ドS変態若社長に調教溺愛されそうなので全力で回避したいけど無理かもしれない

酉埜空音

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:メイド、悔しがる:

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――こんな変態だと知っていたら、断ったのに!

と、辰之進の父である住良木会長と己の父がいる場所で叫ぶわけにもいかず。
「彩葉、いいお話だと父さんは思うんだよ」
 父の満面……いや、全身全霊の笑顔が憎たらしい。
「なにがいいお話しなのよ! 勝手に縁談すすめないでよ!」
「でも彩葉……夕べ話し合ったときに嫌だって言わなかっただろ」
 アレのどこが話し合いなのか。
 辰之進のしれっとした言葉と態度に、むっすーとふくれっ面になった彩葉は、淡いピンクのワンピースをじっと見つめた。
 メイド頭の九条さんがこれを着せてくれて、ヘアメイクもしてくれた。ちんちくりんの彩葉を、大変な美女に変身させてくれたのだ。晴れの場だから、と。

「……こんなのってないよ……」

 結婚。
 誰もが結婚する時代ではないとはいえ、一応、年頃の女の子にとってはロマンチックなものである――はずなのだが。
 結婚相手候補が、コレ。と、彩葉は内心ため息をついた。
 変態だと知らないままだったら、喜んで結婚しただろう。完璧な見た目の若い社長なのだから。
 しかし、蓋を開けてみれば変態ドSであった。彩葉の理想とはかけ離れている。
 それに――。

 立場上、結婚拒否をするわけにはいかない。なにせ、彩葉がここで働いているのは『融資』が絡んでいる。
 きゅ、と唇を噛む彩葉の表情で、辰之進は何かを察したらしかった。
「彩葉、わかっているとは思うが……」
「結婚を断ったら会社から手を引く、って言うんでしょ!」
「え? それは会社と会社が正式に決めたことだから、今更俺の独断で融資や援助を止めることはできないし、するつもりもないよ」
 彩葉はきょとんとして住良木辰之進を見た。
「だってあなた、社長でしょう?」
「社長って言ったって、うちの会社は……何か決めるには役員や株主の了承をとらなきゃいけない。俺は責任をとることだけが仕事だ」
「そう、だったの……」
「きみのところも、同じだと思うよ」
 会長が穏やかに彩華ちゃん、と、呼ぶ。
「いつだったか玄関ホールで辰之進が、株式会社ユウキとの取引は即刻中止だと叫んだそうだね」
「あ、はい」
「あれは聞き捨てならないと九条が知らせてくれて、辰之進にはよくよく話をしておいたから安心してほしい」
 彩葉は、ぽかん、と、思わず会長と辰之進を見比べてしまう。
「パパ……でも、あたし、どう、しよう……」
「彩葉、パパだって彩葉と辰之進くんの結婚が破談になったとしても、お前を責めることはないし、会社としての取引を停止したり疎遠にしたりすることはない。個人は個人、会社は会社なんだよ」
 本当に、そうなのだろうか。
「彩葉、信じられないかもしれないけど……俺は、彩葉が取引先の娘さんだから結婚したいわけじゃないんだ。彩葉に惚れたんだ」
「あたしの、何に惚れたんですかねぇ、あなたは……」
 乳か、アソコの締まりか、それともオモチャで遊べるからか、と喉まで出かかる。
 なにせ――今も、彩葉の体内には、辰之進愛用のローターが埋められている。
 さすがに両家の親が揃っている場でスイッチを入れるような鬼ではなさそうだが、直前まで彩葉をベッドに押し倒してM字開脚で固定し、剃毛して楽しんでいたのである。
「全部だよ、全部」
「……は?」
「決まっているじゃないか、きみの全てが欲しい。愛おしいんだ」
 胡散臭そうなセリフと笑顔に、彩葉は思い切り顔を顰めた。
「はっ! よくもまぁ……」
「辰之進……どうやらまだお前の片思いのようだね?」
「え、と、父さん!」
「結婚までに好かれるように努力をすることだね、辰之進」
「彩葉、お前も突っぱねてばかりではなくて、素直になるんだよ?」
「パパ!」
「そうそう。彩葉は思いのほか意地っ張りだからなぁ……」
「なんですって!?」
 辰之進がにやっと笑ったのを彩葉は見た。
 あ、と思ったときには辰之進の指が動いていた。ローターが一瞬、動いた。
「……このっ……」
 喘ぎ声が反射的に出そうになるのを必死で堪えて、辰之進を睨みつける。が、辰之進は楽しそうに笑う。彩葉の中で怒りが急速に膨れ上がった。だん、と床を踏みつけて立ち上がった。
「こっ、こっ、この話はひとつ、なかっ……」
 彩葉がお断りの言葉を言いかけたとき、「ええーっ」と残念そうな声を真っ先にあげたのは、なんと、住良木会長であった。さすがというか、絶妙の呼吸である。
「彩葉ちゃん……この馬鹿息子が何かしたに違いないと思うんだが……どうだろう、この風来坊をきみのお婿さんにしてやってくれないだろうか……」
 返事は今でなくていいから少し考えてみてくれないかな、と、おっとり言われては「こんな変態お断り」とは言えない。
「……わかり、ました……」
 すとん、と、腰を下ろせばそれに合わせて一瞬ローターが動く。びくっと腰が弾み、慌てて唇を噛む。
 ちらり、辰之進を見れば笑っている。それが本当に嬉しそうで、幸せそうで――無性に腹が立つ。
 悔しい。なんだかわからないけど、とても悔しい。
 兎にも角にも二度とローターなど使わせるものか、と、誓った彩葉であった。
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