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第五章 姫達の郷帰りと今代の勇者達

#14 全員揃って入浴

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 家に居る全員、総勢21人で入ってもなお余裕のある浴場…男女比率というか、そもそもこういうのって俺の知ってる異世界ハーレムものだったら、大抵主人公の男一人だよなぁ…。

 あー、これホントセヴァルとカッツには悪いことしたか…俺達の我儘に付き合わせて。

 先に身体を洗ってる皆を、湯槽に浸かりながら眺めてる俺達男3人。
 でも何だろう、割と二人共平気そうに見えるんだけど…。

「セヴァル、カッツ。二人共そんなに動じてない?」

「いえ、そんなことは。何と言うか…奥様方の美しさに見惚れてただけでして」

「僕もですね。皆さん綺麗ですよね…」

「二人からはそう見えるんだ…。俺は可愛いって思ってるんだけど」

 洗い場で自分の身体を洗ったり、他の人の身体を洗ってあげたりと、姦しくしてる皆を見ての感想は、こんな感じだった。

「申し訳ありません、つい目を奪われてしまい…」

「いや、気持ちはよく分かるから。ただ、近くに来ると目のやり場に困るんだよな…俺はまだ」

「それは…何故でしょうか?」

「…えっと、ほら、アレだよ。見ちゃうとどうしてもそっちの欲が…ね」

「…?それは当然ですよね。別に普通では?」

「そうなんだけど、ティシャとひぃの手前、すんなり出すわけにもいかないんだって…」

 そんな姿を見せたらヒかれるような気がするし、そもそもそういうことは二人にとってまだ早いだろうし。
 こっちの世界でも、姫達の反応を見る限り元いた世界と同じで恐らく犯罪だと思う…姫達には変態扱いしかされてないけど。

 身体も出来てないのに、そういうことするとかそんな酷い事俺には出来ません、目一杯愛でるのが最高なんです。

「成る程、そういう事でしたか」

「ナオトさんなりにいろいろ苦労してるってことですか…。なんかすみません、そんなこととは知らずミオンまで」

「あー、いや、それも俺のせい…だけじゃないな、エクリィのせいでもあるか。とにかく、そんな苦労ってほどじゃないし、実際この状況で嬉しくないわけないし、そこは気にしなくていいよ。多分…いや、確実にまだ増えるだろうし……」

「…ナオト様なら当然ということですか。分かりました、私もそのつもりでこれから仕えさせていただきます」

「僕はマニファニのみんなが楽しく演ってくれればいいので、ナオトさんと同じく彼女達のやりたいようにさせてあげるつもりですから」

「そっか。ありがとう二人とも。これからもよろしく頼むよ」

 なんて、こんな状況なのに俺も心乱れることなく普通に話出来てるのが、不思議というか何と言うか…。
 元の世界じゃあり得る筈もないことに段々慣れてきたらしい。
 このままいくと現実で一線超えるのもそう遠くない気がするし…だってもう俺が皆に何したって大丈夫だって思えちゃってるから。
 こんな風に思えるようになるなんて、この世界に来た時には考えもしなかったから、やっぱり称号のせいとしか思えないな…。


