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:若社長、妄想する:
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一方、全力で逃げ出してしまった彩葉だが、自室に駆け込むなりきちんと施錠してベッドにダイブした。
「ど、どうしよう……住良木辰之進、本気なのかな……」
握ったままここまで来てしまった書類――婚姻届と再建計画をそっとひらく。
「こっちは大丈夫。ちゃんとやれる」
打診には驚いたが、音楽教室の再建は任せて欲しいと辰之進にも答えた。ほぼ即答した自分に彩葉自身が一番驚いたが、同世代の辰之進やナカゾノの跡取りが経営についてしっかり考えて会社を動かしているのだ。彩葉だって、懸命に勉強して知恵を絞ればやれるに違いない。
「問題はこっちよね……」
震える手で折り畳まれた紙を開く。今更ながら、心臓がどきどきして顔が赤くなる。
よく見れば、彩葉が記入すればいいだけになっている。手回しの良さに呆れるやら驚くやら。
「あーあ……よくてセフレだと思ってたんだけどなぁ……。結婚、かぁ……」
いつもいつも、なし崩しで抱かれてしまっているため辰之進のことを好きかどうか、まじめに考えたことがなかった。
辰之進ほどの男なら、いずれその地位にふさわしい、立派なご令嬢が妻として宛がわれるのだと思っていた。
「あたしが、辰之進の妻? そんなの、つとまるの?」
嫁に欲しいなどと辰之進がほざいていたことがあったが、それでも、彩葉は自分が愛されているとは思えなかったし、住良木グループに必要とされるとは思いもよらなかった。辰之進の社交辞令、いずれは飽きると思っていた。
「うーん、あいしてるって言葉、信じていいのかなぁ……? なんか胡散臭いのよね。やっぱりいつでも合法的に抱きたいから結婚しようって言ってるんだろうな」
はぁ、と、ため息が出てしまう。彩葉は辰之進しか知らないが、体の相性がいいのだと思う。いつも気持ちがよく、何時間でもしていられるとさえ思う。
辰之進も、体の相性の良さは否定しないだろう。
だか、それだけで大企業を束ねる人物の奥さんになっていいのか、そこが非常に悩ましい。
何度目とも知れぬため息を吐いてしまう。ぼんやりとベッドで婚姻届を見つめては折り畳む。
が、いつまでもベッドで頭を抱えているわけにはいかない。
のろのろと体を起こす。
「とりあえず、お仕事しなくちゃね……」
部屋に備え付けの机の抽斗に、婚姻届けをしまう。ドレッサーの前で制服の乱れを直して、やっぱりのろのろと部屋を出て、食堂へと向かう。
その途中で、辰之進とナカゾノの御曹司が階下の廊下を歩いているのが見えた。
それぞれ印刷物を手に、談笑している。
ちらり、とナカゾノの御曹司が彩葉を見てにやりと笑い、辰之進をつっつく。辰之進がふと顔をあげたのがわかり、思わず物陰に隠れてしまう。心臓が、どきどきとうるさい。
それからどのくらい隠れていただろうか。
「うーっ、どんな顔して会ったらいいのかわかんないよ……」
特別に意識する必要はない、そうわかっていても意識してしまうものである。
「あたし、なんで困惑してるの?」
辰之進に婚姻届を渡されたからーーだが、辰之進に愛されていると思えないし、辰之進を愛しているかどうかもわからない。
「そうよ! あいつとあたしの気持ちを確かめればいいのよ!」
体の相性だけが結婚の理由なら断ればいいのだから。
「よし! 今から変態でドSな馬鹿社長を回避大作戦よ!」
くるりと身をかえした彩葉は自室でゴソゴソしたあと、食堂へ向かって歩き出した。
彩葉がとんでもない決意を固めたなど夢にも思わない辰之進は、休憩時間になると、指輪のデザインや式場やドレス、新婚旅行の候補地などを一人で調べてはニヤニヤしていた。
「はやく俺の部屋で一緒に暮らしたいものだな」
一緒に暮らせばいろいろな格好の彩葉が見られるし、いつでもやりたい時に抱ける。
「そうだ……そろそろ潮吹きをさせてみたいな……」
彩葉のことだから、潮吹きの存在すら知らないだろう。いきなり吹かせるとパニックに陥るかもしれない。
「まずは……中イキも外イキもできるように開発してやるかな……」
ローションにバイブ2個にコスプレ衣装に……と、辰之進の妄想は止まらない。
「これでよし」
