4 / 73
第1章:辺境復興編
4話:幕間 残された帳簿
ヴァレンシア公爵、エドワードの朝は、帳簿の山から始まる。
正確には、帳簿の山を前にして途方に暮れるところから始まる。もう二週間以上、毎朝同じことを繰り返していた。
執務室の机の上に、革表紙の帳簿が積み上がっている。東方商会との取引台帳。領地の税収報告書。各部門の支出明細。使用人の給与管理簿。どれも開いたことがない。開く必要がなかった。全部、アイリスがやっていたから。
エドワードは帳簿を一冊手に取り、開いた。
数字が並んでいる。それだけは分かる。だが、どの数字が何を意味しているのか、どこを見れば何が分かるのか、さっぱり分からない。
ページをめくる。また数字。めくる。数字。
閉じた。
「ドルトン!」
返事がない。ドルトンは辺境に向かったまま、まだ戻っていない。
「……誰でもいい、誰か来い」
使用人が一人、おそるおそる顔を出した。
「旦那様、何か——」
「この帳簿、東方商会への支払い期限はいつだ」
「さあ……アイリス様がいつもやっておられましたので……」
「分かっている。だから聞いているんだ」
「存じ上げません」
使用人が去った後、エドワードは机に肘をつき、額を手で覆った。
東方商会への支払い。期限はとっくに過ぎている。催促の書簡は三通届いていた。一通目は丁寧な文面だった。二通目はやや硬くなった。三通目は、端的に言えば脅しだった。
それだけではない。
領地の税収報告が未提出で、王都から督促が来ている。体裁を取り繕おうにも、元の数字が分からないのだから取り繕いようがない。
先日は、取引先の商人が直接館を訪ねてきた。「支払いの見通しを」と。エドワードは「近日中に」と言った。近日中がいつかは、自分でも分からなかった。
(あの子は……これを一人でやっていたのか)
その考えが頭をよぎるたびに、エドワードは別のことを考えようとした。
あれは必要なことだった。王子殿下に逆らうわけにはいかなかった。仕方のないことだった。
帳簿を開き直す。数字を追う。何も分からない。閉じる。
その繰り返し。
***
ドルトンが帰ってきたのは、三日後の夕方だった。
エドワードは応接室で待っていた。ドルトンが入ってきた瞬間、何かがおかしいと気づいた。顔色が悪い。元々血色のいい男ではないが、今日は紙のように白い。
「どうだった。薬草の取引は止められたか」
ドルトンは目を逸らした。
「あの女は……アイリス様は、従いませんでした」
「何?」
「それどころか——」
ドルトンが喉を詰まらせた。
「帳簿のことを、全部知っていました」
エドワードの眉が動いた。
「帳簿?」
「私の……支出報告の不整合を、全て把握しておられました。五年分です。雑費の水増し、架空の修繕費——全部」
沈黙が落ちた。
「……どういうことだ」
「あの方は、公爵家の帳簿の中身を全て記憶しておられるのです。どこに何が書いてあるか、どの数字が合わないか。私が——その——」
ドルトンの声が小さくなる。
「……横領を」
「やめろ」
エドワードが遮った。聞きたくなかった。聞けば対処しなければならない。対処する方法が分からない。
「それで、取引は」
「止められません。書類を出しましたが、あの方は——帳簿の記憶だけで、公式文書を退けました」
エドワードは黙った。
帳簿の記憶だけで。あの子は昔からそうだった。数字を一度見たら忘れない。どこに何があるか、全部頭に入っている。その能力がどれほど公爵家を支えていたか、いなくなって初めて分かった。
いや、分かっていた。分かっていて、見ないふりをしていた。
「それと、アイリス様から伝言です」
「……何だ」
「『帳簿の引き継ぎ、まだ終わってないんじゃないですか?』と」
エドワードは目を閉じた。
***
翌週、エドワードは王都にいた。
レオナルド王子の居室を訪ねるのは、公爵としてもなるべく避けたいことだった。だが、もう選択肢がなかった。東方商会からの最後通告が届いた。来月末までに支払いがなければ、取引の全面停止と債権の回収に入る、と。
「——というわけでして、殿下。娘を追放して以来、帳簿が回りません。どうか、何か手立てを——」
「うるさいな」
レオナルドは長椅子に横たわったまま、天井を見ていた。
金髪を無造作にかき上げる。整った顔立ちだが、目に知性の光はない。退屈そうに欠伸を噛み殺しながら、公爵の訴えを聞き流している。
「お前のところの帳簿なんか知らんよ。経理係を雇えばいいだろう」
「それが、アイリスの仕事を引き継げる者がおりませんで——」
「たかが帳簿だろう。誰でもできる」
エドワードは言葉を飲み込んだ。誰でもできるなら、自分がやっている。できないからここにいる。
「ドルトンを送ったのですが、追い返されてしまいました。あの子は——アイリスは、公爵家の帳簿を全て記憶しておりまして、ドルトンの弱みを——」
「だから何だ」
レオナルドが身を起こした。面倒くさそうに。
「あの女がいないと帳簿が回らない。ドルトンを送ったら追い返された。それで俺にどうしろと?」