「オイこら、アタイらがいるのに野郎同士で固まって何してんだよっ」

 さっさと身体を洗い終えたんであろうアーネが、ザバサバと湯槽のお湯を掻き分けながら俺達の方にやってきて…何処も隠そうとせず堂々と俺達の目の前で仁王立ちする。

「何って、話してただけだよ。そもそも全員で入るのは話するのが目的だっただろ」

「あ、そっか。んじゃほら、ナオト達も身体洗ってこいよ。向こうもほとんど終わってるしな」

 そう言って後ろも振り向かず親指だけで洗い場の皆の方を指すアーネ。
 目の前で仁王立ちのままいられても困るので、素直に従いますか…。

「分かったよ、んじゃ洗ってくる」

「おう。ちゃんと背中流してもらえよ」

「それも分かってる」

 お風呂に入って一番の楽しみを忘れるわけがないだろう、俺が。


 3人で洗い場に来ると、アーネが言った通り皆ほぼ洗い終わってた。

「あっ、ナーくんもあらいに来たのー?」

「っと、丁度良かったわ。私ら終わったから浸かりにいくな」

「ウチらと交代ってとこやな」

「ティシャちゃんとヒナちゃんの出番ってことねー。あ、そうだっ、今日は幼女組で洗ってあげるー!コロネちゃん、こっち来てーっ」

「はっ、はいなのですっ」

「ナオトお兄さま、どうぞこちらへ」

 ファミ達マニファニメンバーと、シータ、マール、ファル、ウェナが何一つ気にした様子も無く俺達と入れ替わりで湯槽へ…もしかして意識してるのって俺だけじゃないか…?

 ティシャとひぃ、それにリズが勝手にミニマム組でってことで、リズとコロネも俺を洗うために残り、ティシャがこっちにと呼んでくれたので、そこに座った。
 それと前回同様ラナとリオも当然のように残ってる。
 更に加えてコロネ以外のメイド組まで何故か居るし…。

「私共も御手伝いさせていただきます」


「「お手伝いいたします」」


 いやいや、9人掛かりとか意味分からないから。
 君達どんな巨体を洗おうとしてるの?
 だから背中だけでいいんだってっ。

「…あのな、気持ちは嬉しいんだけど、ティシャとひぃに背中流してもらうだけでいいから……」

「えっ…わたし達も、必要無いん、です…か……」

 うっ…またラナのその顔……それやられたらどうしようもないんだよ、俺…。
 と、折れようとしてたらリズからフォローっぽいものが飛んできた。

「ラナ、リオちゃん、アナタ達は前に洗ったことあるんだから、今回はワタシ達に譲りなさいよねっ」

「あぅ…それ言われると…。じゃあ今回はリズに譲るよ……」

「………分かっ、た…………」

 二人共渋々納得してくれたっぽい。
 残念そうな雰囲気醸し出してるけど。

「エマちゃん達も今回はワタシ達だけでいいから、ねっ」

「みんなの分も頑張ります…なのですっ」

「そうですか…畏まりました。ではお先に湯槽に浸かっております。コロネ、頼みましたよ」

「はいなのですっ!」

 エマ達もラナと同じ様に残念そうな顔してるし…。
 分かったよ、今度機会があったらちゃんとお願いするから、それで勘弁してほしい。

 セヴァルとカッツが隣で普通に自分自身を洗っているのを尻目に、俺はチビっ娘4人に全身洗ってもらってるっていう、よく分からない構図を体験した。
 何様なんだ俺は、とは思いつつもちっちゃい娘達がキャイキャイ言いながら俺を囲んでいるこの状況に、激しく癒やされてしまっているんですが。
 …まぁ、約一名、規格外なモノを持っているが故に、問答無用で俺の目を奪っていくんですけどね…ひぃとティシャは背中でリズとコロネは目の前にいるから、容赦無く揺れるそれはまさしく男を魅了するための凶器としか。

「にひっ、なぁにーナオトっ。そんなに見つめちゃってっ」

「みっ、見つめてるわけじゃないっ、目に入るんだからしょうがないだろっ」

「そんなムキにならなくったっていいのにー。なんだったら触ったっていいんだよ?ほらっ」

 そう言って重量感タップリなその2つの双丘を両掌で持ち上げて俺に寄せてくるリズ。
 馬鹿な事言うな、そんなことしたらそれどころじゃ無くなるのは夢の中で立証済みだっ!

「いいから早く身体洗ってくれっ!っていうか、そういうことするなら自分で洗うっ!」

「あ、ゴメンゴメンっ、ちゃんと洗ってあげるって。にひっ」

「………」

 リズとこんなやり取りしてたら、コロネが俺を洗う手を止めてて、じぃーっとリズの胸を凝視してるのに気が付いた。
 その後徐ろに自分の胸に視線を落として、悲愴感を漂わせ始めた…。
 うん、コロネは歳相応…いや、その歳にしては成長してる方じゃないか?
 ふっくらした感じがちゃんと分かるし…それにまだまだこれからだろう、リズと比べるのは間違ってると思うぞ?

