【本編完結】厄災烙印の令嬢は貧乏辺境伯領に嫁がされるようです

あおまる三行

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離れても想いはめぐる蔦の章

48.白日の届かぬ場所

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 祈祷の準備が始まった、神殿の奥。
 人の出入りが増えて注意の散る時間帯だ。
 その混雑に紛れ、青年は――ジークは、何気なく歩く。
 粗末な服。汚れて、丈の合っていない袖。
 どこにでもいる覚えの悪そうな下働きの風貌は、視線を集めないという一点において、完璧だった。
 そこに、ヴァルト辺境伯家の騎士の面影はない。

 水瓶を運びながら、廊下を往復する。
 顔を伏せ、口を閉ざし、呼ばれれば面倒そうに返事をする。
 ――そして、耳だけを開く。

「もぉ、神官様ったら」
 甘い声が遠く聞こえる。
 奥まった部屋。
 分厚い扉の向こうで、声が交わされていた。

 しばらくあちこちの部屋に聞き耳を立てて――
 そして、ジークは正解に辿り着く。
「……例の烙印に関する書は、まだ地下に?」
「表の記録からは完全に切り離してある。あれは燃やすには惜しい」
「王家も、公爵家も、いつまでも我らに縋るとは限らん。時代が変われば、神殿など不要と切り捨てられる可能性もある」
 短い沈黙。
「だからこそだ。これからも世は続いていく。その時、第二王子殿下や公爵家が神殿を捨てようとしたなら――その時こそ、「切り札」として使う」
 低く、確信を帯びた声。
「「厄災の烙印」は……王であろうと、貴族であろうと、無関係ではいられない」

 ジークは、その一言一句を、確かに胸の奥へ刻みつけていた。

 忍び込んだ禁書庫は、音を拒むような静けさに沈んでいた。
 重い扉の向こう、湿った石の匂いと、古い羊皮紙のかすれた香りが混じる空間に、ぎっしりと禁書が収められている。
 隠匿された情報だけではなく、取るに足らない下品で低俗な内容、下賎な言葉で神殿を風刺したもの――そういう類の本まで並んでいた。
 発禁処分にして回収したらしい本はまとめて隅の方に積み上げられている。その中には絵本と思しきものもあった。

(恐らく、目的のものはここにある。だがあまりに数が多い……)
(当たりをつけようにも、流石にもう少し調べなければ無理か)

 そこへ……ふわり、と甘い匂いが漂った。

 ――まずい。

 足音が近づく。衣擦れの音は妙に軽やかだ。
 ジークは反射的に背を丸め、雑用係の少年の仮面をかぶり直す。
 肩をすくめ、視線を下げ、卑屈そうに見える「位置」を正確に作る。
 それは長年の癖で、意識するより早く体が動いた。

 禁書庫の扉が開き、光が差し込む。
 入ってきたのは、リリアーナだった。
 控えめだが豪華な飾りのついたドレスに身を包み、場違いなほど華やかな香りをまとっている。
 その背後には侍女が一人控えていたが、書庫の入り口で立ち止まり、中へは入ってこない。

「……あら?」
 リリアーナの視線が、棚の影にいるジークを捉えた。
「誰?」
 逃げる選択肢はない。
 ジークは深く頭を下げた。
「下働きで。掃除と……整理を。お、お嬢様」
 声は少し掠らせ、舌足らずに。焦ってどもった様子で。
 王都の下町で聞いた訛りを、ほんの少しだけ混ぜる。
「こんなところで? 珍しいわね」
 リリアーナは近づいてくる。
 ジークは視線を伏せたまま、肩をすぼめた。

「す、すいません。あんまし、綺麗なおんなのひとが、いたもんだから……つい、覗いちまって」
 自分で言って、内心で舌を噛みたい気分になる。
 だが、こういう台詞は、相手によっては効く。

 案の定、リリアーナは一瞬きょとんとし、それから嬉しそうに笑った。
「まあ。正直なのね」
 くすり、と楽しそうな声。
 彼女はジークの前まで来ると、しゃがみ込むようにして顔を覗き込んだ。
「……あら。よく見たら、案外綺麗な子。あなた、女の子みたいで可愛いのね」
 ジークの背筋に、ぞわりとした悪寒が走る。
 ――それを言われるのは、大嫌いだ。
 だが、顔には出さない。ただ、少し困ったように眉を下げるだけだ。
 こういう手合いが喜ぶように。
「そ、そんな……」
「もっと着飾ったらいいのに。……神官長様ったら、こういう子も集めてるのかしら」
 リリアーナは満足そうに微笑んだ。
 まるで綺麗な人形でも見つけたかのような目で。

