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ほどけては結われる花々の章
57.追憶の行方
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ダリウス様が起き上がって過ごせるようになり――
と言うより、好い加減に何か仕事をさせてくれというのを止めきれなくなり。
仕事に復帰してもらいながら、日々を過ごしていた。
――それから、しばらくして。
魔獣の調査報告は、セレスから受けた。
「調査結果が出ました。やはりあの魔獣は自然発生ではありません、人為的に成長させられた異常個体です」
その言葉を聞いた瞬間、ダリウス様の指が、肘掛けを強く掴んだのがわかった。
「粉末化した魔晶石の痕跡が見つかっています。魔獣の身体中に付着していました。恐らく吸い込んでもいるでしょう。長期間、繰り返し、強制的に浴びせられていたと見て間違いないかと……」
一瞬の沈黙。
「……粉末?」
低く、抑えた声。
確かめるような声だった。
「はい。屑石を砕いたものと思われます。質は低いですが、魔力は残る……何故、そのような方法に思い至ったのかはわかりませんが」
ダリウス様は、ゆっくりと息を吐いた。
「だから、あれほど異様に……」
「ええ。旦那様……実際、捕えた魔獣は、日に日に衰弱し、「小さく」なっているのです。小さくなってみてわかりました。あれは幼体の魔獣です。翼が身体より大きかったのも、成長していない身体のまま、魔力によって無理やりに大きさだけを増幅されたせいかと……」
呟きは、それ以上言葉にならなかった。
あの巨体。あの執着。囮にも引っかからず、ただ鉱山へ、魔晶石へ向かい続けた理由。
「トトリが捕らえた男たちも、同じことを吐きました」
セレスは淡々と続ける。
山を越えて魔獣の幼体に近づき、餌を与え、粉末を撒けと命じられたこと。
安全は神殿が保証していると説明されたこと。
「金で雇われた末端です。自分たちが何を生み出しているのか、理解していなかった様子でした。しかし……神殿は、魔獣に対する関与方法を、最前線にいる我々にも知らせていなかったのですね」
セレスが唇を噛む。
ダリウス様は数秒、黙っていた。
短絡的に声を荒げる方ではない。けれどその分、私にはその想いが痛いほど感じられた。
「誰の命令だ」
「……」
セレスは、ちらと私を見た。
その気遣わしげな視線だけで――私は、理解する。
「義父ですね」
「……奥様」
「構いません。言って」
「……はい。仰る通りです」
「……」
ダリウス様は、黙っていた。
視線が、机の上の報告書へ落ちる。
「つまりあの男が……ルーチェを軽んじるのではあきたらず、神殿と結託して魔獣を太らせ、辺境を混乱させ、俺を前線に引きずり出し……領民を危険に晒したというわけだ」
そこまで言って、言葉を切る。
私の方を一度だけ見て、それから、ぐっと拳を握る。。
「……ふざけた話だ」
自分の領地で自分の民が脅かされ、その裏で誰かが盤上の駒のように命を扱っていた。
ぐ、と怒りを押し留めるように一拍置いて、ダリウス様はセレスを見る。
「セレス、騎士団としての調査結果をまとめておいてくれ。この件は捨ておけない」
「はっ」
「それと、これまで、結界はすべて「外から魔獣を入れない」ための装置だった。今後は「内から人を出さない」ようにする必要もある……迂闊だったな」
「いいえ、旦那様。まさか、魔獣にこんな影響を与えられるなんて想定していませんでした。それに、定期的に結界外を巡回したり、魔獣が結界外で足止めされている間に叩いたりするのが我々の戦い方だったのですから。内から出すのを制限するとなると、またやり方が変わってしまいます」
「そうか。……そうだな、その件はまた、追って検討する必要があるか」
「はい……」
「…………やはり、ひとまずは結果の取りまとめだな。頼んだ」
「承知しました、旦那様」
一礼して、セレスは部屋を出ていく。
扉が閉まった後も、ダリウス様はしばらく動かなかった。
やがて、深く息を吐き、私の方を見て、苦笑にも似た表情を浮かべる。
「……嫌な話を聞かせた」
「いいえ」
即座に首を振った。
「知るべきことです。ここまで来たら」
◆
数日後。
私はジークが危険を冒して王都の神殿から持ち帰ってくれた禁書の写しを、ダリウス様とイリアたちにも見てもらうことにした。
