3歳で捨てられた件

玲羅

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学院中等部 9学年生

芸術祭 ~コンテスト開幕~

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 『我こそは光の聖女様』コンテストには、生徒会執行部の想定を越える申し込みがあったようだ。副会長のリューク・バック、書記官のブルーノ・ウィレット、デニス・ミラーの3人がねじ込もうとしたのは6名。『光の聖女様役』と『聖女様の護衛役』が2名の、2組って訳だ。6名には「2組での決戦だから、簡単に決まる」と言っていたらしい。味方に引き込んだマリアン・セルディンが、密告してくれたんだって。スパイってところかしら。

「ここまで盛況になるとは」

 ファッションショーのモデルとして舞台袖で待機している私に、ハワード・コールマン会長様が近寄ってきて、囁いた。

「ますます執行部入りを説得したくなったよ」

「ご冗談を。わたくしは現状に一石を投じただけですわ。盛況になったのは、会長様達、役員様のお力でしょう?」

「しかし……」

 舞台上で愛想を振り撒いている、聖女様役と護衛役2人の3人を見る。

「聖女様役と護衛役は、3人一組なのですか?」

「あれでもシャッフルしてあるんですよ。ですから例の6名はバラバラになっています」

 どうやら言いたい事が分かったらしい

「あら?セルディン様も聖女様役での出場ですの?」

 マリアン・セルディンが白いワンピース姿で、得意満面に歩いているのが見えた。

「それが条件だったのですよ」

 ハワード・コールマン会長様が、疲れたように言う。本当にちゃっかりしてるのね。

「良いのではございませんか?ご自分に自信がございますのでしょうし。決めるのは生徒の投票ですわ」

 組織票とかあれば別だけど。要領の良いタイプだから分からないわね。

「プレゼンター、やっていただけませんか?」

「無理ですわね。ファッションショーに出る以上、審査員でも無理ですもの」

 もう少し早くに手回しが出来ていれば、違っていたのでしょうけど。どうも後手後手に回っていると言うか、準備が拙いと言わざるを得ない。

「ですよね。いや待てよ?発表を明日にすれば……」

「急な変更は、現場の混乱を招きますわよ?」

「やはり駄目ですか」

「もう少し準備が早ければ、一考の余地もあったのですけれど。と、言うよりは、わたくしにだけでもお声がけいただくなど、そういった……。彼らが妨害しそうですけれど、もしかして?」

「仰る通りです」

 あの3人の思惑が分からない。いったい何がしたかったんだろう?

 『我こそは光の聖女様』コンテストの出場者が、ランウェイを終えて戻ってきた。この後舞台上のセッティングを変えて、ファッションショーに移行する予定だ。

「会長様、見ていてくれました?似合ってましたか?」

 マリアン・セルディンがなんだかクネクネしながら、ハワード・コールマンに話しかける。

「見ていたよ。見ていたから早く着替えてきなさい」

「あぁん、つれない。あら?」

 マリアン・セルディンが私を見た。

「お初にお目に……」

「うそっ、光の……むぐっ」

 ハワード・コールマンが、大声を出しそうになったマリアン・セルディンの口を押さえた。気持ちは分かりますけど、実際に助かりましたけど、離してあげてください。手が大きいから鼻まで覆ってしまっていて、マリアン・セルディンが苦しそうです。それから舞台袖で騒がないでください。

「会長様、お手をお離しになってくださいませ。セルディン様が苦しそうですわ」

「申し訳ない」

 そう思うなら、早く離してやってください。

「会長様、セルディン様がお苦しそうですわ」

 重ねて言う。マリアン・セルディンはハワード・コールマンの腕を必死にタップしている。

 幸い、私の出番は最後の方なので、舞台袖の待機スペースにいったん降りた。ハワード・コールマンとマリアン・セルディンも一緒だ。というか、マリアン・セルディンはハワード・コールマンにがっしり確保されている。

