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第2話 意外な知らせ
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俺を慰留しようとした青谷社長だが我慢の限界に達したらしく、真っ赤な顔でそうどなった。
もっともスケジュールが1年先まで埋まってるので、それまではここで働くつもりだ。青谷も同意見だった。
1人でケツをまくるつもりだったが青谷社長は銅田さんに、俺が辞めると表明したのは彼女のマネージメント不足と決めつけ、1年後一緒に追いだすと決定する。
「悪かったね銅田さん」
俺は深々と一礼すると、心が切りきざまれるような思いで、彼女に対し謝った。
「気にしないで」
彼女は笑顔で俺に答えた。
「良かったら、俺と一緒に働かない? 銅田さんのおかげで、ここまで来れた。これからも一緒に仕事がしたい」
「わかった。これからも、よろしくね」
銅田さんは、即答してくれた。実際彼女のマネージメントがなければ、今のように売れたかもわからない。俺はいつか独立して個人事務所を持つのが夢だが上手くやらないと、芸能界から干されかねない。
そこで俺と銅田さんはコネを使って別の事務所を探したが、大手事務所の『ゼムリャー』ににらまれるのが怖いのか、なかなか新しい契約先が決まらない。正直途方に暮れてしまった。自分の選択が重大な間違いに思えてくる。
うつ病ってほどじゃないけど常に胸には暗雲がたれこめて、何をするにもイマイチやる気がしないのだ。そんなある日、楽屋にいた俺の前に現れたマネージャーから劇的な言葉が発された。
「報告が2つあるの」
銅田さんが、宣言する。
「よい方から、教えて。悪い方は後回し。弁当のおかずは、好きな物から食べる主義でね」
身も心もストレスで疲労の極みに達してる時悪い報告を聞きたくないので、自分のテンションを上げるため、そう話した。
「まず1つ。ゼムリャーの奴隷商人から27日間のオフ決定のお知らせ」
最初自分が耳にした言葉の意味がわからなかった。そのうちそれが冗談じゃないかと疑いはじめる。社長に限って、事務所の奴隷を休ませるなんてあるはずがないからだ。
「ジョークじゃないよね」
半信半疑……いや、100%の疑いを持って聞く。
「本当よ」
思わず俺は飛びあがって喜んだ。歓喜の叫びをあげたはずだが、自分でもどんな言葉を発したかわからない。青谷が長期オフを許可したのが、信じられなかった。やがて興奮が冷め、銅田さんに質問する。
「悪い方の報告は」
「悪い方じゃなく、もっと良い報告。『ケンタウリ』の会長があなたと会うって。移籍の件、希望の条件で前向きに考えてるそうよ」
思わず俺は、マネージャーに抱きついた。『ケンタウリ』と言えば、大手事務所だ。
「全ては、銅田さんのおかげだ」
銅田さんから離れると、俺は話した。
「スラム育ちの若造が、ここまでのしあがってこれたのも。それだけじゃない。長期のオフと、事務所の移籍までプレゼントしてくれて」
「何言ってんの。マネージャーとして、当然の力添えをしただけ」
銅田さんは、息子を見守るかのように微笑んだ。彼女はバツイチで、卵子は若い時凍結保存したものの、子供を作った経験はない。そんな彼女を、アル中のまま死んだお袋の代わりに、俺は勝手に母親のように思ってた。
「『ケンタウリ』の会長とは、いつ会えるの」
興奮を抑えきれない口調で、俺はそう尋ねた。
「会長はお忙しいから、7月29日の金曜になるわ。休暇が7月1日金曜から7月28日木曜までだから、その直後ね。ぎりぎりのスケジュールで、ごめんなさい」
「いいよ、別に」
今日は2135年6月1日の水曜だ。後1ヶ月で休暇がもらえると思うと、天にも昇る気持ちになった。俺の脳裏に、ある人物の顔が浮かんだ。入福光則(いりふく みつのり)。『スペース・コロニー開発公社』の重役だ。
俺は毎週各界の有名人にインタビューするテレビ番組でMCをやってるが、入福はその番組にゲスト出演したのである。収録後俺が『1人の時間がたっぷりほしい』と話した時、長期休暇が取れる時は経年劣化で閉鎖中のレクリエーション・コロニー『エデン』で休養するよう勧めてきたのだ。
本当は紬と行くつもりだったが、半月前別れてしまった。原因は色々あったがあまりに俺が忙しいのと、ファンの女の子と浮気したのも理由の一つだ。全ては俺のせいである。
紬と別れた後で俺は激しく後悔したが、後の祭りだ。俺は左腕にはめた腕時計型のナノフォンで、入福にメールを送信した。返信がきたのは半日後だ。いくつかのメールのやりとりの後、俺は入福の指定した六本木のカフェで会う手はずを整えた。
待ちあわせの時刻に現れた入福はスポーツで鍛えた体を、高価なスーツで包んでいる。クリプトン星から来たスーパーマンだと自己紹介しても通じそうな体型だ。
「長期オフが取れたそうで、何よりです」
入福は見る者を安心させる柔らかな笑みを浮かべた。顔はなかなかのイケメンで、役者でもやってけそうな感じである。
「よく、取れましたね」
長期オフを取れたのは銅田さんの話だと、元々俺が出るはずだったドラマの収録を、社長が別の人間にやらせると決めたからである。何の事はない。
社長は俺をすでに切ろうとしてるのだ。
「そうなんです。ホントようやくって感じで」
