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他国の伯爵様

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 魔法という科学では証明できない概念によって成り立っている世界で、科学について理解してもらうのは難しい。
 しかし、魔法と科学が融合した時に何が生まれるのか。未だ誰も見たこのない景色にたどり着くのは、他ならぬリオだろう。
 こうして冨岡とリオも馴染み始め、四人での生活が形作られていた。

「・・・・・・学園が完成するまであと数週間か」

 冨岡が屋台の外を眺めて呟く。
 ここがゴールではない。ここからがスタートだ。
 子どもたちを幸せにすることでこの世界を変えていく。

「爺ちゃん、これでいいんだよな」

 冨岡の祖父、源次郎。彼の遺した言葉と遺産が冨岡をここまで連れてきた。
 そしてこれからも。
 ふとアメリアが思い出したかのように、丸まった羊皮紙を取り出した。

「そういえば、こんなものが届いていたんですよ。封蝋を見る限り、貴族様からのようです」

 丸まった羊皮紙は蝋で閉じられており、そこには複雑な紋章が描かれている。
 鳥が何かの葉を咥えているような紋章だ。
 アメリアの言葉から察するに、貴族の家紋なのだろう。
 
「貴族様からの?」

 冨岡が問いかけると、アメリアは羊皮紙を広げて中身を確認した。

「え!?」

 いきなり大きな声を出すアメリア。
 屋台にいた全員がその声に驚く中、冨岡が代表して尋ねる。

「どうしたんですか、アメリアさん」
「こ、これ、エスエ帝国から届いているみたいなんです」
「エスエ帝国? どこかで聞いたことがあるような」
「西の大国です・・・・・・エスエ帝国の貴族様から、どうして書状が・・・・・・」

 アメリアは目を泳がせて、落ち着かない様子で羊皮紙の内容を確認した。
 人間の目はそれほどまでに泳ぐのか、などと思わせるような泳ぎ方である。
 
「それで、他国の貴族様から届いた書状って、どういう内容なんですか?」
「え、ええ、それがこれから完成する学園について、どうしても視察がしたい・・・・・・と。世界的にも珍しい試みということで、参考にしたいとこちらの伯爵家が。あれ? ダルクさんの名前が書いてありますね」

 アメリアの話を聞いた冨岡は、ダルクの兄弟について思い出した。

「そういえばダルクさんが言ってました。どっかの国の伯爵家に仕えている兄弟がいるって・・・・・・もしかしたらダルクさんから話を聞いて、興味を持ってもらえたのかもしれませんね」

 他国の貴族が視察に来る。これは大きな出来事だ。
 アメリアは慌てた様子で顔を上げる。

「ど、ど、どうしましょう。他国の伯爵様なんて」
「いいじゃないですか。ぜひ見てもらいましょうよ。参考にしてもらえれば、他の国でも俺たちのような人が生まれるかもしれません」
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