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離れても想いはめぐる蔦の章
50.王は正しきに立つ
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国王崩御の報。
誰かが声を上げたわけではないけれど、瞬く間にざわめきが広がった。
ただ、息を吸う音が揃い、視線が揺れ、動揺が波のように会議場を満たした。
確かに陛下はご高齢で、床に伏して久しかった。
それでも――あまりに早い。
昨日まで「まだ持ち直すかもしれない」と、誰もがどこかで信じていたのだ。
信じることで、現実から目を逸らしていただけなのかもしれない。
沈黙を破ったのは、第二王子サイラス殿下だった。
「……今は国王陛下崩御の時である。まずは、陛下の御霊に哀悼を捧げよう」
低く、よく通る声。
悲しみを装うには十分すぎるほど整った口調だった。
場は自然と彼に従い、神官たちによって祈りの時間が設けられる。
その一連の流れが、あまりにも滞りなく進むことに、胸の奥が冷えた。
――まるで、分かっていたかのよう。
顔を上げると、神殿の高位神官たちが静かに視線を交わしていた。
次に何が来るかを、彼らは知っている。あるいは、決めている。
「……国の中枢たる皆様。この王国の安寧には、王が不可欠です」
神官の一人が、そう口火を切った。
「混乱の中、空位の時代を長引かせるわけにはいきません」
「その通り」
その声は、義父の――シェリフォード公爵エドムンドのもの。
「当家は、亡き国王陛下のご病状思わしくない折より政務に尽力してこられた――サイラス殿下を、次代の国王と仰ぐのはいかがかと提案する」
空気が、傾いたのを感じた。
「急ぎ、皆様に王位継承の採決をお願いしたく。サイラス殿下を次代の王として」
貴族たちの多くが、思考を止める音がした気がする。
神殿が導き、強い貴族が支える。これまでと同じ選択。
抗えば叩かれる。どうせ、犠牲になるのは自分たちではない。
であれば、多少の犠牲など無視して良い。
このままでは流れは決まる。
サイラス殿下を中心に、辺境は見捨て、利益を吸い上げるように。
辺境への支援も断ち切られ続ける。
ダリウス様は、また、一人きりですべてを背負うことになる。
――だめ。
胸の奥から、言葉にならない否定が込み上げた。
私は思わず、アルベルト殿下を見た。
彼はまだ若く、決して雄弁ではない。政治的な駆け引きにも長けているとは言い難い。
それでも――この場で、疑問を抱いた人だ。
貴族たちは、神殿と高位貴族の意向に従うしかないと思っている。自分で止める気はない。
サイラス殿下がそれを保証している以上、誰かが志を持って歯向かっても敵わない。
今ここで、止められる立場にあるのは――サイラス殿下と戦える正統な地位を持つ人は、もはや一人しかいなかった。
私は、何も言わずに、ただ彼の瞳を見つめた。
逃げないで、と。今だけは、目を逸らさないで、と。
――この国が、誤ったまま進むことを、どうか見過ごさないで……!
◆
アルベルトは、静かに場の空気が傾いていくのを感じていた。
静かな悲しみに胸が冷え――涙はまだ、その奥で形を成していない。
けれど、最後に父を見た時のことが脳裏をよぎっては消え、アルベルトはしばらく、物を言うこともできていなかった。
気づけばサイラスが場を取り仕切り、神官と公爵が次代の王を取り決め始めている。
――遂に、か。
胸の奥で、長く慣れ親しんできた諦めが、いつものように顔を出す。
王位はサイラスのものになる。
それが自然で、それが周囲の望みで、そして自分はそれを受け入れる役目なのだと。
何度となく刷り込まれてきた未来だった。
目立てば殺される。周りも巻き込む。愚かしく優柔なままでいれば、見過ごされる。迷惑をかけずに済む。
体の弱かった父王。
穏やかで、優しく、だが決断の場ではいつも神殿と貴族に押し切られていた背中。
母を早くに失い、すぐ傍にいた友は追放され、頼りとなる臣下は消え、遠ざかり――大勢の敵に囲まれながら、孤独の中で育った日々。
(そんな境遇であっても、立ち上がる者なら力強く立ち上がる。でも僕はできなかった)
(だから、僕は王に向いていない)
迷いが多く、頼りなくて、声を荒らげることもできない。
その一方で、サイラスは違う。はっきりと物を言い、神殿にも貴族にも支持され、迷いなく「正解」を示す。
――だから、仕方ない。
――これ以上、僕は何も考えない方がいい。
――何も感じず、死んだように静かに、このまま……
その時――アルベルトは、視線を感じた。
不思議なほど強く、まっすぐで、逃げ場のない視線。
思わず顔を上げると、会議場の向こうで、ルーチェがこちらを見ていた。
(辺境伯夫人。……やはり、夫の、辺境伯のことが心配なのだろうな)
ダリウス・ヴァルトは信頼できる臣下だ。彼を失うのは、惜しい。
しかし申し訳ないが、自分が助けてやることはできない。
(彼女はリヒの妹君だ。力になってやりたくはあるけれど、でも……)
そんな目立つ真似をしたら、後でサイラス派の面々にどれだけ叩かれるか。
――けれど。
ルーチェのまなざしは何かを訴えるように。
いや、訴えではない。懇願でもない。
(……僕は、彼女に、見られて、いる……?)
