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第一章 学園編
17話 魔術学科
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初めての授業の日から早くも約一ヶ月の時間が流れた。
武術学科は順調に進んだ。
独自の流派を使っている為、新技の取得なんかは授業じゃ得られなかったが、荒削りだった動きの根本を整える事で黒帝流の精度を上げた。アラン団長にも、これまで三流派に加えられなかったのが不思議なほど洗練され、完成された流派だと褒められた。
黒帝流はローガン師匠に教わった剣の持ち方、構え方、振り方、力の込め方なんかを使用しているので、ローガン師匠の剣術がいかに凄かったかがよくわかる。だけど、技の殆どが俺がそこから応用させて名前を付けたものなので、やはり動きに無駄があったり、ローガン師匠の教えを守り切れてない部分があった。アラン団長の授業ではそういったものを取り除いてくれたので、かなり俺としても成長を感じた一ヵ月だった。
総合学科も概ねは順調だった。
魔物学、地理学、帝都歴学、種族学、魔道具学の五つの授業を日替わりで受け、一通りの知識は頭に入れた。魔物学の先生が怖すぎると教室内でも何度か話題に上がる事はあったが、その恐怖心を駆り立てる授業からも、特に熱心に聞いている生徒が多い印象で、一番俺達の役に立っている授業としても話題に上がっていた。
これまでの一ヵ月は正直基礎の基礎で、これから残り三年半でもっと高度で深いところまでやっていくらしい。それでもこの一ヵ月で入ってくる情報が膨大過ぎて、イザベラさんとの教えと同様にどうにか自分の知識に定着させるので精一杯だ。
地理学や、帝都歴学はそれなりにイザベラさんから教えてもらっていたので、それだけはスルスル入って来た。それ以外で言うと特に興味深かったのは種族学だ。
種族学とはその名の通り種族について学ぶ。種族とは例えば俺達人間族。他には妖精族や獣人族、魔族なんかがいる。これらは流れる血によって決まっているというのが、今の帝国での最も定石な説だそうだ。中には魔力に種族を決定付ける要因があるだろうと唱える学者もいるそうだが、やはり血液説を覆す事は出来ないそうだ。
この世界に存在する血の種類は人血、竜血、妖血、獣血、魔血の五種類。名付けは人間が後から行ったものらしいので、地方では別の呼び方をする場合もあるらしい。
人血が流れていれば人間族と決定されるそうだが、人血が流れている種族の中にも、人血と獣血で獣人族などもいる。基本的に人血が流れていれば亜人か人間かに分類されるそうだ。
その要領で妖血が流れていれば妖精族。エルフやドワーフがここに当たる。エルフは人血と妖血が流れているので判断が難しいが、妖血の方が多く流れているので妖精族らしい。
魔血が流れていれば魔族。魔族は魔物と魔族、魔人に分かれている。魔族も人血と魔血のハーフらしいが、この魔血というのが特殊な性質を持っていて、人血を侵食していくそうだ。なので、魔族として長く生活していれば、いつかは人血の量がかなり少なくなって、魔人になる。
とは言っても、数十年前に起きた第一次魔人大戦で、北の大陸に生息していた魔族の殆どは死んでいしまっていて、この数十年は魔人どころか魔族すら殆ど見られていない。
意外と驚いた話だが、人間族と人間族の子供だから必ず人間族、と言うわけではないらしい。まぁ九八パーセントの確率で親の種族を受け継ぐから、滅多に無い事らしいが、人間の夫婦から突然魔族が生まれ、迫害されるという事件もあったそうだ。
そういった子供を突然変異児と呼ぶそうだが、それと同様に七老会が定めていない組み合わせの血を持つものはハーフと呼ばれ迫害を受けたりするらしい。勿論七老会が進んで迫害を推奨しているわけでは無く、地方の村では純粋に気味悪がってそういった風潮が生まれてしまっている。