「何とかしていただけませんか」
「何とかって何だ。具体的に言え」
エドワードには具体案がなかった。あるなら自分でやっている。
レオナルドは鼻で笑った。
「情けないな、公爵。娘一人いなくなって右往左往か」
その言葉に、エドワードは何も返せなかった。事実だからだ。
しばらく沈黙があった。
レオナルドが天井を見上げたまま、唐突に言った。
「……まあいい。俺が行ってやるよ」
「は?」
「視察だ。辺境とやら、一度見に行ってやる」
エドワードが目を瞬かせた。
「殿下が、直接……?」
「あの女、辺境で惨めに暮らしてるんだろう? 俺が直々に『戻ってこい』と言ってやれば済む話だ。婚約はもうないが、公爵家の帳簿係としての体裁くらいは戻してやる」
レオナルドは立ち上がり、鏡の前で髪を整えた。
「ちょうど暖かい時期だしな。たまには王都を離れるのも悪くない」
自分の顔に満足したように頷く。
「ただし——言い寄られたら面倒だから、その辺は注意しないとな」
エドワードは口を開きかけた。アイリスがレオナルドに言い寄る可能性は、帳簿の数字が自然に合う可能性と同程度にはゼロだ。だが、言わなかった。言う意味がない。
「ありがとうございます、殿下」
「礼はいい。俺の器の大きさを見せてやるだけだ」
レオナルドは上機嫌で部屋を出ていった。
ミレーヌに報告しに行くのだろう。「俺があの女を連れ戻してやる」と、得意げに。
***
一人残された応接室で、エドワードは窓の外を見た。
王都の街並み。整った石畳、行き交う馬車、賑やかな市場。
アーレン領とは何もかもが違う。あの子は今、あの荒れ地で何をしているのだろう。
帳簿を回している、に決まっている。あの子はそういう人間だ。
(……すまない、アイリス)
その言葉は、口から出ることはなかった。
目を逸らすことには、もう慣れていた。
正確には、帳簿の山を前にして途方に暮れるところから始まる。もう二週間以上、毎朝同じことを繰り返していた。
執務室の机の上に、革表紙の帳簿が積み上がっている。東方商会との取引台帳。領地の税収報告書。各部門の支出明細。使用人の給与管理簿。どれも開いたことがない。開く必要がなかった。全部、アイリスがやっていたから。
エドワードは帳簿を一冊手に取り、開いた。
数字が並んでいる。それだけは分かる。だが、どの数字が何を意味しているのか、どこを見れば何が分かるのか、さっぱり分からない。
ページをめくる。また数字。めくる。数字。
閉じた。
「ドルトン!」
返事がない。ドルトンは辺境に向かったまま、まだ戻っていない。
「……誰でもいい、誰か来い」
使用人が一人、おそるおそる顔を出した。
「旦那様、何か——」
「この帳簿、東方商会への支払い期限はいつだ」
「さあ……アイリス様がいつもやっておられましたので……」
「分かっている。だから聞いているんだ」
「存じ上げません」
使用人が去った後、エドワードは机に肘をつき、額を手で覆った。
東方商会への支払い。期限はとっくに過ぎている。催促の書簡は三通届いていた。一通目は丁寧な文面だった。二通目はやや硬くなった。三通目は、端的に言えば脅しだった。
それだけではない。
領地の税収報告が未提出で、王都から督促が来ている。体裁を取り繕おうにも、元の数字が分からないのだから取り繕いようがない。
先日は、取引先の商人が直接館を訪ねてきた。「支払いの見通しを」と。エドワードは「近日中に」と言った。近日中がいつかは、自分でも分からなかった。
(あの子は……これを一人でやっていたのか)
その考えが頭をよぎるたびに、エドワードは別のことを考えようとした。
あれは必要なことだった。王子殿下に逆らうわけにはいかなかった。仕方のないことだった。
帳簿を開き直す。数字を追う。何も分からない。閉じる。
その繰り返し。
***
ドルトンが帰ってきたのは、三日後の夕方だった。
エドワードは応接室で待っていた。ドルトンが入ってきた瞬間、何かがおかしいと気づいた。顔色が悪い。元々血色のいい男ではないが、今日は紙のように白い。
「どうだった。薬草の取引は止められたか」
ドルトンは目を逸らした。
「あの女は……アイリス様は、従いませんでした」
「何?」
「それどころか——」
ドルトンが喉を詰まらせた。
「帳簿のことを、全部知っていました」
エドワードの眉が動いた。
「帳簿?」
「私の……支出報告の不整合を、全て把握しておられました。五年分です。雑費の水増し、架空の修繕費——全部」
沈黙が落ちた。
「……どういうことだ」
「あの方は、公爵家の帳簿の中身を全て記憶しておられるのです。どこに何が書いてあるか、どの数字が合わないか。私が——その——」
ドルトンの声が小さくなる。
「……横領を」
「やめろ」
エドワードが遮った。聞きたくなかった。聞けば対処しなければならない。対処する方法が分からない。
「それで、取引は」
「止められません。書類を出しましたが、あの方は——帳簿の記憶だけで、公式文書を退けました」
エドワードは黙った。
