3歳で捨てられた件

玲羅

文字の大きさ
111 / 658
学院初等部 4学年生

訓練と実践?

しおりを挟む
「皆様、ありがとうございます。訓練にお戻りください。お邪魔をしたいわけではないのです」

 私が言うと、みんなは戻ってくれた。ダニエル様とシェーン様は残っているけど。

「ダニエル様、シェーン様もお戻りになってください。お邪魔をしてしまって申し訳ございません」

「邪魔などと。キャスリーン様を邪魔者扱いする者はこの場には居りませんよ」

「お嬢ちゃんを邪魔者扱いする奴は、消えてもらっても良いよね?」

「ダニエル様、我が家の私兵を消さないでくださいませ?」

 冗談と分かりながら笑って言うと、ダニエル様が私の頭に手を伸ばした。それをシェーン様が素早く阻止する。

「何の真似だ?」

「こっちのセリフだ」

「軽々しくキャスリーン様に触れるな」

「これ位は許されたり……、しねぇかな?」

 目線が私を通過した。どうやらフランに聞いたらしい。

「キャスリーン様にはローレンス様という婚約者がいらっしゃいます。そのような真似をなさいますと要らぬ噂の種になります。お控えください」

「確かにお嬢ちゃんが困る状況に、なっちまうよなぁ」

「分かったらキャスリーン様から離れろ。困っておられるだろう?」

「はいはい。訓練に戻りますか。お嬢ちゃん、またね」

「頑張ってくださいまし。お怪我にだけはお気を付けくださいね」

「そりゃあ無理な相談だな」

「そうですね。真剣に相手と打ち合えば、必ずどちらかが怪我をします」

 そこを気を付けてって言っているんだけど。それに2人してバチバチに睨み合ってませんか?

 私兵達に交ざって剣を打ち合う2人の速度と強さが、早く強くなっていく。最初は見ているだけだった私兵達が距離を取って、場所を開け始めた。

「お嬢様、放っておいて良いのでしょうか?」

「確実にどっちかは怪我をするわよね」

 あぁっ、ダニエル様が吹っ飛ばされた。ズザザザザッと地面を滑ったダニエル様は素早く起き上がると、シェーン様に斬りかかる。今度はシェーン様がダニエル様にお腹を蹴られた。膝を付いて着地したシェーン様も即座に起き上がって一気にダニエル様との距離を詰める。

「フラン……」

「お嬢様、見ているのがお辛いなら、立ち去ってもよろしいのですよ?」

「そうしたいのはやまやまなんだけど、なんだか見届けないといけない気がするの」

 私の様子に気がついたらしいランベルトお義兄様が、気遣わしげな視線を寄越した。大丈夫だという意味を込めて笑顔を浮かべる。

 もはや殴り合いに発展しているダニエル様とシェーン様を見守る。私兵達がジリジリとその回りを囲んでいる。大丈夫だと合図を送ったはずのお義兄様が側に来てくれた。

「キャシー、大丈夫か?」

「大丈夫だと合図をいたしましたのに」

「合図はな。大丈夫だという顔ではないから来たんだ」

「お2人はどうなさってしまわれたのでしょう」

「あの2人は、元々キャシーを守るという点でしか相容れないようだから、想定内ではあったんだが。まさかキャシーの見ている前でおっ始めるとは」

「想定内でしたの?」

「一応な。隊長達とも話しはしていた。父上には報告しないとな」

「あのお2人をどうなさるおつもりですか?」

「我が家にあの2人をどうこうする権限は無い。キャシーだけがあの2人の行く先に口出し出来る。キャシーはどうしたい?」

「どうしたいと言われましても」

 2人共地面に倒れ付して立てなくなった。

「決着が付いたかな?」

「お怪我を治さないと」

「その必要はないよ。怪我も自業自得だろう?」

「必要はございます。怪我をそのままにするといろんな弊害を引き起こす可能性がございます」

「出血部は洗浄して、骨折部位は固定するんだっけ?」

「治癒魔法を使わせないおつもりですか?」

 私兵達が担架でダニエル様とシェーン様を運び出す。

「元気になって、同じ事を繰り返されても、我が家も迷惑だからね」

「かといって……」

 担架で運ばれていく2人を見ていると、少し乱暴にワシャワシャを頭を撫でられた。フランが即座に髪を整えてくれる。

「まぁ、訓練の一貫で怪我をしたわけだし?訓練場から出ているし?その後は俺達は関与出来ないし?キャシーが何をしているかは、俺達は把握しきれないし?」

「ありがとうございます、お義兄様」

 暗に「好きなようにすれば?治癒魔法を使おうがそれはキャシーの自由だ」と、そう言われた事が分かった。聞いていたフランには「結構露骨でしたよ?」と言われてしまったけど。

 これって私は治癒魔法を使っても良いけど、2度と同じ事を繰り返させないようにって、2人を説得する役目も委ねられたよね?