「ねえ、あなた。この書庫、詳しい?」
「い、いえ……でも、言われた場所なら……」
「ちょうどよかったわ」
 立ち上がり、裾を払う。
「わたくしね、あの第二王子の、サイラス殿下に頼まれて、本を探しているの。古いものらしいのだけれど」
 その名を聞いた瞬間、ジークの内心は穏やかではなかった。
 だが、ただ大仰に驚いて見せた。
「で、殿下の!? お嬢様は、いったい、」
「シーッ、内緒よ。わたくしが誰かってことは……さ、この書庫、書棚はどうやったら動かせるのかしら」
「で、でしたら、こっちで」

 リリアーナはむしろ楽しげだ。
 ジークは一歩下がり、書架の奥へと彼女を導く。
 心臓は早鐘を打っているが、足取りは乱さない。

 光の届きにくい場所へと向かいながら、ジークは静かに歯を食いしばった。
 この遭遇は想定外だが、まだ、終わりではない。
 ただ一つ確かなのは、この女が、サイラスのために動いている、という事実だった。

「まったく、なかなか教えてくださらないんだから」
 リリアーナは小さく唇を尖らせながら、目当ての棚の前に踊るように歩いていく。
 禁書庫の奥、外見は他と変わらぬ木棚だが、背板の奥に二重の仕掛けがあった。
 白い指先で背表紙をなぞり、適当に一冊を引き抜くと、奥にわずかな隙間が覗いた。
「ここよね……」
 独り言ち、棚に手をかける。だが、かすかな金属音とともに、それ以上は動かない。

 ――鍵付きか。
 背後からその様子を窺っていたジークは、内心で舌打ちした。
(この女が俺より早く場所を特定してるのは、屈辱的だな……)
(戻ったら旦那様に鍛え直してもらおう)
 そんな感想が一瞬よぎるが、すぐに打ち消す。
 問題は、あの奥にある本だ。
 神官たちがひた隠しにしている禁書。あれは、絶対に見ておきたい。

 リリアーナは苛立ちを隠そうともせず、鍵穴の位置を探るように棚を叩いた。
「もう……どうしてこう、意地悪なの」
 その声が少し大きくなった瞬間、廊下の向こうから低く声が響いた。
「リリアーナ様?」
 神官長の呼ぶ声だった。
「あ……いけないわ」
 リリアーナははっとして振り返り、すぐに柔らかな笑みを作る。
 棚から手を離し、何事もなかったかのように身なりを整えた。
「今行きますわ」

 くるりと踵を返す前に、彼女はジークに向けて小さく微笑んだ。
「わたくしと、ここで逢ったこと。ナイショよ」
「へ、へぇ……」
「良い子ね。内緒にしてくれたら、後で神官長様にお願いして、わたくしの側仕えにしてあげる」
 背筋に寒気が走る。

 リリアーナの足音が遠ざかり、入れ替わるように複数の足音が近づいてくる。
 神官たちだ。
 ジークは次の瞬間、音もなく天井裏の闇へと身を引いた。

(……出会い頭に、人の顔の造作に言及するような奴は、俺は嫌いだ……側仕えなんて冗談じゃない)
(それに、「内緒にしてほしい」のは、寧ろ俺の方だな)

 隙間から覗くと、先ほどの棚を囲むように数人が集まっていた。神官長が低い声で指示を出す。
「場所が知られた可能性がある。急げ、別の場所へ移す」
「承知しました」
「あまりリリアーナ嬢に惑わされるな、彼女はサイラス殿下の命を受けている」
「全く、あの王子殿下も本当に抜け目のない……」
「やはり我々はあの方に信頼されていないし、あの方を信頼しすぎてもならないということだ」
 彼らは手慣れた様子で棚の仕掛けを解除し、奥に隠されていた「禁書」を取り出す。
 分厚い布に包まれた、古い羊皮紙の束。
 ジークは息を殺し、運び出した先を記憶した。

 やがて、禁書庫は静まり返った。


 そのまま身を伏せ、ジークはひたすらに待った。
 夜が深まり、巡回の気配が完全に途切れるのを待つ。
 真夜中。
 月の位置が変わり、時が十分に経ったのを見計らって、ジークは天井裏から降りた。

