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第1章 未来社会
⑥ 小さな恋
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タケルとキラシャ。
パスボーのヘルメットをはずした時、キラッと目が光るのが印象的なタケルは、
端正な顔立ちで、応援する女の子を魅了する。
◆◇▼△◆◇▼△◆◇▼△◆◇▼△◆◇▼△
キラシャの方は、生まれたころはふっくらして、少女らしい顔立ちだったが、
厳しいトレーニングのせいか、年々、顔つきも男の子らしく成長している。
2人は、初級コースのころからずっと同じクラスで、時には言い合いのケンカもするけど、
勢いあまって絶交しても、気がつくと前よりずっと気持ちが通い合っている。
水中に潜ったり、走ったりすることには男子にも引けを取らないキラシャだが、
ボールを使ったスポーツは苦手なので、パスボーに関しては、タケルにかなわない。
タケルの出場するゲームには、キラシャが手作りの旗を持って大声で応援をすることもあるが、
タケルには、いい迷惑だったりして、それがケンカの原因なのだが・・・。
(⋈◍>◡<◍)。✧♡(⋈◍>◡<◍)。✧♡(⋈◍>◡<◍)。✧♡(⋈◍>◡<◍)。✧♡
それでも時々、お互いに機嫌がいい時は、タケルの家族とキラシャの家族が一緒に食事をしていた。
まだ10歳のキラシャに、恋愛という言葉は早すぎるかもしれないが、
タケルには、他の男の子にはない、赤い糸のようなものを感じていた。
もしも、2人とも一緒に上級に進級したら・・・
・・・ここで、“もしも”という言葉を使うのは、
2人とも勉強が苦手で、ヘタをすると進級テストに落第する可能性もあるからだ。
恋愛学のパートナーは、タケルだけ・・・。
キラシャは口には出さないものの、心の中でずっとその気持ちを温めていた。
♠♤♣♧♠♤♣♧♠♤♣♧♠♤♣♧♠♤♣♧♠♤♣♧♠♤♣♧♠♤♣♧♠♤♣♧♠♤
義務教育だが、未来の教育は今より厳しい。
特に中級コースからは、進級テストで合格点に達していないと、再テストを受けなくてはならない。
それでも、合格した科目が必要な単位数に達していないと、留年だ。
授業だけで理解できない子は、土曜日も補習を受けているが、試験が近づいてくると、
子供達は平日の夜も自主的に勉強に取り組んでいる。
キラシャとタケルも、自分の成績に危険信号を感じてからは、仲間と一緒に広い食堂の一角を陣取って、
肩を寄せ合って勉強を始めた。
しかし、パスボーの練習でほとんどの体力を使い果たしているタケルは、しばらくすると、
キラシャの肩を借りて眠り始める。
はっと気づいたキラシャは、照れ隠しに周りの仲間に「やだね~」と言って、
タケルを起こそうとするが、皆あわててそれを止めた。
仲間はみんな、キラシャの気持ちに気づいているし、タケルが疲れていることも良くわかっている。
2人をかばおうとしてか、タケルのパスボー・チーム仲間のケンが、口をはさんだ。
「タケルはだいじょうぶだよ。こいつは、ヒーローなンだ」
子供達は、お互いの口に人差し指を当てて、静かに勉強を続けた。
♡♥♢♦♡♥♢♦♡♥♢♦♡♥♢♦♡♥♢♦♡♥♢♦♡♥♢♦♡♥♢♦♡♥♢♦
自分の肩で熟睡しているタケルに、誰より頼られていると感じるキラシャだったが、
決してライバルがいないわけではない。
タケルに群がってくる女の子は多いし、そんな彼女らに、タケルの方も顔を赤らめながら話していることもある。
特に、同じクラスのマギィとジョディは、チアガールの中でも目立つぐらい、タケルの応援に力を入れていた。
タケルに関しては、女の子らしいジェラシーを感じるキラシャだったが、
一方でタケルの様子がおかしいことにも気がついていた。
パスボーの練習を休んだ日。一緒に勉強しようと言ったら、用事があるからといって、
プイッとどこかへ行ってしまった。
担任のハリー先生には、何やら相談をしているようで、秘密の話があるらしい。
いつもならキラシャがそばへ行くと、すぐに振り向くタケル。
いきなり後ろから肩をたたくと、びっくりして無茶苦茶に怒り出した。
そのくせ、遠い目をして、悲しそうなため息をついている。
『どうして? 』
『何があったの? 』
目が合えば、お互いすぐに分かり合えたのに……。
☁☁☁☁☁☁☁☁☁☁☁☁☁☁☁☁☁☁☁☁☁☁☁☁☁☁☁☁☁☁☁☁☁☁☁☁
タケルが試合に出なくなったせいで、タケルのそばに群がる女の子も減ったが、
そのかわり家族同士の食事もなくなってしまった。
このままタケルが、どんどん遠くに離れていきそうな予感がして、キラシャの不安は募るばかり。
そんなある日、タケルが休んだ学習ルームで、ハリー先生が突然こんなことを告げた。
「タケルは、家庭の事情で火星へ移住することになりました」
Σ( ̄ロ ̄lll)ガーンΣ( ̄ロ ̄lll)ガーンΣ( ̄ロ ̄lll)ガーンΣ( ̄ロ ̄lll)ガーンΣ( ̄ロ ̄lll)ガーン
学習ルームは、騒然となった。ハリー先生は、皆が静まるのを待って、話を続けた。
「急なことでびっくりしていると思うけれど、旅立つ彼のことを応援してほしいと、先生は願っています。
火星へ出発したら、少し長い旅になるから、メールが送れるよう宇宙船のことは確認を取っておきます。
出発するまで、1週間ありますが、タケルのことはそっとしておいてあげてください……」
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キラシャの顔がスーッと青ざめ、そんなキラシャをケンが心配そうに見つめた……。