「…コロネ、その、なんだ。あんまり気にすることは無いと思うぞ?まだまだこれからだろうし」

「…そう、なのです…?」

「そうそう、だからそんな悲しそうな顔しなくてもいいって」

「……わたしでも、リズ姉様のようなお胸になれます…のです?」

「そ、それは…」

 ごめん、分からない。
 どうやったら女性の胸が大きくなるかなんて、俺には皆目見当もつかない。
 えっと、なんだっけ?確かミルールだったっけか?アーネが酒場で飲んでた牛乳みたいなやつ。
 アレ飲めば大きくなるってそれっぽいことシータが言ってたような…。
 あとは…マッサージとか?好きな人に揉んでもらうと大きくなるとか、こっちの世界でもそういう類のものがあったりするんだろうか。
 
「大丈夫よコロネちゃんっ。ナオトにいっぱい触ってもらえば大きくなるからっ」

「…ナオト、兄様……」

 …あったわ。
 じゃなくてまたリズは何を言い出すんだ…コロネもそんな、まだ悲愴感残した状態で、触ってもらえるのです…?って言いたそうな顔で俺を見ないでくれっ。
 そんな顔でお願いされたら断れる自信が俺には無いぞ…余計悲しませることになるような、泣かせちゃうんじゃないかって思いが先に立っちゃうし……。
 やっぱりリズが絡むとすぐそっち方面にいっちまう、俺の気も知らないで全くコイツはっ。

「ナーくんっ、おせなかゴシゴシおわったよーっ」

「ナオトお兄さま、おせなかきれいになりました」

 えっ…終わった……だと………。
 そんな…癒やされタイムが終わってしまった……。
 なんてこった、俺の馬鹿野郎っ、リズの胸に気を取られてたばっかりに…っ。

「あ、ありがとな…二人とも……」

「なんでそんなに残念そうなのよー」

「た、堪能出来なかったからだよ…」

「あー、ワタシのせいかー…。ゴメンっ」

「いや、リズのせいじゃないって。俺が悪いっていうか、誘惑に勝てなかったというか…とにかく俺のせいだから大丈夫。それよりほら、背中終わったんだからもういいよな?」

「あっ、ごめんなさいなのですっ!」

「待ってもうちょっとだからーっ」


 慌ててコロネとリズが残りを洗ってくれて、さっぱり洗い流してもらった後、俺と4人で(セヴァルとカッツはとっくに洗い終わって湯槽に行ってた)湯槽に戻り、ひぃとティシャを定位置に収め、全員揃ったところで本題の件を掻い摘んで話した。


 リオが約400年前の勇者パーティーのメンバーで魔統皇を討伐したこと、その戦いで魔人種になったこと、一人洞窟で最期を迎えようとしてたところを俺達が見つけたこと、今回来た勇者がパーティーメンバーかどうか確かめたいということ、そしてもし同じ勇者だったら…会って謝りたい、と。
 