ただ、それだけなのに、胸を射抜くような圧があった。
その瞬間、アルベルトの視界が揺らいだ。
彼女の瞳の奥に、淡く、しかし確かな光がある気がする。
幼い頃から「厄災の烙印」として噂されてきたそれを、アルベルトは初めて、はっきりと感じとった。
あんな小さなものが、この距離で見える筈がない。それなのに。
両の瞳の奥に刻まれた、静かな印。
厄災などとは思えない。あたたかな光。
その時だった。
声が、響いた。
――殿下。
耳ではない。頭の奥でもない。
心の奥底にあるやわらかな部分を抱きしめ、直接ふれてくるような声。
――今こそ、抗う時です。
息が詰まる。
――正すべきことを正すために。貴方は、今ここで声を上げねばなりません。
視界が、次々と塗り替えられていく。
亡き母の、穏やかな微笑み。
何もできなかった自分を、それでも抱きしめてくれた手。
どれだけサイラスを王太子にと推挙されても、その裁可だけは最後まで下さなかった父王。
自分を信じ、従い、命を預けてくれる忠臣たち。
幼い頃から何度も命を狙われた自分を、身を挺して守ってくれた従者たち。
リヒトが自分を鼓舞してくれた時のこと。
そして――
これまでアルベルトが「見ないようにしてきた」光景。
サイラス派の貴族たちが、神殿と密かに交わす視線。
自分の言葉を公然と無視し、貶める貴族、神殿。
彼らにとって都合の悪い声が静かに消えていった記憶。
「安寧」の言葉のもとに、切り捨てられ犠牲になってきた存在。
――不当に貶められてきた、すべてのもの。
自分がこの国の第一王子として生まれた意味。
正統たる自分が、本来なら正面から戦い、背負わなければならなかった筈のもの。
目を逸らしてきた痛み。責任。重圧。苦い思い。
すべてが、洪水のように押し寄せ、思考が追いつかない。
頭が揺れる。足元が不安定になる。
(……無理だ。僕には無理です。お許しください)
弱音が、喉元までせり上がる。
自分は弱い。
優柔で、決断を恐れ、傷つくことを避けてきた。
王に相応しいのは、弟だと、ずっと言われ続けてきた。誰よりも、自分自身がそう思っていた。
逃げたい。
誰かに任せたい。
これまで通り、穏やかに、波風を立てずに。
その時、再び声が響いた。
――アルベルト殿下。
今度は、より近く、より強く。
――貴方は、正しいひと。
思わず、息を呑む。
――その弱さは、真摯であるが故の迷い。人を思うが故の躊躇いです。
責める響きはなかった。
断じる声でもない。
ただ、理解している声。
アルベルトの置かれた状況をすべて理解し、寄り添ってくれている、そんな声。
――だからこそ、正さねばなりません。
ルーチェが変わらずこちらを見つめている。
彼女は何も言っていない。
まるで時間が止まったかのように、世界は動かなかった。
――今こそ、抗う時です。
――さあ、声を……!
――王はあやまちを見過ごしてはなりません!