 2人の運び決まれた部屋を確認して、いったん部屋に戻り、メイクを直してもらって2人が寝ている部屋に行く。

「おや、お嬢様」

「お2人の怪我はいかがですか?」

「そうですな。お嬢様が診ればすぐにお分かりになると思いますが、両人とも殴打による打撲傷多数、黒髪の、えぇっとシェーンさんでしたか。彼は左の肋骨にヒビが入っておりますな。その他は骨に異状は無いかと。もうひとりの赤茶髪のダニエルさんは左鎖骨の骨折。動かした所為せいでしょうが位置がずれておりました。こちらも同じく他の骨に異状は無いかと思われます。治癒魔法を使われるのですか?」

「はい。それとお説教を少々」

「お説教ですか。お嬢様のお説教はあの2人にはよく効くでしょうな」

 声を潜めてフッフッフっと笑うお医者様は、気の良いお爺ちゃんにしか思えない。

 部屋に入ると2人は並んで横たわっていた。

「怪我の程度は同等ですが、より急いで治癒を施したいのはダニエルさんの方でしょうな」

「分かりました」

 お医者様の言葉に頷いて、ダニエル様の手を握る。

「お、嬢ちゃん……」

「黙ってください」

 何かを言いかけたダニエル様を黙らせて、治癒魔法を使う。幸いにも損傷部はすべて綺麗に洗浄されていた。お医者様付きのメイドさんがやってくれたらしい。

 擦過傷スリキズ、打撲傷、石によると思われる切傷キリキズなど、数えてはいないけど全身の傷を治していく。

「ダニエル様は終わりです。もう少しそこに居てくださいね?」

 にっこり笑って言うと、黙って起き上がって服装を整え始めた。

「シェーン様、お待たせいたしました」

「キャスリーン様、申し訳ご……」

「それは後でお聞きします」

 こちらも言葉は封じておいて、治癒魔法を使う。ダニエル様と同じように全身に擦過傷スリキズ、打撲傷、石によると思われる切傷キリキズなどがみられた。

 すべての治癒が終わると、お医者様がみんなを連れて出ていった。室内に私とフラン、ダニエル様とシェーン様が残される。

「お2人共、わたくしが何を言いたいかお分かりですか?」

 何故か正座をしている2人を見て言う。

わたくし、言いましたわよね?お怪我にだけはお気をつけくださいませと。あの本気の殴り合いはなんですか?お義兄様に伺いましたが、あのような状況になるのは初めてではないそうですわね?」

「お嬢ちゃん、落ち着いて?」

「落ち着いております。訓練であると言うなら、わたくしはこのような事は申しません。ですが先程は訓練の範疇を越えておりましたわよね?お2人がわたくしを守ってくださるのはとても嬉しいですが、その為にお怪我を負われると、わたくしは悲しく、辛くなります」

 ここで空涙そらなみだを一粒。

「ただでさえお2人を危険にさらしているのではと、心苦しいのです。お願いいたします。このような事は2度となさらないでくださいませ」

 ポロポロと泣きながら訴える。当然ウソ泣きだけど、騙されてくれるかな?

「お嬢ちゃん、悪かった」

「もう2度といたしません」

 2人の言葉をマルっと信じられはしないけど、謝ってくれたしお説教はここまでにしておく。フランもハンカチを差し出してくれながら、十分でしょうと言っているし。



しおりを挟む
感想 97

あなたにおすすめの小説

遊び人の令嬢が目を付けたのは、私の真面目な婚約者でした

おいどん
恋愛
子爵家の令嬢エリーネと伯爵家の次男のノルトが婚約を結んだのは、半年前だった。 真面目で優秀なノルトに相応しい婚約者であろうとするものの、エリーネには自信がなかった。 ある日、遊び人と噂の令嬢べルティーナとノルトが共にいるところを見てしまう。 「真面目クンは壁さえ破っちゃえばこっちのもんだからね〜」 「きっと、彼女の美しさに嫉妬しているのだわ…」 「…今度は、ちゃんと言葉にするから」

