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埋もれた祈りを秘める雪の章
8.雪が積もるように
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初雪の日、思わず声が漏れた。
王都の雪は薄く、人々の足に踏まれればすぐ泥に変わる。
けれど、この辺境の雪は違った。
空から落ちてくる白い結晶はふわりと舞い、触れればすぐ溶けてしまいそうなのに、地面をあっという間に覆っていく。
世界が静かな銀色の幕に閉ざされていくよう。
「……きれい……」
伸ばした手の先で、白は儚く消えた。
その時、背後から抑えた笑い声が聞こえた。
振り返ると、辺境伯様が、ほんのわずかに口元をゆるめていた。
「すみません……!大変な冷害をもたらすものなのに、呑気なことを」
「いや。……確かに、美しいものだと俺も思う」
「……恐れ入ります」
「子供の頃は、美味そうだと思ったな。甘くてやわらかそうだと……」
ふっと思い出すように笑ってから、辺境伯様はばつが悪そうに「忘れてくれ」と言った。
その顔を少々可愛らしいと思ってしまった。
それからの日々、雪は降り続いた。
領地は厚い白に閉ざされ、人も物も動きづらくなる季節。
代わりに、魔獣の動きも鈍重になり、すべてのものは冬の中に閉じ込められていく。
冬支度を終えて一息ついたこの辺境伯領は、静かに雪の中に埋もれていくようだった。
辺境伯様は相変わらず忙しそうで、朝から晩まで執務室の灯が消えることはなかった。
それでも――不思議なことに、午後のお茶だけは共にする機会が増えた。
暖炉の火が弾ける静かな部屋で、雪の落ちる音を聞きながら、二人きりで過ごす短い時間。
話題は大きなことではない。
冬に強い作物の話、街の子供たちが作る雪灯籠の話、使用人たちの生活への配慮……
お茶会と言うより、定例の報告会と言った方が似つかわしい。ほんの少しの時間で終わることも多い。
けれど、時折訪れる沈黙が、いつしかやさしいものに変わっていた。
湯気の向こうで目が合うたび、胸が少し跳ねた。
辺境伯様の視線は以前より柔らかくなっている気がする。
この方は、いつも丁寧に耳を傾けてくれる。
私の言葉を途中で遮らず、無理を求めず、必ず「できる範囲でいい」と残してくれる。
そのささやかな優しさに触れるたび、胸の奥が静かに満たされていくのを感じた。
私は、何も望まずにここへ来た。強いて言うなら、逃げ場所が欲しかった。
愛情どころか、安らぎすら求めてはいなかったはずだった。
なのに今、降り積もる雪の中、この静かな時間が、もう少し続けばいいと願ってしまう。
それがどれほど贅沢な願いか、自分でも理解しながら。
湯気の向こう、ふとこちらへ向けられたまなざしが優しい。
その柔らかさひとつで、胸が温かくなる。
冬の冷たさの中で、指先までじんと熱を帯びる。
そうして毎日、降り止まぬ雪が、世界を白に閉ざしていった。
外の空気は刺すように冷たく、息を吸うだけで胸の奥が縮まる。
窓の外は一面の白。
人の気配さえ吸い込んでしまうような、深い静寂だった。
ある日の午後、裏倉庫から派手な崩れる音が響いた。
ギシ、と嫌な軋みが続き、次の瞬間、重い木箱が連鎖するように倒れ、倉庫全体が揺れた。
私は反射的に駆け出していた。
雪を蹴り、息を切らして倉庫へ向かう。
見れば、整然と積まれていた物資の山が、雪と湿気の重みで崩れ、木箱や袋が折り重なって床を埋め尽くしていた。
冬越えの貴重な備蓄が、無残に潰れ、破れ、濡れていた。
(――私が最後に触った)
昨日、乾燥のために敷いた布を広げるスペースを確保するため、ほんの少し物資の位置をずらした。
もちろん許可はとった。問題はなかった筈だ。
けれど、それが支えを弱くしたのかもしれない。それとも……
(厄災の烙印のせい)
背筋が冷たくなった。
視界の端が暗く、狭まり、息が苦しくなる。
胸の奥で、押し殺した恐怖が牙をむいた。
あの倉庫の冷たい夜の空気の感触を、もう忘れたはずなのに。
