本物勇者に捨てられて次席勇者に拾われた俺

高島静貴( しずたか)

文字の大きさ
31 / 41

(31)大食いしよう!⑥

 人間の労働者に扮し、紛れて動くようになってからも魔族伯爵家の手駒の彼はいつも人間を自分等よりも下等の生物と見なし、見下してきた。誰もが使えるが魔力を動力とする魔導具よりも更により平等に使用出来る電気器具の発達により魔力を左程必要しなくなった人間は増々魔力が使える者が少なくなったから以前より警戒しなくても良くなったせいもある。
 だから、人間とはなんて愚かな下等生物なのだろうと鼻で嗤っていた。

 しかし、今の状況は何だろう。
 勇者とか何とか言う存在が魔界を脅かし、自分は人間界にやって来て人間からエネルギーを奪い取らねばならない状況になっているにも関わらず、その勇者の足下をすくってやっていると思えば多少の溜飲が下がる思いだったのだ。
 それが。
「人間、お前は何故分かったんだ」
「直で関わらなかったら多分ずっと放置しておいたかも」
「何?」
「お前の主の伯爵って別に大した事ないんだけど…」
「何を…!」
「そんな事より今の状況を注目したらどうなのかな」
「人間。この拘束を解け。そしたら本気を出さないでやる」
 バレたらもうしょうがない。的なセリフを吐いて魔族の男が上から目線でジョルジオに言った。
「本気?いいともどうぞ。本気出す前に殺られたんじゃないって納得ずくで消すから」
 嬲り殺しは買い言葉みたいなものだったけど、他のは気が変わったから自分の手で落とし前を付けるとジョルジオは決めた。
「でも悪いけど瞬殺だよ」
 とは言ったものの武器は所持していなかった。始末しなければと思う有害魔族がいるとは思っていなかったし。
 では魔法、魔法~?
 全っ然気乗りしない。
 じゃあ仕方無いから使える物を使ってみようかーー。
 意識して自分と最も関わりのある"それ"を思い浮かべた。

 掌に剣を召喚する。おや?と思って見てみると勇者がいつも『要メンテナンス!助けて!』と剣から訴えられているのを無情にも無視して使っている形状とは違った形状の剣が出た。
「~~~~あ~~~へそ曲げてるよ~~聖剣~~」
 がくっと肩を落とす。剣が八つ当たり拗ねまくっている。

 勇者が使っているのは所謂ロングソードと言われるものだ。王道中の王道そのものである。
 ところがジョルジオが召喚したのは片刃の剣だった。刀身に波立つ模様が美しい。"日本刀"と言うらしい。"ニホントウ"?日本とは何かな?商品名?人名?地名?あ、地名なんだ有難う聖剣教えてくれてーって日本ってどこだ?!知らん!!ていうか、違う!!
「………………包丁とかソロバンとか鍬とかよりマシか…いや、マシだなんて…」
 とほほほほ。
 勇者の無茶振りのしわ寄せがこっちに来た。
 ジョルジュは心底哀しい。
「?それは武器か?」
 敵に言われる始末。調理器具には見えないだろー?こんなデカいペーパーナイフもないだろうー?踊りでも使わな…剣舞があったか。聖剣で踊れとか洒落にならない。その前に踊れないぞ。なんちゃっても無理だぞ。
 で、本体は勇者が持ってるからレプリカなのだが、どうしてわざわざ違う剣種で出てくる必要性があったのか教えて欲しい。こら聖剣。
「そうだ。聖剣だよ」
 仕方無いから、精々格好付けて言ってみた。多分、説得力ない。
「嘘だ!そんな話聞いた事無い!」
 ほ~~~~ら、言わんこっちゃない。
 勇者様の莫迦!!
「お前が無知なだけだ」
 仕方無いので、でも本当の事をさらりと言ってみた。多分、激怒する。
「何だとぉ!!」
 予想通りでジョルジオは段々面倒になってきた。いや、初めから面倒だったのだが、輪をかけて面倒になった。
 ああ、勇者様はこのやり取りが嫌いだからスパッと片付けてるんだな。
 いつも見ている光景を思い出してジョルジオが黄昏れた。他人事だからと思ってサポートしながら呑気な気分で眺めていたのだ。魔界貴族にウザく絡まれるのを。いや、絡まれるのも形式上仕方無い事なのだと本人も言っていた。どうやらそれも"決まり事"の範囲内だらしい。でもたまに苛々して、すっ飛ばしていたっけ。主役って大変だーとか流して見てたら現在自分にお鉢が回ってきた。
 いやいやいやいや、瞬殺ですから。
 俺もうざ絡みからさっさと離れよう。
 でも待って。
「あのさぁ、本気出したらその輪っか、取れるんじゃないかなって思うだけどどうかな?」
 忘れていたが初歩的な質問を投げてみた。すると魔族の男は目に見えて動揺した。
「だよね。俺のこういう所がさ…」
 勇者様に…どうのこうの…と小さな独り言になってジョルジオが愚痴り始めた。魔族の男が『あ、面倒っぽくて、こいつ嫌かも』とジョルジオを見て顔を引きつらせていたが、今の彼にはそんなのどうでも良かった。
「甘いとか抜けてるとか、自分だって大概……あ!ケイトさんの所に早く戻らなきゃ」
 自分もぐるぐるから戻って来て男を見据える。視線の先にはとても嫌そうに自分を見る男がいた。
「ご免、今からやるから」
 朗らかに言って持っていた聖剣レプリカ八つ当たりの日本刀バージョンを力む事なく横へ一閃させる。
 目の前の男が悲鳴を発する事もなく上下に分割されて霧散して消えた。
 完全に消えたのを確認し、やれやれと嘆息する。さー、もーどーろっと思った矢先に勝手に剣を持つ手が動き、刃の部分が鼻先スレスレで止まる。ひえええと焦っていたら脳内に思念が割り込んだ。
『雑魚くらいで呼び出すな使うな!!』
「でもきちんと倒した後で苦情言ってくるなんて成長したじゃないか」
『だってそうしないと溶かして作り直すって言われたから!人格矯正してやるって!』
「……いつの話かな?」
『忘れたけどアイツなこた間違いない』

感想 0

あなたにおすすめの小説

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ※第33話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

メインキャラ達の様子がおかしい件について

白鳩 唯斗
BL
 前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。  サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。  どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。  ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。  世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。  どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!  主人公が老若男女問わず好かれる話です。  登場キャラは全員闇を抱えています。  精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。  BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。  恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。