「マジか…リオにそんな過去があったのか……」

「うん…ちょっとびっくりした……」

「リオちゃん、大変だったんだねぇ…」

「400年前っていうのが凄いねー…私のいた世界じゃ考えられないよー……」

「リオって私より歳上だったんだー」

「そういうニアは何歳なんだ?」

 ニアはリオの元々の種族と同じ竜人種だからちょっと聞いてみた。
 見た目じゃ全然分かんないからな…人以外はホント。

「なにさらっと女性に歳聞いてるのよーっ、ナオトはさー」

「あ…。ごめん、今の無しで」

「別にいいよー。わたしは187歳だったかなー?」

「あははー…やっぱり人とは違いますねぇー」

「あれぇ?ウェナちゃん~、確かぁシャーちゃんもぉ、それくらいじゃぁなかったっけぇ~?」

「あー、言われてみればそうだったかもー?」

「まぁ、歳の話は置いといて、こういうわけだから、姫達の郷帰りも兼ねて獣人達の国へ行くことにしたんだ」

「そっかー。獣人達の国かぁー、いいなぁー私も行ってみたーいっ」

「向こうに着いたらいつでも行けるようになるから、魅音達も連れてってやるつもりだったけど」

 一度行ったとこなら転移で行けるようになるから、向こうに着いたらすぐこっちに戻って皆も連れてこようって元々考えてたし。

「えっ、ホントっ!やったぁー!ありがとー尚斗君っ」

「私らまでいいのかよ…?」

「ダメってことは無いと思うけど…いいよな?シータ」

「うん、なんも気にすることないで?気楽においでや」

「だってさ。ファミだって行きたくないわけじゃないんだろう?」

「いや、そりゃそうだけど…こんな大人数で押しかけても大丈夫なのか?って」

「んなこと気にするヤツなんかアタイらの国にゃいねーよっ。逆にいたらアタイがブッ飛ばしてやるわ」

 また過激な…アーネなら本当にやりそうで怖いって。
 まぁ何にせよ向こうに着いてちゃんと了承もらってから連れていけば問題無いだろうし。

「アーネがそんなことしないように俺がちゃんと向こうで了解取ってくるから。とりあえずそういうわけで数日後に出発するよ」

「畏まりました。数日はこちらで?」

「あぁ、少しのんびりさせてもらおうかなって」

「承知致しました。では御寛ぎいただけるよう努めましょう」

「御用の際は何時でも御申し付けください」

「エマ、本当にメイドだな…。俺的にはハウスキーパーって思ってるんだけど……」

「も、申し訳ありません、中々癖が抜けず…」

「エマさんは真面目ですからねー。まだ数日一緒にいただけですけど、仕事はテキパキやってるし、わたしからしたらもうちょっと抜いてもいいと思うんですよぉー」
 
「そーそー。毎日そんな感じじゃすぐ疲れちゃうでしょー?」

「そういうぅ二人はぁ~、抜きすぎぃなんじゃぁ~ないかぁなぁ~?」

 リズとウェナはその辺上手くやりそうだもんな。
 ウェナはシャリーが一緒だから仕事中でも平気でじゃれあってそうだ。
 リズは優里香さんのサポートちゃんとしてるのか心配だわ…郷帰りする前にギルド寄っていこう、うん。

「やることはやってるから大丈夫だってー」

「わたしだってそうですもんっ。マーちゃん達が来た時くらいだよぉー」

「さっき受付嬢特権とか言ってた時点でそうは思えないんだけど?リズ。わたしがいなくなってやりたい放題なんじゃないの?」

「そんな事無いしー。それにもう必要無いからねーっ、マニファニのみんなが一緒なんだしっ!」

 リズのために連れて来たわけじゃないんだけどな。
 結果的にリズが喜ぶ形になったってだけで、こうするつもりは毛程も無かったんだ、頼まれてた通りサイン貰ってくるだけのはずだったのに…。


「そこまで喜んでくれるなんて思わなかったなぁー。けど、来てよかったっ。ねっ、みんなーっ」

「うん、これから楽しく過ごせそー」

「わたしもみんなと一緒ならぁ、楽しそうって思うよぉ」

「私も、かな。みんなといっぱいおしゃべりとかしてみたいっ」

「だな。ま、私らこんな感じだけどこれからよろしく頼むよー」

 マニファニの皆も来てよかったって思ってくれてるみたいだから、何も言わずこれで良しってことにしよう。
 …こうしてもう裸の付き合いにもなっちゃってるし。

 ヤバい、いろんな意味でのぼせてきた…もう上がろう。
 明日は予定も無いし、ぐっすり寝ることにしよう、うん。
 …今日は誰か来てくれるかな、と密かに期待してる俺もどうなんだ…というのはこの際見逃してほしい。


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