震える声が漏れる。
「……わ、私の、せい……です……」
唇が凍りつきそうだった。
声にした瞬間、頭の中に次々と過去の光景が押し寄せた。
怯えた目でこちらを見る使用人。
割れた花瓶。
病に倒れた者。
積み重ねられた「偶然」が、すべて私が原因だと言われた日々。
――また、あの目で見られる。
――ここでも、拒まれる。
――私は、ここにもいてはいけなかった。
吐き気がするほど怖くて、寒くて、心臓が痛かった。
そのとき、雪を踏みしめる重く確かな足音が近づいた。
辺境伯様だった。
カイネと数人の使用人を伴っていたが、その表情はいつもと変わらず冷静だった。
素早く倒壊状況を確認し、指示を飛ばす。
「幸い、怪我人はいない。損耗も局所的だし、中身はほとんど無事だ」
そして、私に視線を向けた。
蒼い瞳がまっすぐにこちらを射抜いた。
「申し訳ありませ、わ、わたしの……」
「――あなたのせいではない」
雪より静かで、真っ直ぐな声。
「こういうことは初めてではない。例年より雪が早かったから、雪除けが間に合っていなかった。あなたの行動は関係ない……それより、怪我はないだろうか」
その言葉が、胸の奥に強く届いた瞬間、何かが崩れた。
張りつめていたものが、ぷつりと切れた。
息が震え、視界が滲んだ。
「……ルーチェ嬢?」
「ちが……っ、私は……また、迷惑をかけたと……思って……」
声がうまく出なかった。
涙が一粒、雪に落ちた。
落ちた瞬間、自分で驚いた。
泣くつもりなんてなかったのに。
「す、すみません……泣くのではなくて、説明がしたかっただけで……」
ごしごしと袖で目元を拭く。
「違います、そんなつもりでは……っ泣く気なんて……なかったのに――」
止めようとしても止まらない。
胸の奥から堰を切ったように、止めどなくあふれてくる。
泣けば嫌われる、そう刷り込まれてきた恐怖が顔を上げる。
その肩に、そっと大きな手が触れた。
「……」
嗚咽が止まらず、私はただ、肩を震わせながら涙に任せた。
縋りつくことはできずに下を向く。辺境伯様は私の姿を隠すように立っていた。
慰め慣れている人ではないと、すぐにわかった。
ぎこちなく、手の置きどころに迷っている気配すら伝わってきた。
だからこそ、胸の奥が痛いほど温まった。
肩にふれた手は、手袋越しなのに、あたたかかった。
カイネがこちらの様子をうかがう使用人たちを下がらせている。
イリアは何度も私の背をさすりながら、心配そうに眉を下げていた。
「……大丈夫だ。ここには、誰もあなたを責める者はいない」
不器用な、けれど、まっすぐな声音だった。
「はい……」
これほど救われたと感じた言葉が、今まであっただろうか。
視界が涙で霞みながら、私は初めて心から安堵した。
白い世界の中で、頬を伝う涙だけがあたたかかった。
涙はまだ止まらなかったけれど――怖さではなく、安堵で震えているのだと、ようやく気づいた。
◆
倉庫の後始末が終わり、人心地ついた夜。
暖炉の火は静かに揺れ、橙色の光が執務室の壁を照らしていた。
ダリウスは机に肘をつき、額を押さえた。
まぶたを閉じると、倉庫の前で泣き出したルーチェの姿が浮かんだ。
あの細い肩が震えた瞬間、
気づけば、抱きしめたいと――
心の奥で強く思ってしまっていた。
その衝動に、自分で驚いた。
慰めようと手を伸ばしたつもりだった。
だが、あの時ほんとうに望んでいたのは、ただ腕の中に守り抱いてしまうことだった。
そんな乱暴さを、自分が持っているとは思わなかった。
「……参った」
ひとり言のように呟く。
仕事の疲れでも、淡い同情でもない。
もっと深い場所から湧き上がる感情。
名をつけるなら、あまりに単純で、避けるべきもの。
ノックとともに扉が開き、カイネが入ってきた。
いつもの軽い足取りと、にやにやした笑み。
「いやあ、旦那様。情が移りましたねえ。あれは、どう見ても――」
軽口を続けようとした口を、ダリウスの低い声が遮った。
「やめろ」
短く鋭い声だったが、怒りではなく戸惑いが滲んでいた。
カイネは笑って肩をすくめた。
