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労いのシチュー

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「そ、それはそうですが、言ってしまえば国賓として迎えられてもおかしくない方じゃないですか」
「そうですね。詳しい事情はダルクさんに聞いてみましょう。どう言う話なのか分かれば安心できますもんね」

 冨岡はアメリアを落ち着かせるように言うと、軽く伸びをした。
 程よい疲労感で今日はよく眠れそうである。
 屋台の営業を終えて、精神的な満足感があった。労働とは素晴らしいものだと、心から思える。雇われのサラリーマンとして働いた時とは大違いだ。
 充実感というのは大切である。
 
「さて、そろそろ片付けて夕食にしましょうか。レボルさんも少しその辺りを走れば帰ってくるでしょうからね」

 冨岡が言い出すと、アメリアが身を乗り出して口を開いた。

「今日は何にするんですか? いつも通り、改修工事をしている職人さんたちの分も用意するんですよね」

 その問いかけに対して冨岡は少し考えてから、大きな鍋を取り出す。

「スープ系がいいでしょうか。大人数の分を作ってもそれほど手間は変わりませんからね。ポトフか、シチューか。今日はハンバーガー用のパンが余ってますから、シチューだとちょうどいいですよね」

 メルルズパンが量産体制に入るため、試験的にいつもより多めにパンを作ってもらっていた。貧民街でハンバーガー配っても、かなりの数余っている。
 元々、職人たちの夕食にするつもりだったので、何かを追加で作るとしたらパンに合うものがいいだろう。
 肌寒い夕方ならシチューはピッタリだ。備蓄の食材としてシチューのルーも牛乳も野菜もある。
 具材をあらかじめ炒めておき、硬めの根菜は電子レンジで加熱しておけば煮込む時間も短縮できるはずだ。それほど作るのに時間はかからない。
 メニューを決定すれば完成までは、それほど時間がかかるものでもないのがシチューのいいところだ。いや、食品会社の企業努力の賜物だろう。
 箱に書いてある作り方の手順を踏んで、完成させると食欲を刺激するミルキーな香りが屋台の中に充満した。
 職人たちに振る舞うため、使い捨ての紙皿と木製のスプーンを用意して、シチューを注いでいく。

「アメリアさん、申し訳ないんですけど職人さんたちに配ってもらってもいいですか?」

 冨岡が依頼すると、アメリアより先にフィーネが立ち上がった。

「フィーネも手伝う!」

 それに続いてリオも声を上げる。

「俺も手伝うよ、トミオカさん」

 冨岡としては、子どもたちが率先して手伝ってくれるのは正直嬉しい。

「じゃあ、手伝ってもらおうかな」
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