【完結】期間限定聖女ですから、婚約なんて致しません

との
恋愛
第17回恋愛大賞、12位ありがとうございました。そして、奨励賞まで⋯⋯応援してくださった方々皆様に心からの感謝を🤗 「貴様とは婚約破棄だ!」⋯⋯な〜んて、聞き飽きたぁぁ! あちこちでよく見かける『使い古された感のある婚約破棄』騒動が、目の前ではじまったけど、勘違いも甚だしい王子に笑いが止まらない。 断罪劇? いや、珍喜劇だね。 魔力持ちが産まれなくて危機感を募らせた王国から、多くの魔法士が産まれ続ける聖王国にお願いレターが届いて⋯⋯。 留学生として王国にやって来た『婚約者候補』チームのリーダーをしているのは、私ロクサーナ・バーラム。 私はただの引率者で、本当の任務は別だからね。婚約者でも候補でもないのに、珍喜劇の中心人物になってるのは何で? 治癒魔法の使える女性を婚約者にしたい? 隣にいるレベッカはささくれを治せればラッキーな治癒魔法しか使えないけど良いのかな? 聖女に聖女見習い、魔法士に魔法士見習い。私達は国内だけでなく、魔法で外貨も稼いでいる⋯⋯国でも稼ぎ頭の集団です。 我が国で言う聖女って職種だからね、清廉潔白、献身⋯⋯いやいや、ないわ〜。だって魔物の討伐とか行くし? 殺るし? 面倒事はお断りして、さっさと帰るぞぉぉ。 訳あって、『期間限定銭ゲバ聖女⋯⋯ちょくちょく戦闘狂』やってます。いつもそばにいる子達をモフモフ出来るまで頑張りま〜す。 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結まで予約投稿済み R15は念の為・・

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

【完結】妹に存在を奪われた令嬢は知らない 〜彼女が刺繍に託した「たすけて」に、彼が気付いてくれていたことを〜

桜野なつみ
恋愛
存在を消された伯爵家の長女・ビオラ。声を失った彼女が、唯一想いを託せたのは針と糸だった。 白いビオラの刺繍に縫い込まれた「たすけて」の影文字。 それを見つけたのは、彼女の母の刺繍に人生を変えられた青年だった──。 言葉を失った少女と、針の声を聴く男が紡ぐ、静かな愛の物語。

『婚約なんて予定にないんですが!? 転生モブの私に公爵様が迫ってくる』

ヤオサカ
恋愛
この物語は完結しました。 現代で過労死した原田あかりは、愛読していた恋愛小説の世界に転生し、主人公の美しい姉を引き立てる“妹モブ”ティナ・ミルフォードとして生まれ変わる。今度こそ静かに暮らそうと決めた彼女だったが、絵の才能が公爵家嫡男ジークハルトの目に留まり、婚約を申し込まれてしまう。のんびり人生を望むティナと、穏やかに心を寄せるジーク――絵と愛が織りなす、やがて幸せな結婚へとつながる転生ラブストーリー。

編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?

灯息めてら
恋愛
編み物しか芸がないと言われた地味令嬢ニニィアネは、家族から冷遇された挙句、幼女化されて魔族の公爵に売り飛ばされてしまう。 しかし、彼女の編み物が複雑な魔法陣だと発見した公爵によって、ニニィアネの生活は一変する。しかもなんだか……溺愛されてる!?

【完結・7話】召喚命令があったので、ちょっと出て失踪しました。妹に命令される人生は終わり。

BBやっこ
恋愛
タブロッセ伯爵家でユイスティーナは、奥様とお嬢様の言いなり。その通り。姉でありながら母は使用人の仕事をしていたために、「言うことを聞くように」と幼い私に約束させました。 しかしそれは、伯爵家が傾く前のこと。格式も高く矜持もあった家が、機能しなくなっていく様をみていた古参組の使用人は嘆いています。そんな使用人達に教育された私は、別の屋敷で過ごし働いていましたが15歳になりました。そろそろ伯爵家を出ますね。 その矢先に、残念な妹が伯爵様の指示で訪れました。どうしたのでしょうねえ。

処理中です...