3歳で捨てられた件

玲羅

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学院中等部 9学年生

生徒会執行部役員

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「フェルナー嬢」

 イザベラ様が行ってしまうと、間髪入れず声をかけられた。

「やっと捕まえましたよ」

 その言葉に、後ろにいたダニエルさんが吹き出すように笑ったのが聞こえた。

「ダニエルさん、失礼ですわよ?」

「いや、悪い。離れていた方が良いか?」

「お話の内容にもよりますが」

 執行役員が慌てて手を振る。

「とんでもない。今はお約束のみで。今日の授業終了後、お迎えに上がります」

「迎えに来ていただけますの?ダニエルさんも一緒でもよろしくて?」

「もちろんです」

 執行役員は帰っていった。

「やっと捕まえましたよ、だってさ」

「逃げてはおりませんでしてよ?」

「そう言ってやりゃ良かったのに」

「あの方おひとりに言うより、皆様の前の方が楽しいと思われませんこと?」

 要するに私はうんざりしていたのだ。だってね、先に手紙を託しておくとか、担任に根回ししておくとか、そういった手段があるにも関わらず、そういった連絡方法も使わず、私が逃げ回っているかのように愚痴っているらしい生徒会執行部の面々に。

 昼休みにこちらを訪ねるにしても、カフェでランチを早々に食べ終わって戻ってきたクラスメートに、「フェルナー嬢は?」と聞いた後に「また逃げられたか」「こちらも暇ではないのに」って言うだけで言伝ても何も無し。対応してくれたクラスメートが私に知らせてくれたから、みんなに協力してもらって、少しだけ翻弄してみた。

「しっかし、マリア達の話だと、お嬢ちゃんが出向くべきだって言ってたんだろ?アイツら」

「そうらしいですわね」

「お嬢ちゃんの家格を分かって言ってるのかね?」

「お分かりになっておられないのではございませんこと?」

 学院内で家格を持ち出すつもりはないけれど。

「それよりもお似合いになりますわね、ダニエルさん」

「成人してから学院の制服を着るとは、思わなかった」

「男性生徒はほとんどが制服ですから、運が良かったですわ」

「あぁ。どうやら生徒だと思ってくれたようだな。お嬢ちゃんが名前まで出したってのに。女性生徒も制服を着りゃ良いのに。女性生徒はほとんどが私服だもんな」

「ミディ丈といえど、あのスカートは穿けませんわ。短すぎて」

「可愛いとは思うけどな。制服は初等部だけとか決めときゃ良いんだ」

「うふふ。さぁ、ランチにまいりましょう。イザベラ様が待っておられますわ」

 本当にね。私の行動パターンなんてほぼ決まっているのに、どうしてことごとく外したのかが分からない。ちなみに生徒会執行部の準備委員には、同学年生も居る。その子からも公然たる密告をされていた。「生徒会執行部の面々がこんな事言ってた」って。大きな声だったからみんな事情は知ったと思う。