卓の上に広げられた写しの文字はところどころ欠けている。
けれど、そこから私が読み解いた言葉は、妙に胸に引っかかる。
私の整理した資料を見て、ダリウス様はしばらく考え込んでいた。
「あやまちし時に現れる印。あやまつ者は、その前に立つことを許されない。……ずいぶん抽象的だ」
ダリウス様が腕を組み、低く唸る。
「それでも、俺が目にした記録には無かった文言だな」
「ええ……私も、初めて見る記述です。でもこの書物が、神殿で禁書として扱われていたということは……なんらかの真実を伝えるものだと思うのです」
「……あの」
ふいに、イリアが声を上げた。
全員の視線がそちらに向く。
「その「しるし」の話に、なんだか、覚えがあって」
イリアは、少し困ったように眉を寄せた。
「小さい頃に読んだ絵本で……すごく古い話で。王様が正しい時は大きな力が、間違えてしまった時はやりなおすことができる……」
「ああ、イリアが昔、よく読み聞かせてくれた本?」
セレスとトトリが言う。ジークも頷いていた。
「そう……でも、内容を全部知っているわけじゃありません。確か、途中のページが抜けてて……でも、私、その本の挿絵が好きで」
イリアは軽く頭を振った。
「曖昧な話を、すみません。……でも、その絵にあった少女の絵、あれには奥様に見出された烙印と似たものが描かれていた気がするんです。挿絵の中で、瞳に輝く塗料が使われていて、角度を変えるとその紋様が輝いて……何か、この話、手掛かりになるでしょうか……」
イリアは、私の方を見て、そっと言った。
「カイネがもっと、詳しく知っていると思います。あれは彼が持っていた絵本ですから。確か、孤児院に来る前にもらった、とても大切なものだと……王都へ行く荷物にも、忍ばせていた筈」
胸の奥が、静かにざわめく。
「……カイネに訊いてみましょう」
私は、禁書の写しと、イリアの話を頭の中で整理する。
確かに何かが、同じ場所を指している気がした。
◆
王都の邸は、昼下がりの光に満ちていた。
執務机の前で、カイネは一通の封を見つめていた。
「……どうかしましたか?」
問いかけるユフェミアに、カイネは頷く。
「いえ……なんなんでしょうね。奥様から、わざわざ追加でのご連絡です」
そう言って、カイネは手紙を開く。
読み進めるにつれ、表情がゆっくりと変わっていった。
――烙印に関わるかもしれない内容。
幼い頃に読んだ絵本。
カイネが、孤児院に来る前にもらったという一冊。
その内容を、もう一度詳しく教えてほしい……
「……なるほど」
独り言のように呟いてから、カイネは視線を落としたまま、しばし沈黙する。
ユフェミアは急かさず、向かいの椅子に腰を下ろして、その様子を見守っていた。
「昔……俺に、絵本を買ってくれた人がいました。孤児院にいる時もずっと持っていましたから、多分イリアあたりが奥様に話したんでしょう。その内容が、なにやら「厄災の烙印」に関わるものかもしれないと」
「まあ……それは、思わぬことですね」
「少しでも情報が欲しい、ってところですよね。俺としちゃ、ほんの僅かな手がかりでも、奥様の助けになるなら嬉しいですが……」
カイネは考え込むように顎を撫でた。
「ユフェミア嬢にも見て頂きましょうか」
「ええ、ぜひ」
少しして、カイネは自分の荷物の中から一冊の絵本を取り出してきた。
ユフェミアは呟く。
「美しい絵本ですね」
「そこそこの稀少品です。以前、同じものがないか探したことはあったのですが……ある時期に発禁本になっていた経緯があるらしく、見当たりませんでした」
「まあ」
淡い紫色の瞳を細め、ユフェミアは文字を追った。
「……正しいひとは正しくあることができました。あやまつひとは、そのまなざしに耐えられませんでした。大きなわざわいが降り、あやまつ人を押し流しました。こうして世界はおだやかになり、ひとびとは笑顔でくらしましたとさ……」
「些か、道徳的にまとめられすぎている感はありますが」
カイネはそう笑ったが、ユフェミアは真剣に受け止めていた。
「しかし……ルーチェ様のまなざしは、確かに人に力を与えるところがありますから。気のせいかもしれませんが」
「……それは、確かに」
「完全な姿は読めないでしょうか。欠落している頁は、どこで無くしたのでしょう?」
ユフェミアの言葉に、カイネは溜め息をついた。
