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五章
過ちの後
しおりを挟む「本日付けでフェリペ・デ・アラゴニア・エスティリアを陸軍少佐に任命する」
ブルーノ・デ・アブスブルゴ陸軍大佐の辞令に、フェリペは敬礼をした。
「マリポーザ・プエンテの捜索では大活躍だったな。皇帝陛下も褒めておられた」
「ありがとうございます」
フェリペは柔らかな笑みを浮かべる。
「それと、元特別参謀の襲撃事件だが、山賊による仕業とあったが、本当か?」
大佐はじろりとフェリペを睨め上げる。
「はい。僕たちが通った道では、山賊が多く出るそうです」
「あんな真冬にか? 通常は夏など旅人が多く通る時期に、山賊が出るもんだろう」
「山村は帝都と違い、食料が不足しています。冬は特に蓄えが厳しくなるので、旅人を襲ったのではないでしょうか。食料を奪おうとして襲ったけれども、それが陸軍の兵士だと気づいて逃げ出した、というのが僕の推測です」
「旅の途中、何度も山賊に襲われたと?」
「インヴィエルノ帝国は貧しい国です。それだけ飢えに困っている地域が多いのではないでしょうか。
山賊対策には山狩りではなく、根本的な解決をすべきです。たとえ今の山賊を捕まえたところで、食料が不足すれば第二、第三の山賊が出るでしょう。ですから、食料を山村に十分いき渡らせるよう食料の徴収を減らし、より作物が採れるよう農業の研究をすることを提案します」
「ふうむ……」
陸軍大佐は低く唸った。
「まあいいだろう。そのように皇帝陛下に報告しておこう。どちらにしろこの件は、元特別参謀亡き今、皇帝陛下の関心事ではなくなっているからな。
それで、フェルナンド・デ・ヴィヤレアル軍曹をマリポーザの護衛に推薦したのは、何故だ?」
「彼は精霊使いの護衛として、元特別参謀と長く一緒にいました。元特別参謀が過去に訪れた古代遺跡に、彼は我々とともに一緒に行っています。また、医療技術も群を抜いていますので、マリポーザの旅の護衛に適任です」
「フェルナンドか」
大佐は葉巻をポケットから取り出し、火をつけた。
「ここからは独り言だがな。身内に牙を剥いた奴をかばって、何になるんだ?」
大佐の口から紫煙が立ち上った。
「では僕も独り言ですが、上級貴族が重要なポジションを占めることに対する不満は、一人だけが持っている訳ではありません。発酵している酒樽をきつく締めると、爆発するでしょう? 空気穴が必要なのです」
「本当にそれだけか?」
「付け加えるならば、過ちを犯した人間を全て処刑していては、この帝都から人がいなくなってしまいますからね」
ふ、と大佐は笑った。
「若造が言うようになったな」
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