人が、俺たち四人の姿を見回して、さっそく悪態をついてくる。
「ちっ、昨日の優男か。今日も一緒にいるってのは……なんだ女ども、色目を使ってそいつを誑かしたのか?」
「はあっ……!? ち、違う! 何をバカなことを言って! クリード先輩は、冒険者の先輩としてボクたちの面倒を見てくれているだけだ! お前たちみたいな下衆な男どもと一緒にするな!」
男の言いがかりを真に受けたユキは、ふざけるなとばかりに猛然と食ってかかる。
いやまあ、実際は言うほど違わないんだけどな。
ムサい男の冒険者よりは、可愛い女の子たちとパーティを組めたほうが華やかで楽しいよな、ぐらいには考えていたし、誑かされたと言われればそう間違ってもいない。
でもユキの中では、俺はもっと清廉潔白な人物ということになっているようだ。
まあいいか。
一方のチンピラたちは、ユキの言葉を聞いて不愉快そうに顔をしかめる。
彼らは地面に唾を吐きすてたりしながら、さらなるケチを吹っかけてきた。
「下衆とはずいぶんとご挨拶だな、気の強いお嬢ちゃんよぉ。でも俺たちだって、冒険者としちゃあお前らの先輩だぜ? それなりの礼儀ってもんがあるんじゃねぇのか、なあ?」
「守ってくれる色男をお得意の色目と体使って誑し込んだからって、でけぇ面してんじゃねぇぞメスガキども。テメェら自身じゃ何もできやしねぇくせによぉ」
「優男、テメェもこんな女どもは、さっさと見限った方がいいぜ。いいように利用されるだけ利用されて、要らなくなったらポイ捨てされんのがオチだ。こいつらそういう色の目をしていやがる。俺たちには分かるんだよ」
……なるほど。
どうやらこの三人、俺とユキたちとを引きはがしたいようだ。
俺さえいなくなれば、ユキたちを好きにできるとでも思っているんだろう。
腕っぷしで俺に敵わないことは昨日の段階で悟ったので、作戦変更というところか。
まあ、作戦も見込みも、間違ってはいないんだがな。
昨日一日でユキたち三人もレベルアップしたが、それでもまだ、このチンピラ冒険者どものほうが実力は上だろう。
俺の見立てでは、このチンピラ冒険者たちは、いずれも10レベル程度はある。
今のユキたちでは、自力でこの男たちに勝つことは難しい。
さておき。
セシリーはそんなチンピラたちに、とことん冷たい声をかける。
「残念だけど私、自分が尊敬しない相手に払う敬意は、持ち合わせていないの。特に発想が下劣極まりないクズどもにはね。あとポイ捨てだのなんだの好き放題言ってくれるけどね、私は受けた恩を仇で返すようなゴミに成り下がるつもりはないから、安心なさい」
……そうか?
昨日その「恩を仇で返す」に近いことを、セシリーからやられた気がしないでもないが……まあ揚げ足取りか。
それにまだ短い付き合いとはいえ、このセシリーという少女が、目の前の男たちの言うような悪女でないことは、俺にはもうなんとなく把握できている。
というか、そんな器用な嘘をつける娘じゃないと思う。
むしろバカ正直を拗らせたせいで、面倒くさい性格になってしまっているタイプと思える。
ま、セシリーが俺の目を欺けるほどの演技力を持った名女優だった場合にはその限りじゃないんだが──その場合は、相手が上手だったと思ってあきらめよう。
そして三番手に啖呵を切るのは、男たちの姿を見て、早々に俺の後ろへと逃げ込んだルシアだ。
「ぺっ、ぺっ。なーにが先輩っすか。見境いのないケダモノが、人間のふりしてんじゃねーっすよ。ケダモノはケダモノらしく、街の外で寝泊まりしていやがれっす。ささ、クリードの兄貴。こんなやつらコテンパンにのして、街の外に叩きだしてやってくださいっす」
ルシアはいっそすがすがしいぐらい、虎の威を借るチンピラの子分だった。
お前いっそ、あっちについたほうが似合ってるんじゃねぇの?
