202 / 226
続 6章 災禍の中の希望
16-7. 友だちのおうち訪問
しおりを挟む
心を落ち着けるためにも、ソマロさんたちと世間話をしながら、ブランのブラッシングを全身くまなく行う。一回終わっても手持ち無沙汰で、二回目、三回目とブランの毛が少し減るんじゃないかというくらいにブラシをかけ続け、夕方になるころ、キリシュくんたちが帰ってきた。
「ユウくん、あふれって。あれ、ソマロ?」
「キリシュ、おかえり」
「なんでここに?」
「前線への物資輸送に馬車を貸したときに、アレックスさんに頼まれた」
走ってきたのか、息が上がっているキリシュくんが、ソマロさんを見つけて目を丸くしている。
ソマロさんはそんなキリシュくんの表情に少し笑いながら、近づいて怪我がないかを確認してから、そっと抱きしめた。恋人って感じでいいなあ。
「ユウくん、アルさんは?」
「あふれの対応に行っちゃった」
「二つあふれたって、本当?」
「本当ですよ」
シリウスのあとから部屋に入ってきたギルド職員さんが、僕の代わりにコーチェロくんの質問に答えてくれた。シリウスの役目の説明に来たそうだ。
「簡単に説明しますと、キリヌスとノールがあふれました。Dランクまで強制依頼の招集がかかっています。朗報なのは、演習中の軍が近くにいたことで、総大将は第二王子です。シリウスには、テイマーさんの護衛をお願いします」
「野営地まで物資の輸送の護衛ですか?」
「いいえ、物資の馬車はすでに出発しました。テイマーさんはこの街で待機です。街の中での護衛をお願いします」
「ユウくんは、あふれが終わるまで、ずっとここに?」
「はい。ですが状況によっては、王都方面への避難も考えています」
コーチェロくんが、護衛としてすべきこと、僕の行動範囲などを確認してくれている。今なら街中なら出歩くのもかまわないけれど、避難民が増えてきたら安全のために控えるようにと言われた。できることなら、教会とギルド以外にはいてほしくないようだ。
「夜は私たちの家に泊まりますか? それとも教会?」
「教会としては、居場所がはっきりしていれば、どちらでもかまいませんよ」
「だったら、せっかくだからお家に泊めてもらってもいい?」
三人で借りている家には部屋が一つ余っていて、そこは僕の部屋として空けてあると聞いている。鍵ももらったけれど、一度も泊まる機会がなかったので泊まりたい。それに教会は、避難民の対応で、僕の面倒どころではないはずだ。
「テイマーさんの安全のためには、教会のほうがいいのでは?」
「ブランがいるから大丈夫です」
「まあそうですが……。もし何かあったら、ギルドか教会に駆け込んでください」
何かなんてないはずだ。もしあれば、この街が破壊される。そうならないように、お願いだから何も襲ってこないでほしい。
「キリヌスって、飛ぶモンスターがいるの?」
「多くないけどいる」
「しかも結構な速度で飛ぶ」
「この街まで来るかな……」
『(来たところで、なんとでもできる)』
巻き添えで街が壊れないか心配しているのだけれど、そんなことを言うとブランが拗ねそうだから、黙っていよう。きっとブランなら、街に被害を出さずに、しかもこっそりと対処してくれるだろう。
話はついたので、仕事に戻るソマロさんとともに、ギルドを出る。司祭様も僕がどこに泊まるのかを確認するために、一緒だ。
「キリシュは今日はそっちに泊まるんだよな」
「ソマロもよければ来いよ」
「帰れたらね」
キリシュくんは僕の護衛なので、パーティーで借りている家に泊まる。ソマロさんと一緒に暮らしている家には帰れないので、ソマロさんも誘ったけれど、そもそも家に帰れるかどうかが怪しいそうだ。非常時なので、いつもとは違うものが違うように動くため、会計担当のソマロさんは大忙しらしい。
多分そんな中、僕の持っている物資を運ぶからと、わざわざ門まで来てくれたのだろう。
「よかったらみなさんで夜食に食べてください。リネが気に入っていたクッキーです」
「それはありがたいけれど、神獣様のものをもらうわけにはいかないよ」
「最近のお気に入りは変わったので、問題ありません。お忙しい中付き合っていただいて、ありがとうございました」
ちょっと前までお気に入りだったメレンゲクッキーだけど、いまはドライフルーツ入りクッキーがリネの中でのブームだ。在庫処分みたいで申し訳ないけど、リネのお気に入りクッキーには違いない。
ソマロさんはクッキーの器を受け取ると、キリシュくんの額にキスをして、商会へと戻っていった。
「今日の夕食と明日の朝ご飯は、ユウくんのアイテムボックスから何かもらってもいい? 店には行かないほうがいいと思う」
「たくさんあるから、好きなものを選んで」
「教会から届けることもできますが、必要なさそうですね」