「はは、悪気はありませんよ。ただまあ、見ていて微笑ましかったので」
その時、背後の扉からそっと顔を出したイリアが、遠慮なくため息をついた。
「カイネ……楽しそうにしてる場合じゃないでしょう。旦那様がどれだけ悩んでるか、わかってるの?ルーチェ様も……」
「わかってるから、面白いんじゃ」
「怒るわよ。わきまえて」
「はい……」
イリアの静かな一言に、さすがのカイネも咳払いして黙った。
ダリウスは、ゆっくり息を吐いた。
「彼女にしてみれば、実家での扱いはどうあれ、ここにいるのも俺との婚姻も、その不当な扱いの結果だ。疎まれている……とまでは、思いたくないが……」
落ち着いた声で続ける。
「だから、軽々しくからかいの材料にするな。ルーチェ嬢は」
言葉が止まる。
金まで添えて厄介払いされた娘。
金のために引き受けた婚約者。
気の毒な女性。「厄災」の危険をはらむ女。聡明で忍耐強い女性――
どんな言い方が正しいのか、思いつかない。
やっと絞り出した声は、思いがけず穏やかだった。
「守りたいと思った。……別に、それだけだ。彼女も最早、当家の領民の一人なのだから。穏やかに……幸福に、生きていけるように、してやりたいと思う」
カイネの目が丸くなり、続いて口元がじんわりと笑みの形に変わった。
だが結局、何も言わなかった。
イリアはそっと視線を伏せ、小さく頷いた。
部屋には再び、暖炉の火の音だけが残った。
◆
昔の夢を見た。
まだ私が「厄災」の烙印を見つけられる前。
王都の華やかな社交界に、ひどく場違いな人物が現れたことがあった。
銀髪——本来なら、光を受けてきらめくはずの色。
なのにその時の彼の髪は、銀と言うよりくすんだ灰色に見えた。乾いた風にさらされ艶を失い、ところどころ乱れていた。
その乱れには、寝る間も惜しんで働き続けた者だけが纏う、追い詰められた気迫の影が宿っていた。
蒼い瞳も、まっすぐではあるのに、深く疲れていた。
まるで、眠ることすら許されていないかのように。隈を作って、睨むように力を入れて。
そして服。貴族の礼装としては明らかに古く、糸のほつれを丁寧に繕った跡がいくつも並んでいた。
色褪せた生地は、何度も洗われ、何度も補修され、それでも礼装として形を保とうとしていた。
会場の空気が、たちまちざわめきに変わった。
「まあ……あれが辺境伯?」
「ひどい格好。あれでは乞食のよう」
「貧乏だという噂は本当だったのね」
「まさか本当に援助を求めに?」
「せめて服を新調すればいいのに」
嘲笑交じりのひそひそ声が、会場中に広がった。
さざ波のように嘲笑が広がるたび、彼は静かに会場を見渡し、それでも逃げるような素振りを一度もしなかった。
貴族ひとりひとりに声をかけ、深く、深く頭を下げていた。
必死で、切実で、その背負う苦しみが痛いほど伝わった。
本来なら、辺境伯ほどの立場であれば頭を下げる必要などないはず。
それなのに、彼は王都に集まった貴族たちへ、一人ひとりに礼を尽くして回っていた。
——理由は、すぐに理解できた。
当時の辺境伯領は、魔獣の大量発生によって壊滅寸前。
畑は焼かれ、家畜は失われ、疫病まで広がり、領民たちは飢えと恐怖に追い込まれていた。
王都からの支援も断ち切られた。
若くして家督を継いだ辺境伯様に残された手立ては、王都の裕福な貴族たちから、どうにか援助を引き出すこと。
だからこそ——彼は服の古さも体裁も、気にしている余裕などなかったのだ。
人々を生かすために、食糧や薬品を買うために、エネルギーとなる魔晶石を手に入れるために。
彼は自尊心よりも領民の命を選んだ。その切実な願いが、彼の姿勢からありありと伝わってきた。
銀髪は疲れに揺れ、蒼い瞳には眠れぬ夜の影が差していた。
それでも背筋は折れず、誰に嘲笑されても、深く頭を下げ続けていた。
「どうか……どうか、力を貸してほしい」
声は小さかったけれど、震えていなかった。
誇りを保ったまま、必死に頭を下げる。
(あんなふうに、他人の命のために頭を下げられる人がどれほどいるのかしら……)
