あるクリスマスの風景

相原伊織

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       Ⅴ

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 チャーリーがきてから三度目の十二月がやってきた。小さな暖炉には二人で集めた薪がくべられ、部屋を暖かな空気と優しい色合いの光で満たした。日が落ちると暖炉の踊るような明かりはその強さを増し、り切れた絨毯じゅうたんのうえに不規則に揺れ動く陰影をえがき出した。外ではこの冬最初の雪がちらつき始め、街の喧騒けんそうや人々のあらゆる想いを吸い込みながら、静かにしずかに降り積もってゆく…。チャーリーは暖炉のそばに座り込み、ひざのうえで眠る猫が目を覚まさぬように時折視線を落としながらも、ヘルターの本に読みふけっていた。ディッケンズの『クリスマス・キャロル』だった。ヘルターは珍しく、朝から一人で出かけている。なんでも、クリスマスの準備のための「ちょっと野暮用」なんだとか。帰りが遅いのが少し心配だったものの、きっとわたしへのクリスマス・プレゼントに関係があるんだわ、とチャーリーは思った。去年はクリスマス・リースの実みたいに上品で深みのある赤いインクをプレゼントしてくれた…。普段用の黒いインクを買うお金をそれに使ってしまったみたいで、何ヶ月もずっとインクがなくって大変そうだったっけ。その前の年はわたしがボストンにきたばっかりで、ヘルターとっておきの秘密の場所から一面の夜景を見せてくれた…。わたしからはきらきらのツリーの絵のクリスマス・カード。次の年は………やっぱりきらきらのツリーの絵のクリスマス・カードだったな。特別なときにだけ使う金色の絵の具で、世界で一番素敵なクリスマス・ツリーの絵をくの。裏面にメッセージをそえて…。ヘルターはいつも、ものすごく喜んでくれた。今年のクリスマス・プレゼントは何かな。わたしは、ずっとあげたかったけれど去年はあげられなかったとっておきの………
チャーリーの膝のうえでニコライ三世が目を覚まし、すばやくドアのほうに駆けていく。
「あら、ニコ…?」
少しあとで玄関のドアが開く音と、雪を払うバサバサという音が聞こえた。
「外は雪だよ、チャーリー。ただいま」
雪を払った上着をポールハンガーに掛けるヘルターの眼差しは、なぜかどことなく寂しげだった。「遅くなってごめんよ。退屈だったかい?」
「ううん。平気よ。おかえりなさい」チャーリーは後ろに本を棚に戻した。そしてヘルターが無事に帰ってきたことを喜び、噛み締めるかのように、首を傾けにっこりと微笑んだ。「ご飯にしましょうか」

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