帳簿の記憶だけで。あの子は昔からそうだった。数字を一度見たら忘れない。どこに何があるか、全部頭に入っている。その能力がどれほど公爵家を支えていたか、いなくなって初めて分かった。
いや、分かっていた。分かっていて、見ないふりをしていた。
「それと、アイリス様から伝言です」
「……何だ」
「『帳簿の引き継ぎ、まだ終わってないんじゃないですか?』と」
エドワードは目を閉じた。
***
翌週、エドワードは王都にいた。
レオナルド王子の居室を訪ねるのは、公爵としてもなるべく避けたいことだった。だが、もう選択肢がなかった。東方商会からの最後通告が届いた。来月末までに支払いがなければ、取引の全面停止と債権の回収に入る、と。
「——というわけでして、殿下。娘を追放して以来、帳簿が回りません。どうか、何か手立てを——」
「うるさいな」
レオナルドは長椅子に横たわったまま、天井を見ていた。
金髪を無造作にかき上げる。整った顔立ちだが、目に知性の光はない。退屈そうに欠伸を噛み殺しながら、公爵の訴えを聞き流している。
「お前のところの帳簿なんか知らんよ。経理係を雇えばいいだろう」
「それが、アイリスの仕事を引き継げる者がおりませんで——」
「たかが帳簿だろう。誰でもできる」
エドワードは言葉を飲み込んだ。誰でもできるなら、自分がやっている。できないからここにいる。
「ドルトンを送ったのですが、追い返されてしまいました。あの子は——アイリスは、公爵家の帳簿を全て記憶しておりまして、ドルトンの弱みを——」
「だから何だ」
レオナルドが身を起こした。面倒くさそうに。
「あの女がいないと帳簿が回らない。ドルトンを送ったら追い返された。それで俺にどうしろと?」
「何とかしていただけませんか」
「何とかって何だ。具体的に言え」
エドワードには具体案がなかった。あるなら自分でやっている。
レオナルドは鼻で笑った。
「情けないな、公爵。娘一人いなくなって右往左往か」
その言葉に、エドワードは何も返せなかった。事実だからだ。
しばらく沈黙があった。
レオナルドが天井を見上げたまま、唐突に言った。
「……まあいい。俺が行ってやるよ」
「は?」
「視察だ。辺境とやら、一度見に行ってやる」
エドワードが目を瞬かせた。
「殿下が、直接……?」
「あの女、辺境で惨めに暮らしてるんだろう? 俺が直々に『戻ってこい』と言ってやれば済む話だ。婚約はもうないが、公爵家の帳簿係としての体裁くらいは戻してやる」
レオナルドは立ち上がり、鏡の前で髪を整えた。
「ちょうど暖かい時期だしな。たまには王都を離れるのも悪くない」
自分の顔に満足したように頷く。
「ただし——言い寄られたら面倒だから、その辺は注意しないとな」
エドワードは口を開きかけた。アイリスがレオナルドに言い寄る可能性は、帳簿の数字が自然に合う可能性と同程度にはゼロだ。だが、言わなかった。言う意味がない。
「ありがとうございます、殿下」
「礼はいい。俺の器の大きさを見せてやるだけだ」
レオナルドは上機嫌で部屋を出ていった。
ミレーヌに報告しに行くのだろう。「俺があの女を連れ戻してやる」と、得意げに。
***
一人残された応接室で、エドワードは窓の外を見た。
王都の街並み。整った石畳、行き交う馬車、賑やかな市場。
アーレン領とは何もかもが違う。あの子は今、あの荒れ地で何をしているのだろう。
帳簿を回している、に決まっている。あの子はそういう人間だ。
(……すまない、アイリス)
その言葉は、口から出ることはなかった。
目を逸らすことには、もう慣れていた。
あなたにおすすめの小説
「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった
歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。
だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」
追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。
一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。
誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。
「その言葉は、もう翻訳できません」
「お前がいると息が詰まる」と追放された令嬢——翌週から公爵家の予定が全て狂った
歩人
ファンタジー
クラリッサは公爵家の日程管理を一手に担う令嬢。前世の社畜経験を活かし、行事計画、来客対応、予算管理まで完璧にこなしていた。
だが婚約者ヴィクトルは言った。「お前がいると息が詰まる。もっと華やかな女がいい」
追放されたクラリッサが去った翌週、公爵家の予定が全て狂い始める。
舞踏会の招待状は届かず、外交晩餐会の料理は手配されず、決算書類は行方不明。
一方クラリッサは、若き領主の元で「定時退社」という夢を叶えていた。