少し躊躇ってから「俺が破いて売ったんですよ」と呟く。
「え……」
「……ユフェミア嬢」
「は、はい」
「ちょっと、昔話をしても良いですか」
そう前置きして、ユフェミアの様子を見る。
ええ、と静かに頷いた彼女に、カイネは溜め息をついて話し始めた。
「俺は、まあ、ご存知の通り、ヴァルト辺境伯領で育った孤児なわけですが。孤児になったのは十歳くらいのことで、その前にはなんとなく、親の記憶があります。その絵本を買ってくれたのは……俺の、父親、だったと思います」
ユフェミアは何も言わず、ただ耳を傾ける。
「幼い頃、王都で暮らしていた記憶があるんです。父は商会を運営してて、俺はそんな父から、読み書き計算から、作法まで、手ほどきを受けて」
言葉は続くが、どこか歯切れが悪い。
カイネ自身、それを自覚しているようだった。
「でも、名前が思い出せません。父の顔も、住んでた街も……肝心なところが記憶から抜け落ちて」
苦笑が浮かぶ。
「情けないですよね。自分のことなのに」
指先が、机の縁をなぞる。
無意識の仕草だった。
ひとつ、呼吸を置いて。
「その絵本も、俺は大事にしてたはずなんです」
視線を伏せたまま、カイネは続けた。
「でも、頁を破って何枚かは売りました。金に困ってた時期だったし……まあまあの値段で売れました」
自嘲気味に笑ってから、カイネは小さく息を吐いた。
「正直に言うと、どこかで期待もしてたんです。珍しい本だったから、流れ流れて、もしかしたら商いをする父の目に留まるかもしれないって。そうしたら、父は俺よりよっぽど流通に詳しいですから、探し出してくれるかもしれないって」
あり得ない話だと、自分でもわかっている。
それでも、胸の奥に引っかかっていた淡い願いだった。
ユフェミアはそっと尋ねた。
「王都に来て……お父様を探そうとは、思わなかったのですか? あるいは、何か思い出したり……」
「いえ。何も……それに、もし、探して見つからなかったらと思うと」
カイネは肩をすくめる。
そして、苦く笑った。
「……正直、疑ってもいるんです。俺には父親なんて、最初からいなかったのかもしれない。曖昧な記憶は、孤児だった俺が、勝手に作り上げた空想で……俺にも優しい親がいたって思い込みたかっただけかもしれないと……」
カイネの言葉に、ユフェミアはぱっと顔を上げた。
「もう少し教えてください」
「……い、いや、覚えてないんですよ。肝心なところが」
カイネは苦笑する。
「背が高かった、とか。手が大きかった、とか。そういう断片だけで……名前も思い出せない」
「それでも構いません。覚えていることを、一つずつで」
急かさず、否定せず。
まるで、絡まった糸をほどくように、根気よく問いを重ねていく。
「商会長だった、というのは?」
「そう聞かされました。王都で商売をしてて……でも大商会じゃありません。部屋は結構狭かったし」
「扱っていた品物は?」
「……魔銀の工房の取引を望んでいたことなら」
「王家や貴族との取引は?」
「直接は、ないと思います。噂話はしてましたけど……はは、俺のことをよく、未来の天才商人だー、なんて言って。神童だって噂の公爵家のご令息より俺の方が頭が良いんじゃないか、なんて。子供の空想する親は皆、甘くて優しいもんですよね」
それを聞いて、しばらく考え込み――
ユフェミアは小さく頷いた。
「十分です」
「え?」
「何もない、ということはありませんよ。カイネ」
ユフェミアは微笑んだ。淡い紫色の瞳が輝く。
「あなたのお父様は実在しています。幼いあなたの空想ではありません」
「へ」
ユフェミアらしくもなく断定的に言い切られて、カイネはぽかんとしてしまう。
宥めるように、ユフェミアひとつひとつ言葉を連ねた。
「だいたい……あなたは社交界に出入りしたこともないのに、お父様の話した「公爵家の神童よりうちの子の方が賢いかもしれない」という言葉を覚えていたのでしょう」
「いやそれ繰り返されるとちょっと恥ずかしいというか」
「おかしいではありませんか。他愛無い子供の空想だとしたら……「王子様より賢い」ならまだ分かるかもしれませんが。あなたは公爵家のことなんて知らなかったのに、その当時は公爵家に子供がいるのかどうかも知らなかったのに……それを、「お父様の言葉」として覚えていた……」
「え、あ、でも……」