俺は、嬉しさを隠せない弾んだ声でそう話した。
「それでは早速7月1日に地球を出ましょう」
強引と思える話し方で、入福が進めた。
もっともスケジュールが1年先まで埋まってるので、それまではここで働くつもりだ。青谷も同意見だった。
1人でケツをまくるつもりだったが青谷社長は銅田さんに、俺が辞めると表明したのは彼女のマネージメント不足と決めつけ、1年後一緒に追いだすと決定する。
「悪かったね銅田さん」
俺は深々と一礼すると、心が切りきざまれるような思いで、彼女に対し謝った。
「気にしないで」
彼女は笑顔で俺に答えた。
「良かったら、俺と一緒に働かない? 銅田さんのおかげで、ここまで来れた。これからも一緒に仕事がしたい」
「わかった。これからも、よろしくね」
銅田さんは、即答してくれた。実際彼女のマネージメントがなければ、今のように売れたかもわからない。俺はいつか独立して個人事務所を持つのが夢だが上手くやらないと、芸能界から干されかねない。
そこで俺と銅田さんはコネを使って別の事務所を探したが、大手事務所の『ゼムリャー』ににらまれるのが怖いのか、なかなか新しい契約先が決まらない。正直途方に暮れてしまった。自分の選択が重大な間違いに思えてくる。
うつ病ってほどじゃないけど常に胸には暗雲がたれこめて、何をするにもイマイチやる気がしないのだ。そんなある日、楽屋にいた俺の前に現れたマネージャーから劇的な言葉が発された。
「報告が2つあるの」
銅田さんが、宣言する。
「よい方から、教えて。悪い方は後回し。弁当のおかずは、好きな物から食べる主義でね」
身も心もストレスで疲労の極みに達してる時悪い報告を聞きたくないので、自分のテンションを上げるため、そう話した。
「まず1つ。ゼムリャーの奴隷商人から27日間のオフ決定のお知らせ」
最初自分が耳にした言葉の意味がわからなかった。そのうちそれが冗談じゃないかと疑いはじめる。社長に限って、事務所の奴隷を休ませるなんてあるはずがないからだ。
「ジョークじゃないよね」
半信半疑……いや、100%の疑いを持って聞く。
「本当よ」
思わず俺は飛びあがって喜んだ。歓喜の叫びをあげたはずだが、自分でもどんな言葉を発したかわからない。青谷が長期オフを許可したのが、信じられなかった。やがて興奮が冷め、銅田さんに質問する。
「悪い方の報告は」
「悪い方じゃなく、もっと良い報告。『ケンタウリ』の会長があなたと会うって。移籍の件、希望の条件で前向きに考えてるそうよ」
思わず俺は、マネージャーに抱きついた。『ケンタウリ』と言えば、大手事務所だ。
「全ては、銅田さんのおかげだ」
銅田さんから離れると、俺は話した。
「スラム育ちの若造が、ここまでのしあがってこれたのも。それだけじゃない。長期のオフと、事務所の移籍までプレゼントしてくれて」
「何言ってんの。マネージャーとして、当然の力添えをしただけ」
銅田さんは、息子を見守るかのように微笑んだ。彼女はバツイチで、卵子は若い時凍結保存したものの、子供を作った経験はない。そんな彼女を、アル中のまま死んだお袋の代わりに、俺は勝手に母親のように思ってた。
「『ケンタウリ』の会長とは、いつ会えるの」
興奮を抑えきれない口調で、俺はそう尋ねた。
「会長はお忙しいから、7月29日の金曜になるわ。休暇が7月1日金曜から7月28日木曜までだから、その直後ね。ぎりぎりのスケジュールで、ごめんなさい」
「いいよ、別に」
今日は2135年6月1日の水曜だ。後1ヶ月で休暇がもらえると思うと、天にも昇る気持ちになった。俺の脳裏に、ある人物の顔が浮かんだ。入福光則(いりふく みつのり)。『スペース・コロニー開発公社』の重役だ。
俺は毎週各界の有名人にインタビューするテレビ番組でMCをやってるが、入福はその番組にゲスト出演したのである。収録後俺が『1人の時間がたっぷりほしい』と話した時、長期休暇が取れる時は経年劣化で閉鎖中のレクリエーション・コロニー『エデン』で休養するよう勧めてきたのだ。
本当は紬と行くつもりだったが、半月前別れてしまった。原因は色々あったがあまりに俺が忙しいのと、ファンの女の子と浮気したのも理由の一つだ。全ては俺のせいである。
紬と別れた後で俺は激しく後悔したが、後の祭りだ。俺は左腕にはめた腕時計型のナノフォンで、入福にメールを送信した。返信がきたのは半日後だ。いくつかのメールのやりとりの後、俺は入福の指定した六本木のカフェで会う手はずを整えた。
待ちあわせの時刻に現れた入福はスポーツで鍛えた体を、高価なスーツで包んでいる。クリプトン星から来たスーパーマンだと自己紹介しても通じそうな体型だ。
「長期オフが取れたそうで、何よりです」
入福は見る者を安心させる柔らかな笑みを浮かべた。顔はなかなかのイケメンで、役者でもやってけそうな感じである。
「よく、取れましたね」
長期オフを取れたのは銅田さんの話だと、元々俺が出るはずだったドラマの収録を、社長が別の人間にやらせると決めたからである。何の事はない。
社長は俺をすでに切ろうとしてるのだ。
「そうなんです。ホントようやくって感じで」
俺は、嬉しさを隠せない弾んだ声でそう話した。
「それでは早速7月1日に地球を出ましょう」
強引と思える話し方で、入福が進めた。
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