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第10話 菜摘の推理
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石崎は菜摘の申し出に、困惑しぬいた顔をしている。
「私は金網の件に疑問を持ってます。普通金網の穴が広がるような事はまずないからです」
「誰か巨大な大男がいて、通りを歩いていた岩永先生を拉致して、金網を乗り越えたとでも言うんですか?」
石崎は、菜摘に詰め寄った。
「もしくはロボットかもしれません」
「うちのロボットがやったって事ですか? それはないです。登録された全てのロボットは厳重に管理されてます。先日あなたが取材に来た時は他からロボットを2体
「お話は、よくわかりました」
菜摘は、答える。
「原因がわからないならなおさら警察に連絡して調べていただいた方がいいんじゃないですか?」
石崎は、岩でも噛んでしまったような表情だった。永遠にも思われる時間が過ぎる。実際には数分だったのだろうけど。
彼はまるで高重力の惑星にいるかのような手つきで自分のスマホを出し、どこかにかけた。そして、相手と会話を始める。どうやら電話の向こうには、及能がいるようだ。
「所長の許可が取れたので、今金網を一緒に見に行きます」
菜摘は石崎と一緒にロボットセンターを出て、別棟に面した金網に向かう。
「確かに、この穴は不自然ですね」
石崎はスマホを取り出す。通話の相手は、今度も及能所長のようだ。
「及能先生も、ここに来て見てくれます」
石崎が、説明する。
「そういえば及能先生が、岩永先生の失踪した日に妙な話してたな」
「どんな事をおっしゃってました?」
「『右の腰の調子が悪いから、見てくれないか』と、言ってたんです。ロボットの不調なら通常僕が指示されますし、そもそも今はロボットが一体もいないので」
やがて所長も現れた。金網の広がった穴を見つめる及能の顔が、訝しげに歪む。
「確かに、妙ですね。仮に春野さんにお見せした人間型ロボットが歩いてこの金網を乗りこえれば、こんなふうに金網の穴が大きく広がる事はありえます」
そこで及能は菜摘を見る。
「しかし春山さん達に見せたロボット達は発信機がついてます」
所長は続けた。
「位置情報は管理されており、発信機のついたロボットは全てどこにあるかわかってます。なので発信機のついたロボットがここを乗り越えるとは思えません」
「お話は、わかりました」
「仮に今回の失踪が拉致ならば、なぜ犯人は岩永先生を外部にではなくロボットセンター内部に金網を越えて連れ込んだかという疑問もあります。それはそれとして、あなたの疑問をとくためにも、一緒に別棟に参りましょうか」
及能に連れられて、3人は元来た道を戻り、出入口から敷地内に入って、別棟へと向かう。
意外にすんなり別棟行きを及能が了承したので拍子抜けする。やがて別棟が現れた。周囲を金網に囲まれている。
金網についた扉の鍵穴に、所長はポケットから出した鍵を突っ込んだ。ドアが開く。3人は、中に入った。
さらに今度は別棟の扉に進む。ドアのそばにカードリーダーがあり、及能が自分のカードをタッチさせる。
「権限があるのは私のカードだけなんで、お2人はタッチしないで」
所長が指示した。菜摘達は、その通りにする。別棟内には書類を入れた箱が整然と積み重ねてあった。
特に、おかしな点はなさそうだ。
「これで納得しましたか?」
及能が、投げかける。
「おかしな点がないところが、おかしいです」
菜摘が、答えた。石崎が、キョトンとした顔になる。
「もう少し敷地内を見せてください。1人で歩きまわっても大丈夫ですか?」
「いいでしょう。ご自由に」
及能が、回答する。他の2人と離れた菜摘は、ロボットセンターの建物の外周を一周する。
そしてライトウィング棟の、地面に接した場所にやってきた。先程はハエが3匹いたが、今は4匹になっている。
ハエが喜びそうな物はないのに、長い外周のうちで、ここだけにハエが来ているのだ。
「何か、面白い物でも見つけましたか?」
いつのまにか所長が現れて聞いてきた。その表情は鋼鉄製のように硬い。