「あ……」
気づけば、アルベルトは勢い良く立ち上がっていた。
椅子が激しい音を立てた。
「……あ、アルベルト殿下?いかがされましたか」
従者が小声で言う。
世界が時間を取り戻したように動き出す。
自分でも驚くほど、体が軽い。
まるで熱に浮かされるように――声が、自然と喉から溢れた。
「待ってくれ」
視線が一斉に集まる中、アルベルトは、逃げずに立っていた。
震えはある。だが、折れはしない。
「僕は」
一瞬、言葉が詰まる。
それでも、次の言葉は、はっきりと響いた。
「――僕は、王位の継承を望む」
アルベルトの声が、広い会議場に響き渡った。
一瞬の静寂のあと、ざわ、と空気が揺れる。
貴族たちの視線が一斉に集まり、ひそひそとした囁きが波紋のように広がっていく。
今、アルベルト殿下は、何と言った?
王位を、望むと……?
「……」
アルベルト自身が、いちばん驚いていた。
言葉が喉を離れた瞬間、胸の奥が焼けるように熱くなり、膝がわずかに震えた。
目を見開いたサイラスの視線が痛い。
逃げたい。
今すぐに撤回したい。
そんな弱さが、遅れて頭をもたげる。
それでも。
正面の席にいるルーチェが、じっとこちらを見ていた。
心の内に――アルベルトの鼓動と重なるように、静かにやわらかな声が響く。
――さあ殿下、背筋を伸ばして。
――あやまつ者たちが貴方を嗤い睨むのは、恐れているから。
――貴方が身を怯ませる理由はありません。
――大丈夫。貴方の言葉を信じる者たちがいます。
――彼らは貴方が立つのを、ずっと伏して待っていたのですから。
不思議だ。そのまなざしに見つめられると、胸の奥に、今まで知らなかった感情が湧き上がってくる。
いや、違う。これはきっと、自分の奥底に、今まで押し隠されていたもの。
強く脈打ちつつも、容易く怯懦に隠れてしまうもの。
これは、――勇気だ。
そう理解した瞬間、アルベルトは一歩、踏み出していた。
「無論……」
声を出した自分に、再び驚く。
いつもの、頼りない声ではない。
腹の奥から響く落ち着いた声。覇気を持って届く声だった。
「僕が皆に、そして民に王として認められるだけの成果を、これまで挙げていないことは、僕自身が理解している」
ざわめきが、更に大きくなる。
だが、止まらなかった。
「だから、僕は辺境へ赴く。援軍を連れ、僕は一人の騎士として魔獣討伐に参加する。国の血脈たる魔晶石鉱山の安定を、この手で支え、この目で確かめる」
貴族たちの表情が変わる。
軽視も、嘲りも、慎重な計算も、そのすべてが混ざり合った顔。
アルベルトは、ばん、と机を叩いた。らしくもない強さ。
ざわめきが静まり、全員の視線と心が、アルベルトに惹きつけられる。
「そうだ、皆。いかなる果ての地であろうと、僕は決して見捨てはしない。王とは等しく、隔てなく、この国に暮らす者たちのすべての安寧のために、この身を捧ぐもの。僕は、自らが王として立つ誓いとして、この戦いを捧げる覚悟だ。加わりたい者は拒まない。僕についてきてくれる者には感謝をもって応えよう」
自分が、こんな言葉を言える人間だっただろうか。
思考が追いつかない。
けれど、言葉は確かに自分の中から出てきた。
ずっと思ってきたこと。深く深く埋めて、見ないようにしていた自分の思い。
「そして」
アルベルトは、一瞬だけ息を整えた。
「国王陛下が次期王位継承者を定めぬままお隠れになり、候補が複数存在する場合――服喪が明けた後、全貴族会議を召集し、慎重に王を選定することになっている。これは、国法だ」
会議場が、目に見えて揺れた。
誰もが知っている条文。だが、都合よく忘れられてきた条文。
「王不在の時こそ、法は守られるべきだ。限られた面々の支持による略式での即位は、王位継承者の一人として、そしてこの国に住まう民の一人として、決して認められない。――シェリフォード公爵」
「は……!?」
「君は、どうやら国法についての知識が足りていないらしいな。それも王位という国の根幹にかかわる事柄だ。……まさか、知っていながら無視したとは言うまいね」
その覇気に、何人かの貴族が思わず身を引いた。
突然刃を向けられたエドムンドはだらだらと汗を流している。
「ま、まさか、そのような」
見回すが――サイラスも、神官たちも、他の貴族も、助けには入らない。
そして、屈辱に顔を歪めながら、アルベルトに――
これまで無視し軽んじ続けてきた第一王子に、頭を下げた。
「……愚かなわたくしの、不勉強でございました、殿下。国を思うあまりの焦り、どうかお許しください」
認めるわけにはいかないのだろう。下手を打てば、王家への不敬罪だ。
屈辱と共に頭を垂れた臣下を見下ろし、アルベルトは鷹揚に笑った。
「そうか。……公爵ほどの人が言うから、心配になってしまった。法はやはり僕の知る通りのものであるというわけだ。愚かさゆえの提案であるのなら、君の恥にもならぬようこの場ですぐに棄却しよう」
「……殿下のお心遣いに感謝申し上げます」
議場の空気は完全に、アルベルトの方を向いていた。
長く仕える忠臣たちが思わず涙ぐむ。
「やはり彼の方だ」
「正王妃様の忘れ形見、陛下の最初の御子こそが正統なのだ、当然だ」
「あの泰然とした振る舞いを見よ、王の器はああでなければならぬ」
「王たる風格はアルベルト様にこそ……」
囁きが広がる。
今のアルベルトは、確かに「王」と呼ぶべき覇気を身に纏っていた。
(言ってしまった。……全部、言ってしまった!)
