黒の解呪録 ~呪いの果ての少女~

蒼井 くじら

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一人でトイレに行けない18歳

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「…………けくん…………宗介君」
 

 深夜。
 
 眠りについていた宗介は、自分を呼ぶ声と身体を揺さぶられる振動で目を覚ました。目を開けると、そこには宗介を覗き込む光の姿。安眠を妨げられた苛立ちを覚えながら、宗介は身体を起こす。


「……何だよ?」
 

 イライラを抑えつつ、宗介は静かに尋ねる。


「あ、あのね、その、実は……」
 

 しかし、光ははっきりと答えようとしない。決まりが悪そうな顔で、組んだ手をもじもじと動かしている。寝起きで気が立っていた宗介は、相手が女だとか関係なしに殴り飛ばしたい衝動に駆られる。


「さっさと言えよ! こっちは眠いんだよ!」
「……れ……に行き……」
「はあ? 聞こえねえっつうの!」
「だから、トイレに行きたいからついて来て欲しいの!」
 

 光は顔を真っ赤にして叫んだ。
 
 勇気を振り絞って言ったのだろうが、それを聞いた宗介は呆れ返ってしまう。


「お前……いったい何歳だよ?」
「じゅ、十八歳……」
 
 
 そういう意味で訊いたのではないが、光は恥ずかしそうに実年齢を呟く。これがまだ年下の可愛らしい女の子なら「しょうがねえなあ」と思えたのかもしれない。だが、年上の女になると呆れを通りこして、なんだか可哀相にすら思えてくる。


「……十八にもなって一人でトイレに行けないってどういうことだ? 返答次第じゃグーでいくぞ」
「しょ、しょうがないじゃない! お化けが出るかもって思うと怖いんだもん……」
「除霊師がお化けを怖がってどうすんだよ!」
「あ~、もう本当にお願い! 我慢の限界なの!」
 

 両手を下腹部に持ってきて身をよじる光。
 
 そんな光を見て、宗介は深い溜息を漏らした。
 
 面倒くさいし馬鹿らしいが、ここで漏らされても困る。
 
 仕方がないので、宗介は渋々光のトイレに付き添ってやることにした。




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