【本編完結】厄災烙印の令嬢は貧乏辺境伯領に嫁がされるようです

あおまる三行

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埋もれた祈りを秘める雪の章

12.推論

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 それにしても、公爵家は、わざわざ辺境まで使いを送り、私を脅すほど、金回りがよくないのだろうか。
 私は、以前訪れた公爵家からの使いの姿を思い出す。
 
 あの人たちは、いつだって余裕を崩さなかった。
 華やかで、豊かで、すべてを持っているはずの家だった。
 義父と妹が、絹織物の新作や舞踏会の装飾のために金を惜しまなかった姿を思い出す。
 光の中心に立つべき家だったはずだ。
 それなのに。
 手元に残された偽造された書類。穏やかな顔で脅してきた使者。
 そのどれもが、非常に不穏だ。
「……大規模鉱山の閉山が、そこまで影響しているの……?」
 魔晶石は生活の中心だ。
 暖房、照明、輸送、通信、軍事――すべてに必要不可欠なもの。
 それが不足し、価格が跳ね上がれば、王都や貴族社会の足元は崩れ始める。
 商人は物資を囲い込み、民衆は不満を募らせ、損得勘定の早い者ほど激しく動き出す。
 公爵家のような巨大な家であれば、自分たちの生活だけではなく、鉱山への投資にも多額の金を注ぎ込んでいるものだ。
 先んじて金の確保に動いている――ということなのだろうか。
「……兄様は、どうしているのかしら」
 ぽつりと漏れた声は、震えていた。
 王宮で働く兄――リヒト兄様。
 きっと今、嵐の中心にいるはずだ。私のことなど遠い過去に押しやって、必死に国政に向き合っているのかもしれない。
 胸がざわつき、指先が強張った。
 鋭く刺さる思いが胸の内を締めつける。
「……私は、帰れない」
 公爵家にも、王都にも。
 もう、あの場所には立つ場所がない。
 そう思うと、不思議なほど心は静かだった。
 ひとつだけ確かな答えが浮かび上がる。
(いいえ、帰らないの)
 私は、この地で生きる。
 逃げるためではなく、誰かに寄りかかるためでもなく。自分の意思で。自分の足で。

(でも……) 
 ――大規模な魔晶石鉱山の枯渇は、過去にもあった事例のはず。
 ――どう対処していたのだろう。
 
 ふと疑問が胸をかすめ、私は自分で整理していた過去の記録を引き出した。
 年代順に並べ、様子を追っていく。
 書庫の窓から差し込む冬の光が、積み重なった帳面の紙端を白く浮かび上がらせる。
 頁をめくる指の感触だけが静けさの中で際立っていた。
「……?」
 魔晶石の鉱山は、一定期間で枯渇し閉山を迎える。その時の混乱と対処は時代によって様々だ。
 小さい鉱脈ほど、よく発見される一方で、閉山は早い。そこまでは当然のこととして納得できる。
(何か、引っかかる……)
 私自身が整理した記録には、整然と数字が並んでいる。
 記録文書とは異なり、数字と簡潔な情報だけを記した自前の用紙を見ていると、不思議なことに気がついた。
 それは魔晶石の枯渇ではなく、発見時のタイミングだ。
(発見の十数年前に、魔獣の大量発生が起こっている……?)
 魔獣の発生が増える。討伐が続く。人の死、災害の記録が続く。
 魔獣の死骸を処理する記録が増える。領は復興していく。
 そしてしばらくして、それとは全く異なる事柄として、新たな鉱脈の報告が記述される――

 順序が、いつも同じだったのだ。
 魔獣の大量発生。死骸の埋却。そして、魔晶石鉱脈の出現。
 数字の記述がそれを示していた。
 けれど、魔獣の発生地と鉱脈の発見地が一致しているわけでもない。
 
 記録では、すべて別の事柄として、異なる項目あるいは冊子に記載されていた。
 魔獣の発生は災害記録として。
 討伐は軍事記録として。
 死骸の処理は領主の行動録として記録される。
 そして魔晶石の発見は経済の記録であり慶事として記される。
 別々の項目に書かれていた内容を集めて整理すると、不思議と、一つの流れが見えてきた。
「……」
 私は、さらに古い書物を紐解いた。
 めくると、辺境伯領でも数百年前に魔晶石が出たと記されている。
 当時の資料では、魔獣の討伐に際して王宮から大規模な援助が下りた、その礼として魔晶石の産出はすべて王都へ献上、小さな鉱脈はそれで枯渇したと書かれている。
 当時も、まず魔獣の発生があり、討伐が行われ、死骸の処理に追われた記録が残る。
 そのあとに鉱脈の存在が報告され、王宮が歓声をあげたらしい。
(まるで……)
 死骸の埋却が新たな鉱脈を生んだかのようだ。
 読めば読むほど、胸の中の冷たさは強くなった。
 魔獣の死体は腐敗すれば疫病を招く。だから必ず処理が必要だ。
 だが、もし死骸の埋却と鉱脈出現が、別々の項目で記録されるべき事柄ではなく、因果関係にあるのだとしたら――。
(もう少し、調べなければ)

 私は調査のために書庫へ赴き、討伐後の処理手順を参照した。
 紙面に並ぶ歴代の記録は、驚くほど几帳面だった。

 ――魔獣の遺骸は、指定地点に運搬し、解体。素材を採取後、聖布に包む。
 ――その後、土中深くに埋却すること。
 ――生半可な処理では疫病の発生を招くので十分に注意のこと。
 ――処理は領主の監督下において、人里離れた地で行うこと。向こう十年、立入を禁ずること。
 ――処理地の選定においては、国王の判断を仰ぐこと。

 何度も線が引かれ、訂正されている部分があった。
 迷い、検討し、それでも最も負担の大きく、リスクの少ない方法を選び続けた跡だ。
 魔獣との戦いの中では、死骸を放置してしまう例も多い。実際、そのせいで魔獣発生地では疫病が出やすいのだ。
 効率が悪く、労力を要し、費用もかさむ方法。だが、最も安全で、疫病の危険を最小限に抑える古式ゆかしいやり方が続けられている。
 ページをめくると、古代の記録の写しが綴じられていた。
 そこには、かつては魔獣の遺骸を処理して王宮へ献上していた、という文章が残っている。
 
 だが、数世代前のヴァルト辺境伯が、王宮への献上を停止したと綴っていた。
 ――難色を示されたため献上を中止。
 ――処理地の選定権は当家に返還。
 ――魔獣討伐、死骸の処理は辺境伯領内で埋却まで完遂のこと。
 とだけある。
 王宮や中央の人々にとっては、魔獣の死骸など穢れにすぎないのだろう。
 それに、廃棄処理は莫大な負担を伴う。
 魔獣からほんのわずかに取れる素材もあるが、魔晶石のようにエネルギーになるわけでもないし、死骸になっても人に害をなす毒素が出る。
 素材採取にも専門技術が要り、危険と労力に見合うものではないということを、記録は冷静に示していた。
 
 思わず、そっと目を閉じた。
 ――誰も見ないところで、どれほどの人々が、どれほどの汗と血を流してきたのだろう。
 机に置いた手に力が入った。
 辺境伯様は、それらすべてを背負ってきたのだ。その重さを想像するだけで胸が苦しくなる。
 だが、思考はそこから止まらなかった。

(もし、この処理方法こそが、魔晶石を生み出す要因の一つなのだとしたら……?)
 私は想像する。
 かつて魔獣の死骸を王家に献上していたのは、王家が埋却場所を――いずれ魔晶石が湧き出る地を管理できるようにするためではないか。
 だが、時代を経るうちに魔晶石が産まれる理由が分からなくなり、死骸の「穢れ」のイメージのみが強く残された。
 各地の魔獣討伐は各領地に任され、魔獣の死骸の処理方法も委ねられた。
(今、魔晶石が採掘されている鉱脈はどれも、百年以上前に発見されたもの……)
 魔獣の死骸の処理地は、穢れを恐れて封鎖されている。
 だとしたら、十一年前に大量発生した魔獣の死骸を埋却した地――このヴァルト辺境伯領には、今、何が埋まっている?


 その可能性に確証はない。すべては後世から見た状況証拠に過ぎない。だが、頭の中では一つの線がつながり始めていた。
 もし現在も同じ流れが繰り返されているなら、魔獣の発生とその処理が、知らずのうちに新たな魔晶石を生んでいる。
「……」
 考えすぎかもしれない。
 けれど、きっと辺境伯様は耳を傾けてくださる。そう思った。



 書庫を出るころには、夕刻の鐘が鳴り始めていた。
 廊下を歩いていると、ちょうど執務室から出てきた辺境伯様と鉢合わせた。
「ルーチェ嬢。探しものは済んだのか」
 その声音に跳ねるように視線を上げる。
 いつもより、少しだけ柔らかい表情だった。
 私が書庫に籠もっていたことを、イリアから聞いたのだろう。
「辺境伯様。……少し、お話ししたいことがあります」
「聞こう」
 迷いなく促され、隣を歩く。
 執務室に通され、ソファに向かい合って腰掛ける。指先が緊張で冷たい。
 それでも、言わなければ。
「魔獣について、です。古い記録を調べていて、気づいたことがありました」
 辺境伯様は静かに頷き、続きを待つ。
「魔獣が大規模に発生した後、その死骸を大量に埋めた地域では――数年後に、魔晶石の鉱脈が見つかることが多いようなのです。……偶然かもしれません。でも、もし相関があるのなら、この領で行われた処理に……意味が、出てくるのではないかと」
 声に力が入る。
 自分でも驚くほど、必死だった。
 調べたことを、たどたどしく説明する。
「……」
 私の話を一通り聞いた辺境伯様は、少し目を見開いた。
 やがて、深い息をひとつ落とす。
「つまり、魔獣の死骸そのものが、魔晶石の生成に関わっている可能性がある、と」
「はい。それも、災害級に大量発生した折のものです。……魔獣が内包する魔力に、何か違いがあるのかもしれません。」
 沈黙が落ちた。
 時計の針の音だけが部屋を満たしている。
 やがて――

「面白い視点だ」
 低く、柔らかく言った。
 驚いて顔を上げると、辺境伯様はどこか誇らしげに、微かに笑っていた。
「すぐ調査しよう。よければ、あなたの整理した記録を俺たちにも共有させてくれ。もし事実なら、この領にとっても、国にとっても大きな意味を持つ」
 その言葉に胸が熱くなる。
「ありがとうございます。確証はまだないのですが……」
「信じている」
 静かに、しかし迷いなく言い切られた。
 呼吸が止まったように感じた。
「君は、よく見て、よく考える。俺も軽々しく決めたわけじゃない。俺は、君の知識と判断を信頼している」
 心臓が激しく脈を打つ。
「……はい」
 返事がやっと絞り出せた。
 沈黙が落ちる。
 だけど、苦しくはない。
 この人は、私をひとりの人間として見てくれている――
「必ず調べる。約束する」
 辺境伯様はそう言って立ち上がる。
 その横顔を見つめながら、私はそっと手を重ねたくなる衝動を必死に抑えた。
 触れてしまえば、戻れなくなる気がしたから。
 ただひとつだけ確かなことがある。
 この人の隣に立ちたいと、心から願ってしまった。
 理由など、もう探せないほどに。
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