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婚約破棄編
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侯爵家を足音を立てずそっと歩く。
深夜だからか人目は無く、使用人の部屋まで辿り着き、二人は入る。部屋の中に普段は隠されているであろう外へ通じるドアがあった。
「部屋の中から外へ通じているのね…」
エリスは感嘆する。侯爵家の人間に見つからず自分の意志で自由に出入り出来るなんて。見つかればタダでは済まない。それでもこうやって何かあった為の逃げ口を確保しているなんて。凄いわ。エリスは目を見開く。
「貴女達此処を隠していたの…。 今までよく見つからずにいたわね? それにどうやってこの出入り口を作ったの? 凄いわ」
「何かあった時の保険なんです。 その時の為に秘密にしているらしいです。 此処は昔働いていた使用人が作ったそうですが、普通は作れないですよね? ご主人様が邸を管理していますから。 だから不思議なんです。使用人の間の不思議話なんです」
にっこりと笑顔で言う。その時の為って…。何があると言うのだろう…。使用人達は侯爵家に仕えているのにその主人を信じられないのだろうか? 今聞いた昔の使用人の話も謎だ。主人にバレずに邸を改造するなんて絶対無理。侯爵家の人間に親しい人でも居たの? 今はもう知る事は出来ないし、いつまでも此処に留まるのも良くない。ミミをせき立て外に出る事にした。
二人はそっと外へ出て辺りを見回す。深夜で外は静まり返っていた。誰も居ない事に安堵しつつ、足早に侯爵家を後にした。
これからどうするか? なるべく早く遠くに行かなければならない。しかし今は深夜。移動する為の馬車は走って無く、自分達の足では遠くに行けない。衝動的に出て来て計画性が無かった事に今更気付く。逃げて来たのに初手でつまずいてしまった。行き当たりばったりなのも考え物だなぁと思った時。
自分達の側にある茂みからガサっと音が聞こえそこを見ると、いきなり兄が飛び出して来た。
あり得ない光景に一瞬反応が遅れ、目を見開く。が此処に居るはず無い人が居るので、エリスは驚き逃げようと走り出した。
「おい、何処へ行く」
「お、お兄様通して下さい」
兄がエリスの前に立ち塞ぐ。
捕まったら終わりだ。
逃走がバレたなら仕方がない。
何故此処にいるのか、分からないけど早く逃げなければ。
「邪魔しないでそこをどいて下さい」
「出て行こうとするのをあえて見逃す者は居ないだろう」
向かい合い睨み合う。鋭い視線に怯みそうになるが、負けられない。また都合の良い様に使われるのは嫌だ。あの日々が戻って来ると考えただけで身震いする。どれだけ睨み合いが続くのか。二人の辺りは緊迫し重い空気が流れ出す。
「そこまででーす」
場にそぐわない間延びした声が響いた。
エリスとエリオットが後ろを振り向く。
そこにはミミが笑顔を作り、二人を面白そうに眺めていた。
深夜だからか人目は無く、使用人の部屋まで辿り着き、二人は入る。部屋の中に普段は隠されているであろう外へ通じるドアがあった。
「部屋の中から外へ通じているのね…」
エリスは感嘆する。侯爵家の人間に見つからず自分の意志で自由に出入り出来るなんて。見つかればタダでは済まない。それでもこうやって何かあった為の逃げ口を確保しているなんて。凄いわ。エリスは目を見開く。
「貴女達此処を隠していたの…。 今までよく見つからずにいたわね? それにどうやってこの出入り口を作ったの? 凄いわ」
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にっこりと笑顔で言う。その時の為って…。何があると言うのだろう…。使用人達は侯爵家に仕えているのにその主人を信じられないのだろうか? 今聞いた昔の使用人の話も謎だ。主人にバレずに邸を改造するなんて絶対無理。侯爵家の人間に親しい人でも居たの? 今はもう知る事は出来ないし、いつまでも此処に留まるのも良くない。ミミをせき立て外に出る事にした。
二人はそっと外へ出て辺りを見回す。深夜で外は静まり返っていた。誰も居ない事に安堵しつつ、足早に侯爵家を後にした。
これからどうするか? なるべく早く遠くに行かなければならない。しかし今は深夜。移動する為の馬車は走って無く、自分達の足では遠くに行けない。衝動的に出て来て計画性が無かった事に今更気付く。逃げて来たのに初手でつまずいてしまった。行き当たりばったりなのも考え物だなぁと思った時。
自分達の側にある茂みからガサっと音が聞こえそこを見ると、いきなり兄が飛び出して来た。
あり得ない光景に一瞬反応が遅れ、目を見開く。が此処に居るはず無い人が居るので、エリスは驚き逃げようと走り出した。
「おい、何処へ行く」
「お、お兄様通して下さい」
兄がエリスの前に立ち塞ぐ。
捕まったら終わりだ。
逃走がバレたなら仕方がない。
何故此処にいるのか、分からないけど早く逃げなければ。
「邪魔しないでそこをどいて下さい」
「出て行こうとするのをあえて見逃す者は居ないだろう」
向かい合い睨み合う。鋭い視線に怯みそうになるが、負けられない。また都合の良い様に使われるのは嫌だ。あの日々が戻って来ると考えただけで身震いする。どれだけ睨み合いが続くのか。二人の辺りは緊迫し重い空気が流れ出す。
「そこまででーす」
場にそぐわない間延びした声が響いた。
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そこにはミミが笑顔を作り、二人を面白そうに眺めていた。
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