届くのが来週というのが気に入らないが、しかしそれまでに、彩葉が体に触らせてくれるようになるだろうか。
「……彩葉をもう、何日も抱いてない……」
抱きたい! と、強く願う辰之進なのであった。
「ど、どうしよう……住良木辰之進、本気なのかな……」
握ったままここまで来てしまった書類――婚姻届と再建計画をそっとひらく。
「こっちは大丈夫。ちゃんとやれる」
打診には驚いたが、音楽教室の再建は任せて欲しいと辰之進にも答えた。ほぼ即答した自分に彩葉自身が一番驚いたが、同世代の辰之進やナカゾノの跡取りが経営についてしっかり考えて会社を動かしているのだ。彩葉だって、懸命に勉強して知恵を絞ればやれるに違いない。
「問題はこっちよね……」
震える手で折り畳まれた紙を開く。今更ながら、心臓がどきどきして顔が赤くなる。
よく見れば、彩葉が記入すればいいだけになっている。手回しの良さに呆れるやら驚くやら。
「あーあ……よくてセフレだと思ってたんだけどなぁ……。結婚、かぁ……」
いつもいつも、なし崩しで抱かれてしまっているため辰之進のことを好きかどうか、まじめに考えたことがなかった。
辰之進ほどの男なら、いずれその地位にふさわしい、立派なご令嬢が妻として宛がわれるのだと思っていた。
「あたしが、辰之進の妻? そんなの、つとまるの?」
嫁に欲しいなどと辰之進がほざいていたことがあったが、それでも、彩葉は自分が愛されているとは思えなかったし、住良木グループに必要とされるとは思いもよらなかった。辰之進の社交辞令、いずれは飽きると思っていた。
「うーん、あいしてるって言葉、信じていいのかなぁ……? なんか胡散臭いのよね。やっぱりいつでも合法的に抱きたいから結婚しようって言ってるんだろうな」
はぁ、と、ため息が出てしまう。彩葉は辰之進しか知らないが、体の相性がいいのだと思う。いつも気持ちがよく、何時間でもしていられるとさえ思う。
辰之進も、体の相性の良さは否定しないだろう。
だか、それだけで大企業を束ねる人物の奥さんになっていいのか、そこが非常に悩ましい。
何度目とも知れぬため息を吐いてしまう。ぼんやりとベッドで婚姻届を見つめては折り畳む。
が、いつまでもベッドで頭を抱えているわけにはいかない。
のろのろと体を起こす。
「とりあえず、お仕事しなくちゃね……」
部屋に備え付けの机の抽斗に、婚姻届けをしまう。ドレッサーの前で制服の乱れを直して、やっぱりのろのろと部屋を出て、食堂へと向かう。
その途中で、辰之進とナカゾノの御曹司が階下の廊下を歩いているのが見えた。
それぞれ印刷物を手に、談笑している。
ちらり、とナカゾノの御曹司が彩葉を見てにやりと笑い、辰之進をつっつく。辰之進がふと顔をあげたのがわかり、思わず物陰に隠れてしまう。心臓が、どきどきとうるさい。
それからどのくらい隠れていただろうか。
「うーっ、どんな顔して会ったらいいのかわかんないよ……」
特別に意識する必要はない、そうわかっていても意識してしまうものである。
「あたし、なんで困惑してるの?」
辰之進に婚姻届を渡されたからーーだが、辰之進に愛されていると思えないし、辰之進を愛しているかどうかもわからない。
「そうよ! あいつとあたしの気持ちを確かめればいいのよ!」
体の相性だけが結婚の理由なら断ればいいのだから。
「よし! 今から変態でドSな馬鹿社長を回避大作戦よ!」
くるりと身をかえした彩葉は自室でゴソゴソしたあと、食堂へ向かって歩き出した。
彩葉がとんでもない決意を固めたなど夢にも思わない辰之進は、休憩時間になると、指輪のデザインや式場やドレス、新婚旅行の候補地などを一人で調べてはニヤニヤしていた。
「はやく俺の部屋で一緒に暮らしたいものだな」
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「そうだ……そろそろ潮吹きをさせてみたいな……」
彩葉のことだから、潮吹きの存在すら知らないだろう。いきなり吹かせるとパニックに陥るかもしれない。
「まずは……中イキも外イキもできるように開発してやるかな……」
ローションにバイブ2個にコスプレ衣装に……と、辰之進の妄想は止まらない。
「これでよし」
届くのが来週というのが気に入らないが、しかしそれまでに、彩葉が体に触らせてくれるようになるだろうか。
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