幼い私は、その背中をただ見つめるしかできなかった。
(思い出した)
彼はたった一人、王都の貴族たちに援助を求めに来ていたのだ。
――それ故に、貧乏辺境伯などと。
「そうだ……」
思い出した。あの時の方。あれが、辺境伯様だった。
私はそっと胸に手を当てる。
(……あんなにも立派な方だったのに。貴族たちは、服が古いというだけで笑っていた)
あの頃、私はまだ幼くて、彼に声をかけることもできなかった。
けれど心の中では、ずっと思っていた。
(立派だわ。あんなふうに頭を下げるなんて、簡単にできることじゃない)
その人が今、私を迎え入れてくれている。
「厄災」と呼ばれた私を、拒まず、蔑まず。静かに受け入れてくれた。
目覚めてしまった私は、部屋の灯りを小さく灯した。
あの方の腕の温度を思い返すたび、息が詰まりそうになった。
誰かに支えられることが、こんなにも心を震わせるとは知らなかった。
触れられたのはほんの一瞬。
けれど。
ゆだねてはいけない。
迷惑をかけてはいけない。
甘えてしまえば、きっと何かを壊してしまう。
その恐怖が、熱を打ち消すように冷たい影を落とした。
涙を見せるなど、愚かだった。
あの方に気を遣わせてしまった。
弱さを見せるほど、わたしはここでの立場を危うくするかもしれないのに。
「……」
だけど──どうして涙が溢れたのか、今ならわかる。
責められなかったからだ。
怯えた目で見られなかったからだ。
「大丈夫だ」と言われた瞬間、胸の奥で固く閉じていた扉が、音を立てて軋んだ。
あの時、本当は抱きしめてほしかった。
そんな願いが生まれてしまった自分に気づき、息が止まる。
望むだけで許されるほど、わたしは軽い存在ではない。
ずっと苦労を重ねられて来た方に寄りかかることなんて、決してあってはならない。
だから、胸の高鳴りも、こぼれそうな想いも、すべてここで閉じ込める。
そのはずなのに──
今も心臓が震えている。
苦しいほどのこの鼓動も、雪が静かに積もるように、いつか無音になるだろうか。
それを願うのに、ほんの少しだけ惜しいと思っている自分がいる。
私は毛布を握りしめ、目を閉じた。
王都の雪は薄く、人々の足に踏まれればすぐ泥に変わる。
けれど、この辺境の雪は違った。
空から落ちてくる白い結晶はふわりと舞い、触れればすぐ溶けてしまいそうなのに、地面をあっという間に覆っていく。
世界が静かな銀色の幕に閉ざされていくよう。
「……きれい……」
伸ばした手の先で、白は儚く消えた。
その時、背後から抑えた笑い声が聞こえた。
振り返ると、辺境伯様が、ほんのわずかに口元をゆるめていた。
「すみません……!大変な冷害をもたらすものなのに、呑気なことを」
「いや。……確かに、美しいものだと俺も思う」
「……恐れ入ります」
「子供の頃は、美味そうだと思ったな。甘くてやわらかそうだと……」
ふっと思い出すように笑ってから、辺境伯様はばつが悪そうに「忘れてくれ」と言った。
その顔を少々可愛らしいと思ってしまった。
それからの日々、雪は降り続いた。
領地は厚い白に閉ざされ、人も物も動きづらくなる季節。
代わりに、魔獣の動きも鈍重になり、すべてのものは冬の中に閉じ込められていく。
冬支度を終えて一息ついたこの辺境伯領は、静かに雪の中に埋もれていくようだった。
辺境伯様は相変わらず忙しそうで、朝から晩まで執務室の灯が消えることはなかった。
それでも――不思議なことに、午後のお茶だけは共にする機会が増えた。
暖炉の火が弾ける静かな部屋で、雪の落ちる音を聞きながら、二人きりで過ごす短い時間。
話題は大きなことではない。
冬に強い作物の話、街の子供たちが作る雪灯籠の話、使用人たちの生活への配慮……
お茶会と言うより、定例の報告会と言った方が似つかわしい。ほんの少しの時間で終わることも多い。
けれど、時折訪れる沈黙が、いつしかやさしいものに変わっていた。
湯気の向こうで目が合うたび、胸が少し跳ねた。
辺境伯様の視線は以前より柔らかくなっている気がする。
この方は、いつも丁寧に耳を傾けてくれる。