「あなたの年齢を考え合わせれば、その神童とはリヒト卿のことを指しているので間違いありません。あの頃は私もまだ幼かったけれど、相当、話題になっていましたから。王都で商売をしている商人なら耳にしていたでしょう。けれどあなたは、子供の頃は彼を知らなかった。それなのに、あなたの記憶の中のお父様の言葉にはなぜ、その存在に言及するものがあるのでしょう」
カイネは、しばらく言葉を失っていた。
自分では曖昧だと思っていた記憧が、少しずつ輪郭を持ち始めていることに、戸惑いすら覚える。
「……俺、妄想だって決めつけてました」
「…………」
ユフェミアは、何も言わなかった。
「探してみましょう」
ユフェミアは静かに言った。
「絵本の行方も、その商会の記録も。手がかりがあるなら」
「……」
「あなたのお父様を見つけられれば一番ですし、もしかしたら、あなたの期待した通り絵本の頁がその手元にあるかもしれません。……と言うより、絵本の頁を探すにはその手がかりが一番有力です。その途上であなたの記憶がもっと正確なものになり、絵本の頁が再現できれば十分ですから、試す価値は、あると思いますが……」
「……」
「あなたは、どう思いますか。カイネ」
選択を委ねる言葉に、カイネはしばらく何も言えなかった。
やがて、小さく息を吐く。
「……ありがとうございます」
◆
ユフェミアからの手紙は、朝の執務が一段落した頃に届いた。
封を切った瞬間、ああ、忙しくしているのだろうな、とわかる筆致だった。
整っているのに、どこか急いでいる。
美しい時候の挨拶に続いて、要点が詰め込まれた手紙。
――カイネの話、絵本、商会長だったかもしれない彼の父親のこと。
私は手紙を読み終えると、少し目を伏せて記憶を探った。
「……」
あの頃。
まだ王都にいて、シェリフォード公爵家の娘として見聞きしたこと。
亡き両親のもとに様々な商会が訪れていた頃。
不思議なことに、思い出そうとすると次々に浮かんでくる。
どの商会が頻繁に出入りしていたか。
どこが公爵家に深く食い込み、どこが距離を保っていたか。
帳簿の端に残っていた署名、応接室で交わされた何気ない世間話。
「……ああ、そうだわ」
声に出した瞬間、ダリウス様がこちらを見た。
「何か思い出したのか?」
「はい。少しだけですけれど……」
私は机に向かい、紙を引き寄せる。
こうして事実としての記憶を辿るのは苦ではない。むしろ、整理している時はやり甲斐を感じる。
シェリフォード公爵家と取引のあった商会の名前。得意分野。
その距離感――親密なものだったか。利益を重視したものか。必要な時のみの付き合いか。
すらすらと書き出しながら、自分でも少しおかしくなる。
昔から、こうして物事を整理するのが好きだ。
「……本当にすごいな」
背後から、感心したようなダリウス様の声。
「そんな……」
振り返ると、彼は怪我の名残を感じさせない穏やかな顔でこちらを見ていた。
「いや、褒めずにいられない」
「これくらい、普通だと思います」
「普通の水準が高すぎる。皆のためにもそれは改めてくれ」
肩に手を置かれ、軽く引き寄せられる。
私は抵抗する気もなく、そのまま彼の胸に凭れた。
「……そういえば」
ややあって、今度はダリウス様が、少し考え込むように言った。
「昔、父上が言っていた。魔銀の工房とやりとりしたがっていた商人がいたと」
ダリウス様を見上げる。
蒼い瞳は考え込むように中空を見つめていた。
「辺境伯家に申し入れを?」
「いや。子供の頃、父上と工房を訪ねた時に、そんな話を聞いただけだ」
「それも書いておきましょう」
今は些細な糸でも逃したくない。
書き添える私の横で、ダリウス様が小さく息を吐いた。
「……カイネも、最初から話してくれればよかったのに」
「……」
「俺が、話しにくくさせただろうか。当初は随分、カイネは警戒していたからな。俺がイリアたちを不当に扱うのではないかと」
「……そんなことはないと思います。でも……確証のないことは、彼は「旦那様」には言わないでしょう」
カイネの顔を思い浮かべる。
軽い口調の裏で、いつも一歩引いて周囲を見る人。
「そういうところがありますから」
口にして、少し微笑んだ。
ダリウス様は一瞬きょとんとし、それから納得したように頷いた。
「……確かにな」
私は書き終えた紙を揃え、封筒に入れる。
「これで、少しは手がかりになるといいのですけれど……」
「なるだろう」
背後から、軽く抱きしめられる。