当のアルベルト自身は、心臓が激しく鳴り、背中に冷たい汗が伝っていた。
なぜ、こんなことを言えたのか。なぜ、立っていられるのか。
答えは分からない。
やがて。
「……なるほど」
サイラスだった。
少し顎に手を当て、思案するふりをしてから、穏やかに微笑む。
軽く拍手をして。
「兄上のお考え、よく分かりました。国を想うお気持ち、大変ご立派です。流石はお優しい兄上」
サイラスはあっさりと頷いた。
「国法を重んじるというのなら、異論はありません。辺境での旺盛なご活躍――楽しみにしておりますよ、兄上」
――死ねば、それまで。寧ろ都合が良い。
――それまで動く貴族会議はこちらが優勢。
そんな計算が、微塵も表に出ることはなかった。
一方で、アルベルトの言葉に心を動かされた貴族たちが、小さくざわめき始める。
正統性。国法。覚悟。
アルベルトは、その中心で立ち尽くす。
(……逃げなかった。僕は、こんな……)
揺らぎは、確かに生まれた。
誰かが声を上げたわけではないけれど、瞬く間にざわめきが広がった。
ただ、息を吸う音が揃い、視線が揺れ、動揺が波のように会議場を満たした。
確かに陛下はご高齢で、床に伏して久しかった。
それでも――あまりに早い。
昨日まで「まだ持ち直すかもしれない」と、誰もがどこかで信じていたのだ。
信じることで、現実から目を逸らしていただけなのかもしれない。
沈黙を破ったのは、第二王子サイラス殿下だった。
「……今は国王陛下崩御の時である。まずは、陛下の御霊に哀悼を捧げよう」
低く、よく通る声。
悲しみを装うには十分すぎるほど整った口調だった。
場は自然と彼に従い、神官たちによって祈りの時間が設けられる。
その一連の流れが、あまりにも滞りなく進むことに、胸の奥が冷えた。
――まるで、分かっていたかのよう。
顔を上げると、神殿の高位神官たちが静かに視線を交わしていた。
次に何が来るかを、彼らは知っている。あるいは、決めている。
「……国の中枢たる皆様。この王国の安寧には、王が不可欠です」
神官の一人が、そう口火を切った。
「混乱の中、空位の時代を長引かせるわけにはいきません」
「その通り」
その声は、義父の――シェリフォード公爵エドムンドのもの。
「当家は、亡き国王陛下のご病状思わしくない折より政務に尽力してこられた――サイラス殿下を、次代の国王と仰ぐのはいかがかと提案する」
空気が、傾いたのを感じた。
「急ぎ、皆様に王位継承の採決をお願いしたく。サイラス殿下を次代の王として」
貴族たちの多くが、思考を止める音がした気がする。
神殿が導き、強い貴族が支える。これまでと同じ選択。
抗えば叩かれる。どうせ、犠牲になるのは自分たちではない。
であれば、多少の犠牲など無視して良い。
このままでは流れは決まる。
サイラス殿下を中心に、辺境は見捨て、利益を吸い上げるように。
辺境への支援も断ち切られ続ける。
ダリウス様は、また、一人きりですべてを背負うことになる。
――だめ。
胸の奥から、言葉にならない否定が込み上げた。
私は思わず、アルベルト殿下を見た。
彼はまだ若く、決して雄弁ではない。政治的な駆け引きにも長けているとは言い難い。
それでも――この場で、疑問を抱いた人だ。
貴族たちは、神殿と高位貴族の意向に従うしかないと思っている。自分で止める気はない。
サイラス殿下がそれを保証している以上、誰かが志を持って歯向かっても敵わない。
今ここで、止められる立場にあるのは――サイラス殿下と戦える正統な地位を持つ人は、もはや一人しかいなかった。
私は、何も言わずに、ただ彼の瞳を見つめた。
逃げないで、と。今だけは、目を逸らさないで、と。
――この国が、誤ったまま進むことを、どうか見過ごさないで……!
