オコジョに転生したので、可愛い飼い主の夜を覗いてます

犬派だんぜん

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ガリア王国王宮編

7. 解毒の魔法。王族怖いよ

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 結局、治癒をして見せる話は曖昧になって、謁見が終わった。
 というかハゲタヌキが怒りに真っ赤になっているので、王様が謁見を終わらせたのだ。他の国の王子様もいる前でこれ以上なんかやらかさないようにってことなのかも。オレ襲撃されたりしないよね?

 あのハゲタヌキ、大きく分けて3つある派閥の、治癒術師のいない派閥のトップらしい。あとの2つにはそれぞれ姫とオレがいるから、姫のこともディスってたのか。自分とこに治癒術師がいなくて、焦ってたんだな。

「お前ら自由過ぎるだろ。なんであそこで寝そべれるんだよ」

 謁見の間で空気になってたキュリアンが愚痴ってるけど、だって飽きたんだもん。だいたいさ、しょせん獣って言うんだったら、獣のオレたちが人の決めたルールにそれなりに従ってるだけで褒めてよね。ぷん。

「キリくん、実は怒ってたんだね。まああのおっさんの言い方はないよなあ。ジル、よく頑張ったな。よしよし」
「リュード、城内では発言に気を付けなさい」
「すみません」

 謁見が終わったのに、オレたちはまだお城にいる。なんでかって、これから王子様とお茶会だからだ。めんどくさーい。
 獣だ獣だ言われて、多分リュードも頭に来てるんだろうな。オレもだけどジルもけなされたようなもんだからね。ちなみにジルは、今日の晩御飯何かなって考えてたから、話を聞いてなかったそうだ。
 やっぱりジルは大物だよ。ジルの頭の中は、リュードと肉、ちょびっとオレって感じかも。

 だいぶ待たされて、やっと会場の庭に案内されたんだけど、なんか椅子多くない?こっちはお兄さんと伯爵とロビンバル5人だから、椅子は8客で足りるはずなのに、倍くらいあるよ。もう帰りたい。

「キリくん、分かるけどもうちょっと頑張ってね」
「おそらくこの国の王族もご同席されるんだろう。キリくんとジルくんは庭で遊んでいていいようにするから、最初だけ我慢してくれ」

 お兄さんと伯爵に慰められるけど、お城で会う王族と貴族にいいイメージないんだよね。


 お茶会の席にやってきたのは、ミリアルの王子様と見覚えのある執事さん、それからさっき見たガリアの王様と王様の横にいた宰相さん、それから初めて見る人たちだった。王妃様とその子どもたちとお付きの人らしい。紹介されたけど興味がないからふーんで流した。
 オレの椅子はないので、ジルの背中に乗っているけど、それを見た王子様が眉をひそめた。ご主人の膝だと、そのまま逃げられなくなりそうだから、ジルの背中一択なんだけど、マナー的にダメだった感じ?

「イタチ用の椅子を頼んでいたはずですが」
「申し訳ございません。入りきりませんので外しました」

 うわー、まじかー。王子様、前にミリアルのお城でお茶会した時みたいにオレの椅子を頼んでくれてたのに、ガリア側が勝手に外しちゃったんだ。オレがメインのお茶会じゃなかったのか、と王子様の眉間のしわが雄弁に語っている。
 治癒魔法が使えても獣は獣って扱いをガリアのお城で受けて、ミリアルではちゃんと治癒術師として扱われてたんだなあと今更気付いた。1人だけオレを毛皮にしようとしたヤツはいたけど、みんな会話のできる相手として扱ってくれてたね。
 この国には姫をはじめ冒険者の治癒術師もいるから、オレは治癒術師である前に獣ってことだな。よし、この国の王族と貴族は治癒しないぞ。オレ獣だからね!

「席もないことですし、キリとジルは庭を散策してよろしいでしょうか?」
「陛下、よろしいですよね」

 おお、伯爵がこの状況に乗っかってオレたちの自由を確保しようとしてくれている。王子様も王様に念を押してくれて王様の許可が出たし、オレたちは晴れて自由の身だ。やっほーい!

「イタチ、ライノがお前の好きなクッキーを用意してきているから、遊びに行く前にもらいなさい」

 やったー!王宮のクッキー美味しかったんだよね。
 ご主人、お兄さん、伯爵の顔を順番に見てオッケーがもらえたので、リュードも見る。ジルを仲間外れにしたら可哀想でしょ。

「え?」
「フォレストウルフが気に入るかは分からないが、食べてみるといい」
「は、はい。ジル、もらっておいで」

 よーし、ジル行くぞ。あの黒い服の人だ!
 執事さん、クッキーください!