今度はさっきより、少しだけ強く。
ユフェミアへ宛てた返書を封じながら、胸の奥がわずかに温かくなった。
と言うより、好い加減に何か仕事をさせてくれというのを止めきれなくなり。
仕事に復帰してもらいながら、日々を過ごしていた。
――それから、しばらくして。
魔獣の調査報告は、セレスから受けた。
「調査結果が出ました。やはりあの魔獣は自然発生ではありません、人為的に成長させられた異常個体です」
その言葉を聞いた瞬間、ダリウス様の指が、肘掛けを強く掴んだのがわかった。
「粉末化した魔晶石の痕跡が見つかっています。魔獣の身体中に付着していました。恐らく吸い込んでもいるでしょう。長期間、繰り返し、強制的に浴びせられていたと見て間違いないかと……」
一瞬の沈黙。
「……粉末?」
低く、抑えた声。
確かめるような声だった。
「はい。屑石を砕いたものと思われます。質は低いですが、魔力は残る……何故、そのような方法に思い至ったのかはわかりませんが」
ダリウス様は、ゆっくりと息を吐いた。
「だから、あれほど異様に……」
「ええ。旦那様……実際、捕えた魔獣は、日に日に衰弱し、「小さく」なっているのです。小さくなってみてわかりました。あれは幼体の魔獣です。翼が身体より大きかったのも、成長していない身体のまま、魔力によって無理やりに大きさだけを増幅されたせいかと……」
呟きは、それ以上言葉にならなかった。
あの巨体。あの執着。囮にも引っかからず、ただ鉱山へ、魔晶石へ向かい続けた理由。
「トトリが捕らえた男たちも、同じことを吐きました」
セレスは淡々と続ける。
山を越えて魔獣の幼体に近づき、餌を与え、粉末を撒けと命じられたこと。
安全は神殿が保証していると説明されたこと。
「金で雇われた末端です。自分たちが何を生み出しているのか、理解していなかった様子でした。しかし……神殿は、魔獣に対する関与方法を、最前線にいる我々にも知らせていなかったのですね」
セレスが唇を噛む。
ダリウス様は数秒、黙っていた。
短絡的に声を荒げる方ではない。けれどその分、私にはその想いが痛いほど感じられた。
「誰の命令だ」
「……」
セレスは、ちらと私を見た。
その気遣わしげな視線だけで――私は、理解する。
「義父ですね」
「……奥様」
「構いません。言って」
「……はい。仰る通りです」
「……」
ダリウス様は、黙っていた。
視線が、机の上の報告書へ落ちる。
「つまりあの男が……ルーチェを軽んじるのではあきたらず、神殿と結託して魔獣を太らせ、辺境を混乱させ、俺を前線に引きずり出し……領民を危険に晒したというわけだ」
そこまで言って、言葉を切る。
私の方を一度だけ見て、それから、ぐっと拳を握る。。
「……ふざけた話だ」
自分の領地で自分の民が脅かされ、その裏で誰かが盤上の駒のように命を扱っていた。
ぐ、と怒りを押し留めるように一拍置いて、ダリウス様はセレスを見る。
「セレス、騎士団としての調査結果をまとめておいてくれ。この件は捨ておけない」
「はっ」
「それと、これまで、結界はすべて「外から魔獣を入れない」ための装置だった。今後は「内から人を出さない」ようにする必要もある……迂闊だったな」
「いいえ、旦那様。まさか、魔獣にこんな影響を与えられるなんて想定していませんでした。それに、定期的に結界外を巡回したり、魔獣が結界外で足止めされている間に叩いたりするのが我々の戦い方だったのですから。内から出すのを制限するとなると、またやり方が変わってしまいます」
「そうか。……そうだな、その件はまた、追って検討する必要があるか」
「はい……」
「…………やはり、ひとまずは結果の取りまとめだな。頼んだ」
「承知しました、旦那様」
一礼して、セレスは部屋を出ていく。
扉が閉まった後も、ダリウス様はしばらく動かなかった。
やがて、深く息を吐き、私の方を見て、苦笑にも似た表情を浮かべる。
「……嫌な話を聞かせた」
「いいえ」
即座に首を振った。
「知るべきことです。ここまで来たら」
◆
数日後。
私はジークが危険を冒して王都の神殿から持ち帰ってくれた禁書の写しを、ダリウス様とイリアたちにも見てもらうことにした。
卓の上に広げられた写しの文字はところどころ欠けている。
けれど、そこから私が読み解いた言葉は、妙に胸に引っかかる。
私の整理した資料を見て、ダリウス様はしばらく考え込んでいた。
