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調査
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寝覚めは最悪だった。
自分の身体を喰われる夢を見たせいもあるが、体調の悪化が一番の原因だ。
起きた瞬間は喉がカラカラに渇いており、声すら出せない程だった。風邪をこじらせた時のようなだるさに加え、身体を起こそうとすると関節がひどく軋んだ。顔を合わせた光にも開口一番「顔色悪いよ、大丈夫?」と心配された。
食欲などあるわけがなく、昨日の夕飯同様、朝食もほとんど食べることができなかった。
「ねえ、宗介君。本当に大丈夫? 風邪なら寝ていた方が……」
朝食を終えて身支度を整えていると、光がもう一度宗介の体調を案じてきた。
「心配するな。それより午前中のうちに昨日と同じく除霊の振りをやっておくぞ。俺は外に出てるから、さっさと着替えろよ」
宗介は投げやりに言って、部屋の外に出る。口で言うほど大丈夫な状態ではなかったが、だからといって寝ていれば治るわけでもないことを宗介は十分に理解していた。
その後、佐々村家を訪れた宗介たちは、昨日と同様に美守のいる座敷牢で形だけの除霊を行った。
昼食後(宗介は食べなかったが)は、猛の車に乗って隣村のお寺へと向かう。
「着きました。ここです」
車が止まったのは、小さいながら歴史を感じさせるお寺の前。寺へと続く石畳の前には、『聖安寺』と記された石碑があった。
「では、行きましょうか。昨日電話を入れて、住職には話を通してありますから」
「あ~、ちょっと待ってくれ」
宗介は車を降りようとする猛を止める。
「どうしました?」
「悪いんだけどさ、こっから先、猛さんはちょっと遠慮してもらえねえかな」
「えっ? どうしてですか?」
「企業秘密ってところだな。除霊するにあたって一般人には知られたくないこともあるんでね。というわけで、二時間後くらいにまた迎えに来てくれないか?」
「そうですか……。分かりました。では、二時間ほど時間を潰してまた迎えにきます」
「ああ。すまない」
宗介たちが車を降りると、猛さんは笑顔で軽く手を振り、再び車を走らせた。いくら姪っ子の回復が掛かっているとはいえ、嫌な顔一つせず宗介たちに付き合ってくれる彼に、尊敬の念を抱かざるを得ない。本当によくできた人だ、と宗介は心から思う。
「ねえ、どうして猛さんには帰ってもらったの?」
猛の車が見えなくなると、今度は光が不思議そうな顔で尋ねてきた。光もこれで除霊師なので、宗介が猛に言ったことは嘘だと見抜いたのだろう。
実のところ、企業秘密というのは真っ赤な嘘。除霊に関して一般人に知られて困ることは何一つない。
「念のためだ。猛さんがいると、ここの住職が困るかもしれないから」
「え? どういうこと?」
「話を聞けば分かるよ。たぶんな」
頭上に『?』マークを浮かべる光に先んじて、宗介は寺へと続く石畳を歩く。
門を抜けると、正面にお御堂、左手側に墓地、そして右手側に住職が住んでいると思われる家屋があった。
自分の身体を喰われる夢を見たせいもあるが、体調の悪化が一番の原因だ。
起きた瞬間は喉がカラカラに渇いており、声すら出せない程だった。風邪をこじらせた時のようなだるさに加え、身体を起こそうとすると関節がひどく軋んだ。顔を合わせた光にも開口一番「顔色悪いよ、大丈夫?」と心配された。
食欲などあるわけがなく、昨日の夕飯同様、朝食もほとんど食べることができなかった。
「ねえ、宗介君。本当に大丈夫? 風邪なら寝ていた方が……」
朝食を終えて身支度を整えていると、光がもう一度宗介の体調を案じてきた。
「心配するな。それより午前中のうちに昨日と同じく除霊の振りをやっておくぞ。俺は外に出てるから、さっさと着替えろよ」
宗介は投げやりに言って、部屋の外に出る。口で言うほど大丈夫な状態ではなかったが、だからといって寝ていれば治るわけでもないことを宗介は十分に理解していた。
その後、佐々村家を訪れた宗介たちは、昨日と同様に美守のいる座敷牢で形だけの除霊を行った。
昼食後(宗介は食べなかったが)は、猛の車に乗って隣村のお寺へと向かう。
「着きました。ここです」
車が止まったのは、小さいながら歴史を感じさせるお寺の前。寺へと続く石畳の前には、『聖安寺』と記された石碑があった。
「では、行きましょうか。昨日電話を入れて、住職には話を通してありますから」
「あ~、ちょっと待ってくれ」
宗介は車を降りようとする猛を止める。
「どうしました?」
「悪いんだけどさ、こっから先、猛さんはちょっと遠慮してもらえねえかな」
「えっ? どうしてですか?」
「企業秘密ってところだな。除霊するにあたって一般人には知られたくないこともあるんでね。というわけで、二時間後くらいにまた迎えに来てくれないか?」
「そうですか……。分かりました。では、二時間ほど時間を潰してまた迎えにきます」
「ああ。すまない」
宗介たちが車を降りると、猛さんは笑顔で軽く手を振り、再び車を走らせた。いくら姪っ子の回復が掛かっているとはいえ、嫌な顔一つせず宗介たちに付き合ってくれる彼に、尊敬の念を抱かざるを得ない。本当によくできた人だ、と宗介は心から思う。
「ねえ、どうして猛さんには帰ってもらったの?」
猛の車が見えなくなると、今度は光が不思議そうな顔で尋ねてきた。光もこれで除霊師なので、宗介が猛に言ったことは嘘だと見抜いたのだろう。
実のところ、企業秘密というのは真っ赤な嘘。除霊に関して一般人に知られて困ることは何一つない。
「念のためだ。猛さんがいると、ここの住職が困るかもしれないから」
「え? どういうこと?」
「話を聞けば分かるよ。たぶんな」
頭上に『?』マークを浮かべる光に先んじて、宗介は寺へと続く石畳を歩く。
門を抜けると、正面にお御堂、左手側に墓地、そして右手側に住職が住んでいると思われる家屋があった。
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