四人なら一年分くらいの料理長さんお手製の食事がアイテムボックスに入っている。一年となるとブランの分が足りなくなりそうではあるけれど、それなら自分で美味しい魔物でも狩りにいってもらえばいい。いつもは屋台に行くぞと主張するブランも、今回ばかりは何も言わずに、シリウスの家まで僕の横を歩いてくれている。
初めて訪れたシリウスの家は、街のはずれにある、小さくて少し古い一軒家だった。
「このあたりは冒険者が多いから、いつもはうるさいんだが、さすがに今日は静かだな」
「狭いし、ぼろいけど、ようこそ俺たちの家へ」
「狭くないよ。僕が想像していたアルと住む家は、これくらいの大きさの庭付きだったんだけど、なんでかカザナラのお屋敷になっちゃったんだよ」
「風呂はないからな」
「こんなときくらい我慢できるって」
僕たちの気の置けない会話に、司祭様が笑っている。「仲が良くて安心しました」と言われたから、きっとアルを見送ったあとの態度で心配をかけてしまったのだ。
シリウスのみんながいてくれるから、笑っていられる。友だちってありがたいな、と実感するのは何度目だろう。
「みんな、ありがとう」
「ユウくん、どうしたの?」
「そう思っただけ。お部屋を見せて」
なんだか気恥ずかしくて、僕は鍵を開けるコーチェロくんを急かした。
「ユウくん、あふれって。あれ、ソマロ?」
「キリシュ、おかえり」
「なんでここに?」
「前線への物資輸送に馬車を貸したときに、アレックスさんに頼まれた」
走ってきたのか、息が上がっているキリシュくんが、ソマロさんを見つけて目を丸くしている。
ソマロさんはそんなキリシュくんの表情に少し笑いながら、近づいて怪我がないかを確認してから、そっと抱きしめた。恋人って感じでいいなあ。
「ユウくん、アルさんは?」
「あふれの対応に行っちゃった」
「二つあふれたって、本当?」
「本当ですよ」
シリウスのあとから部屋に入ってきたギルド職員さんが、僕の代わりにコーチェロくんの質問に答えてくれた。シリウスの役目の説明に来たそうだ。
「簡単に説明しますと、キリヌスとノールがあふれました。Dランクまで強制依頼の招集がかかっています。朗報なのは、演習中の軍が近くにいたことで、総大将は第二王子です。シリウスには、テイマーさんの護衛をお願いします」
「野営地まで物資の輸送の護衛ですか?」
「いいえ、物資の馬車はすでに出発しました。テイマーさんはこの街で待機です。街の中での護衛をお願いします」
「ユウくんは、あふれが終わるまで、ずっとここに?」
「はい。ですが状況によっては、王都方面への避難も考えています」
コーチェロくんが、護衛としてすべきこと、僕の行動範囲などを確認してくれている。今なら街中なら出歩くのもかまわないけれど、避難民が増えてきたら安全のために控えるようにと言われた。できることなら、教会とギルド以外にはいてほしくないようだ。
「夜は私たちの家に泊まりますか? それとも教会?」
「教会としては、居場所がはっきりしていれば、どちらでもかまいませんよ」
「だったら、せっかくだからお家に泊めてもらってもいい?」
三人で借りている家には部屋が一つ余っていて、そこは僕の部屋として空けてあると聞いている。鍵ももらったけれど、一度も泊まる機会がなかったので泊まりたい。それに教会は、避難民の対応で、僕の面倒どころではないはずだ。
「テイマーさんの安全のためには、教会のほうがいいのでは?」
「ブランがいるから大丈夫です」
「まあそうですが……。もし何かあったら、ギルドか教会に駆け込んでください」
何かなんてないはずだ。もしあれば、この街が破壊される。そうならないように、お願いだから何も襲ってこないでほしい。
「キリヌスって、飛ぶモンスターがいるの?」
「多くないけどいる」
「しかも結構な速度で飛ぶ」
「この街まで来るかな……」
『(来たところで、なんとでもできる)』
巻き添えで街が壊れないか心配しているのだけれど、そんなことを言うとブランが拗ねそうだから、黙っていよう。きっとブランなら、街に被害を出さずに、しかもこっそりと対処してくれるだろう。
話はついたので、仕事に戻るソマロさんとともに、ギルドを出る。司祭様も僕がどこに泊まるのかを確認するために、一緒だ。
「キリシュは今日はそっちに泊まるんだよな」
「ソマロもよければ来いよ」
「帰れたらね」
キリシュくんは僕の護衛なので、パーティーで借りている家に泊まる。ソマロさんと一緒に暮らしている家には帰れないので、ソマロさんも誘ったけれど、そもそも家に帰れるかどうかが怪しいそうだ。非常時なので、いつもとは違うものが違うように動くため、会計担当のソマロさんは大忙しらしい。
多分そんな中、僕の持っている物資を運ぶからと、わざわざ門まで来てくれたのだろう。
「よかったらみなさんで夜食に食べてください。リネが気に入っていたクッキーです」
「それはありがたいけれど、神獣様のものをもらうわけにはいかないよ」
「最近のお気に入りは変わったので、問題ありません。お忙しい中付き合っていただいて、ありがとうございました」