私の言葉を途中で遮らず、無理を求めず、必ず「できる範囲でいい」と残してくれる。
そのささやかな優しさに触れるたび、胸の奥が静かに満たされていくのを感じた。
私は、何も望まずにここへ来た。強いて言うなら、逃げ場所が欲しかった。
愛情どころか、安らぎすら求めてはいなかったはずだった。
なのに今、降り積もる雪の中、この静かな時間が、もう少し続けばいいと願ってしまう。
それがどれほど贅沢な願いか、自分でも理解しながら。
湯気の向こう、ふとこちらへ向けられたまなざしが優しい。
その柔らかさひとつで、胸が温かくなる。
冬の冷たさの中で、指先までじんと熱を帯びる。
そうして毎日、降り止まぬ雪が、世界を白に閉ざしていった。
外の空気は刺すように冷たく、息を吸うだけで胸の奥が縮まる。
窓の外は一面の白。
人の気配さえ吸い込んでしまうような、深い静寂だった。
ある日の午後、裏倉庫から派手な崩れる音が響いた。
ギシ、と嫌な軋みが続き、次の瞬間、重い木箱が連鎖するように倒れ、倉庫全体が揺れた。
私は反射的に駆け出していた。
雪を蹴り、息を切らして倉庫へ向かう。
見れば、整然と積まれていた物資の山が、雪と湿気の重みで崩れ、木箱や袋が折り重なって床を埋め尽くしていた。
冬越えの貴重な備蓄が、無残に潰れ、破れ、濡れていた。
(――私が最後に触った)
昨日、乾燥のために敷いた布を広げるスペースを確保するため、ほんの少し物資の位置をずらした。
もちろん許可はとった。問題はなかった筈だ。
けれど、それが支えを弱くしたのかもしれない。それとも……
(厄災の烙印のせい)
背筋が冷たくなった。
視界の端が暗く、狭まり、息が苦しくなる。
胸の奥で、押し殺した恐怖が牙をむいた。
あの倉庫の冷たい夜の空気の感触を、もう忘れたはずなのに。
震える声が漏れる。
「……わ、私の、せい……です……」
唇が凍りつきそうだった。
声にした瞬間、頭の中に次々と過去の光景が押し寄せた。
怯えた目でこちらを見る使用人。
割れた花瓶。
病に倒れた者。
積み重ねられた「偶然」が、すべて私が原因だと言われた日々。
――また、あの目で見られる。
――ここでも、拒まれる。
――私は、ここにもいてはいけなかった。
吐き気がするほど怖くて、寒くて、心臓が痛かった。
そのとき、雪を踏みしめる重く確かな足音が近づいた。
辺境伯様だった。
カイネと数人の使用人を伴っていたが、その表情はいつもと変わらず冷静だった。
素早く倒壊状況を確認し、指示を飛ばす。
「幸い、怪我人はいない。損耗も局所的だし、中身はほとんど無事だ」
そして、私に視線を向けた。
蒼い瞳がまっすぐにこちらを射抜いた。
「申し訳ありませ、わ、わたしの……」
「――あなたのせいではない」
雪より静かで、真っ直ぐな声。
「こういうことは初めてではない。例年より雪が早かったから、雪除けが間に合っていなかった。あなたの行動は関係ない……それより、怪我はないだろうか」
その言葉が、胸の奥に強く届いた瞬間、何かが崩れた。
張りつめていたものが、ぷつりと切れた。
息が震え、視界が滲んだ。
「……ルーチェ嬢?」
「ちが……っ、私は……また、迷惑をかけたと……思って……」
声がうまく出なかった。
涙が一粒、雪に落ちた。
落ちた瞬間、自分で驚いた。
泣くつもりなんてなかったのに。
「す、すみません……泣くのではなくて、説明がしたかっただけで……」
ごしごしと袖で目元を拭く。
「違います、そんなつもりでは……っ泣く気なんて……なかったのに――」
止めようとしても止まらない。
胸の奥から堰を切ったように、止めどなくあふれてくる。
泣けば嫌われる、そう刷り込まれてきた恐怖が顔を上げる。
その肩に、そっと大きな手が触れた。
「……」
嗚咽が止まらず、私はただ、肩を震わせながら涙に任せた。
縋りつくことはできずに下を向く。辺境伯様は私の姿を隠すように立っていた。
慰め慣れている人ではないと、すぐにわかった。
ぎこちなく、手の置きどころに迷っている気配すら伝わってきた。
だからこそ、胸の奥が痛いほど温まった。
