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婚約破棄編
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「誰も信じられない!」
執務室から出て侯爵家の中を怒りを露わにして自室に向かい、エリスの後ろを若い侍女のミミが足早に追っていた。
周りの使用人達が立ち止まり、二人を不思議そうな顔で見つめる。侯爵家の廊下を夕陽が大きな窓から差し込んで邸全体を茜色に染めていた。廊下も置物も。部屋も。
中央の大階段を過ぎ部屋を幾つも通り、装飾が施してあるドアの前に辿り着く。ここがエリスの部屋だ。ドアを開き自室の中へ二人は入る。薄暗い部屋は花の香りが漂っていた。服や宝石類をほとんどリディアに取られて最低限寝るだけのベッドとテーブルセットで簡素な部屋は寂しいからと侍女のミミが毎朝庭園から花を摘んで飾ってくれる。ミミは子爵家の長女でエリス付きになった優しい人だ。溜まった話や鬱憤を聞いてくれる。花を飾ってくれるのでささくれた心も幾分か安らいでいた。
でも今度は鬱憤は晴れそうに無い。エリスは何かを決心したのか、ミミに話しかける。
「ミミ、私此処を出て行こうと思うの」
「どうしてですか? 何かあったのですか?」
エリスは昼間庭園であった事と執務室であった事をミミに話した。ミミはリディアとユリウスの仕打ちに怒りを表す。
「あり得ません! どういうことですか? これは裏切りですよ! エリス様とユリウス様は小さな頃から一緒だったと聞いています。 こんな…エリス様があまりにも可哀想です!」
「私アンダーソン様と婚約したく無いの」
「絶対反対です! そんなのこちらからお断りですよ!」
婚約の事情を知っているミミは憤慨する。そしてリディアの他人が持っている物を盗っていく癖も知っていた。その上で怒っているのだ。親身になってくれるミミがエリスは人として好ましいと思う。
「怒ってくれてありがとう。ミミだけよ。怒ってくれるのは」
「当たり前じゃないですか! そんな事されたら誰だって怒りますよ! じゃあこれからどうしますか? 私は何があってもエリス様に着いて行きます!」
「本当にいいの? もう此処には戻って来れないかもしれない。ミミの人生だって…」
「良いのです。私はエリス様と一緒に居たいのです!」
「ミミ…」
気合いを入れてガッツポーズを取る。熱い。テンションも高い。ミミってこんなに熱い人だったの? こんな事が無ければミミの熱血さは知らなかったかも…。垣間見えた侍女の姿に慄くエリスだった。
◇
ひとしきり憤慨した後、ある程度落ち着いた二人はこれからの事を考える。勢いで此処を出て行くと言ったものの、侯爵家の一員しかも令嬢が外の世界に出て生きて行ける訳が無く、もし頼るとしたら縁者の所を考えた。婚約破棄をされた自分を取り合ってくれるだろうか? 無理だとしても諦め無い。不安だけど外の世界の色々な物を見てみたかったし、此処に残れば家族の思うがままにされる。それは嫌だった。
手っ取り早く邸を出る為の荷物を纏める。夜も更け屋敷が静まり返った頃エリスとミミはそっと部屋を出る。と言えど殆んどリディアに取られていたので使えそうな服を数着と子供の頃にユリウスから貰った唯一のペンダントを持って住み慣れた部屋を後にする。出入り口は人目につくのでミミに先導してもらい、邸の隠し通路から外へ出る事にした。
何故一介の侍女が知っていたのか考える。大方乳母辺りにでも聞いたのだろう。ミミは好奇心が有るから。
執務室から出て侯爵家の中を怒りを露わにして自室に向かい、エリスの後ろを若い侍女のミミが足早に追っていた。
周りの使用人達が立ち止まり、二人を不思議そうな顔で見つめる。侯爵家の廊下を夕陽が大きな窓から差し込んで邸全体を茜色に染めていた。廊下も置物も。部屋も。
中央の大階段を過ぎ部屋を幾つも通り、装飾が施してあるドアの前に辿り着く。ここがエリスの部屋だ。ドアを開き自室の中へ二人は入る。薄暗い部屋は花の香りが漂っていた。服や宝石類をほとんどリディアに取られて最低限寝るだけのベッドとテーブルセットで簡素な部屋は寂しいからと侍女のミミが毎朝庭園から花を摘んで飾ってくれる。ミミは子爵家の長女でエリス付きになった優しい人だ。溜まった話や鬱憤を聞いてくれる。花を飾ってくれるのでささくれた心も幾分か安らいでいた。
でも今度は鬱憤は晴れそうに無い。エリスは何かを決心したのか、ミミに話しかける。
「ミミ、私此処を出て行こうと思うの」
「どうしてですか? 何かあったのですか?」
エリスは昼間庭園であった事と執務室であった事をミミに話した。ミミはリディアとユリウスの仕打ちに怒りを表す。
「あり得ません! どういうことですか? これは裏切りですよ! エリス様とユリウス様は小さな頃から一緒だったと聞いています。 こんな…エリス様があまりにも可哀想です!」
「私アンダーソン様と婚約したく無いの」
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「怒ってくれてありがとう。ミミだけよ。怒ってくれるのは」
「当たり前じゃないですか! そんな事されたら誰だって怒りますよ! じゃあこれからどうしますか? 私は何があってもエリス様に着いて行きます!」
「本当にいいの? もう此処には戻って来れないかもしれない。ミミの人生だって…」
「良いのです。私はエリス様と一緒に居たいのです!」
「ミミ…」
気合いを入れてガッツポーズを取る。熱い。テンションも高い。ミミってこんなに熱い人だったの? こんな事が無ければミミの熱血さは知らなかったかも…。垣間見えた侍女の姿に慄くエリスだった。
◇
ひとしきり憤慨した後、ある程度落ち着いた二人はこれからの事を考える。勢いで此処を出て行くと言ったものの、侯爵家の一員しかも令嬢が外の世界に出て生きて行ける訳が無く、もし頼るとしたら縁者の所を考えた。婚約破棄をされた自分を取り合ってくれるだろうか? 無理だとしても諦め無い。不安だけど外の世界の色々な物を見てみたかったし、此処に残れば家族の思うがままにされる。それは嫌だった。
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