黒の解呪録 ~呪いの果ての少女~

蒼井 くじら

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ご令嬢からの依頼

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この日、宗介が帰宅すると、お店の前に『臨時休業』の看板が掲げられていた。この看板が出ている時は概ね裏の仕事――心霊相談を受けている時である。
 
 宗介は店の裏手にある階段を昇り、居住スペースになっている二階の扉を開ける。
 
 玄関には見慣れない女物の靴があった。
 
 そして、リビングからは話し声も聞こえてくる。


(やっぱり相談者が来ているのか……)
 

 そう思った宗介は、音を立てぬよう扉を閉め、そっと自室へ向かおうとした。
 
 しかし、リビングの前を通り過ぎる際、父親に見つかり呼び止められてしまう。

「おう、宗介! 帰ってきたか」
 
 宗介がリビングに目を向けると、そこには父親と、純白のワンピースを着て座っている女の姿があった。
 
 色白の肌に、ほっそりした体躯。漆を塗ったように艶やかなロングの黒髪は、一本の乱れも無く整っている。
 
 父親の言葉で彼女も宗介の方を向く。

「お久しぶり、宗介君。しばらく見ない間に、随分と大人っぽくなったわね」
 
 女はにっこりと微笑み、穏やかな声で話し掛けてきた。
 彼女の顔を見た宗介は、心の中で「げっ」と叫ぶ。
 霊に悩む相談者だとばかり思っていた彼女は、宗介のよく知る人物だった。
 
 彼女の名前は、御堂光(みどうひかる)。おっとりとした雰囲気と風貌は、見るからに良いとこのお嬢様。いや、彼女の場合は、紛れもなく名家の御令嬢である。
 
 除霊師界の総本山とも言える京都の御堂家。彼女はその家の一人娘にして次期当主だ。
 
 年齢は宗介の二つ上。この春に高校を卒業したが、大学には進学せず、本格的に除霊師としての修行を開始したと聞いていた。
 
 黒宮家も御堂家とは縁がある。そのため、宗介も父に連れられ、何度か光の実家を訪れたことがあった。簡単に言うと、本家と分家の関係に似ているだろうか。御堂側にしてみれば、黒宮など分家にも思っていないだろうが。
 
 つまり、目の前にいる光は、ゆくゆく除霊師たちのトップに立つ存在というわけである。
 
 故に、本来なら、宗介も丁重にお迎えしなければならないところ。
 しかしながら、宗介にはどうしても御堂の人間を好ましく思えない理由があった。

「……どうも」
 
 宗介は軽く会釈をする。
 
 そして、すぐさまその場を立ち去ろうとしたのだが――。



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