◆
アルベルトは、静かに場の空気が傾いていくのを感じていた。
静かな悲しみに胸が冷え――涙はまだ、その奥で形を成していない。
けれど、最後に父を見た時のことが脳裏をよぎっては消え、アルベルトはしばらく、物を言うこともできていなかった。
気づけばサイラスが場を取り仕切り、神官と公爵が次代の王を取り決め始めている。
――遂に、か。
胸の奥で、長く慣れ親しんできた諦めが、いつものように顔を出す。
王位はサイラスのものになる。
それが自然で、それが周囲の望みで、そして自分はそれを受け入れる役目なのだと。
何度となく刷り込まれてきた未来だった。
目立てば殺される。周りも巻き込む。愚かしく優柔なままでいれば、見過ごされる。迷惑をかけずに済む。
体の弱かった父王。
穏やかで、優しく、だが決断の場ではいつも神殿と貴族に押し切られていた背中。
母を早くに失い、すぐ傍にいた友は追放され、頼りとなる臣下は消え、遠ざかり――大勢の敵に囲まれながら、孤独の中で育った日々。
(そんな境遇であっても、立ち上がる者なら力強く立ち上がる。でも僕はできなかった)
(だから、僕は王に向いていない)
迷いが多く、頼りなくて、声を荒らげることもできない。
その一方で、サイラスは違う。はっきりと物を言い、神殿にも貴族にも支持され、迷いなく「正解」を示す。
――だから、仕方ない。
――これ以上、僕は何も考えない方がいい。
――何も感じず、死んだように静かに、このまま……
その時――アルベルトは、視線を感じた。
不思議なほど強く、まっすぐで、逃げ場のない視線。
思わず顔を上げると、会議場の向こうで、ルーチェがこちらを見ていた。
(辺境伯夫人。……やはり、夫の、辺境伯のことが心配なのだろうな)
ダリウス・ヴァルトは信頼できる臣下だ。彼を失うのは、惜しい。
しかし申し訳ないが、自分が助けてやることはできない。
(彼女はリヒの妹君だ。力になってやりたくはあるけれど、でも……)
そんな目立つ真似をしたら、後でサイラス派の面々にどれだけ叩かれるか。
――けれど。
ルーチェのまなざしは何かを訴えるように。
いや、訴えではない。懇願でもない。
(……僕は、彼女に、見られて、いる……?)
