輪廻を周り、恨みを払う刃となれ

桜桃-サクランボ-

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妖裁級

実力

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 私は今どこに向かっているのか分からないけど、とりあえず明神さんから離れないように歩いてる。

「っ、ここ?」
「みたいだな、目的地」

 大きな襖の前で明神さんが足を止めた。ここが、今回の目的地?
 廊下にはいくつもの襖があったけど、私と頭三つ分以上も大きな襖は無かったなぁ。三人横に並んでも余裕で中に入れるくらいの大きさだ。

「この中で六人が待ってるはず」
「え、あの一瞬でここまで来たんですか?」

 瞬きをした一瞬で、ここまでみんな来たってこと? 歩いて五分程度で近いっちゃ近いけど、まさか目にも止まらぬ早さでここまで来るなんて、さすが妖裁級の皆様。私は確実に無理です。

「とりあえず、中に入って」

 あ、心の準備すらさせてくれないのですね。遠慮なく襖を開けられた。
 中には言っていた通り、六人が待機してる。

「おせぇよてめぇら。俺を待たせるなんていい度胸じゃねぇの。ニシシ」

 あ、中は妖雲堂の訓練場くらいの広さだ。でも、訓練場ではなさそう。道具とか何もないし。広いだけの部屋。
 壁や床は木製で、広い空間の割には無駄なものは一切ない。ここは一体なんの部屋なのだろうか。

「おい! 俺を無視してんじゃねぇぞ!!」

 小さい体でぴょんぴょんと飛び跳ねながら、幡羅さんが自分に興味を持たせそうとしてきた。
 なんか、小さいだけで可愛いな。言葉使いは別にして。本当にこの人は強いのだろうか。

「おい、そこの女。俺が強いかどうか疑ってるだろ」

 ────ギクッ!!

 幡羅さんが持っていた竹刀の剣先けんせんを私に向けて言ってきた?!
 なんでわかったんだろう、読心術?

 妖裁級の人って読心術も使えるの──ってそんなこと思ってるってバレたら私殺されるじゃん!!

「……まぁ、別にいいけどな。どう思ってようと。ニシシ」
「あれ、いいんですか?」

殺されるかもしれないと思ったから拍子抜け。
 正直、何されてもいいように動けるよう待機していたんだけど。意味ないだろうけど、念の為。

「そんな話は良いからぁ~、さっさと始めなさいよぉ~」

 幡羅さんの後ろに立っていた茉李さんが、不機嫌そうな顔を浮かべてる。
 他の人達も苛立ちを見せていてとてつもなく怖い。

 一人だけ笑顔の人もいるけど──いや、あれは殺意の籠った笑顔だな。関わらないでおこ。

「それでは失礼します。僕は拳銃を使ってもよろしいのですか?」

 私の心中など一切気にせず、彰一は一歩前に出て確認した。
 肝が据わってるというか、心臓に毛が生えているというか。この状況でよく冷静でいられるな。私なら絶対に無理。今も手が震えてるし。

「別に構わねぇよ、どーせ当たらねぇし。ニシシ」
「それは、やってみないと分からないと思います」

 あ、ちょっと怒った。

 今、私が立っている位置は彰一の真後ろ。だから表情を確認することは出来ないけど、冷静そうな口調で拳銃を二丁構え始めたのはわかる。

 うん、普通に怒ってる。

「二丁拳銃か、悪くないな。相手が俺じゃなかったら結構強いんじゃねぇの?」
「誰が相手でも関係ありません」

 そういえば、幡羅さんが腰に差していた刀がない。その代わりに竹刀を持っているな。それに対して彰一は本物の拳銃か。

 流石の妖裁級でも、竹刀で本物の拳銃を相手にするなんて難しいと思うけど。それに、彰一は上級、結構経験も豊富だ。どんな勝負になるんだろうか。

「ルールを簡単に説明するとねぇ、相手を行動不能にした方の勝ち。気絶、拘束、降参。やり方はなんでもいいよ。ただし、殺しはダメだし無駄な怪我を作らせるのもダメだからね、京夜」
「ちっ、分かってんよ」

 簡単に説明してくれたのは海偉さんだ。話し方がおっとりしてるから優しく暖かい感じがする。他の人も海偉さんを見習えばいいのに。

「それじゃ、始めますねぇ~。お互い準備はOK?」
「あぁ」
「いつでも、ニシシ」

 海偉さんの言葉に、彰一と幡羅さんは同時に頷いた。
 二人の様子を見たあと、海偉さんは片手を上げて笑顔で気合いの入った掛け声をかける。

「よーい、ドン!!」


 パンッパンッ!!


 掛け声と共に銃声が鳴り響いた。
 それはもちろん、彰一が二丁拳銃の引き金を引いたのだ。

「ちっ」

 始まりの声と共に引き金を引いたはずだったのに、掠りもしなかったんだ。彰一は苛立ちの表情を浮かべている。

 幡羅さんは彰一の拳銃をジャンプで躱し、そのまま竹刀を構え彰一を立て回転しながら上から叩きつけた。けど、さすがに体が小さいので力がないのか、拳銃で受け止められ、簡単に押し返され壁側まで飛ばされた。

「よしっ!」

 思わずガッツポーズをしちゃったけどいいや。幡羅さんの飛んで行った方を見たんだけど……あれ?

「あ、あれ?」

 幡羅さんがいつの間にか姿を消していた。というか、壁にぶつかった形跡もないし。ぶつかる音もそういえばしていなかった。
 一体どこに行ったんだろう。

 周りを見回していると、後ろからまた発砲音。彰一?

「えっ──」
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