「もう、残業はしません」
【完結済】破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします
紫
恋愛
水不足に喘ぐ貧困侯爵家の次女エリルシアは、父親からの手紙で王都に向かう。
王子の婚約者選定に関して、白羽の矢が立ったのだが、どうやらその王子には恋人がいる…らしい?
つまりエリルシアが悪役令嬢ポジなのか!?
そんな役どころなんて御免被りたいが、王サマからの提案が魅力的過ぎて、王宮滞在を了承してしまう。
報酬に目が眩んだエリルシアだが、無事王宮を脱出出来るのか。
王子サマと恋人(もしかしてヒロイン?)の未来はどうなるのか。
2025年10月06日、初HOTランキング入りです! 本当にありがとうございます!!(2位だなんて……いやいや、ありえないと言うか…本気で夢でも見ているのではないでしょーか……)
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
※小説家になろう様にも掲載させていただいています。
※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。
※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。
※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。
※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。
※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。
※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。
※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
辺境は独自路線で進みます! ~見下され搾取され続けるのは御免なので~
紫月 由良
恋愛
辺境に領地を持つマリエ・オリオール伯爵令嬢は、貴族学院の食堂で婚約者であるジョルジュ・ミラボーから婚約破棄をつきつけられた。二人の仲は険悪で修復不可能だったこともあり、マリエは快諾すると学院を早退して婚約者の家に向かい、その日のうちに婚約が破棄された。辺境=田舎者という風潮によって居心地が悪くなっていたため、これを機に学院を退学して領地に引き籠ることにした。
魔法契約によりオリオール伯爵家やフォートレル辺境伯家は国から離反できないが、関わり合いを最低限にして独自路線を歩むことに――。
※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています
「嫌われ者の公爵令嬢は神の愛し子でした。愛し子を追放したら国が傾いた!? 今更助けてと言われても知りません」連載版
まほりろ
恋愛
公爵令嬢のアデリナ・ブラウフォードの人生は実母の死後大きく変わった。
公爵は妻の葬儀が終わって間をあけず再婚。公爵と後妻の間には、再婚前に作った子供までいた。
アデリナは継母と異母妹に私物を奪われ、「離れ」と名ばかりの小屋に押し込められる。
腹違いの妹はアデリナを悪者に仕立て、周囲はそれを信じた。
本来ならアデリナの味方にならなくてはならない婚約者の王太子も、異母妹の魅力に骨抜きにされ全く頼りにならない。
学園の教師も、生徒も、生徒の保護者も王太子と異母妹の味方だ。
そんなアデリナにも唯一の味方がいる。それはトカゲのクヴェル。クヴェルは美少年に変身し、家事も炊事も裁縫も完璧にこなす不思議な存在だ。
実はクヴェルはこの国の建国に携わる水竜で、アデリナは三百年前に水竜を救った初代女王の生まれ変わりだったのだ。
アデリナを蔑ろにする国に嫌気がさしたクヴェルは、アデリナを連れて旅に出る。
神に去られた国は徐々に荒廃していき……。
一方その頃、祖国の荒廃を知らないアデリナはクヴェルとのグルメ旅を満喫していた。
「ん~~! このアップルパイは絶品! 紅茶も美味しい!!」
・人外×人間、竜×人間。
・短編版は小説家になろう、pixivにもアップしています。
・長編版を小説家になろうにも投稿しています。小説家になろう先行投稿。
「Copyright(C)2025-まほりろ」
※タイトル変更しました(2025/05/06)
✕「卒業パーティーで王太子から婚約破棄された公爵令嬢、親友のトカゲを連れて旅に出る〜私が国を出たあと井戸も湖も枯れたそうですが知りません」
✕「嫌われ者の公爵令嬢は国外追放を言い渡される。私が神の祝福持ちだと王家が気付いた時には国の崩壊が始まっていました」
◯新タイトル「嫌われ者の公爵令嬢は神の愛し子でした。愛し子を追放したら国が傾いた!? 今更助けてと言われても知りません」
・2025年5月16日HOTランキング2位!