肩にふれた手は、手袋越しなのに、あたたかかった。
カイネがこちらの様子をうかがう使用人たちを下がらせている。
イリアは何度も私の背をさすりながら、心配そうに眉を下げていた。
「……大丈夫だ。ここには、誰もあなたを責める者はいない」
不器用な、けれど、まっすぐな声音だった。
「はい……」
これほど救われたと感じた言葉が、今まであっただろうか。
視界が涙で霞みながら、私は初めて心から安堵した。
白い世界の中で、頬を伝う涙だけがあたたかかった。
涙はまだ止まらなかったけれど――怖さではなく、安堵で震えているのだと、ようやく気づいた。
◆
倉庫の後始末が終わり、人心地ついた夜。
暖炉の火は静かに揺れ、橙色の光が執務室の壁を照らしていた。
ダリウスは机に肘をつき、額を押さえた。
まぶたを閉じると、倉庫の前で泣き出したルーチェの姿が浮かんだ。
あの細い肩が震えた瞬間、
気づけば、抱きしめたいと――
心の奥で強く思ってしまっていた。
その衝動に、自分で驚いた。
慰めようと手を伸ばしたつもりだった。
だが、あの時ほんとうに望んでいたのは、ただ腕の中に守り抱いてしまうことだった。
そんな乱暴さを、自分が持っているとは思わなかった。
「……参った」
ひとり言のように呟く。
仕事の疲れでも、淡い同情でもない。
もっと深い場所から湧き上がる感情。
名をつけるなら、あまりに単純で、避けるべきもの。
ノックとともに扉が開き、カイネが入ってきた。
いつもの軽い足取りと、にやにやした笑み。
「いやあ、旦那様。情が移りましたねえ。あれは、どう見ても――」
軽口を続けようとした口を、ダリウスの低い声が遮った。
「やめろ」
短く鋭い声だったが、怒りではなく戸惑いが滲んでいた。
カイネは笑って肩をすくめた。
「はは、悪気はありませんよ。ただまあ、見ていて微笑ましかったので」
その時、背後の扉からそっと顔を出したイリアが、遠慮なくため息をついた。
「カイネ……楽しそうにしてる場合じゃないでしょう。旦那様がどれだけ悩んでるか、わかってるの?ルーチェ様も……」
「わかってるから、面白いんじゃ」
「怒るわよ。わきまえて」
「はい……」
イリアの静かな一言に、さすがのカイネも咳払いして黙った。
ダリウスは、ゆっくり息を吐いた。
「彼女にしてみれば、実家での扱いはどうあれ、ここにいるのも俺との婚姻も、その不当な扱いの結果だ。疎まれている……とまでは、思いたくないが……」
落ち着いた声で続ける。
「だから、軽々しくからかいの材料にするな。ルーチェ嬢は」
言葉が止まる。
金まで添えて厄介払いされた娘。
金のために引き受けた婚約者。
気の毒な女性。「厄災」の危険をはらむ女。聡明で忍耐強い女性――
どんな言い方が正しいのか、思いつかない。
やっと絞り出した声は、思いがけず穏やかだった。
「守りたいと思った。……別に、それだけだ。彼女も最早、当家の領民の一人なのだから。穏やかに……幸福に、生きていけるように、してやりたいと思う」
カイネの目が丸くなり、続いて口元がじんわりと笑みの形に変わった。
だが結局、何も言わなかった。
イリアはそっと視線を伏せ、小さく頷いた。
部屋には再び、暖炉の火の音だけが残った。
◆
昔の夢を見た。
まだ私が「厄災」の烙印を見つけられる前。
王都の華やかな社交界に、ひどく場違いな人物が現れたことがあった。
銀髪——本来なら、光を受けてきらめくはずの色。
なのにその時の彼の髪は、銀と言うよりくすんだ灰色に見えた。乾いた風にさらされ艶を失い、ところどころ乱れていた。
その乱れには、寝る間も惜しんで働き続けた者だけが纏う、追い詰められた気迫の影が宿っていた。
蒼い瞳も、まっすぐではあるのに、深く疲れていた。
まるで、眠ることすら許されていないかのように。隈を作って、睨むように力を入れて。
そして服。貴族の礼装としては明らかに古く、糸のほつれを丁寧に繕った跡がいくつも並んでいた。
色褪せた生地は、何度も洗われ、何度も補修され、それでも礼装として形を保とうとしていた。