さらに血にはそれぞれ固有の力や特性を有している。
人血は少量の魔力と人型を形成する力。竜血は高い生命力と魔力、竜特有の体質を形成する力。血そのものが回復薬になる効果もある。
妖血は魔術相性が良く、やや高めの魔力を有する。更に、長寿の傾向にある。獣血は犬、熊、猿など獣血の中でも分かれており、共通して体力と腕力に優れている。魔血は闇属性と相性が良く、高い魔力を有する。
この血の特性はそのまま種族の特性に出ている。
以上が基本的な種族学の知識だ。
今まで魔物なら数回見たが、それ以外の種族は見た事が無いので、かなり面白く聞く事が出来た。
さっきも言った通り魔族は北の大陸に住んでおり、第一次魔人大戦の折に絶滅に近い数まで減っているそうだから、まぁ、この先も見る事は無いだろう。妖精族は大魔森に住んでいる種族が多いが、ガイナ曰く妖精族のエルフが公爵の中にいるらしい。
大魔森とは大陸の西側に広がる森の事だ。二級から超級までの強力な魔物が生息しており、魔粒子が濃いため通常よりも強い傾向にある。
境界を武闘男爵と名高いベルガラック男爵家と最強の武闘派公爵のアルバレス公爵が守っているらしい。それまでガイナの家の話なんて聞いたことも無かったが、月に一度か二度は魔物がその境界線を越えようとしてくるので、爵位を継ぐにあたって武力は必要不可欠なんだそうだ。意外と大変なんだなと、少しガイナの見る目が変わった。
話を戻して、最後の魔術学科。問題はここで起こった。
あれは魔術学科の初めての授業の日。
俺達は第二演習場に来ていた。魔術学科の授業は基本的にここで行う。この第二演習場は七老会の張った特別な結界術が組み込まれているらしく、魔術が暴発しても外にまで被害がいかないようになっているらしい。そして同時に、この学園内で唯一魔術の使用が学校側から許可されている場所だ。
「私が諸君らの魔術を指導する事になった龍騎士団の魔術隊長、アイリーンだ。温い授業をするつもりは無いので、そのつもりで臨むように」
初見の印象は高圧的な言葉や態度から、怖そうな人、だった。
白い髪をくるくると巻いた若い女の先生……いや、騎士と呼ぶべきなのか。キリっとした目元が特徴的で、言葉や態度、いや、もはや全身から高圧的な印象を受ける。
「と、授業を始める前に……クロト・アルフガルノ、エヴァリオン・ハルバードの両名、その場で立て」
どんな授業が始まるのかと少しワクワクしながら待っていると、俺とエヴァの名前が呼ばれる。一体何故呼ばれたのか理解出来ないまま俺達はその場で立ち上がる。周りの生徒がなんだなんだと俺達の方を見ていて、少し……いや、かなり嫌だ。
「何故貴様らがここに居る? 雷属性と……悪魔が」
俺とエヴァを順番に指差し、見下した目で見てくる。そして放った言葉。それが俺の耳に入り脳が理解した瞬間に俺の中でこいつが敵となる。
正直、イーニアスやシリウスの時は短気が過ぎたと俺も反省していた。エヴァに怒られた事すらある。だが、こいつは許せない。噂を信じて疑わないイーニアスや誤解で呼んでしまったシリウスは百歩譲ってもういいとしても、こいつは皆の前で、わざと馬鹿にするように言い放った。
冷静な話をすれば不遇と言われる雷属性の俺が魔術教官に嫌悪されるのは分かる。だが、エヴァは魔術において人理限界まで持つほど優秀な子のはずだ。それを噂だけで断定して蔑視を向けてくるのは我慢ならない。
テンペスターに手をかけ、アイリーンに飛びかかろうとしたその瞬間、寸前の所で俺の腕をエヴァが掴んで止める。
「アイリーン先生、なぜ私達はここに居てはいけないのでしょうか?」
「そんなのは決まっている。魔術学科は魔術の才能ある者達を育成する場だ。雷属性属性なんて私の授業を受ける資格は無い。悪魔なんて言わずもがなだろう? 私に将来大量虐殺をするかもしれない悪魔を育てろと……?」