ありがとうございます!
※表紙イラストは猫様からお借りしています。
追放令嬢、辺境王国で無双して王宮を揺るがす
遊鷹太
ファンタジー
王国随一の名門ハーランド公爵家の令嬢エリシアは、第一王子の婚約者でありながら、王宮の陰謀により突然追放される。濡れ衣を着せられ、全てを奪われた彼女は極寒の辺境国家ノルディアへと流される。しかしエリシアには秘密があった――前世の記憶と現代日本の経営知識を持つ転生者だったのだ。荒廃した辺境で、彼女は持ち前の戦略眼と人心掌握術で奇跡の復興を成し遂げる。やがて彼女の手腕は王国全土を震撼させ、自らを追放した者たちに復讐の刃を向ける。だが辺境王ルシアンとの運命的な出会いが、彼女の心に新たな感情を芽生えさせていく。これは、理不尽に奪われた女性が、知略と情熱で世界を変える物語――。
婚約破棄された公爵令嬢は冤罪で地下牢へ、前世の記憶を思い出したので、スキル引きこもりを使って王子たちに復讐します!
山田 バルス
ファンタジー
王宮大広間は春の祝宴で黄金色に輝き、各地の貴族たちの笑い声と音楽で満ちていた。しかしその中心で、空気を切り裂くように響いたのは、第1王子アルベルトの声だった。
「ローゼ・フォン・エルンスト! おまえとの婚約は、今日をもって破棄する!」
周囲の視線が一斉にローゼに注がれ、彼女は凍りついた。「……は?」唇からもれる言葉は震え、理解できないまま広間のざわめきが広がっていく。幼い頃から王子の隣で育ち、未来の王妃として教育を受けてきたローゼ――その誇り高き公爵令嬢が、今まさに公開の場で突き放されたのだ。
アルベルトは勝ち誇る笑みを浮かべ、隣に立つ淡いピンク髪の少女ミーアを差し置き、「おれはこの天使を選ぶ」と宣言した。ミーアは目を潤ませ、か細い声で応じる。取り巻きの貴族たちも次々にローゼの罪を指摘し、アーサーやマッスルといった証人が証言を加えることで、非難の声は広間を震わせた。
ローゼは必死に抗う。「わたしは何もしていない……」だが、王子の視線と群衆の圧力の前に言葉は届かない。アルベルトは公然と彼女を罪人扱いし、地下牢への収監を命じる。近衛兵に両腕を拘束され、引きずられるローゼ。広間には王子を讃える喝采と、哀れむ視線だけが残った。
その孤立無援の絶望の中で、ローゼの胸にかすかな光がともる。それは前世の記憶――ブラック企業で心身をすり減らし、引きこもりとなった過去の記憶だった。地下牢という絶望的な空間が、彼女の心に小さな希望を芽生えさせる。
そして――スキル《引きこもり》が発動する兆しを見せた。絶望の牢獄は、ローゼにとって新たな力を得る場となる。《マイルーム》が呼び出され、誰にも侵入されない自分だけの聖域が生まれる。泣き崩れる心に、未来への決意が灯る。ここから、ローゼの再起と逆転の物語が始まるのだった。