「なんとなく、事件の真相がわかりました」
菜摘は、そう放つ。
「私は金網の件に疑問を持ってます。普通金網の穴が広がるような事はまずないからです」
「誰か巨大な大男がいて、通りを歩いていた岩永先生を拉致して、金網を乗り越えたとでも言うんですか?」
石崎は、菜摘に詰め寄った。
「もしくはロボットかもしれません」
「うちのロボットがやったって事ですか? それはないです。登録された全てのロボットは厳重に管理されてます。先日あなたが取材に来た時は他からロボットを2体
「お話は、よくわかりました」
菜摘は、答える。
「原因がわからないならなおさら警察に連絡して調べていただいた方がいいんじゃないですか?」
石崎は、岩でも噛んでしまったような表情だった。永遠にも思われる時間が過ぎる。実際には数分だったのだろうけど。
彼はまるで高重力の惑星にいるかのような手つきで自分のスマホを出し、どこかにかけた。そして、相手と会話を始める。どうやら電話の向こうには、及能がいるようだ。
「所長の許可が取れたので、今金網を一緒に見に行きます」
菜摘は石崎と一緒にロボットセンターを出て、別棟に面した金網に向かう。
「確かに、この穴は不自然ですね」
石崎はスマホを取り出す。通話の相手は、今度も及能所長のようだ。
「及能先生も、ここに来て見てくれます」
石崎が、説明する。
「そういえば及能先生が、岩永先生の失踪した日に妙な話してたな」
「どんな事をおっしゃってました?」
「『右の腰の調子が悪いから、見てくれないか』と、言ってたんです。ロボットの不調なら通常僕が指示されますし、そもそも今はロボットが一体もいないので」
やがて所長も現れた。金網の広がった穴を見つめる及能の顔が、訝しげに歪む。
「確かに、妙ですね。仮に春野さんにお見せした人間型ロボットが歩いてこの金網を乗りこえれば、こんなふうに金網の穴が大きく広がる事はありえます」
そこで及能は菜摘を見る。
「しかし春山さん達に見せたロボット達は発信機がついてます」
所長は続けた。
「位置情報は管理されており、発信機のついたロボットは全てどこにあるかわかってます。なので発信機のついたロボットがここを乗り越えるとは思えません」
「お話は、わかりました」
「仮に今回の失踪が拉致ならば、なぜ犯人は岩永先生を外部にではなくロボットセンター内部に金網を越えて連れ込んだかという疑問もあります。それはそれとして、あなたの疑問をとくためにも、一緒に別棟に参りましょうか」
及能に連れられて、3人は元来た道を戻り、出入口から敷地内に入って、別棟へと向かう。
意外にすんなり別棟行きを及能が了承したので拍子抜けする。やがて別棟が現れた。周囲を金網に囲まれている。
金網についた扉の鍵穴に、所長はポケットから出した鍵を突っ込んだ。ドアが開く。3人は、中に入った。
さらに今度は別棟の扉に進む。ドアのそばにカードリーダーがあり、及能が自分のカードをタッチさせる。
「権限があるのは私のカードだけなんで、お2人はタッチしないで」
所長が指示した。菜摘達は、その通りにする。別棟内には書類を入れた箱が整然と積み重ねてあった。
特に、おかしな点はなさそうだ。
「これで納得しましたか?」
及能が、投げかける。
「おかしな点がないところが、おかしいです」
菜摘が、答えた。石崎が、キョトンとした顔になる。
「もう少し敷地内を見せてください。1人で歩きまわっても大丈夫ですか?」
「いいでしょう。ご自由に」
及能が、回答する。他の2人と離れた菜摘は、ロボットセンターの建物の外周を一周する。
そしてライトウィング棟の、地面に接した場所にやってきた。先程はハエが3匹いたが、今は4匹になっている。
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「何か、面白い物でも見つけましたか?」
いつのまにか所長が現れて聞いてきた。その表情は鋼鉄製のように硬い。
「なんとなく、事件の真相がわかりました」
菜摘は、そう放つ。
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