突然ヒロインとなったマリアンナの恋愛事情〜女装の王子様に囲い込まれました

牧場のばら

文字の大きさ
23 / 49

帰還

しおりを挟む
 マリアンナはデヴィッドの腕の中で、ようやく心から安心する事が出来た。

 ドアの向こうでは縛り上げられたならず者3人。もちろんあの元領民の髭面もいる。
 アリッサとヘンドリックはならず者たちに縛られていたその姿のまま、公爵家の騎士たちに取り囲まれていた。

「わたくしにこのような仕打ちをして、ただで済むと思っているの?早く縄を外しなさい!」

 この後に及んで叫ぶアリッサを、ヘンドリックは嗜めた。
「アリッサ。この誘拐計画はお前が立てたものだ。我々は裁きを受けねばならないんだ」

「お兄さま!何を仰ってるのですか。わたくしたちはこのならず者共に酷い目に遭わされそうになった、いわば被害者ですのよ?」
 
 どこまでも自分勝手に喚き散らすアリッサに、デヴィッドが言い放った。

「見苦しいな、アリッサ・ノイマン。今回の件、宰相である我が父とノイマン卿には早馬で知らせた。王都警備隊も承知のことだ。貴様は王都で裁かれることになる。
 ああ、ヘンドリック殿に関しては、アリッサの計画を阻止するためにならず者どもに金を積み、さらに私に監禁先を知らせてくれた事で、ノイマン侯爵家としての関与はなし、と言う事になるだろう。多少のお咎めは否めないが」

 アリッサはデヴィッドを睨みつけた。
「お前のせいで。お前がわたくしを選ばないから悪いのよ。わたくしは悪く無いわ」

「やめなさい、アリッサ。
 ロックフィールド公爵子息、ご厚情に感謝します」

 ヘンドリックはデヴィッドに対して深く頭を下げた。



 王都に戻ったマリアンナは、怪我の手当ての為本邸で療養する事になった。本邸でマリアンナを待っていた侍女のシャーリーは絶叫した。

「なんて酷い。マリアンナ様、さあ、湯浴みをしてお手当いたしましょうね」
 
 シャーリーの顔を見た途端、張り詰めた気持ちが解けたマリアンナは気を失った。そんなマリアンナを慈愛を込めて見つめるシャーリーの目元は潤んでいた。


 あの時マリアンナを助けた元領民の男は牢に入れられた。
 マリアンナに伝言してほしいと伝えられたのは、刑期を終えたら領地に帰ります、お嬢様の幸せをお祈りしております、という言葉だった。

 また、ノイマン家のアリッサはその計画の残虐さゆえに、厳しい戒律で知られる修道院へ送られることになった。最後まで自分の非を認めようとせず、傲慢な態度で喚き散らすアリッサに、父親であるノイマン公爵も匙を投げた。

 兄のヘンドリックはアリッサの計画を止めようとした事から3ヶ月の謹慎処分で済んだ。
 ノイマン公爵家は、娘の管理が行き届いていないと、爵位を落とし領地はそのままに侯爵となった。

 アーサーはデヴィッドの素早い行動力と意外な剣の腕前を目の当たりにして、デヴィッドを見直した。悔しいけれど、彼ならば姉さんを任せられると思ったのだ。
 そして、自分も剣の腕を磨きたいと考えたアーサーは、公爵のはからいで王都の騎士団で剣の修行を積むことが決まった。

「義兄上あにうえと呼んでくれて良いのだよ」としつこく迫るデヴィッドには辟易したが。

 マリアンナへの恋心を自覚したクリフだったが、抱き合う2人を見て入り込む隙間のない事を知った。
「護衛として側に居て彼女の笑顔を向けてもらえた。それで満足せねば」と、気持ちを切り替えて、アランについて隣国へ赴くことを決意した。



「お怪我が大した事がなくて本当に良かったですわね」

 マリアンナの見舞いにやってきたエルリーヌは、花束をシャーリーに渡すとベッド脇の椅子に座った。

「エルリーヌ様。態々いらしてくださりありがとうございます。お腹を蹴られたので念のため検査をしたくらいで、すっかり大丈夫なのです。それでも公爵閣下とデヴィッド様が静かにしていないと駄目だとおっしゃて、学院も休んでいるのです」

「貴女の成績は普段から優秀ですから、ご卒業には問題なくてよ」
 エルリーヌは優しく微笑んだ。

「それより、デヴィッド様、いーえ、デヴィね、デヴィと貴女の仲はどうなったの?恋人になったの?」

 今まで礼儀正しい言葉遣いを崩したことのなかった令嬢のエルリーヌは、悪戯っぽい目をして尋ねた。他人の恋の話にときめくのは、高位の貴族令嬢とて大好物なのである。

「わたしだってこういう話し方も出来るのよ。だってマリアンナとは将来義理の姉妹になるのですもの。もっと気さくに話しても良いと思うのよ」

「エルリーヌ様。それは……」

「あら、堅苦しいわね。愛称のエリィと呼んで頂戴な。わたしもマリアンナのことを、そうね、マリィと呼ぶわ」

 マリアンナは目を白黒した。

「エ、、エリィ?」

 エルリーヌは満足げに頷くと、何かしら?と微笑んだ。

「デヴィッド様とは特に何もございませ、何もないの。特に何かを言われたわけでもないのよ。
 わたしは卒業したら領地に戻ることにしたわ。デヴィッド様は公爵家の跡取りとなられる方ですもの。身分も含めて何もかもが釣り合わないのだから。こうやって療養させてもらっているだけでもありがたいと思っているの」