ちょっと前までお気に入りだったメレンゲクッキーだけど、いまはドライフルーツ入りクッキーがリネの中でのブームだ。在庫処分みたいで申し訳ないけど、リネのお気に入りクッキーには違いない。
ソマロさんはクッキーの器を受け取ると、キリシュくんの額にキスをして、商会へと戻っていった。
「今日の夕食と明日の朝ご飯は、ユウくんのアイテムボックスから何かもらってもいい? 店には行かないほうがいいと思う」
「たくさんあるから、好きなものを選んで」
「教会から届けることもできますが、必要なさそうですね」
四人なら一年分くらいの料理長さんお手製の食事がアイテムボックスに入っている。一年となるとブランの分が足りなくなりそうではあるけれど、それなら自分で美味しい魔物でも狩りにいってもらえばいい。いつもは屋台に行くぞと主張するブランも、今回ばかりは何も言わずに、シリウスの家まで僕の横を歩いてくれている。
初めて訪れたシリウスの家は、街のはずれにある、小さくて少し古い一軒家だった。
「このあたりは冒険者が多いから、いつもはうるさいんだが、さすがに今日は静かだな」
「狭いし、ぼろいけど、ようこそ俺たちの家へ」
「狭くないよ。僕が想像していたアルと住む家は、これくらいの大きさの庭付きだったんだけど、なんでかカザナラのお屋敷になっちゃったんだよ」
「風呂はないからな」
「こんなときくらい我慢できるって」
僕たちの気の置けない会話に、司祭様が笑っている。「仲が良くて安心しました」と言われたから、きっとアルを見送ったあとの態度で心配をかけてしまったのだ。
シリウスのみんながいてくれるから、笑っていられる。友だちってありがたいな、と実感するのは何度目だろう。
「みんな、ありがとう」
「ユウくん、どうしたの?」
「そう思っただけ。お部屋を見せて」
なんだか気恥ずかしくて、僕は鍵を開けるコーチェロくんを急かした。
388
あなたにおすすめの小説
異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました
黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。
彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。
戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。
現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと!
「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」
ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。
絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。
伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進!
迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る!
これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー!
美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。
人生、逆転できないことなんて何もない!
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。
星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。
前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。
だが図書室の記録が冤罪を覆す。
そしてレイは知る。
聖女ディーンの本当の名はアキラ。
同じ日本から来た存在だった。
帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。
秘密を共有した二人は、友達になる。
人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまいネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。
名前が * ゆるゆ になりました。
これからもどうぞよろしくお願い致します!
表紙にはAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。
校正も自力です(笑)
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる