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第8話 調査の開始!
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「仕事はどこでされてたんですか? 岩永さん」
「この所長室だよ。次期所長は彼だしね。そして失踪当日は、岩永君が最後に出た。工事関係者もすでに全員帰宅してたから、残りは2人の守衛さんだけになる」
「岩永先生が出た後、例えば火災が起きた時に泊まりの警備員が、この中に入る事は可能でしょうか?」
「それは、可能だ。ただ通常時には入らないようお願いしてる。守衛さんを信用してないわけじゃないけど、毎日出勤した時に出入口に誰かが夜中に入ったかどうか、ログで確認してるんだ。この出入口は、僕らの持ってるカードじゃないと、出入りできないからね。もしくは今君が持ってる受付で渡されたゲストカードじゃないと」
その通りだ。最初ここに来た時も、新聞記者だから、特別に入室を許されたと説明された。
通常ゲストカードには所長室出入口の権限は付与しないそうで、その場合出入口の脇にあるカードリーダーにタッチさせてもドアは開かないと聞いている。
「まるで君達は、探偵気どりだな」
及能が笑う。病気のせいか、力がない。ソファーにもたれかけながらの発言だ。なんだか小さくなったようにも見える。
「社会部ならまだしも、君達は科学部だろう」
「私達は、ジャーナリストです。真実を追求するのが仕事です。社会部も科学部も関係ないです」
菜摘は、答えた。
「世の中には君らをマスゴミとか、オールドメディアと呼ぶ者もいるが、君は随分気骨があるな」
「私は、自分の職業を誇りに持ってます。及能先生と同じように。科学部なんで、神隠しなんて、信じてません。何かトリックがあるはずです」
「そうなんだろうけど、私にはわからんね。ともかく岩永君には、早く戻ってほしいもんだよ」
「石崎さんと守屋さんにもお話をお伺いしたいんですけど」
「なんだなんだ。本格的に探偵の真似事かい? 僕はそれを断る事もできるんだよ」
「無論です。その代わりどんな記事が掲載されるか、考えた方が良いですね」
及能は、鼻で笑う。
「脅迫のつもりかな?」
「岩永先生の身を心配するからこその言動です」
「まあ、いいだろ。後ろ暗いところはないんだ」
結局石崎と守屋の2人には、階下の応接室で1人ずつ会う事になった。2人の記者は及能に案内されて、応接室に向かう。
菜摘達を案内した後及能は、再び所長室に戻るためエレベーターに乗りこんだ。
「春野さん、僕はちょっと金網の方を調べてきます」
及能が姿を消した後、津釜が小声で声をかけてきた。
「岩永さんがロボットセンター通りを出てない以上何らかの方法で金網を乗り越えたと考えられます」
「どうやって?」
思わず、菜摘は吹き出した。どう考えても、岩永の脚では無理だ。また、そうする必要もない。
忘れ物をしたのなら、普通に戻れば良いだけだ。
「ともかく、金網や道路をじっくり調べてみますよ。どうせ警察は、そこまで見てないでしょうしね」
「わかった」
一旦敷地外に出た津釜は、金網沿いに駅へ向かって歩いてみた。最初彼は今回の件についてさほど熱心じゃなかったが、いつのまにか菜摘のペースに巻き込まれている。
やがて今年も来るであろう猛暑の夏より熱い情熱の持ち主が彼女なのだ。しばらく歩くと途中で金網に異常があるのに気がつく。
金網の穴が広がっていたのだ。1箇所だけでなく誰かがそこをよじ登ったかのように、縦方向に金網が左右に2列間を空けて変形してる。
念のためスマホで画像を撮る。津釜は少し離れた場所から金網を途中までよじ登り、また地上まで引き返す。
靴の汚れはついたけど、体重70キロの津釜では変形しなかった。岩永の体重は多分80キロぐらいだろう。
仮に彼がよじ登っても、こんなふうに金網の穴の部分が広がってしまうとは思えない。
外国の工作員が岩永を背中に背負ってよじ登ればそうなるかもしれないが、駅の防犯カメラにも、センターの出入口にあるカメラにも、それらしき人物が出入りしたのは映ってはいないのだ。それにせっかく副所長を誘拐したスパイが、わざわざセンターの敷地内に入るのも、おかしい。
「この所長室だよ。次期所長は彼だしね。そして失踪当日は、岩永君が最後に出た。工事関係者もすでに全員帰宅してたから、残りは2人の守衛さんだけになる」
「岩永先生が出た後、例えば火災が起きた時に泊まりの警備員が、この中に入る事は可能でしょうか?」
「それは、可能だ。ただ通常時には入らないようお願いしてる。守衛さんを信用してないわけじゃないけど、毎日出勤した時に出入口に誰かが夜中に入ったかどうか、ログで確認してるんだ。この出入口は、僕らの持ってるカードじゃないと、出入りできないからね。もしくは今君が持ってる受付で渡されたゲストカードじゃないと」
その通りだ。最初ここに来た時も、新聞記者だから、特別に入室を許されたと説明された。
通常ゲストカードには所長室出入口の権限は付与しないそうで、その場合出入口の脇にあるカードリーダーにタッチさせてもドアは開かないと聞いている。
「まるで君達は、探偵気どりだな」
及能が笑う。病気のせいか、力がない。ソファーにもたれかけながらの発言だ。なんだか小さくなったようにも見える。
「社会部ならまだしも、君達は科学部だろう」
「私達は、ジャーナリストです。真実を追求するのが仕事です。社会部も科学部も関係ないです」
菜摘は、答えた。
「世の中には君らをマスゴミとか、オールドメディアと呼ぶ者もいるが、君は随分気骨があるな」
「私は、自分の職業を誇りに持ってます。及能先生と同じように。科学部なんで、神隠しなんて、信じてません。何かトリックがあるはずです」
「そうなんだろうけど、私にはわからんね。ともかく岩永君には、早く戻ってほしいもんだよ」
「石崎さんと守屋さんにもお話をお伺いしたいんですけど」
「なんだなんだ。本格的に探偵の真似事かい? 僕はそれを断る事もできるんだよ」
「無論です。その代わりどんな記事が掲載されるか、考えた方が良いですね」
及能は、鼻で笑う。
「脅迫のつもりかな?」
「岩永先生の身を心配するからこその言動です」
「まあ、いいだろ。後ろ暗いところはないんだ」
結局石崎と守屋の2人には、階下の応接室で1人ずつ会う事になった。2人の記者は及能に案内されて、応接室に向かう。
菜摘達を案内した後及能は、再び所長室に戻るためエレベーターに乗りこんだ。
「春野さん、僕はちょっと金網の方を調べてきます」
及能が姿を消した後、津釜が小声で声をかけてきた。
「岩永さんがロボットセンター通りを出てない以上何らかの方法で金網を乗り越えたと考えられます」
「どうやって?」
思わず、菜摘は吹き出した。どう考えても、岩永の脚では無理だ。また、そうする必要もない。
忘れ物をしたのなら、普通に戻れば良いだけだ。
「ともかく、金網や道路をじっくり調べてみますよ。どうせ警察は、そこまで見てないでしょうしね」
「わかった」
一旦敷地外に出た津釜は、金網沿いに駅へ向かって歩いてみた。最初彼は今回の件についてさほど熱心じゃなかったが、いつのまにか菜摘のペースに巻き込まれている。
やがて今年も来るであろう猛暑の夏より熱い情熱の持ち主が彼女なのだ。しばらく歩くと途中で金網に異常があるのに気がつく。
金網の穴が広がっていたのだ。1箇所だけでなく誰かがそこをよじ登ったかのように、縦方向に金網が左右に2列間を空けて変形してる。
念のためスマホで画像を撮る。津釜は少し離れた場所から金網を途中までよじ登り、また地上まで引き返す。
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仮に彼がよじ登っても、こんなふうに金網の穴の部分が広がってしまうとは思えない。
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