 音を立てないよう床に着地し、先ほど神官たちが動かした棚の前に立つ。
 仕掛けはすでに露わだ。鍵も、慌てていたせいか、仮留めにしかなっていない。

 短剣の柄で軽く叩くと、あっさり外れた。
 広げた禁書の文字列は難解で、意味を成しているようには見えなかった。

 ――今ここで、俺が読んで理解する必要はない。
 あの手慣れた管理の様子、恐らく定期的に所在を確認している。
 持ち去ればすぐにばれるだろう。
 であれば必要なのは、写すことだ。

 紙を広げ、炭を削った筆先を握る。
 字を書くのは得意ではない。それでも、ひと文字ずつ、正確に写していく。

 幼い頃を過ごした孤児院で、何度も言われた声が、ふと脳裏に浮かぶ。
 ――今おなかがいっぱいにならなくても、文字の読み書きと計算は、きっと命を助けてくれる。
 ――いいか、ゆっくりでいいから覚えろ。忘れるな。
 冗談めかして、けれど根気よく、夜が更けるまで教えてくれた背中。

(あれがなければ、今ここで速記もできなかったな)
 少しだけ懐かしく思いながら。
 夜を分け、日を跨ぎ、ほんの数頁ずつ。
 誰にも気づかれぬよう、何日もかけて、断片は集められ続けた。





 毎日、私は意識的に手を動かしていた。
 王宮の書庫にも行った。
 ユフェミアと共に、改修の行き届いていなかった地下室を探索し、クラリシエール邸所蔵の古い写本も出してきた。
 そしてそれらを、自分の手で整理し直す。
 少しでも時間が空けば、魔獣に関する記述、そして「厄災の烙印」にかかわる記述を、片端から当たっていく。
 役に立つかもしれない、という建前はあったけれど、本音を言えば、何か――自分にできる「意味のあること」を探していたのだと思う。

 ページをめくるたび、古いインクの匂いが指に移る。
 異変、災厄、神罰。どれも曖昧な言葉でまとめられていて、肝心な部分はぼかされている。
 まるで、最初から誰かに読ませることを拒んでいるみたいだった。

 そんな折、ジークが戻ってきた。

 気づいたら邸に入っていた彼は、ひと目でわかるほど疲れ切っていた。
 外套の裾は汚れ、目の下には濃い影が落ちている。
 それでも、こちらを見つけると、反射的に背筋を伸ばした。

「……旦那様は、どちらに……?」
 どこか幼い声音に、胸が詰まる。
 辺境へ向かったことを告げ、この間にあったことを伝えると、ジークは一瞬だけ目を見開き、それから苦く笑った。
「そうですか……俺、長く潜りすぎ、ましたね……」

 そう言って、彼は抱えていた包みを机の上に置いた。
 布に包まれたそれは、思った以上に重い。
「神殿の奥です。禁書庫でした」
 低く、慎重な声。
「写しです。全部じゃありません。時間も足りなくて。でも……多分、「厄災の烙印」に関わることです」
 その一言で、背筋に冷たいものが走った。
 布をほどくと、中から現れたのは、ぎっしりと文字の詰まった紙束だった。
 文の区切りすら分からない。呪文のようにも、暗号のようにも見える。

「俺には読めません。文字は同じでも言葉が違う。意図的に、隠すための書き方です。でも、それが、答えなんじゃないかと思って」

 ジークの指先は震えていた。恐怖か、疲労か、それとも――怒りか。
 私は紙束にそっと触れた。
 冷たい。けれど、確かに「何か」がここにあると感じた。

 烙印。
 神殿が語る「厄災の烙印」。
 曖昧な恐怖。だからこそ広がる悪意。

「ありがとう、ジーク」
 そう言うと、彼はようやく肩の力を抜いた。
「よく休んで。それで……」
「いえ、どうか、お許しください。俺に、このまま今すぐ旦那様のところへ走ることを」
「いけません」

 ジークからのありがたい申し出を、しかし私は強く制した。
「まずは休みなさい。これは辺境伯代理としての命令です。……少なくともイリアとカイネの両方が許可するまでは、この邸にいなさい」
「……」
 少し迷って――
 けれど、ジークは頷いた。
「……はい、奥様。承りました」



(……私に、読み解けるかしら)
 でも、これを読むべき人間は、きっと私だ。

 ダリウス様がいない王都で、私にできること。
 ただ待つことじゃない。
 隠された言葉を拾い上げ、光の下に引きずり出すこと。

 私は紙束を抱き寄せ、深く息を吸った。
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