突然ヒロインとなったマリアンナの恋愛事情〜女装の王子様に囲い込まれました

牧場のばら

文字の大きさ
11 / 49

エルリーヌと双子

しおりを挟む
※エルリーヌ嬢の一人語りです。




 幼い頃からロックフィールド家の双子に振り回されてきた気がする。
 年と家格が釣り合うため、双子の家にはよく遊びに行った。いわゆる幼馴染と言う間柄だ。

 ロックフィールド家には銀の髪に美しい紫の目をしたお人形の様な双子と、5歳年上のアラン兄様がいた。兄様は超絶美形でその上とても優しいものだから、わたくしの初恋は紛れもなくアラン兄さまだと思う。
 美しい子息たちとともにわたくしがいて、小父さまや小母さまには随分可愛がっていただいた。
 
 小母さまはお身体が弱かったのでベッドに伏せることも多かったけど、お元気な時はわたしとデヴィを並んで座らせて、ふたりの髪を結って髪飾りをつけたり、お揃いのドレスを着せたりして、随分楽しそうだった。

 デヴィは本当は男の子なのだけど、小母さまは「可愛い私のお姫様」と呼んでいた。
 女の子ごっこ(わたくしとデヴィはそう言ってた)をする時は、アラン兄様とジェイムス様には家庭教師がついていた。

 7歳の頃に夫人が身罷ってそれから双子には会わなくなり、次に会ったのは10歳のとき。
 お父様が、ジェイムス様とわたくしとの婚約を打診したのだ。ジェイムス様は次男だし、わたくしはひとり娘なので、婿入りしてもらってソーンダイク侯爵家を継ぐことが決まった。

 ジェイムス様はいつも穏やかで、デヴィッドと違って意地悪しないしお人形を壊したりしない。
 小さなわたくしをレディのように扱ってくれた。ジェイムス様だって小さい子どもなのに。きっとアラン兄様の真似をしていたのかもしれない。背伸びをした姿もとても素敵だった。
 そんなジェイムス様を、わたくしは婚約した時からずっとお慕いしている。


 ジェイムス様は容姿端麗頭脳明晰、非の打ち所がないと世間では思われている。実際その通り。でもわたくしは知っている。

 ジェイムス様は案外嫉妬深くて独占欲の塊で、負けず嫌いだ。双子の弟デヴィッド(デヴィッドに様は付けたくない。人形の恨み思い知るが良い)に対しても本当は対抗心を持っている。

 なぜかと?
 それは多分、病弱だった小母さまが女の子が欲しかったあまりに、双子のうちのひとりを女の子の様に育て始めた時、自分ではなくデヴィッドを選んだから。
もちろんジェイムス様はそんな事は絶対に口にしないけれど、小母さまにデヴィだけが呼ばれる時に見せる寂しげなお顔を、わたくしは覚えている。

 叔母さまはデヴィッドが三男だったから女装させたのだと思うけど、ジェイムス様にとっては、お母様から選ばれなかったことが、抜けない小さな棘のように残ってしまったのだと思う。

 だけどデヴィッドだって辛かった筈。本当はアラン兄様やジェイムス様と一緒に剣の練習だってしたいし走り回って遊びたいのに、ひらひらのドレスを着せられて、お茶会をして、お人形遊びをして、それが彼の意に沿ってはいないと誰もがわかっているのに、病弱な小母さまの手前、誰も言えなかった。

 すっかり引きこもりになったデヴィッドがどうやってマリアンナさんを見初めて、手に入れたいと思ったのかは知らないけど、彼が望んだことを小父さまが受け入れたと知って驚いた。

 アラン兄様は23歳で未だに独身だが、留学していた先で知り合った隣国の姫君との間に婚約の話が出ていると聞いている。
 嫡男ではあるけれど、国家間の問題になりかねないので受け入れるも断るも慎重に事を運ぶ必要がある。しかも王配として望まれているのなら尚更。

 そうなるとジェイムス様たち双子の立場も変わってくる。
 ジェイムス様は本当は婿入りではなく、公爵家を継ぎたいに違いない。アラン兄さまが隣国へ行かれたら、ジェイムス様が跡を継ぐ事になるのかしら。

 そうしたらわたくしがロックフィールド公爵家へ嫁ぐことになるのだろうか?
 お父様もお母様もわたくし達がこの家を継ぐのを楽しみにしてらっしゃるというのに。
 もしかしたら、この婚約が白紙になってしまうかもしれない。

 マリアンナさんは子爵家の令嬢にしては勉学が優れ、見た目も悪くない。デヴィッド様とはお似合いに思える。だけど、公爵家に嫁ぐとなれば、相当の覚悟がいるはず。彼女の言動は常に周りから注目される事になる。ほぼ平民のような暮らしをしていた彼女が、それに耐えられるのかしら。