 私の作戦を伝えたら、面白がってた。なんだかあの方々に不満があったみたい。

 ランチにカフェに行って、待っていてくれたイザベラ様にやり取りを話すと、非常に面白がっていた。

「遠慮は要りませんわ。キャスリーン様、やっておしまいなさい」

「イザベラ様、悪役のようですわよ?」

「高笑いも必要かしら?」

「ここではやめておいた方が良いかと」

「しませんわよ。わたくしをなんだとお思い?」

「優しくて友人想いの素敵なイザベラ様ですわ」

「分かっていればよろしいのよ」

 2人で吹き出す。

「楽しそうだね」

「あら、ノーマン様」

「カーティス様は今からですか?」

「うん。あれからどうなったのかと思ってね」

「先程お声をかけられましたわ。やっと捕まえたと仰っておられました」

「彼らは普段から女性を下に見る傾向があるからね。気を付けて」

「ご忠告、胸に刻みますわ」

 ランチを終えて午後の授業に戻る。

「キャスリーン様、大丈夫ですの?」

「リリス様?」

「厄介な状況になっておられませんか?」

「あぁ。大丈夫ですわ。むしろわたくしの思惑通りです」

「生徒会執行部を敵に回しますの?」

「違いましてよ。あくまでもターゲットはわたくし達を下に見て、従わせようとする彼らです。会長様や会計様は理性的な方々ですもの」

「心配ですわ」

「ご心配なさらないで。必ずご報告いたしますから」

 授業後に約束通り、生徒会執行部の書記官、ブルーノ・ウィレットが迎えに来た。

「手間をかけさせてくれましたね、フェルナー嬢」

「あら、手紙や担任への根回しもわたくしは普段通りに過ごしておりましたわよ?わたくしの行動パターンなんてほぼ変わっておりませんのに、どうしてわたくしを捕捉出来ませんでしたの?まるでわたくしがあなた方から逃げ回っているかのように、仰っておられましたけれど」

「ぐっ……」

「お手紙や伝言を残していただければ、少しは状況も違っておりましたのにねぇ」

「会長様が待っておられる。付いてきなさい」

「ダニエルさん、行きましょう」

「待て、その男も?」

「護衛ですもの。当然でしょう?それにお昼に来られた方に、了解は得ましたわよ?」

「分かった。同行を許可しよう」

 苦虫を噛み潰したような顔で、ブルーノ・ウィレットが先頭に立つ。

、ね。まだ状況が分かっていないようだな」

「ダニエルさん、お静かに。大海を知らない世間知らずな方ですもの。仕方がございません」

GREEN未熟者って訳だ」

 ブルーノ・ウィレットは生徒会執行部を通りすぎた。

「ウィレット様、通りすぎましたわよ?」

「会長様はこの先で待っておられる」

「そういう事でしたらわたくしはこれ以上進みませんわ。それから婚約者をお呼びいたします」

「婚約者……」

「まぁ、ご存じありませんの?わたくしの婚約者はサミュエル・ブランジット先生ですわ」

「駄目だ。許可出来ない」

「あら、なぜですの?明確な理由をお答えくださいませ」

「理由……」

「答えられませんの?」

「とにかく、こちらに来い」

「拒否いたします」

「なんだとっ」

 ブルーノ・ウィレットの手が伸びる。その手をダニエルさんが掴んだ。

「校内で婦女暴行でも行うつもりだったか?それとも脅迫か?」

「女は男に黙って従ってりゃ良いんだよ」

「そんな訳がないでしょう」

 生徒会執行部の会長、ハワード・コールマンが生徒会執行部から顔を出した。

「フェルナー嬢、わざわざご足労いただき、申し訳ない」

「いいえ。会長様も伝令も出来ない方々には、ご苦労されますわね」

「いやぁ、ハハハ……」

「会長様、ご用件をお聞かせいただけますか?」

「おや、失礼。では中にどうぞ」

 執行部に入ると、会計のオーロラ・アービー様が申し訳なさそうな顔をしていた。会長様の目配せを受けて、副会長のひとり、トレイシー・シアラー様がブルーノ・ウィレットを外に出した。かなり強引なように見えたけど、大丈夫?

「さて、フェルナー嬢、どうぞお掛けになってください」

「ありがとうございます」

 オーロラ・アービー様が香り高い紅茶を入れてくださった。

「お気は済まれましたか?」

「まぁ、うふふ。わたくしのした事は、ホンの小さな意趣返しですわ。怒ってはおりませんでしてよ?」

「申し訳ない」

「あれらを会長様が指示されたのでしたら、もっと効果的な意趣返しをしております。お気になさらないでくださいませ」

「フェルナー嬢は……」

「見た目に反して、ですか?」

「いや、失礼」

「外見通りの中身でしたら、こんな事態にはなっておりませんわ。うんざりしたのは事実ですけれど、楽しんでもおりましたのよ?」

「だからこそ生徒会執行部に欲しかったのですが」

「執行部の書記官や会計でしたら、お引き受けいたしますわよ?時間は限られますが」

「時間ですか?」



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