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座敷牢
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「ねえ、宗介君、何か変な感じじゃなかった?」
応接間を出たところで、光が耳打ちしてきた。
「ああ。美守に会わせて欲しいって言った辺りから、あのジイさんの様子は急におかしくなったな」
除霊を依頼しておきながら美守には会わせたくない。そんな矛盾した態度にも思えた。
しかし、おかしいのは彼だけではなかった。
「あの……」
応接間を出てしばらくすると、前を歩いていた乃恵が急に振り返った。
「本当に行かれるおつもりですか? 美守様のところへ」
彼女は心配そうに尋ねてくる。
「ああ? だって俺たちはそのために来たんだぜ? 行かなきゃしょうがないだろ」
「でも……今ならまだ引き返せます。旦那様には、後で私から『無理だった』とお伝えすることも可能ですから……」
どうやら宗介たちを美守の元へ案内したくないらしい。源一郎といい、乃恵といい、一体何を躊躇っているのだろうか。
「私たちなら大丈夫よ、乃恵ちゃん。これでも一応ちゃんとした除霊師だから」
光が優しく声をかけるが、乃恵の表情は晴れない。
「……どうしても行きますか?」
「それが仕事だからな」
宗介がキッパリ告げると、乃恵は諦めたように小さく頷く。
「……分かりました。では、まずはこちらへ――」
乃恵に連れて行かれたのは、トイレだった。「何故トイレ?」と疑問に思ったが、この後すぐ、宗介たちはその意味を理解することになる。
「この廊下の奥が美守様のいらっしゃるお部屋です……」
トイレの後、乃恵に案内されたのは広い屋敷の最奥部へと続く薄暗い廊下だった。
夕方ではあるが、まだ陽は残っているはず。
それなのに、廊下の奥はまるで奈落へ通じる穴のように暗く感じられる。
宗介たちは乃恵に続いて軋む廊下を進む。一歩進むごとに周囲の気温が下がっていくような感じがした。冷房も入っていない夏の廊下なのに、異常なほどに冷たい空気が立ち込めている。
「……うっ!」
突如、隣を歩いていた光が呻き声を上げ、手で顔を覆った。宗介も異変に気付く。
「な、なんなの……この臭い……」
廊下を半分ほど進んだところで、強烈な悪臭が鼻をついた。生肉を何日も放置したような腐敗臭。しかも、廊下を進むにつれ臭いはどんどん強くなってくる。
「すみません……。掃除は毎日しているんです。でも、消えないんです。この臭い……」
前を歩く乃恵は、申し訳なさそうに説明する。
「着きました。美守様は、この部屋の中にいらっしゃいます」
宗介たちの目の前に現れたのは、古ぼけた木の扉。異様だったのは、その扉に無数のお札が貼られていたことだ。加えて、酷い臭いが扉の隙間から漏れてきている。
この中に高校生の女の子がいるなんて考えたくもなければ、この部屋自体も女子高生の部屋には到底思えなかった。
「ここ、元々美守って子が使っていた部屋じゃないだろ?」
宗介が尋ねると、乃恵は困った顔で下を向く。
「仰る通りです……。美守様のお部屋ではありません」
「中に何があるんだ?」
宗介の問いかけに乃恵は一瞬間を置き、
「座敷牢です」
と、小さな声で答えた。
そこでようやく、宗介は先ほどから源一郎や乃恵の言動がおかしかった理由を理解する。
どうやら、想像していたよりも遥かに美守という子の状況は悪いらしい。座敷牢に閉じ込めておかねばならないほどなのだから。
「では、開けます。よろしいですか?」
宗介と光が無言で頷くと、乃恵はゆっくりと扉を開いた。
応接間を出たところで、光が耳打ちしてきた。
「ああ。美守に会わせて欲しいって言った辺りから、あのジイさんの様子は急におかしくなったな」
除霊を依頼しておきながら美守には会わせたくない。そんな矛盾した態度にも思えた。
しかし、おかしいのは彼だけではなかった。
「あの……」
応接間を出てしばらくすると、前を歩いていた乃恵が急に振り返った。
「本当に行かれるおつもりですか? 美守様のところへ」
彼女は心配そうに尋ねてくる。
「ああ? だって俺たちはそのために来たんだぜ? 行かなきゃしょうがないだろ」
「でも……今ならまだ引き返せます。旦那様には、後で私から『無理だった』とお伝えすることも可能ですから……」
どうやら宗介たちを美守の元へ案内したくないらしい。源一郎といい、乃恵といい、一体何を躊躇っているのだろうか。
「私たちなら大丈夫よ、乃恵ちゃん。これでも一応ちゃんとした除霊師だから」
光が優しく声をかけるが、乃恵の表情は晴れない。
「……どうしても行きますか?」
「それが仕事だからな」
宗介がキッパリ告げると、乃恵は諦めたように小さく頷く。
「……分かりました。では、まずはこちらへ――」
乃恵に連れて行かれたのは、トイレだった。「何故トイレ?」と疑問に思ったが、この後すぐ、宗介たちはその意味を理解することになる。
「この廊下の奥が美守様のいらっしゃるお部屋です……」
トイレの後、乃恵に案内されたのは広い屋敷の最奥部へと続く薄暗い廊下だった。
夕方ではあるが、まだ陽は残っているはず。
それなのに、廊下の奥はまるで奈落へ通じる穴のように暗く感じられる。
宗介たちは乃恵に続いて軋む廊下を進む。一歩進むごとに周囲の気温が下がっていくような感じがした。冷房も入っていない夏の廊下なのに、異常なほどに冷たい空気が立ち込めている。
「……うっ!」
突如、隣を歩いていた光が呻き声を上げ、手で顔を覆った。宗介も異変に気付く。
「な、なんなの……この臭い……」
廊下を半分ほど進んだところで、強烈な悪臭が鼻をついた。生肉を何日も放置したような腐敗臭。しかも、廊下を進むにつれ臭いはどんどん強くなってくる。
「すみません……。掃除は毎日しているんです。でも、消えないんです。この臭い……」
前を歩く乃恵は、申し訳なさそうに説明する。
「着きました。美守様は、この部屋の中にいらっしゃいます」
宗介たちの目の前に現れたのは、古ぼけた木の扉。異様だったのは、その扉に無数のお札が貼られていたことだ。加えて、酷い臭いが扉の隙間から漏れてきている。
この中に高校生の女の子がいるなんて考えたくもなければ、この部屋自体も女子高生の部屋には到底思えなかった。
「ここ、元々美守って子が使っていた部屋じゃないだろ?」
宗介が尋ねると、乃恵は困った顔で下を向く。
「仰る通りです……。美守様のお部屋ではありません」
「中に何があるんだ?」
宗介の問いかけに乃恵は一瞬間を置き、
「座敷牢です」
と、小さな声で答えた。
そこでようやく、宗介は先ほどから源一郎や乃恵の言動がおかしかった理由を理解する。
どうやら、想像していたよりも遥かに美守という子の状況は悪いらしい。座敷牢に閉じ込めておかねばならないほどなのだから。
「では、開けます。よろしいですか?」
宗介と光が無言で頷くと、乃恵はゆっくりと扉を開いた。
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