婚約破棄された令嬢はヤンデレ王子に溺愛される

白霧雪。

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03.兄side

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 屋敷から出て行く妹の後ろ姿を見つめ、くふくふと笑みが零れるのを抑えられない。

「嗚呼、やっと、やっと向かえにいけるね、僕のリア……!」

 恍惚とした表情で、想いを馳せる。

 学園から、ハロルド・アーロンからの伝令を聞いたとき、柄にもなくスキップをしてしまいそうなほど気持ちが舞い上がった。
 あの妹が! 退学処分を受けだたけでなく、婚約破棄まで言い渡されただなんて! 喜ばないはずがなかった!

 可愛くて美しくて聡明な妹に、顔だけ男のハロルドなんてもったいないと思っていたんだ。伯爵家の次男なんて、その気になればいつでも消せた。事故を装ってでも、事件でもいい。あんな愚図に、妹はもったいなかった。
 地位と金にしか興味のない父と、見栄っ張りな母にはうんざりしていたのだ。

 駒鳥のように稚く、愛らしくて可愛らしくて美しい僕の妹。
 婚約が無しになってしまったのなら、しばらくは嫁に行く心配もない。
 ついでにミッドフォード家を勘当されたのなら、兄も妹も関係ないよね。

「ステファン、馬車の用意を」

 僕が生まれる前からミッドフォード家に仕える老執事は、なにも言うことなく一礼をして部屋を後にする。きっと老いた彼は全てをわかっているのだろう。

 馬鹿な父も母も、僕のこの醜くも尊い感情には気付いていない。

 僕は、実の妹に恋をしている。否、恋なんて言葉じゃ納まらない。愛しているんだ。愛してしまった。

 白くつるりとまろい頬が、恥じらい薄紅に染まる様は朝焼けのように美しく、太陽を映した黄金色の髪は稲穂のように波打ち、エメラルドをはめ込んだ理知的な瞳はキラキラと輝きを放っている。
 あるべき場所に納まった目や鼻パーツは芸術品にも劣らず、天使と見紛う清廉な雰囲気に、ささやかに浮かべられる笑みはパッとその場に花を開かせる。
 自慢の可愛くて愛しい妹だ。妹、だったんだ。
 細い腰に、なだらかなラインを描く肢体。細い手首は簡単に押さえ込めそうで、年頃の娘よりも大きな胸が揺れるたびに指を食い込ませて揉んでしまいたいと情欲が迸った。

 今頃泣いているだろう。優しく肩を抱いて、涙を舐め上げたい。きっと、飴玉のように甘くて美味しいんだろうなぁ。

「リア、僕のリア」

 サイドテーブルの引き出しの中は、リアの写真でいっぱいだった。
 朝、寝起きで目をこすっているところ。ドレスに着替えているところ。学園の制服の後姿。お嬢様たちとお茶会を開いているところ。花を愛でているところ。図書室で読書をしているところ。枕を抱きかかえた愛らしい寝顔! 一等お気に入りは、恥ずかしそうに笑みをほころばせているところだ。
 ――もちろん、視線は全て外れている。いわゆる盗撮、隠し撮りだ。

 ただの『リア』になった少女を、僕は娶るつもりでいた。だって、家名もファミリーネームもなければ一般庶民以下の存在だ。
 近親婚は禁止されているけれど、貴族の中じゃ意外とやってるとこも多い。尊き血族を絶やさないために! とかなんとかいって。

 気を病んでいる母は、きっと言葉で洗脳し続ければ妹がいた事実さえ忘れてしまうだろう。父も、体裁が整っていればあとは勝手にしろとのことだ。
 ミッドフォード家の次期当主は僕。そしてその妻は妹のリアだ。

 可愛くて可哀想なリア。今すぐ、兄さんが迎えに行ってあげるからね。
 
 
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