ガイアセイバーズ spin-off -Ｔ大理学部生の波乱-

本編

第10話_明かされ過ぎた記事-4

次第に不穏な空気が流れだす中、啓介ケイスケが蒼矢ソウヤへ大股で寄る。

「今からでも遅くねぇ、学内新聞の発行を止めさせるべきだ」
「そうだね。顔と名前が不特定多数に広まるのは、今後の大学生活にも影響が出るかもしれない。新聞の購買箇所は決められてるだろうし、ひとまず回収だけならすぐ出来るよ」

"それでなくても君は目立つからね"という一言は伏せ、諒リョウも説得に加わる。
が、蒼矢は再び首を横に振った。

「新聞記事は俺のことだけじゃない。発行を止めたら、他記事を寄稿した学生にも迷惑が掛かるから、今更回収なんて頼めないよ」

ふたりの提案を拒否する蒼矢に、啓介はますます面差しに怒りを滲ませる。

「迷惑って…今まさに迷惑かけられてるのはお前だぞ？　許可してねぇのに、勝手に個人情報学内にばら撒かれてるんだ。充分理由立ってるだろうが」
「…記事自体の掲載を俺が許可したことには変わりないし、あっちだって最終的な体裁確認は義務じゃない」
「！　そう…だけど、よく知らない奴らに隠し撮りまでされてるじゃねぇか。場合によっちゃ、警察に被害届出せるレベルだぞ…！？」
「事前に学生課からの取材もあったことで、俺自身この件におざなりになってしまってた。こっちから能動的に、もう少し真摯に向き合うべきだった…こうなるって可能性を考慮出来なかった俺の手落ちだよ」

ひとり憤る啓介へ、蒼矢はそう静かに落ち着いた口調で返した。
怪訝な面持ちで彼を見守っていた同級生たちは、その一言を聞いて互いに顔を見合わせた後、表情を緩めた。

「…まぁ、所詮は学内新聞だからね。案外こっちが心配するほどは拡散しないかもしれないし」
「ごく狭い範囲の、内輪だけで済んでくれればいいけど…」
「事態があまり大きくならないことを祈るしかないな」

蒼矢をフォローするように同級生たちはそう言い残し、ちらほらとその場を解散していく。