 エルリーヌは信じられないといった顔をした。

「まあ、マリィ、貴女何も聞いていないの?デヴィったら何をグズグズしているのかしら。まあ良いわ。よく聞いてね。
 公爵家はジェイムス様とわたくしエルリーヌが継ぐことに決まったのよ」

「まあ、そうなのね!おめでとうございます、で良いのかしら?
 ソーンダイク侯爵家はどうなさるのかお尋ねしても良いのかしら。
 せっかくエリィとこうやってお話しできるようになったのだから、結婚式は知らせて欲しいわ」

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

婚約破棄された悪役令嬢、放浪先で最強公爵に溺愛される

鍛高譚
恋愛
「スカーレット・ヨーク、お前との婚約は破棄する!」 王太子アルバートの突然の宣言により、伯爵令嬢スカーレットの人生は一変した。 すべては“聖女”を名乗る平民アメリアの企み。でっち上げられた罪で糾弾され、名誉を失い、実家からも追放されてしまう。 頼る宛もなく王都をさまよった彼女は、行き倒れ寸前のところを隣国ルーヴェル王国の公爵、ゼイン・ファーガスに救われる。 「……しばらく俺のもとで休め。安全は保証する」 冷徹な印象とは裏腹に、ゼインはスカーレットを庇護し、“形だけの婚約者”として身を守ってくれることに。 公爵家で静かな日々を過ごすうちに、スカーレットの聡明さや誇り高さは次第に評価され、彼女自身もゼインに心惹かれていく。 だがその裏で、王太子とアメリアの暴走は止まらず、スカーレットの両親までもが処刑の危機に――!

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

エアコン魔法、全自動チョコレート製造魔法、魔法の無駄遣い? ――快適な生活のために、全部必要ですわ

鷹 綾
恋愛
「魔法の無駄遣いだ」 そう言われて婚約を破棄され、南方の辺境へ追放された元・聖女エオリア。 けれど本人は、まったく気にしていなかった。 暑いならエアコン魔法を使えばいい。 甘いものが食べたいなら、全自動チョコレート製造魔法を組めばいい。 一つをゆっくり味わっている間に、なぜか大量にできてしまうけれど―― 余った分は、捨てずに売ればいいだけの話。 働く気はない。 評価されても困る。 世界を変えるつもりもない。 彼女が望むのは、ただひとつ。 自分が快適に、美味しいものを食べて暮らすこと。 その結果―― 勝手に広まるスイーツブーム。 静かに進む元婚約者の没落。 評価だけが上がっていく謎の現象。 それでもエオリアは今日も通常運転。 「魔法の無駄遣い? ――快適な生活のために、全部必要ですわ」 頑張らない。 反省しない。 成長もしない。 それでも最後まで勝ち続ける、 アルファポリス女子読者向け“怠惰ざまぁ”スイーツファンタジー。

婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~

白井
恋愛
「我が伯爵家に貴様は相応しくない! 婚約は解消させてもらう」  枯葉のような地味な容姿が原因で家族から疎まれ、婚約者を姉に奪われたステラ。  土下座を強要され自分が悪いと納得しようとしたその時、謎の美形が跪いて手に口づけをする。  「美しき我が光……。やっと、お会いできましたね」  あなた誰!?  やたら綺麗な怪しい男から逃げようとするが、彼の執着は枯葉令嬢ステラの想像以上だった!  虐げられていた令嬢が男の正体を知り、幸せになる話。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

退屈扱いされた私が、公爵様の教えで社交界を塗り替えるまで

有賀冬馬
恋愛
「お前は僕の隣に立つには足りない」――そう言い放たれた夜から、私の世界は壊れた。 辺境で侍女として働き始めた私は、公爵の教えで身だしなみも心も整えていく。 公爵は決して甘やかさない。だが、その公正さが私を変える力になった。 元婚約者の偽りは次々に暴かれ、私はもう泣かない。最後に私が選んだのは、自分を守ってくれた静かな人。

冷徹と噂の辺境伯令嬢ですが、幼なじみ騎士の溺愛が重すぎます

藤原遊
恋愛
冷徹と噂される辺境伯令嬢リシェル。 彼女の隣には、幼い頃から護衛として仕えてきた幼なじみの騎士カイがいた。 直系の“身代わり”として鍛えられたはずの彼は、誰よりも彼女を想い、ただ一途に追い続けてきた。 だが政略婚約、旧婚約者の再来、そして魔物の大規模侵攻――。 責務と愛情、嫉妬と罪悪感が交錯する中で、二人の絆は試される。 「縛られるんじゃない。俺が望んでここにいることを選んでいるんだ」 これは、冷徹と呼ばれた令嬢と、影と呼ばれた騎士が、互いを選び抜く物語。

処理中です...