痛くしないで!‐先生と始める甘い治療は胸がドキドキしかしません!‐

sae

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 仕事終わりのロッカールームで、香苗は桃瀬に報告していた。

「あれはもう加虐心も煽られてる感じがしたね。先生ってさどっちかって言うと操作型っていうか洗脳型っていうか……」
「サイコパスですよね」
 桃瀬がバッサリと言い切る。香苗もそれをフォローしたいが言葉を見つけられない。穏やかで優しい知的な雰囲気からは想像もつかないほど三嶌は病んでいるらしい。

「旭先生から昔の彼女の話聞いたときは度肝抜かれましたよ。太い鎖とガチの首輪あったらしいですよ?ヤバくないですか?独占欲は強い、嫉妬深い、自分がどれだけ愛してるか伝えまくってそれが怖くて逃げられるってもはや普通にストーカーでしょ。あれだけのスペック持ってて残念過ぎません?美形だから余計怖いんですよね、見た目ソフトで優しそうだから騙されて近寄ったら監禁レベルって……捕まりますよ」
「しかも寄ってこられるとダメなんだよね、黛様とかさぁ」
「黛様もヤンデレっぽいけどあれメンヘラ女でしょ。絶対先生とはうまくいきませんって」
 香苗もそれに納得した。実際黛様のラブレターは開封もされずアシスタントたちに手渡されている。それはシュレッダー行きという無言の命令だ。興味のない人間には三嶌は容赦がなかった。廃棄命令のラブレターを二人がこっそり読んでいることは秘密にしているが多分バレている気がしている。


「でも可愛かったわ、確かに。ちょっと変だけど。先生も言ってたけど妄想癖が激しめっていうか……なんか頭の中常に暴走してる感じはあったな」
 百合のことを思い出しつつ香苗は口にする。

「聞きたかったなぁ、その変態会話!ギャグじゃないですかぁ!」
 桃瀬がケラケラ笑うが正直あの場にいた香苗は笑えなかった、ドン引きしていたくらいなのだから。

 百合の口の中はあれから痛みは落ち着きだして比較的穏やかな生活が送れている。痛み止めは一度だけ飲んでそれっきり飲まずにやり過ごせていた。たまに鈍痛と違和感はあるが生活するうえで気になるレベルではない。

「良かったね。先生と相性良さそうで」
 お昼休憩に冴子に笑顔で言われて百合は三嶌のことを思い出して少し照れて俯いた。

「カッコよかったでしょ?優しいし、いい先生じゃなかった?」
「はい……や、やさしかった、です」
「可愛い人って先生言ってたよ、百合ちゃんのこと」
 冴子の言葉に飲みかけていたお茶が喉もとでゴキュッと鳴った。

「ななな、なんの話ですか?ていうか、冴子さん通ってるんですか?」
「ううん、ちょうど昨日三カ月検診で予約取ってたから行ってきただけだよ?歯石取りしてもらっただけ。先生と百合ちゃんの話で盛り上がっちゃったよ~」

 綺麗な冴子は口の中までしっかりとケアしていた。病院嫌いで必要に駆られなければ行かない自分とは大違いで尊敬しかない。しかし、冴子と三嶌が自分のことで何を話してそんなに盛り上がれるのか。聞きたいけれど聞くのが怖すぎて何も問いただせなかった。

 そしてそれは冴子に自分の邪な気持ちを悟られたくないという理由もあったのだ。

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