ただ、それだけなのに、胸を射抜くような圧があった。
その瞬間、アルベルトの視界が揺らいだ。
彼女の瞳の奥に、淡く、しかし確かな光がある気がする。
幼い頃から「厄災の烙印」として噂されてきたそれを、アルベルトは初めて、はっきりと感じとった。
あんな小さなものが、この距離で見える筈がない。それなのに。
両の瞳の奥に刻まれた、静かな印。
厄災などとは思えない。あたたかな光。
その時だった。
声が、響いた。
――殿下。
耳ではない。頭の奥でもない。
心の奥底にあるやわらかな部分を抱きしめ、直接ふれてくるような声。
――今こそ、抗う時です。
息が詰まる。
――正すべきことを正すために。貴方は、今ここで声を上げねばなりません。
視界が、次々と塗り替えられていく。
亡き母の、穏やかな微笑み。
何もできなかった自分を、それでも抱きしめてくれた手。
どれだけサイラスを王太子にと推挙されても、その裁可だけは最後まで下さなかった父王。
自分を信じ、従い、命を預けてくれる忠臣たち。
幼い頃から何度も命を狙われた自分を、身を挺して守ってくれた従者たち。
リヒトが自分を鼓舞してくれた時のこと。
そして――
これまでアルベルトが「見ないようにしてきた」光景。
サイラス派の貴族たちが、神殿と密かに交わす視線。
自分の言葉を公然と無視し、貶める貴族、神殿。
彼らにとって都合の悪い声が静かに消えていった記憶。
「安寧」の言葉のもとに、切り捨てられ犠牲になってきた存在。
――不当に貶められてきた、すべてのもの。
自分がこの国の第一王子として生まれた意味。
正統たる自分が、本来なら正面から戦い、背負わなければならなかった筈のもの。
目を逸らしてきた痛み。責任。重圧。苦い思い。
すべてが、洪水のように押し寄せ、思考が追いつかない。
頭が揺れる。足元が不安定になる。
(……無理だ。僕には無理です。お許しください)
弱音が、喉元までせり上がる。
自分は弱い。
優柔で、決断を恐れ、傷つくことを避けてきた。
王に相応しいのは、弟だと、ずっと言われ続けてきた。誰よりも、自分自身がそう思っていた。
逃げたい。
誰かに任せたい。
これまで通り、穏やかに、波風を立てずに。
その時、再び声が響いた。
――アルベルト殿下。
今度は、より近く、より強く。
――貴方は、正しいひと。
思わず、息を呑む。
――その弱さは、真摯であるが故の迷い。人を思うが故の躊躇いです。
責める響きはなかった。
断じる声でもない。
ただ、理解している声。
アルベルトの置かれた状況をすべて理解し、寄り添ってくれている、そんな声。
――だからこそ、正さねばなりません。
ルーチェが変わらずこちらを見つめている。
彼女は何も言っていない。
まるで時間が止まったかのように、世界は動かなかった。
――今こそ、抗う時です。
――さあ、声を……!
――王はあやまちを見過ごしてはなりません!
「あ……」
気づけば、アルベルトは勢い良く立ち上がっていた。
椅子が激しい音を立てた。
「……あ、アルベルト殿下?いかがされましたか」
従者が小声で言う。
世界が時間を取り戻したように動き出す。
自分でも驚くほど、体が軽い。
まるで熱に浮かされるように――声が、自然と喉から溢れた。
「待ってくれ」
視線が一斉に集まる中、アルベルトは、逃げずに立っていた。
震えはある。だが、折れはしない。
「僕は」
一瞬、言葉が詰まる。
それでも、次の言葉は、はっきりと響いた。
「――僕は、王位の継承を望む」
アルベルトの声が、広い会議場に響き渡った。
一瞬の静寂のあと、ざわ、と空気が揺れる。
貴族たちの視線が一斉に集まり、ひそひそとした囁きが波紋のように広がっていく。
今、アルベルト殿下は、何と言った?
王位を、望むと……?
「……」
アルベルト自身が、いちばん驚いていた。
言葉が喉を離れた瞬間、胸の奥が焼けるように熱くなり、膝がわずかに震えた。
目を見開いたサイラスの視線が痛い。
逃げたい。
今すぐに撤回したい。
そんな弱さが、遅れて頭をもたげる。
それでも。
正面の席にいるルーチェが、じっとこちらを見ていた。
心の内に――アルベルトの鼓動と重なるように、静かにやわらかな声が響く。
――さあ殿下、背筋を伸ばして。
――あやまつ者たちが貴方を嗤い睨むのは、恐れているから。
――貴方が身を怯ませる理由はありません。
――大丈夫。貴方の言葉を信じる者たちがいます。
――彼らは貴方が立つのを、ずっと伏して待っていたのですから。
不思議だ。そのまなざしに見つめられると、胸の奥に、今まで知らなかった感情が湧き上がってくる。
いや、違う。これはきっと、自分の奥底に、今まで押し隠されていたもの。
強く脈打ちつつも、容易く怯懦に隠れてしまうもの。