「あやまちし時に現れる印。あやまつ者は、その前に立つことを許されない。……ずいぶん抽象的だ」
ダリウス様が腕を組み、低く唸る。
「それでも、俺が目にした記録には無かった文言だな」
「ええ……私も、初めて見る記述です。でもこの書物が、神殿で禁書として扱われていたということは……なんらかの真実を伝えるものだと思うのです」
「……あの」
ふいに、イリアが声を上げた。
全員の視線がそちらに向く。
「その「しるし」の話に、なんだか、覚えがあって」
イリアは、少し困ったように眉を寄せた。
「小さい頃に読んだ絵本で……すごく古い話で。王様が正しい時は大きな力が、間違えてしまった時はやりなおすことができる……」
「ああ、イリアが昔、よく読み聞かせてくれた本?」
セレスとトトリが言う。ジークも頷いていた。
「そう……でも、内容を全部知っているわけじゃありません。確か、途中のページが抜けてて……でも、私、その本の挿絵が好きで」
イリアは軽く頭を振った。
「曖昧な話を、すみません。……でも、その絵にあった少女の絵、あれには奥様に見出された烙印と似たものが描かれていた気がするんです。挿絵の中で、瞳に輝く塗料が使われていて、角度を変えるとその紋様が輝いて……何か、この話、手掛かりになるでしょうか……」
イリアは、私の方を見て、そっと言った。
「カイネがもっと、詳しく知っていると思います。あれは彼が持っていた絵本ですから。確か、孤児院に来る前にもらった、とても大切なものだと……王都へ行く荷物にも、忍ばせていた筈」
胸の奥が、静かにざわめく。
「……カイネに訊いてみましょう」
私は、禁書の写しと、イリアの話を頭の中で整理する。
確かに何かが、同じ場所を指している気がした。
◆
王都の邸は、昼下がりの光に満ちていた。
執務机の前で、カイネは一通の封を見つめていた。
「……どうかしましたか?」
問いかけるユフェミアに、カイネは頷く。
「いえ……なんなんでしょうね。奥様から、わざわざ追加でのご連絡です」
そう言って、カイネは手紙を開く。
読み進めるにつれ、表情がゆっくりと変わっていった。
――烙印に関わるかもしれない内容。
幼い頃に読んだ絵本。
カイネが、孤児院に来る前にもらったという一冊。
その内容を、もう一度詳しく教えてほしい……
「……なるほど」
独り言のように呟いてから、カイネは視線を落としたまま、しばし沈黙する。
ユフェミアは急かさず、向かいの椅子に腰を下ろして、その様子を見守っていた。
「昔……俺に、絵本を買ってくれた人がいました。孤児院にいる時もずっと持っていましたから、多分イリアあたりが奥様に話したんでしょう。その内容が、なにやら「厄災の烙印」に関わるものかもしれないと」
「まあ……それは、思わぬことですね」
「少しでも情報が欲しい、ってところですよね。俺としちゃ、ほんの僅かな手がかりでも、奥様の助けになるなら嬉しいですが……」
カイネは考え込むように顎を撫でた。
「ユフェミア嬢にも見て頂きましょうか」
「ええ、ぜひ」
少しして、カイネは自分の荷物の中から一冊の絵本を取り出してきた。
ユフェミアは呟く。
「美しい絵本ですね」
「そこそこの稀少品です。以前、同じものがないか探したことはあったのですが……ある時期に発禁本になっていた経緯があるらしく、見当たりませんでした」
「まあ」
淡い紫色の瞳を細め、ユフェミアは文字を追った。
「……正しいひとは正しくあることができました。あやまつひとは、そのまなざしに耐えられませんでした。大きなわざわいが降り、あやまつ人を押し流しました。こうして世界はおだやかになり、ひとびとは笑顔でくらしましたとさ……」
「些か、道徳的にまとめられすぎている感はありますが」
カイネはそう笑ったが、ユフェミアは真剣に受け止めていた。
「しかし……ルーチェ様のまなざしは、確かに人に力を与えるところがありますから。気のせいかもしれませんが」
「……それは、確かに」
「完全な姿は読めないでしょうか。欠落している頁は、どこで無くしたのでしょう?」
ユフェミアの言葉に、カイネは溜め息をついた。
少し躊躇ってから「俺が破いて売ったんですよ」と呟く。
「え……」
「……ユフェミア嬢」
「は、はい」
「ちょっと、昔話をしても良いですか」
そう前置きして、ユフェミアの様子を見る。
ええ、と静かに頷いた彼女に、カイネは溜め息をついて話し始めた。
