世界を越えてもその手は

犬派だんぜん

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続 4章 この世界の一人として

14-10. 騎乗訓練

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 リネとティグ君が張り切ってモンスターを倒しまくって、ダンジョン攻略は終わった。
 ブランとリネの一触即発事件はあったものの、まあまあ平穏だったと思うし、僕はリネの戦闘が見ることができ、ティグ君のブラッシングをさせてもらえたので、大満足だ。

 僕のダンジョン復帰も順調に終わったと思う。周りの冒険者が近寄ってくることで、僕のトラウマが刺激されるのじゃないかとアルとブランは心配してくれたけど、去年のカークトゥルスよりは冷静に対応できた。不意を突かれると少しは身構えてしまったけど、怖いとまでは思わなかった。
 これなら、今後のダンジョンも問題なさそうだけど、きっと帰った後に少しでも体調を崩したら、またしばらく禁止されるだろう。ときどき潜らなければ慣れないと思うけど、僕に関してはとても過保護なブランとアルが許してくれるとは思えない。
 この後、冬にカークトゥルス合宿が控えているから、多分次のダンジョンはカークトゥルスになるだろう。その次は、ティガーと獣道と一緒に、とっても行きたくないブロキオンだ。春になったら、ゾヤラへ移動してほしいと、アルがティガーのみんなにお願いしていたから、もう逃げられない。
 ブロキオンにはティグ君の好きなお肉をたくさん用意して、ティグ君に癒されよう。


 ダンジョン攻略後、ティガーの三人は街まで馬で移動するので、僕もブランに乗ろう。練習を始めてから教会の外で乗るのは初めてだけど、前よりは少し慣れた。街道をスピードを出して走るのは禁止されているので、街道脇の平坦な草原を走ってみることになった。

「ユウ、一緒に乗るか?」
「大丈夫。なんとかなるはず」

 ダンジョン内ではずっとアルが支えてくれていたけど、アルがいないときにあふれが起きたら一人で乗るしかないのだから、練習あるのみだ。
 ブランに鞍を着ける僕の横から、ちゃんと装着できているか確認しているアルを、ティガーのみんなが苦笑しながら見守っている。教会で練習するときにも自分で着けているから慣れているのに、アルのチェックが厳しい。入念な点検の結果、やっと許可が出たので、ブランに乗って走ろう。

 ブランが先頭、ティグ君とお馬さん三頭が続き、リネとアルは上空だ。
 ゆっくり走りだしたブランは、草原の中を進み、少しずつスピードを上げていく。秋風が気持ちいい。街道を行く馬車の人たちの歓声が聞こえるので、意外と多くの人に見られているようだけど、僕はあまりよそ見している余裕がない。
 僕の横で、ティグ君が跳ねるように走っているのが可愛い。ブランと一緒に走れて嬉しいと、全身で表している。

「ブラン、もう少し早く走ってあげて」
『(大丈夫か?)』
「少しなら」

 遠くに見えてきた街までなら多分なんとかなるはず。まだあふれの対応に行くときほどは飛ばしていないから、あのスピードに慣れる必要もある。
 お腹に力を入れて、前を見て姿勢を安定させ、余計な力は入れない。大丈夫、ツェルト助祭様に指導してもらって練習したんだから、できるはず。ブランがスピードを上げたので、今までほどは安定しなくて、振動を吸収しきれずに身体がフラフラしてしまう。丹田に力を入れるんだ、と自分に言い聞かせて、見えている街に視線を固定する。

「ユウ、大丈夫か?」
「平気!」

 上空からアルが心配してくれるけど、まだ問題はないはずだ。なんとなく横を走るティグ君が心配してくれているような気もするけど。明日、筋肉痛にはなるかもしれないけど。かもしれないじゃなくて、多分確定だけど。
 でも風が気持ちいい。これからは、外を走る訓練もしたいな。


 ブランに乗ったまま街の門まで進み、行列の最後尾に着いたところで、ブランから降りた。最後に飛ばしたのはやっぱり僕には難しかったようで、身体のあちこちに力が入っていたことは、地面に足をつけて少し気が緩んだときに気づいた。思わずよろめいた僕を、ティグ君が身体を寄せて助けてくれた。両側からブランとティグ君に挟まれて、もふもふとつるつるで嬉しい。

『ユウ、大丈夫? よろよろしてるよ。治そうか?』
「心配ないよ。ちょっと身体が固まっていただけ。あれ? アルは?」
『そのうちくるよ』

 門のすぐそばに降りると騒動になるので、少し離れた草原に着地したリネは、アルを置いて飛んできたらしい。
 身体をほぐそうと、軽く膝を曲げ伸ばしたりストレッチをしていたら、アルが合流した。周りの冒険者や旅人の注目を集めているので、そばにいてくれると心強い。

「ユウ、大丈夫か?」
「力を抜くっていうのが上手くできなくて」
「慣れだな。俺もリネに乗るようになったころは、大変だったから」

 リネは僕が乗るときはすごく気を遣ってくれるけど、アルだけだと急発進や急上昇するので、最初のころは落ちそうになっていたらしい。最近はそれにも慣れたけど、たまに飛んでいる最中に何かに気を取られてリネが急カーブしてヒヤッとすることはいまだにあるらしい。落ちてもリネが助けてくれるんだろうけど、そもそも落ちたくない。僕ならきっとその後怖くてリネに乗れなくなりそうだ。

 ダンジョンのドロップ品は、リネが気に入った果物は全てリネへのものだ。
 リネが気に入らず、試食のためにかじりもしなかった果物は、全てギルドに買い取ってもらって、ティガーの取り分になる。ティガーのみんなはリネが戦った結果だからと遠慮していたけど、ティグ君が倒したモンスターのドロップ品でも、リネがかじったために売れなくなったものがたくさんあるのだ。買取価格が高い果物はほとんどリネが気に入っているので、ティグ君へのねぎらいも込めて、残りはすべてティガーに渡すことにした。

「ねえ、リネの分も増えたから、料理長へのお給料ってアップしたほうがいいよね?」
「言われてみればそうだな。サジェルがすでに変えているかもしれないが、言っておく」

 この果物たちも、料理長に渡せば生のカットだけでなく、美味しいお菓子になるだろう。リネの料理長への信頼は絶大だ。
 僕たちのお財布は相変わらずサジェル頼りで、細かいことは把握していない。サジェルならアルの襲撃後、中央教会でお世話になることが決まって、料理長も王都へ移ってきたときに気を利かせて変えてくれているかもしれない。だけど本来なら、雇い主としてちゃんと把握しておかなければならないことだ。
 僕たちが教会へ寄付したドロップ品のオークションで、どれくらいの売り上げがあったのか、僕は知らない。そもそも、ギルド買い取り価格で計算したらどれくらいになったのかも知らない。そういうのを任せきりにしないでちゃんと把握しようと思ったはずなのに、結局お任せのままだ。中央教会に帰ったときに覚えていたら、聞いてみよう。
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