本物勇者に捨てられて次席勇者に拾われた俺

高島静貴( しずたか)

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(20)デートにしたかった男④

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 物語は勇者一行が魔界入りする所まできた。後はゲートをくぐり、魔王城まで移動するのである。
 
 魔界と人間界とはゲートと呼ばれる異次元門が存在し、通行が可能である。このゲートは魔界人であれば誰でも通過可能であるが、人間側からは通る為には特別な力を要した。この違いは魔界と人間界とは比較すると魔界が高次元であるからだ。あちらの所謂魔界人は人間界で生活出来ない事もないが人間は魔界での生活に身体構造的に負担が掛かる。人間でも特別な加護があったりや、生まれ持った霊的資質か極めて高い者以外には魔物が跋扈する環境自体が厳しい事も含め、次元の圧が違い過ぎるからだ。
 

 でも勇者様の場合、本当は空間転移で行って、ちゃちゃっと聖剣で魔王の息の根止めて終わるんだよね。


 ジョルジオがつい、本物のやり様を思い出して比較してしまう。ゲートなど関係無いのだ。
 
 ましてソロだし、あの人。

 しかし、この映画ではパーティー付きなので仲間を無視する事は出来ないし、第一、あくまでもフィクションであり、万人が思い描く理想の勇者像を見せる必要がある。ここが最重要なのだ、どちらかと言えば。

 先代勇者の妙なこだわりと、その他の多方面の思惑が絡んで見えてジョルジオは嘆息した。



 ゲートを無事くぐり抜けた一行は高位魔族の攻撃に力を合わせて撃破してゆく。

 最後の魔族掃討戦の前に勇者一行は死を覚悟した戦いになるので、と最後に会っておきたい存在がいれば挨拶をしておく様にと神殿から紙魔法陣を一枚ずつ渡される。
 勇者は魔族にとって最悪最強で最凶の存在だが、人生どうなるか分からないのである。
 他の者達は転移魔法が使えないから神殿からの親切で、一回こっきりの往復券を貰ったが勇者は標準装備だった為ない。いつも通り、自分の力で男娼の元へ行く。
 今回もプレゼント持参だ。
 渡すのは指輪。
 必要な素材は自分で全部集めた。狩りをやり、秘境に赴き、ギルドにかけ合い、冒険者に交渉して集めた希少素材を超一流の宝飾職人に加工させ、ありったけの付与魔法を、詰め込めるだけ自分の魔力を入れた、それは結婚指輪。

 なんか呪われそう。
 ていうか呪いのアイテム爆誕。
 あんなの着けたら最後、絶対指から離れないし、一生分の幸運を使って外れたとしても指輪自ら戻ってきそうだし。
 そうだし、の、それは標準完備だし。


 何より勇者自慢の一番の機能は『位置把握情報』であった。今で言うGPS機能である。
 小説が発売された当時には理論上まだ実現出来ておらず、魔法が発動されるにはある条件が必要性だった。
 が、取り敢えず位置が分かれば後はどうとでもなる。
 
 束縛系彼氏(まだ未満)の執着を垣間見せ。


 呪いをより強固にする為に、勇者はいそいそと男娼の元へ飛んだ。



 観客の反応はどうだろう、気になる。

 ジョルジオが下の観客席の様子を伺う。
 
 ドン引きしてないかな。
 
 ケイトさんはどうだろう。
 ちらっと盗み見てみた。
 涙は止まっている。良かった。ハンカチは膝の上にある。多分。口元にはないから。
 『いいね、あれ』とか言われたらどうしよう。贈る方?贈られる方?あ、そうか、結婚指輪だから交換か。

 交換か…。
 いいかもそれ。
 勝手にうんと頷くジョルジオを置いて映画は勇者が指輪を渡していた。
 拒否する男娼の指に、強引に着けてやり満足そうに笑う。

 …………まあ、素直になれない系列の性格の伴侶さんだから強引にしないと話が進まないのかもね。

 ジョルジオが溜め息を吐く。
 自分は素直な人が良いなあ。でもケイトさんだったら許す。
 
………それ以前の問題だと早く気付け。



 男娼は怒りと嬉しさが。嬉しさが勇者にバレて恥ずかしさのあまりに顔を真っ赤にして勇者に暴言を吐いていた。はいはい、と適当に返事をして流す勇者。
 プロポーズが成功した所で口付けを交わして場面は変わる。

 あれ、小説と微妙に違う。もしかしてこれも難産の原因か。
 ジョルジオは監修厳しい勇者に肩を竦めた。

 
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