「俺は、まあ、ご存知の通り、ヴァルト辺境伯領で育った孤児なわけですが。孤児になったのは十歳くらいのことで、その前にはなんとなく、親の記憶があります。その絵本を買ってくれたのは……俺の、父親、だったと思います」
ユフェミアは何も言わず、ただ耳を傾ける。
「幼い頃、王都で暮らしていた記憶があるんです。父は商会を運営してて、俺はそんな父から、読み書き計算から、作法まで、手ほどきを受けて」
言葉は続くが、どこか歯切れが悪い。
カイネ自身、それを自覚しているようだった。
「でも、名前が思い出せません。父の顔も、住んでた街も……肝心なところが記憶から抜け落ちて」
苦笑が浮かぶ。
「情けないですよね。自分のことなのに」
指先が、机の縁をなぞる。
無意識の仕草だった。
ひとつ、呼吸を置いて。
「その絵本も、俺は大事にしてたはずなんです」
視線を伏せたまま、カイネは続けた。
「でも、頁を破って何枚かは売りました。金に困ってた時期だったし……まあまあの値段で売れました」
自嘲気味に笑ってから、カイネは小さく息を吐いた。
「正直に言うと、どこかで期待もしてたんです。珍しい本だったから、流れ流れて、もしかしたら商いをする父の目に留まるかもしれないって。そうしたら、父は俺よりよっぽど流通に詳しいですから、探し出してくれるかもしれないって」
あり得ない話だと、自分でもわかっている。
それでも、胸の奥に引っかかっていた淡い願いだった。
ユフェミアはそっと尋ねた。
「王都に来て……お父様を探そうとは、思わなかったのですか? あるいは、何か思い出したり……」
「いえ。何も……それに、もし、探して見つからなかったらと思うと」
カイネは肩をすくめる。
そして、苦く笑った。
「……正直、疑ってもいるんです。俺には父親なんて、最初からいなかったのかもしれない。曖昧な記憶は、孤児だった俺が、勝手に作り上げた空想で……俺にも優しい親がいたって思い込みたかっただけかもしれないと……」
カイネの言葉に、ユフェミアはぱっと顔を上げた。
「もう少し教えてください」
「……い、いや、覚えてないんですよ。肝心なところが」
カイネは苦笑する。
「背が高かった、とか。手が大きかった、とか。そういう断片だけで……名前も思い出せない」
「それでも構いません。覚えていることを、一つずつで」
急かさず、否定せず。
まるで、絡まった糸をほどくように、根気よく問いを重ねていく。
「商会長だった、というのは?」
「そう聞かされました。王都で商売をしてて……でも大商会じゃありません。部屋は結構狭かったし」
「扱っていた品物は?」
「……魔銀の工房の取引を望んでいたことなら」
「王家や貴族との取引は?」
「直接は、ないと思います。噂話はしてましたけど……はは、俺のことをよく、未来の天才商人だー、なんて言って。神童だって噂の公爵家のご令息より俺の方が頭が良いんじゃないか、なんて。子供の空想する親は皆、甘くて優しいもんですよね」
それを聞いて、しばらく考え込み――
ユフェミアは小さく頷いた。
「十分です」
「え?」
「何もない、ということはありませんよ。カイネ」
ユフェミアは微笑んだ。淡い紫色の瞳が輝く。
「あなたのお父様は実在しています。幼いあなたの空想ではありません」
「へ」
ユフェミアらしくもなく断定的に言い切られて、カイネはぽかんとしてしまう。
宥めるように、ユフェミアひとつひとつ言葉を連ねた。
「だいたい……あなたは社交界に出入りしたこともないのに、お父様の話した「公爵家の神童よりうちの子の方が賢いかもしれない」という言葉を覚えていたのでしょう」
「いやそれ繰り返されるとちょっと恥ずかしいというか」
「おかしいではありませんか。他愛無い子供の空想だとしたら……「王子様より賢い」ならまだ分かるかもしれませんが。あなたは公爵家のことなんて知らなかったのに、その当時は公爵家に子供がいるのかどうかも知らなかったのに……それを、「お父様の言葉」として覚えていた……」
「え、あ、でも……」
「あなたの年齢を考え合わせれば、その神童とはリヒト卿のことを指しているので間違いありません。あの頃は私もまだ幼かったけれど、相当、話題になっていましたから。王都で商売をしている商人なら耳にしていたでしょう。けれどあなたは、子供の頃は彼を知らなかった。それなのに、あなたの記憶の中のお父様の言葉にはなぜ、その存在に言及するものがあるのでしょう」
