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閑話2
神獣様と一緒にダンジョン攻略! 3
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リネとアルが野菜ダンジョンに向かった後、僕は倉庫にある野菜を端から収納してまわった。
リネがダンジョンに行ったことで、おそらくこの先もたくさん集まるだろうから、今ある分は全て東側に配るように変更になった。
野菜を収納してしまうと僕にはやることがない。野菜の仕分け作業を手伝おうかと思ったけど、司教様に教会に戻ってほしいと言われて、大人しく従うことにした。
「アルと一緒にダンジョン行けばよかったかな」
『今は人が多いから、やめておけ』
「アル一人で大丈夫かなあ」
『もう慣れているだろう。あやつがいるのだから、心配するな』
どちらかというと、リネがいるからこそ騒動が心配だけど、リネがいれば怪我をしてもすぐに治してもらえるからそういう意味では心配がない。
今からだと攻略して帰ってくるのは明日になるだろう。教会の司教様たちもブランと僕を泊める部屋を急いで用意してくれているので、申し訳ない。
ちなみに、アルは時間停止のマジックバッグを二つ使って、ダンジョン内の食事を入れている。ダンジョンに行くときはその片方を持っていき、もう片方は教会に置いておいて料理長が料理を詰めている。もちろんリネの好きなケーキやクッキーも入っている。リネとアルがいつダンジョンに行っても快適に過ごせるように、教会のサポート体制が整えられているのだ。
「何か協力してくれている冒険者に、お礼としてできることはないかな」
『ユウが気にする必要はない。あやつがダンジョンに行ったので十分だ』
「神獣様と共闘ということで、冒険者たちは満足すると思いますよ」
共闘と言っても、リネは一緒に戦わないからそんなことでは満足しないだろうと思ったけど、それでも冒険者にとっては十分なのだそうだ。
「神獣様の倒したモンスターからドロップした品を拾った冒険者は、ギルドに買い取ってもらってそれを教会に寄付してくれますが、周りからは羨ましがられるそうですよ」
「そうなんですか」
ダンジョン内でアルは大きくなったリネに乗って飛んで移動していて、その進路に現れたモンスターを倒しても通り過ぎてしまうのでドロップ品は残され、そのドロップ品を通りがかりの冒険者が拾う。通常ならそういうドロップ品は拾った人のものになるところを、相手が神獣なので買い取り金額分を寄付するそうだ。
そんなので自慢になるのだろうかと思うけど、きっとそれは自慢するほどのことなのだ。一緒に戦えるかも、という情報だけでたくさんの冒険者がダンジョンに潜るほどの神獣という存在を一番理解していないのは、ブランに慣れすぎている僕なのだろう。
「あの、これ、時間停止の容量大のマジックバッグ、使ってください」
「ユウさん、それは受け取れません。以前に教会の寄付箱に入れてくださいましたよね。それで十分です」
「でも、あのたくさんのお野菜、このままでは配りきれないのでは?」
『ユウの厚意だ。受け取れ』
「ありがとうございます。では、今回の野菜を配る間だけ、お借りいたします」
そのままずっと使ってもらって構わないけど、面倒なことがあるのなら貸し出しでもいい。いつか必要になるときのためにと、僕のアイテムボックスの中に入れているのだから、今がその必要なときだ。
アルとリネは二日後、カボチャを手に入れて帰ってきた。
「リネ、すごく時間がかかったんだね。お疲れ様」
『だって、アルが寝ちゃうから』
「人間は寝ないと生きていけないんだ」
最下層でカボチャがドロップしなかったので、出るまで何度も攻略したらしい。アルが最下層でドロップした野菜を並べて見せてくれているけど、どれも美味しそうだ。つやつやのトマト、鮮やかな色のパプリカ、ずっしりとしたダイコン、実の詰まっていそうなカボチャと、季節関係なく色とりどりで視界がとても健康的だ。
司教様も一緒に眺めていると、リネが早く帰ろうと催促し始めた。早く帰ってパンプキンパイが食べたい、と羽根をバタバタさせている。そこには神獣の威厳などなくて、わがままで食いしん坊な可愛い鳥だ。
『早くー』
「分かった、分かった。だが、ちょっと待ってくれ」
「リネ、チーズケーキ食べる?」
『食べる!』
ダンジョンから戻ったばかりでアルも一息つきたいだろうから、チーズケーキでリネの気を紛らわせて、ゆっくり帰ろう。
そんな中でブランは我関せずと、僕の足元でだらけている。なんだかこの教会の司教様たちの信仰心を揺らがせてしまいそうで、僕のほうが不安になってくる。
その後リネは、中央教会に帰り着くと、小さくなった鳥の足でカボチャをつかんで、料理場へと飛んでいった。
後から聞いたら、料理長にパイを頼み、出来上がるまで横でずっと見ていたそうだ。たしかパイ生地って層にするために何度も折り返すんじゃなかったっけ。きっと見張られていた料理長はやりにくかっただろうなあ。
出来上がったパンプキンパイは僕ももらったけど、甘くてとても美味しかった。
目的である野菜は、無事に全国の孤児院へと分配され始めている。
僕たちが帰った後は、日持ちのする根菜を中心に集めて、寄付も続いているそうだ。本当の理由は違うけど、神獣様が対策に乗り出したという噂が広がったので、冒険者たちも協力的なんだとか。それを受けて、今後大規模な炊き出しが必要になったときのためにも、常時根菜を集めておくことも検討されているらしい。今回は水害だったけど、二百年周期に入った今、あふれの影響で収穫量が落ちることも考えられる。僕のアイテムボックスの活用も提案してみよう。