これは、――勇気だ。
そう理解した瞬間、アルベルトは一歩、踏み出していた。
「無論……」
声を出した自分に、再び驚く。
いつもの、頼りない声ではない。
腹の奥から響く落ち着いた声。覇気を持って届く声だった。
「僕が皆に、そして民に王として認められるだけの成果を、これまで挙げていないことは、僕自身が理解している」
ざわめきが、更に大きくなる。
だが、止まらなかった。
「だから、僕は辺境へ赴く。援軍を連れ、僕は一人の騎士として魔獣討伐に参加する。国の血脈たる魔晶石鉱山の安定を、この手で支え、この目で確かめる」
貴族たちの表情が変わる。
軽視も、嘲りも、慎重な計算も、そのすべてが混ざり合った顔。
アルベルトは、ばん、と机を叩いた。らしくもない強さ。
ざわめきが静まり、全員の視線と心が、アルベルトに惹きつけられる。
「そうだ、皆。いかなる果ての地であろうと、僕は決して見捨てはしない。王とは等しく、隔てなく、この国に暮らす者たちのすべての安寧のために、この身を捧ぐもの。僕は、自らが王として立つ誓いとして、この戦いを捧げる覚悟だ。加わりたい者は拒まない。僕についてきてくれる者には感謝をもって応えよう」
自分が、こんな言葉を言える人間だっただろうか。
思考が追いつかない。
けれど、言葉は確かに自分の中から出てきた。
ずっと思ってきたこと。深く深く埋めて、見ないようにしていた自分の思い。
「そして」
アルベルトは、一瞬だけ息を整えた。
「国王陛下が次期王位継承者を定めぬままお隠れになり、候補が複数存在する場合――服喪が明けた後、全貴族会議を召集し、慎重に王を選定することになっている。これは、国法だ」
会議場が、目に見えて揺れた。
誰もが知っている条文。だが、都合よく忘れられてきた条文。
「王不在の時こそ、法は守られるべきだ。限られた面々の支持による略式での即位は、王位継承者の一人として、そしてこの国に住まう民の一人として、決して認められない。――シェリフォード公爵」
「は……!?」
「君は、どうやら国法についての知識が足りていないらしいな。それも王位という国の根幹にかかわる事柄だ。……まさか、知っていながら無視したとは言うまいね」
その覇気に、何人かの貴族が思わず身を引いた。
突然刃を向けられたエドムンドはだらだらと汗を流している。
「ま、まさか、そのような」
見回すが――サイラスも、神官たちも、他の貴族も、助けには入らない。
そして、屈辱に顔を歪めながら、アルベルトに――
これまで無視し軽んじ続けてきた第一王子に、頭を下げた。
「……愚かなわたくしの、不勉強でございました、殿下。国を思うあまりの焦り、どうかお許しください」
認めるわけにはいかないのだろう。下手を打てば、王家への不敬罪だ。
屈辱と共に頭を垂れた臣下を見下ろし、アルベルトは鷹揚に笑った。
「そうか。……公爵ほどの人が言うから、心配になってしまった。法はやはり僕の知る通りのものであるというわけだ。愚かさゆえの提案であるのなら、君の恥にもならぬようこの場ですぐに棄却しよう」
「……殿下のお心遣いに感謝申し上げます」
議場の空気は完全に、アルベルトの方を向いていた。
長く仕える忠臣たちが思わず涙ぐむ。
「やはり彼の方だ」
「正王妃様の忘れ形見、陛下の最初の御子こそが正統なのだ、当然だ」
「あの泰然とした振る舞いを見よ、王の器はああでなければならぬ」
「王たる風格はアルベルト様にこそ……」
囁きが広がる。
今のアルベルトは、確かに「王」と呼ぶべき覇気を身に纏っていた。
(言ってしまった。……全部、言ってしまった!)
当のアルベルト自身は、心臓が激しく鳴り、背中に冷たい汗が伝っていた。
なぜ、こんなことを言えたのか。なぜ、立っていられるのか。
答えは分からない。
やがて。
「……なるほど」
サイラスだった。
少し顎に手を当て、思案するふりをしてから、穏やかに微笑む。
軽く拍手をして。
「兄上のお考え、よく分かりました。国を想うお気持ち、大変ご立派です。流石はお優しい兄上」
サイラスはあっさりと頷いた。
「国法を重んじるというのなら、異論はありません。辺境での旺盛なご活躍――楽しみにしておりますよ、兄上」
――死ねば、それまで。寧ろ都合が良い。
――それまで動く貴族会議はこちらが優勢。
そんな計算が、微塵も表に出ることはなかった。
一方で、アルベルトの言葉に心を動かされた貴族たちが、小さくざわめき始める。
正統性。国法。覚悟。
アルベルトは、その中心で立ち尽くす。
(……逃げなかった。僕は、こんな……)
揺らぎは、確かに生まれた。
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