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王族って本当に屑ですね。どいつもこいつも自分のことしか考えない
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それから私は公爵家を調べた。
自分の配下の者を使って公爵家の使用人や出入りの業者から話を聞き、間諜のようなことをさせた結果、わかったのは公爵夫妻の行き過ぎた偏愛だった。
彼らは常にクリスティーナだけを寵愛し、マリアージュを蔑ろにしていた。
昔の私と似たような環境に置かれていたマリアージュに、私は同情するよりも先に喜びを感じていた。
──彼女は私と同じような過去を抱えている。彼女と出会ったのは運命だ。
そう思うと、私のマリアージュへの愛はより深くなっていった。家族の分も私が彼女を愛そうと、時間の許す限り彼女をそばに置き、会う度に愛の言葉を囁いた。彼女はいつも可愛く照れながら「私も愛しています」と返してくれたし、笑顔も前のような明るいものに戻り、安心していた時だった。
公爵家から、婚約者変更の申し出があった。
姉のマリアージュより妹のクリスティーナの方が王妃に相応しい、姉妹を入れ替えるだけで公爵家との縁談なのは変わらないのだから問題ない、というのが公爵家の主張だった。
私は当然反対した。婚約者の変更などあり得ない、マリアージュ以上に王妃に相応しい者などいない、そんなことは絶対に許さない、と捲し立てた。
幸い陛下も認めなかったので、その話はすぐに流れた。
だが公爵家の行動に危機感を覚えた私は、再びリリアナを呼び出し相談する事にした。
「正直、ウィルフリード殿下にはガッカリですね。もっと思い切ったことをしてくださると思っていました」
事の一部始終を話した私に、リリアナはそう言ってのけた。
さすがに今回は不快感を顔に出すことはしなかった。
「では、どうすればいいと?」
「その前に、まずはこちらを見て頂けますか?」
そう言うと、リリアナはポケットからペンを取り出した。
「このペンは、マリアージュ様から誕生日プレゼントとして頂いたものです」
そのペンは金属製で、光沢のある青い塗装がされていた。
「綺麗なペンだな。さすが、マリーはセンスが良い」
「ええ、本当に。こうして光を当てるとキラキラと反射するんです。わかりますか?」
リリアナはペンをゆっくりと揺らして光を当てる。
角度を変える度に、ペンはキラキラと光を反射していた。
「ああ、そうだな」
リリアナはペンをゆっくりと揺らしながら話し続ける。
「青い色は心を落ち着ける効果があるんです。こうして光を当てながらジッと見ていると、まるでユラユラと揺れる海の水面を見ているようで、不思議と力が抜けていくんです」
リリアナが揺らすペンをジッと見つめる。
確かに、力が抜けてくる……
「こうしてユラユラ揺れる度に、どんどん力が抜けていきます。どんどん瞼が重くなってきて、まるで海に漂うみたいに、ユラユラと、心地よくなって──」
──パンッ!
手を叩いたような音に、ハッと目を開ける。
私は今何を……
「ウィルフリード殿下、今から何をすればいいか、わかりますか?」
「ああ、マリアージュを家族から引き離し、王宮で保護する。特にクリスティーナとは接触させないよう徹底しよう」
「ええ、そうしてください。もう二度と呼び出さないでくださいね。それでは失礼します」
自分の配下の者を使って公爵家の使用人や出入りの業者から話を聞き、間諜のようなことをさせた結果、わかったのは公爵夫妻の行き過ぎた偏愛だった。
彼らは常にクリスティーナだけを寵愛し、マリアージュを蔑ろにしていた。
昔の私と似たような環境に置かれていたマリアージュに、私は同情するよりも先に喜びを感じていた。
──彼女は私と同じような過去を抱えている。彼女と出会ったのは運命だ。
そう思うと、私のマリアージュへの愛はより深くなっていった。家族の分も私が彼女を愛そうと、時間の許す限り彼女をそばに置き、会う度に愛の言葉を囁いた。彼女はいつも可愛く照れながら「私も愛しています」と返してくれたし、笑顔も前のような明るいものに戻り、安心していた時だった。
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姉のマリアージュより妹のクリスティーナの方が王妃に相応しい、姉妹を入れ替えるだけで公爵家との縁談なのは変わらないのだから問題ない、というのが公爵家の主張だった。
私は当然反対した。婚約者の変更などあり得ない、マリアージュ以上に王妃に相応しい者などいない、そんなことは絶対に許さない、と捲し立てた。
幸い陛下も認めなかったので、その話はすぐに流れた。
だが公爵家の行動に危機感を覚えた私は、再びリリアナを呼び出し相談する事にした。
「正直、ウィルフリード殿下にはガッカリですね。もっと思い切ったことをしてくださると思っていました」
事の一部始終を話した私に、リリアナはそう言ってのけた。
さすがに今回は不快感を顔に出すことはしなかった。
「では、どうすればいいと?」
「その前に、まずはこちらを見て頂けますか?」
そう言うと、リリアナはポケットからペンを取り出した。
「このペンは、マリアージュ様から誕生日プレゼントとして頂いたものです」
そのペンは金属製で、光沢のある青い塗装がされていた。
「綺麗なペンだな。さすが、マリーはセンスが良い」
「ええ、本当に。こうして光を当てるとキラキラと反射するんです。わかりますか?」
リリアナはペンをゆっくりと揺らして光を当てる。
角度を変える度に、ペンはキラキラと光を反射していた。
「ああ、そうだな」
リリアナはペンをゆっくりと揺らしながら話し続ける。
「青い色は心を落ち着ける効果があるんです。こうして光を当てながらジッと見ていると、まるでユラユラと揺れる海の水面を見ているようで、不思議と力が抜けていくんです」
リリアナが揺らすペンをジッと見つめる。
確かに、力が抜けてくる……
「こうしてユラユラ揺れる度に、どんどん力が抜けていきます。どんどん瞼が重くなってきて、まるで海に漂うみたいに、ユラユラと、心地よくなって──」
──パンッ!
手を叩いたような音に、ハッと目を開ける。
私は今何を……
「ウィルフリード殿下、今から何をすればいいか、わかりますか?」
「ああ、マリアージュを家族から引き離し、王宮で保護する。特にクリスティーナとは接触させないよう徹底しよう」
「ええ、そうしてください。もう二度と呼び出さないでくださいね。それでは失礼します」
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