が、ルシアの言うとおりにするわけではないが、俺もそれなりの態度を示しておいたほうがいいだろうなとは考えていた。
そのほうが、あとあと面倒がないだろう。
俺はユキ、セシリー、ルシアの三人を背後に守るように前に進み出る。
チンピラたちは、俺に近付かれて腰が引けた。
俺はそんな男たちに向かって言う。
「あのさぁお前ら。勘違いしているようだから、はっきり言っとくけどよ」
「な、なんだよ、優男」
それから後ろを向いて、ユキとセシリーに向かって、ちょいちょいと手招きして呼び寄せる。
ユキは「え、ボク?」と言って俺のもとに寄ってきて、セシリーも「な、なにをする気よ」とつぶやきながら俺の隣にやってきた。
それから俺は、チンピラたちのほうへと再び向き直ると──
左腕にユキの肩を、右腕にセシリーの肩を抱いて、二人を俺のもとに抱き寄せた。
「ふぇっ!? せ、先輩……!?」
「なっ、何を……!?」
狼狽する様子を見せるユキとセシリーに、「演技だ演技。合わせろ」と小声で伝えつつ、チンピラたちに向かって言う。
「ユキ、セシリー、ルシア──こいつら三人とも、俺の女だからよ。てめぇら俺の女に手ぇ出したら、ぶっ殺すからな」
「な、あっ……せ、先輩……『俺の女』って……!?」
「ちょ、ちょっと、クリード!?」
なおも慌てた様子を見せる、ユキとセシリー。
いやだから、演技だって言ってんだろ。
ちゃんと合わせろよ、嘘だってバレちゃうだろうが。
ちなみにルシアはというと、
「いやだもう、兄貴ったら。『俺の女だ』なんて本当のことを人前で言って。うち、恥ずかしいっすよぉ♪」
などと、打ち合わせ一つしていないのにのたまって、俺の背後でくねくねしていた。
わー、助かるぅ。
俺は加えて、驚き戸惑っているチンピラたちに向かって言い放つ。
「俺がこいつらの近くにいないときでも同じだぜ。俺の女に手ぇ出したやつは、地の果てまでも追いかけて、五体満足でいられねぇ体にしてやるからよ。分かったな。こいつらは俺のもんだ。テメェらが手ぇ出していいもんじゃねぇ。──分かったらとっとと消え失せろ、目障りだ」
「くっ……優男、テメェ覚えてやがれよ! いずれ後悔するからな!」
チンピラたちは、どうにかそれだけの捨て台詞を残すと、慌てて俺たちの前から逃げ去っていった。
ふぅ……やれやれ。
これでひとまず大丈夫だろう。
俺はユキとセシリーを腕の中から解放しつつ、二人に伝える。
「あいつらみたいなのは、ルシアの言うように、ようは本能だけで動いている獣みたいなもんだからな。ここは俺の縄張りだから近寄るな、近寄ったら殺すぞ、ぐらいの分かりやすい脅し方をしておいたほうがいいんだよ。だから一芝居打ったってわけだ」
「だ、だからって、いきなり同意もなく……! もう、びっくりしたんだから! クリードのバカ!」
セシリーがそう言って、ぷいっとそっぽを向く。
一方のユキは、
「ボクが……先輩の女……ボクはでも、先輩の、後輩で……でも先輩、ボクのこと、俺のものだから手を出すなって……それに、恋人みたいに、肩を抱かれたし……記憶がないけど、ベッドでも抱かれたみたいだし……そんな、どうしよう、ボク……でも、好きか嫌いかなら、どっちかっていうと……だし……いいのかな、ボク、これで……」
などと、うわ言のようにつぶやいていた。
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