パスボーのヘルメットをはずした時、キラッと目が光るのが印象的なタケルは、
端正な顔立ちで、応援する女の子を魅了する。
◆◇▼△◆◇▼△◆◇▼△◆◇▼△◆◇▼△
キラシャの方は、生まれたころはふっくらして、少女らしい顔立ちだったが、
厳しいトレーニングのせいか、年々、顔つきも男の子らしく成長している。
2人は、初級コースのころからずっと同じクラスで、時には言い合いのケンカもするけど、
勢いあまって絶交しても、気がつくと前よりずっと気持ちが通い合っている。
水中に潜ったり、走ったりすることには男子にも引けを取らないキラシャだが、
ボールを使ったスポーツは苦手なので、パスボーに関しては、タケルにかなわない。
タケルの出場するゲームには、キラシャが手作りの旗を持って大声で応援をすることもあるが、
タケルには、いい迷惑だったりして、それがケンカの原因なのだが・・・。
(⋈◍>◡<◍)。✧♡(⋈◍>◡<◍)。✧♡(⋈◍>◡<◍)。✧♡(⋈◍>◡<◍)。✧♡
それでも時々、お互いに機嫌がいい時は、タケルの家族とキラシャの家族が一緒に食事をしていた。
まだ10歳のキラシャに、恋愛という言葉は早すぎるかもしれないが、
タケルには、他の男の子にはない、赤い糸のようなものを感じていた。
もしも、2人とも一緒に上級に進級したら・・・
・・・ここで、“もしも”という言葉を使うのは、
2人とも勉強が苦手で、ヘタをすると進級テストに落第する可能性もあるからだ。
恋愛学のパートナーは、タケルだけ・・・。
キラシャは口には出さないものの、心の中でずっとその気持ちを温めていた。
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義務教育だが、未来の教育は今より厳しい。
特に中級コースからは、進級テストで合格点に達していないと、再テストを受けなくてはならない。
それでも、合格した科目が必要な単位数に達していないと、留年だ。
授業だけで理解できない子は、土曜日も補習を受けているが、試験が近づいてくると、
子供達は平日の夜も自主的に勉強に取り組んでいる。
キラシャとタケルも、自分の成績に危険信号を感じてからは、仲間と一緒に広い食堂の一角を陣取って、
肩を寄せ合って勉強を始めた。
しかし、パスボーの練習でほとんどの体力を使い果たしているタケルは、しばらくすると、
キラシャの肩を借りて眠り始める。
はっと気づいたキラシャは、照れ隠しに周りの仲間に「やだね~」と言って、
タケルを起こそうとするが、皆あわててそれを止めた。
仲間はみんな、キラシャの気持ちに気づいているし、タケルが疲れていることも良くわかっている。
2人をかばおうとしてか、タケルのパスボー・チーム仲間のケンが、口をはさんだ。
「タケルはだいじょうぶだよ。こいつは、ヒーローなンだ」
子供達は、お互いの口に人差し指を当てて、静かに勉強を続けた。
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自分の肩で熟睡しているタケルに、誰より頼られていると感じるキラシャだったが、
決してライバルがいないわけではない。
タケルに群がってくる女の子は多いし、そんな彼女らに、タケルの方も顔を赤らめながら話していることもある。
特に、同じクラスのマギィとジョディは、チアガールの中でも目立つぐらい、タケルの応援に力を入れていた。
タケルに関しては、女の子らしいジェラシーを感じるキラシャだったが、
一方でタケルの様子がおかしいことにも気がついていた。
パスボーの練習を休んだ日。一緒に勉強しようと言ったら、用事があるからといって、
プイッとどこかへ行ってしまった。
担任のハリー先生には、何やら相談をしているようで、秘密の話があるらしい。
いつもならキラシャがそばへ行くと、すぐに振り向くタケル。
いきなり後ろから肩をたたくと、びっくりして無茶苦茶に怒り出した。
そのくせ、遠い目をして、悲しそうなため息をついている。
『どうして? 』
『何があったの? 』
目が合えば、お互いすぐに分かり合えたのに……。
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タケルが試合に出なくなったせいで、タケルのそばに群がる女の子も減ったが、
そのかわり家族同士の食事もなくなってしまった。
このままタケルが、どんどん遠くに離れていきそうな予感がして、キラシャの不安は募るばかり。
そんなある日、タケルが休んだ学習ルームで、ハリー先生が突然こんなことを告げた。
「タケルは、家庭の事情で火星へ移住することになりました」
Σ( ̄ロ ̄lll)ガーンΣ( ̄ロ ̄lll)ガーンΣ( ̄ロ ̄lll)ガーンΣ( ̄ロ ̄lll)ガーンΣ( ̄ロ ̄lll)ガーン
学習ルームは、騒然となった。ハリー先生は、皆が静まるのを待って、話を続けた。
「急なことでびっくりしていると思うけれど、旅立つ彼のことを応援してほしいと、先生は願っています。
火星へ出発したら、少し長い旅になるから、メールが送れるよう宇宙船のことは確認を取っておきます。
出発するまで、1週間ありますが、タケルのことはそっとしておいてあげてください……」
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キラシャの顔がスーッと青ざめ、そんなキラシャをケンが心配そうに見つめた……。
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