「ここなら舞台上に影響はなさそうですわね」

「重ね重ね申し訳ない」

「本当に光の聖女様っ。あの、握手してください」

 女性寮で一緒とはいえ、マリアン・セルディンとは関わりが無かったのよね。学年も違うし。

「セルディン様、わたくしの方が年下ですのよ?そのような態度はせずとも」

「いいえ、光の聖女様は特別なんです。この程度じゃ全然です」

「えっと?」

「ブレンダ・ハートラーを覚えていますか?」

「えぇ、もちろん」

「今はノボリッチ伯爵領に居るんですけど、セルディン領はノボリッチ伯爵領の隣なんです。一昨年、知り合って話をしたんですけれど、もぅ、光の聖女様を崇めていて、学院で一緒なんて羨ましいって。その話を聞いているうちに、私も」

「フェルナー嬢が執行部に来られたと知ってから、大変だったんだよ。会わせろってうるさくてね」

「もしかしてその交換条件ですか?」

「実はそうなんだよ」

 あらまぁ。

「ブレンダ様はまだハートラー姓なのですか?」

「ケネス様を慕っておられますから。ただこのままだと結婚は無理ですよね?」

「異母兄妹ですものね」

 ハートラー家は男爵家だ。家格はどうにでもなるけれど、異母兄妹だと婚姻の許可が出ない。

「フェルナー嬢、時間です」

「行ってまいりますわ」

 お針子部のお世話係からパラソルを受け取って、舞台に出る。ランウェイを歩いていったん舞台袖に捌けた。

 今回のドレスはエンパイアドレスだけど、生地が薄い。だからドレスのなかに下着とシミーズを重ねて、スペンサーと呼ばれる丈の短いジャケットを着用している。私の着用しているスペンサーは、バストラインまでのフィットした丈の短いジャケットだ。

「光の聖女様、素敵です、お綺麗ですぅ」

 うっとりとしたセルディン様に言われてしまった。

「セルディン様、ブレンダ様は学院にはお通いになられませんでしたの?」

「ブレンダ様がご遠慮なされたと、ご本人様より聞いています。と」

「ノボリッチ伯爵様とお母上のチェルシー様は、ご結婚なされたのでは?」

「えぇ。結婚されて、今はノボリッチ伯爵夫人として、仲睦まじいご様子ですよ」

 じゃあ、ブレンダ様はどうして学院に通わなかったの?しかも平民だからって、どうして?

 他家の事情には、やたらと口を挟めない、挟めないけれど気にはなっちゃうよね?

 ファッションショーのモデルとして、最後に並んでカーツィーを行って舞台袖に戻ると、着替えられたセルディン様が待っていた。

「皆様、お手すきになった方から、『我こそは光の聖女様』コンテストの投票をお願い致します。開票と結果発表は明日の閉会式の前に行います」

 あらら。無理を通しちゃったのかしら。

「フェルナー様、つきましてはお願いが」

「プレゼンターですか?」

「後は講評を読み上げていただきたいと」

「読み上げるだけで良いですのね?」

「詳しくは会長様にお聞きください」

 会長様にねぇ。会長のハワード・コールマンって、思い付いたら即実行みたいな感じで苦手なんだけど。周りの迷惑を考えないって言うか、独善的というか。独善的は言い過ぎかしら?

 芸術祭の1日目が終わり、明日の準備が進められている会場の片隅で、ハワード・コールマン様、トレイシー・シアラー様、オーロラ・アービー様、マリアン・セルディン様と話し合いをしていた。

「まずは乗りきりました。後は結果発表なのですが」

 ハワード・コールマン様が言う。

「投票用紙はどこに?」

「ここだ。俺が肌身離さず持っている」

 トレイシー・シアラー様は体術倶楽部に所属していたから、守るなら適役だろう。

「開票は舞台上で行う。学院長先生にも、了解いただいた」






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