キラシャの恋の物語

キラシャ

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第1章 未来社会

④ 未来のスポーツ

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キラシャと幼なじみで仲の良いタケルは、


キラシャより一足先に11歳を迎えた。



彼は、エムフィ・エリアで流行っている


パスボール・ゲームの主力選手でもある。



午後の授業は、スポーツやミュージック、アート、科学実験など、


生徒が希望する講座を選択して受講する。


〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎


タケルは、時間が許される限り、スポーツの時間と、


その後夕食まで行われているクラブ活動の時間、


ほとんどをパスボール・ゲームのために使っていた。



この未来のスポーツ、パスボー・ゲームは、


バスケット・ボールとラケットでボールを受け取り、


味方にパスをするラクロスを合体。



さらに、足元には空中に浮かぶスケボーがミックスしたスポーツだ。



1チームの出場者が6人。監督の指示で何度か選手交代が行われる。



天井の高さと横幅が同じ球形の壁に囲まれた、すべてがコートとして競技を行う。



コートの中央から上下25度線までは、周りを強化ガラスで覆われ、


観客はその外側に設置してある観客席から応援する。


通気穴からは、選手の熱気も伝わってくる。


〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎
  

試合が始まると、球状のコートの天井にポツンポツンとある穴の


どこから飛び出してくるかわからないボールを追い、


先に取った方が、先攻で主導権を握る。



スケボーに乗って空中を舞いながら、球状のコートの中をグルグルと回転し、


金色に光り輝く小さなボールを追いかける。



ボールを奪ったチームの味方同士が、ラケットを使ってパスを繰り返しながら、


ゴールへ。



ゴールは、コートの中央に浮いている、四方八方に穴の開いた、


サッカーボールを大きくしたようなカゴの中に入れば、5点。



カゴの中にボールが入ったとたんに、


  のアナウンス



同時に、ボールを入れたチームの選手がスポットライトを浴び、


シュートした選手の指定したテーマ曲が場内に流れる。


〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎


カゴは常に上下左右に移動しているので、


移動先を考えに入れながら、シュートを決めなくてはならない。

 

観客前の強化ガラスの面にも、開いたり閉じたりしている、


小さな穴があって、これにボールをたたき入れると、2点の追加。



  


というアナウンスは、真ん中のカゴへのゴールより、ややおさえめ。



だが、ボールが入った穴の周りがピカピカと照らされ、


入れた選手にもスポットライトが浴びせられる。


〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎


このゲームは反則にも厳しい。



相手が故意にぶつかって来たら、抗議をすると、


すぐに3Dホログラムのビデオを再生して判定される。



反則した方が、3点の減点。


ラケットで殴ったとなると、6点の減点と退場。


〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎



選手は、コート面の小さな穴か、中央の空中にさまようカゴをめがけて、


ボールをラケットで変化させながら







時には、激しいボールの取り合いで、ラケットで殴り合い、


ケガ人が病院へ運ばれることも・・・。



ヘルメットやサポーターを身につけていても、


ぶつかる衝撃で選手はアザだらけだ。



試合が白熱しすぎて、両チームが入り混じり、


殴り合いのケンカになることだってある。


〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎



前半15分と、5分の休憩をはさんで、後半15分の短い時間で勝負が決まる。



空中での回転ジャンプとパスを繰り返し、ゴールの動きに合わせて自由自在に動きまわり、


絶妙なタイミングでシュートを決める、パスボーのプロチーム。



選手の華麗な動きに対して、観客からのモアによる応援ポイントが加算され、


点数が多い選手ほど、試合に出るチャンスが増えてくる。



応援ポイントをもらった選手は、それを使って


新しいラケットやスケートボードを手に入れて、新しい演技につなげることもできる。


〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎



アニメ・宇宙戦艦ヤマトの主題歌を、自分のテーマ曲に指定しているタケル。



自分もプロのチームに参加して、新たな得意技を編み出して、


観客を思いっきり沸かせるシュートでこの曲を流してみたいなぁと、ずっと夢に見ていた。



パスボー・ゲームは、他のエリアでもだんだん人気が出始めている。


モアで、いろんなエリアの試合が観戦できるし、


ステーション広場でも巨大な3Dホログラムで楽しめる。


〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎



熱烈なファンは、やっぱり熱戦を直接肌で感じるのが最高だ。



パスボーの会場では、アルコール入りのドリンクを片手に、


敵同士がお互いの選手をなじっては、自分のお気に入りのチームを応援する。



ボワンっと空気を切るような勢いで、スケボーをあやつり、目の前を通り過ぎる選手達。



酔いがまわった観客からは、遠慮なしにヤジが飛んで来る。



「もっと、早くボールを取れ、バカやろー」



「おまえのせいで、点取られたじゃないか、このアホが!」



そんなヤジに、選手はチェっとつばを吐き出して、必死でボールを追いかける。



大人の激しいスポーツも観客を魅了するが、子供の小さくて、


すばしっこい動きも、パスボーを愛するファンにとっては、たまらない魅力だ。



〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎〇●◎


医療技師をしているタケルの両親も、激しいスポーツに熱中している我が子を心配しながら、


試合会場へと駆けつけた。



チームの中でもシューター№1として、監督からもっとも信頼されているタケルは、


試合のたびに、応援する女の子を増やした。



チアガールも応援に駆けつけ、悲鳴に近い声でタケルの名を叫び、他の選手の負けん気を誘った。



しかし、タケルは相手チームの隠れた反則行為や、観客のヤジにもまったく動じることなく、


冷静にチームの得点を加えた。



大事な試合に勝った夜は、家族でレストランへ行き、楽しく話しながら団らんの時を過ごす。


タケルにとって、それが幸せなひとときだった。
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