ガイアセイバーズ spin-off -Ｔ大理学部生の波乱-

本編

第10話_明かされ過ぎた記事-5

テーブル前に残った蒼矢ソウヤへ、諒リョウは再び問いかけた。

「…確かに、自衛の観点では手落ちだったかもしれない。でもこの件でこの先何かあったら、君は被害者になりかねないよ。動いておくなら今の内だと思うけど」
「…」
「…他記事を生かすために、君ひとり泣き寝入りしても構わないの？」

黙ったまま、しかしはっきりと頷き返す仕草を見、諒はそれ以上の説得は控えておくことにする。

ひと騒動に湧き、集まっていた理学部生たちは、各々昼食をセレクトしに食堂内へ散っていく。
彼らに交じってランチカウンターへと歩いていく蒼矢の後ろ姿を、諒と啓介ケイスケは眉を寄せながら見送っていた。

「まずいって、絶対」
「まだ何も起こってないから、なんとも…」
「何も起こってなくても、既に被害被ってるだろ。俺なら即殴り込みに行ってるところだぞ？　対応が甘いよ、あいつ」
「…甘いっていうか…」

いまだ憤慨する啓介を横目に、諒は考える。

…髙城タカシロは、何かで揉めた時に相手より自分に非があると思うようにするタイプなのかもしれない。
…注目されやすい彼だから、今までも似たようなケースがあったと思うけど…いつもこんな感じで甘んじて受け容れて、内に溜め込んできたのかな…

「…なんにしろ、彼が放置決め込むなら、俺たちが出しゃばっても事が厄介になるだけだよ。しばらく見守ろう」
「っくそー。次奴らが攻めてきたら、絶対追い返してやる。髙城は俺が守る！」
「…"攻めてきたら"って。敵じゃないんだからさ…」