 芝生の上にテーブルクロスのような布が敷かれて、その上に綺麗にクッキーを盛り付けたお皿が置かれた。おお、前に美味しかったナッツのクッキーがあるぞ。いただきまーす。うまうま。
 ジルはお皿の上のクッキーをペロッと食べて、土みたいで美味しくない、と言った。まあそうだよな。ジルって日頃肉ばっかだもんな。オオカミは肉食寄りの雑食だったと思うけど、クッキーはお気に召さなかったらしい。今までもオレが冒険者に貰ってても食べたそうにしなかったし。
 執事さんも美味しくなさそうにしているジルを見て笑っている。

「申し訳ございません。次は肉を用意しておきますね」
「クゥーン」

 ジル、これはミリアルの王宮に極上の肉を貰いに行かないといけないぞ。
 それにしても、王宮のクッキーは美味しいねえ。執事さん、ナッツ入りおかわりください!

 心ゆくまでクッキーを味わって、満足満足。残ったものはお土産に持たせてくれるらしい。
 執事さんありがとう。王子様にもお礼に行かないとね。

「どうした。クッキーはもうよいのか?」

 美味しかったです。ご馳走さまでした。ぺこり。
 オレの横でジルも一緒に頭を下げている。

「それはクッキーの礼かな。可愛いな。仲がいいんだな」
「ジルは、キリのことを群れの子どもと思っているのではないかと見受けられることがあります」
「攫われそうになった時もウルフが助けたと聞いたが、それならば納得がいくな。さあ、遊んできなさい」

 はーい。ここから見える範囲で遊んでいいらしいので、芝生を思いっきり走り回ろう。
 でもその前に、ご主人、走り回ったら落ちそうだから、尻尾のリボンを取って。ジルのもね。
 用意できたし、ジル、鬼ごっこだ。行くぞ!

 オレとジルだと鬼ごっこにはならないんだけど、ジルが手加減してくれて、2匹で芝生を駆け回った。手入れのされた芝生、サイコー!
 伯爵の庭は芝生を傷つけたらダメかなってちょっと遠慮があったけど、ここは遠慮入らないよね。オレたち獣だからね!
 ときどきご主人たちの机の近くを通ると、リュードたちが羨ましそうな目で見て来るけど、頑張れ。オレたちが代わりに楽しんでおくから。

「ジル―、帰っておいで」

 リュードがジルを呼んでるので、ジルがスタートダッシュでジルのところに戻って行く。
 肉の上手そうな匂いが漂ってくる。オレだけクッキーを楽しんだから、ジルに肉が用意されたらしい。あれ、なんか変な臭いもする。

「ギャギャッ!」
「ヴフッ」

 食べないように、ジルに体当たりをして止めた。

 キリ?どうしたの?食べたい?変な臭いするから美味しくないかも。
 食べるな!それ毒が入ってる。
 変な臭いは毒?
 多分。食べてないよな?
 食べてないよ。

 診断の魔法で見ればいいのかと思って思い出した。王宮って魔法禁止だ。

「キリ、どうした?」

 ご主人、この肉変な臭いがする。多分毒が入ってるよ。

「キリ、ジル、食べてないよね?」
「どうした?」
「肉から変な臭いがするそうです。その……、毒ではないかと疑っているようです」
「なんだとっ?!」
「全員その場を動かないでください!」

 多分現場保存的な意味で、護衛が動くなと言ったけど、リュードは無視してこっちに走り寄って来て、ジルのマズルを掴んだ。

「ジル!食べてないよな?口開けて!」
「リュード、大丈夫だ。ジルも変な臭いがするからと食べていない。食べていても、キリがいるから大丈夫だ。落ち着け」
「あ、ああ。そうだな」

 リュードがジルに抱き着いて、よかった、本当によかった、と撫でて、ジルもリュードに首をスリスリして、大丈夫だよとリュードを慰めている。これってオレを狙ったのにジルが巻き込まれたんだよね。ジル、リュード、ごめんね。

「陛下、鑑定の魔法使用の許可を頂けますか?ガリア、ミリアル、冒険者の3者で確認するのがよろしいかと思いますが」
「……そうだな。鑑定の魔法の使えるものを」

 王子様が提案してくれて、毒が入っているかどうかを鑑定の魔法で確認する。
 ご主人とリュードはどっちにするか話し合って、ご主人になった。リュードは動揺していて自信がないからご主人に任せるそうだ。狙われたのはジルだしね。
 ミリアルからは執事さん、ガリアは王様の護衛をしている人になった。