 そして、隠し玉のデヴィッド様の存在がわかって社交界に出入りするようになると、有力な高位貴族からの、我が娘の売り込みが激しくなるだろう。

 その時、ロックフィールド公爵家はマリアンナさんを選ぶのだろうか。それとも切り捨てるのだろうか。

 そしてわたくしは愛するジェイムス様の妻になれるのだろうか。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

婚約破棄された悪役令嬢、放浪先で最強公爵に溺愛される

鍛高譚
恋愛
「スカーレット・ヨーク、お前との婚約は破棄する!」 王太子アルバートの突然の宣言により、伯爵令嬢スカーレットの人生は一変した。 すべては“聖女”を名乗る平民アメリアの企み。でっち上げられた罪で糾弾され、名誉を失い、実家からも追放されてしまう。 頼る宛もなく王都をさまよった彼女は、行き倒れ寸前のところを隣国ルーヴェル王国の公爵、ゼイン・ファーガスに救われる。 「……しばらく俺のもとで休め。安全は保証する」 冷徹な印象とは裏腹に、ゼインはスカーレットを庇護し、“形だけの婚約者”として身を守ってくれることに。 公爵家で静かな日々を過ごすうちに、スカーレットの聡明さや誇り高さは次第に評価され、彼女自身もゼインに心惹かれていく。 だがその裏で、王太子とアメリアの暴走は止まらず、スカーレットの両親までもが処刑の危機に――!

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

エアコン魔法、全自動チョコレート製造魔法、魔法の無駄遣い? ――快適な生活のために、全部必要ですわ

鷹 綾
恋愛
「魔法の無駄遣いだ」 そう言われて婚約を破棄され、南方の辺境へ追放された元・聖女エオリア。 けれど本人は、まったく気にしていなかった。 暑いならエアコン魔法を使えばいい。 甘いものが食べたいなら、全自動チョコレート製造魔法を組めばいい。 一つをゆっくり味わっている間に、なぜか大量にできてしまうけれど―― 余った分は、捨てずに売ればいいだけの話。 働く気はない。 評価されても困る。 世界を変えるつもりもない。 彼女が望むのは、ただひとつ。 自分が快適に、美味しいものを食べて暮らすこと。 その結果―― 勝手に広まるスイーツブーム。 静かに進む元婚約者の没落。 評価だけが上がっていく謎の現象。 それでもエオリアは今日も通常運転。 「魔法の無駄遣い? ――快適な生活のために、全部必要ですわ」 頑張らない。 反省しない。 成長もしない。 それでも最後まで勝ち続ける、 アルファポリス女子読者向け“怠惰ざまぁ”スイーツファンタジー。

婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~

白井
恋愛
「我が伯爵家に貴様は相応しくない! 婚約は解消させてもらう」  枯葉のような地味な容姿が原因で家族から疎まれ、婚約者を姉に奪われたステラ。  土下座を強要され自分が悪いと納得しようとしたその時、謎の美形が跪いて手に口づけをする。  「美しき我が光……。やっと、お会いできましたね」  あなた誰!?  やたら綺麗な怪しい男から逃げようとするが、彼の執着は枯葉令嬢ステラの想像以上だった!  虐げられていた令嬢が男の正体を知り、幸せになる話。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

退屈扱いされた私が、公爵様の教えで社交界を塗り替えるまで

有賀冬馬
恋愛
「お前は僕の隣に立つには足りない」――そう言い放たれた夜から、私の世界は壊れた。 辺境で侍女として働き始めた私は、公爵の教えで身だしなみも心も整えていく。 公爵は決して甘やかさない。だが、その公正さが私を変える力になった。 元婚約者の偽りは次々に暴かれ、私はもう泣かない。最後に私が選んだのは、自分を守ってくれた静かな人。

冷徹と噂の辺境伯令嬢ですが、幼なじみ騎士の溺愛が重すぎます

藤原遊
恋愛
冷徹と噂される辺境伯令嬢リシェル。 彼女の隣には、幼い頃から護衛として仕えてきた幼なじみの騎士カイがいた。 直系の“身代わり”として鍛えられたはずの彼は、誰よりも彼女を想い、ただ一途に追い続けてきた。 だが政略婚約、旧婚約者の再来、そして魔物の大規模侵攻――。 責務と愛情、嫉妬と罪悪感が交錯する中で、二人の絆は試される。 「縛られるんじゃない。俺が望んでここにいることを選んでいるんだ」 これは、冷徹と呼ばれた令嬢と、影と呼ばれた騎士が、互いを選び抜く物語。

処理中です...