――――――――
ハロウィンなので(?)、かぼちゃのお話でした。
リネがダンジョンに行ったことで、おそらくこの先もたくさん集まるだろうから、今ある分は全て東側に配るように変更になった。
野菜を収納してしまうと僕にはやることがない。野菜の仕分け作業を手伝おうかと思ったけど、司教様に教会に戻ってほしいと言われて、大人しく従うことにした。
「アルと一緒にダンジョン行けばよかったかな」
『今は人が多いから、やめておけ』
「アル一人で大丈夫かなあ」
『もう慣れているだろう。あやつがいるのだから、心配するな』
どちらかというと、リネがいるからこそ騒動が心配だけど、リネがいれば怪我をしてもすぐに治してもらえるからそういう意味では心配がない。
今からだと攻略して帰ってくるのは明日になるだろう。教会の司教様たちもブランと僕を泊める部屋を急いで用意してくれているので、申し訳ない。
ちなみに、アルは時間停止のマジックバッグを二つ使って、ダンジョン内の食事を入れている。ダンジョンに行くときはその片方を持っていき、もう片方は教会に置いておいて料理長が料理を詰めている。もちろんリネの好きなケーキやクッキーも入っている。リネとアルがいつダンジョンに行っても快適に過ごせるように、教会のサポート体制が整えられているのだ。
「何か協力してくれている冒険者に、お礼としてできることはないかな」
『ユウが気にする必要はない。あやつがダンジョンに行ったので十分だ』
「神獣様と共闘ということで、冒険者たちは満足すると思いますよ」
共闘と言っても、リネは一緒に戦わないからそんなことでは満足しないだろうと思ったけど、それでも冒険者にとっては十分なのだそうだ。
「神獣様の倒したモンスターからドロップした品を拾った冒険者は、ギルドに買い取ってもらってそれを教会に寄付してくれますが、周りからは羨ましがられるそうですよ」
「そうなんですか」
ダンジョン内でアルは大きくなったリネに乗って飛んで移動していて、その進路に現れたモンスターを倒しても通り過ぎてしまうのでドロップ品は残され、そのドロップ品を通りがかりの冒険者が拾う。通常ならそういうドロップ品は拾った人のものになるところを、相手が神獣なので買い取り金額分を寄付するそうだ。
そんなので自慢になるのだろうかと思うけど、きっとそれは自慢するほどのことなのだ。一緒に戦えるかも、という情報だけでたくさんの冒険者がダンジョンに潜るほどの神獣という存在を一番理解していないのは、ブランに慣れすぎている僕なのだろう。
「あの、これ、時間停止の容量大のマジックバッグ、使ってください」
「ユウさん、それは受け取れません。以前に教会の寄付箱に入れてくださいましたよね。それで十分です」
「でも、あのたくさんのお野菜、このままでは配りきれないのでは?」
『ユウの厚意だ。受け取れ』
「ありがとうございます。では、今回の野菜を配る間だけ、お借りいたします」
そのままずっと使ってもらって構わないけど、面倒なことがあるのなら貸し出しでもいい。いつか必要になるときのためにと、僕のアイテムボックスの中に入れているのだから、今がその必要なときだ。
アルとリネは二日後、カボチャを手に入れて帰ってきた。
「リネ、すごく時間がかかったんだね。お疲れ様」
『だって、アルが寝ちゃうから』
「人間は寝ないと生きていけないんだ」
最下層でカボチャがドロップしなかったので、出るまで何度も攻略したらしい。アルが最下層でドロップした野菜を並べて見せてくれているけど、どれも美味しそうだ。つやつやのトマト、鮮やかな色のパプリカ、ずっしりとしたダイコン、実の詰まっていそうなカボチャと、季節関係なく色とりどりで視界がとても健康的だ。
司教様も一緒に眺めていると、リネが早く帰ろうと催促し始めた。早く帰ってパンプキンパイが食べたい、と羽根をバタバタさせている。そこには神獣の威厳などなくて、わがままで食いしん坊な可愛い鳥だ。
『早くー』
「分かった、分かった。だが、ちょっと待ってくれ」
「リネ、チーズケーキ食べる?」
『食べる!』
ダンジョンから戻ったばかりでアルも一息つきたいだろうから、チーズケーキでリネの気を紛らわせて、ゆっくり帰ろう。
そんな中でブランは我関せずと、僕の足元でだらけている。なんだかこの教会の司教様たちの信仰心を揺らがせてしまいそうで、僕のほうが不安になってくる。
その後リネは、中央教会に帰り着くと、小さくなった鳥の足でカボチャをつかんで、料理場へと飛んでいった。
後から聞いたら、料理長にパイを頼み、出来上がるまで横でずっと見ていたそうだ。たしかパイ生地って層にするために何度も折り返すんじゃなかったっけ。きっと見張られていた料理長はやりにくかっただろうなあ。
出来上がったパンプキンパイは僕ももらったけど、甘くてとても美味しかった。
目的である野菜は、無事に全国の孤児院へと分配され始めている。
僕たちが帰った後は、日持ちのする根菜を中心に集めて、寄付も続いているそうだ。本当の理由は違うけど、神獣様が対策に乗り出したという噂が広がったので、冒険者たちも協力的なんだとか。それを受けて、今後大規模な炊き出しが必要になったときのためにも、常時根菜を集めておくことも検討されているらしい。今回は水害だったけど、二百年周期に入った今、あふれの影響で収穫量が落ちることも考えられる。僕のアイテムボックスの活用も提案してみよう。
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ハロウィンなので(?)、かぼちゃのお話でした。
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