 せーので魔法をつかって、鑑定だ。

「毒物が混ざっています」
「毒ですね」
「アリセノファルトが混ぜられています」

 やっぱり毒だったんだけど、執事さんが毒の種類まで特定した。すごいな。

「キリ様、変な臭いがするとのことですが、今もしますか?」

 するよ。オレがうんうん頷いているので、ジルも真似て頷いている。どういう意味の質問だろう。
 執事さんが王子様を見た。

「イタチ、いや、キリ、ライノが毒に侵されたら治癒してもらえるか?」

 へ?どういうこと?もしかして食べてみるの?ダメだよ、そんなのダメだよ。ぶんぶん首を横に振る。ダメ、絶対。

「キリ、ライノ様は臭いを確認されるんだろう。アリセノファルトは無味無臭のはずだから」

 それならいいけど。怖いことしないでね。臭いで毒が特定できるって、王族の周りは怖いな。
 王子様がオレの治癒魔法の使用許可も取ってくれたので、執事さんの近くにスタンバイ。

 執事さんは小さく切り分けた肉をくんくん嗅いで、臭いはしませんね、と言った。
 オレたちにこの破片も臭うかと質問するので、うんうん頷くと、人の嗅覚では感じ取れないようですね、と言って食べた。え?

「ギャギャギャ!」
「キリ、落ち着け」

 いやいや、落ち着いてられないって。食べたよ。食べたよ。食べないって言ったじゃん!
 ペッとハンカチに出してから、味もしませんね、だそうだ。いやいやいや、味も臭いもしなくても毒だよね?
 執事さんに駆け寄ろうとしたらご主人に抱き上げられた。なんで邪魔するの。解毒しなきゃ。
 どれくらいで症状が出るか見てるって、人体実験反対!
 いつでも解毒の魔法を飛ばせるように用意していると、だんだん手元が明るく輝いてきた。

「キリ、何を解毒するつもりなの」
「ライノ、肉から離れろ。そのままだと肉も一緒に解毒されそうだ」

 執事さんが芝生のほうへ歩いて少し離れたところで、膝をついた。唇青くなってるよ。ヤバくない?ご主人、もういいよね?やっちゃうよ?!

「これ以上はキリが待てません」
「構わない。解毒してくれ」

 毒なくなれーーーーーーー!
 めちゃめちゃ光ったけど、ちゃんと解毒されたでしょう。診断の魔法で見ても大丈夫そうだ。あ、口の中がちょっとただれてるから、怪我を治す魔法もえいっ。ふう。

「大丈夫ですか?」
「はい。お手数をおかけしました。無味無臭で、少量の摂取でもすぐに呼吸が苦しくなるなど、やはりアリセノファルトのようですね。キリ様とジル様はおそらく嗅覚が鋭いので感じられたのでしょう」
「ご苦労。キリ、すまないな。この場ではっきりさせておきたかったからな」

 いやいやいやいや、なんでみんなそんなに冷静なんだよ。オレだけテンパって、オレがおかしいの?毒だよ??

「キリくんの慌てぶりがすごくて、逆に冷静になったよ。お疲れ様」
「あーうん、ジルが何食べてもキリくんがいれば大丈夫な気がしてきたよ」

 オレが治せるからって、毒は食べちゃダメなの。もう。
 あれ食べれる?ってジル、やめなさい。ちゃんと美味しい肉作ってもらうようにお願いするから、あれは毒なの。食べないの。
 お前はショコラを食べてるじゃないかって?あれは毒じゃなくてお菓子なの。

「陛下、アリセノファルトの毒が、ミリアルと友好を結ぶ冒険者の使役獣に対して使われたことは間違いないようです。ミリアル王国として、真相の解明を求めます」
「必ず行うと約束しよう」

 なんか難しい政治の話になっちゃった。
 後で教えてもらったんだけど、狙いはオレじゃなくて王子様だった可能性もあるんだって。王太子を差し置いて、王子様が次の王様になるかもしれないっていう可能性が出てきちゃったことで、王子様が狙われてもおかしくない。でもあの肉は食べてもジルかオレだけだと思ったら、王子様がいるところでオレに何かあれば、王子様の評判が落ちちゃうかららしい。
 まあ、そんなこんなで誰がやったかはっきりさせろよ、うやむやにするなよ、と言うために、執事さんがちょっと無茶をしたらしい。もう、そういうの、オレの前でやめてよね。

 ちなみに執事さんが毒の種類まで鑑定で分かるのは、それだけ毒を研究しているかららしくって、王族やっぱり怖いよ。
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