カイネは、しばらく言葉を失っていた。
自分では曖昧だと思っていた記憧が、少しずつ輪郭を持ち始めていることに、戸惑いすら覚える。
「……俺、妄想だって決めつけてました」
「…………」
ユフェミアは、何も言わなかった。
「探してみましょう」
ユフェミアは静かに言った。
「絵本の行方も、その商会の記録も。手がかりがあるなら」
「……」
「あなたのお父様を見つけられれば一番ですし、もしかしたら、あなたの期待した通り絵本の頁がその手元にあるかもしれません。……と言うより、絵本の頁を探すにはその手がかりが一番有力です。その途上であなたの記憶がもっと正確なものになり、絵本の頁が再現できれば十分ですから、試す価値は、あると思いますが……」
「……」
「あなたは、どう思いますか。カイネ」
選択を委ねる言葉に、カイネはしばらく何も言えなかった。
やがて、小さく息を吐く。
「……ありがとうございます」
◆
ユフェミアからの手紙は、朝の執務が一段落した頃に届いた。
封を切った瞬間、ああ、忙しくしているのだろうな、とわかる筆致だった。
整っているのに、どこか急いでいる。
美しい時候の挨拶に続いて、要点が詰め込まれた手紙。
――カイネの話、絵本、商会長だったかもしれない彼の父親のこと。
私は手紙を読み終えると、少し目を伏せて記憶を探った。
「……」
あの頃。
まだ王都にいて、シェリフォード公爵家の娘として見聞きしたこと。
亡き両親のもとに様々な商会が訪れていた頃。
不思議なことに、思い出そうとすると次々に浮かんでくる。
どの商会が頻繁に出入りしていたか。
どこが公爵家に深く食い込み、どこが距離を保っていたか。
帳簿の端に残っていた署名、応接室で交わされた何気ない世間話。
「……ああ、そうだわ」
声に出した瞬間、ダリウス様がこちらを見た。
「何か思い出したのか?」
「はい。少しだけですけれど……」
私は机に向かい、紙を引き寄せる。
こうして事実としての記憶を辿るのは苦ではない。むしろ、整理している時はやり甲斐を感じる。
シェリフォード公爵家と取引のあった商会の名前。得意分野。
その距離感――親密なものだったか。利益を重視したものか。必要な時のみの付き合いか。
すらすらと書き出しながら、自分でも少しおかしくなる。
昔から、こうして物事を整理するのが好きだ。
「……本当にすごいな」
背後から、感心したようなダリウス様の声。
「そんな……」
振り返ると、彼は怪我の名残を感じさせない穏やかな顔でこちらを見ていた。
「いや、褒めずにいられない」
「これくらい、普通だと思います」
「普通の水準が高すぎる。皆のためにもそれは改めてくれ」
肩に手を置かれ、軽く引き寄せられる。
私は抵抗する気もなく、そのまま彼の胸に凭れた。
「……そういえば」
ややあって、今度はダリウス様が、少し考え込むように言った。
「昔、父上が言っていた。魔銀の工房とやりとりしたがっていた商人がいたと」
ダリウス様を見上げる。
蒼い瞳は考え込むように中空を見つめていた。
「辺境伯家に申し入れを?」
「いや。子供の頃、父上と工房を訪ねた時に、そんな話を聞いただけだ」
「それも書いておきましょう」
今は些細な糸でも逃したくない。
書き添える私の横で、ダリウス様が小さく息を吐いた。
「……カイネも、最初から話してくれればよかったのに」
「……」
「俺が、話しにくくさせただろうか。当初は随分、カイネは警戒していたからな。俺がイリアたちを不当に扱うのではないかと」
「……そんなことはないと思います。でも……確証のないことは、彼は「旦那様」には言わないでしょう」
カイネの顔を思い浮かべる。
軽い口調の裏で、いつも一歩引いて周囲を見る人。
「そういうところがありますから」
口にして、少し微笑んだ。
ダリウス様は一瞬きょとんとし、それから納得したように頷いた。
「……確かにな」
私は書き終えた紙を揃え、封筒に入れる。
「これで、少しは手がかりになるといいのですけれど……」
「なるだろう」
背後から、軽く抱きしめられる。
今度はさっきより、少しだけ強く。
ユフェミアへ宛てた返書を封じながら、胸の奥がわずかに温かくなった。
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