会場の空気が、たちまちざわめきに変わった。
「まあ……あれが辺境伯?」
「ひどい格好。あれでは乞食のよう」
「貧乏だという噂は本当だったのね」
「まさか本当に援助を求めに?」
「せめて服を新調すればいいのに」
嘲笑交じりのひそひそ声が、会場中に広がった。
さざ波のように嘲笑が広がるたび、彼は静かに会場を見渡し、それでも逃げるような素振りを一度もしなかった。
貴族ひとりひとりに声をかけ、深く、深く頭を下げていた。
必死で、切実で、その背負う苦しみが痛いほど伝わった。
本来なら、辺境伯ほどの立場であれば頭を下げる必要などないはず。
それなのに、彼は王都に集まった貴族たちへ、一人ひとりに礼を尽くして回っていた。
——理由は、すぐに理解できた。
当時の辺境伯領は、魔獣の大量発生によって壊滅寸前。
畑は焼かれ、家畜は失われ、疫病まで広がり、領民たちは飢えと恐怖に追い込まれていた。
王都からの支援も断ち切られた。
若くして家督を継いだ辺境伯様に残された手立ては、王都の裕福な貴族たちから、どうにか援助を引き出すこと。
だからこそ——彼は服の古さも体裁も、気にしている余裕などなかったのだ。
人々を生かすために、食糧や薬品を買うために、エネルギーとなる魔晶石を手に入れるために。
彼は自尊心よりも領民の命を選んだ。その切実な願いが、彼の姿勢からありありと伝わってきた。
銀髪は疲れに揺れ、蒼い瞳には眠れぬ夜の影が差していた。
それでも背筋は折れず、誰に嘲笑されても、深く頭を下げ続けていた。
「どうか……どうか、力を貸してほしい」
声は小さかったけれど、震えていなかった。
誇りを保ったまま、必死に頭を下げる。
(あんなふうに、他人の命のために頭を下げられる人がどれほどいるのかしら……)
幼い私は、その背中をただ見つめるしかできなかった。
(思い出した)
彼はたった一人、王都の貴族たちに援助を求めに来ていたのだ。
――それ故に、貧乏辺境伯などと。
「そうだ……」
思い出した。あの時の方。あれが、辺境伯様だった。
私はそっと胸に手を当てる。
(……あんなにも立派な方だったのに。貴族たちは、服が古いというだけで笑っていた)
あの頃、私はまだ幼くて、彼に声をかけることもできなかった。
けれど心の中では、ずっと思っていた。
(立派だわ。あんなふうに頭を下げるなんて、簡単にできることじゃない)
その人が今、私を迎え入れてくれている。
「厄災」と呼ばれた私を、拒まず、蔑まず。静かに受け入れてくれた。
目覚めてしまった私は、部屋の灯りを小さく灯した。
あの方の腕の温度を思い返すたび、息が詰まりそうになった。
誰かに支えられることが、こんなにも心を震わせるとは知らなかった。
触れられたのはほんの一瞬。
けれど。
ゆだねてはいけない。
迷惑をかけてはいけない。
甘えてしまえば、きっと何かを壊してしまう。
その恐怖が、熱を打ち消すように冷たい影を落とした。
涙を見せるなど、愚かだった。
あの方に気を遣わせてしまった。
弱さを見せるほど、わたしはここでの立場を危うくするかもしれないのに。
「……」
だけど──どうして涙が溢れたのか、今ならわかる。
責められなかったからだ。
怯えた目で見られなかったからだ。
「大丈夫だ」と言われた瞬間、胸の奥で固く閉じていた扉が、音を立てて軋んだ。
あの時、本当は抱きしめてほしかった。
そんな願いが生まれてしまった自分に気づき、息が止まる。
望むだけで許されるほど、わたしは軽い存在ではない。
ずっと苦労を重ねられて来た方に寄りかかることなんて、決してあってはならない。
だから、胸の高鳴りも、こぼれそうな想いも、すべてここで閉じ込める。
そのはずなのに──
今も心臓が震えている。
苦しいほどのこの鼓動も、雪が静かに積もるように、いつか無音になるだろうか。
それを願うのに、ほんの少しだけ惜しいと思っている自分がいる。
私は毛布を握りしめ、目を閉じた。
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