「大量虐殺をする……? その可能性を考慮するのであれば、この場に居る全員が該当すると思いませんか?」
「偉そうな口を利くな。お前は所詮、親殺しの悪魔だろう?」
「おい!」
「ん? 何だ、アルフガルノ」
「黙って聞いてりゃ偉そうに……」
「はぁ……お前も口の利き方すら知らんのか? この場において私は魔術学科の担当教員。この場でなければ龍騎士団の魔術隊長だぞ。お前達が軽口を聞いていい相手じゃない」
「俺の事だけを馬鹿にするならまだ許せた。だが、仲間を馬鹿にされて黙ってるわけにはいかねーんだよ。偉い偉い担当教員でお強い魔術隊長様なんだろ? だったら勝負しろよ。俺が勝ったらエヴァが悪魔じゃないと認めて謝れ。お前が勝ったら大人しく出ていく」
「ふっ……雷属性如きが随分と大口を叩くな? その腰に下げた剣があればそこまで強気に出れるのか? ……おまけに何でもかんでも勝負勝負って……」
「怖いのか? 負けるのが」
「私が雷属性に負ける? 面白いジョークだな、いいだろう……来い!」
こんな簡単な挑発に掛かってくれるような奴で良かった。
しかし疑問だ。なんでアラン団長はこんな女を魔術隊長にして龍騎士団に置いてるんだ……
けど、とりあえずそんな事はどうでもいい。最弱がどんなもんか見せてやる。
「いくぜ……」
「軽くひねってやる」
周りの生徒達が俺とアイリーンを残して一斉に場を空ける。おかげで回りが邪魔にならずに済んでいい。エヴァだけは最後まで俺を心配そうに見ていたが、大丈夫だ。こんな奴に負ける程、イザベラさんの鍛え方は甘くない。
俺は手のひらに雷を集め雷丸を作り、それを細長く伸ばして槍型に変形させる。
魔力を濃縮した雷丸を伸ばした事で全体的に魔力が薄くなっているところを更に魔力を込め、威力を上げる。雷砲に比べても消費魔力は上がるが、槍状にする事で一点における火力と貫通力はそれ以上になる。
〈雷術 雷槍〉
雷槍をアイリーン目掛けて投擲の要領で投げる。魔力が乗ってる分、普通の槍よりも投げやすいし、雷の速度補正が乗るから格段に速くなる。
〈炎術 火柱〉
アイリーンの手のひらから魔法陣が展開し、火柱が放たれる。二つの技がぶつかり合うその瞬間。誰かが間に入ったのが見える。誰かまでは特定出来なかったが、生身で突っ込めば無事では済まないはずだ。
それはアイリーンも理解しているだろうが、もはやお互いの魔術を止める術も無い。
〈結界術奥義 球状聖域〉
武術学科は順調に進んだ。
独自の流派を使っている為、新技の取得なんかは授業じゃ得られなかったが、荒削りだった動きの根本を整える事で黒帝流の精度を上げた。アラン団長にも、これまで三流派に加えられなかったのが不思議なほど洗練され、完成された流派だと褒められた。
黒帝流はローガン師匠に教わった剣の持ち方、構え方、振り方、力の込め方なんかを使用しているので、ローガン師匠の剣術がいかに凄かったかがよくわかる。だけど、技の殆どが俺がそこから応用させて名前を付けたものなので、やはり動きに無駄があったり、ローガン師匠の教えを守り切れてない部分があった。アラン団長の授業ではそういったものを取り除いてくれたので、かなり俺としても成長を感じた一ヵ月だった。
総合学科も概ねは順調だった。
魔物学、地理学、帝都歴学、種族学、魔道具学の五つの授業を日替わりで受け、一通りの知識は頭に入れた。魔物学の先生が怖すぎると教室内でも何度か話題に上がる事はあったが、その恐怖心を駆り立てる授業からも、特に熱心に聞いている生徒が多い印象で、一番俺達の役に立っている授業としても話題に上がっていた。
これまでの一ヵ月は正直基礎の基礎で、これから残り三年半でもっと高度で深いところまでやっていくらしい。それでもこの一ヵ月で入ってくる情報が膨大過ぎて、イザベラさんとの教えと同様にどうにか自分の知識に定着させるので精一杯だ。
地理学や、帝都歴学はそれなりにイザベラさんから教えてもらっていたので、それだけはスルスル入って来た。それ以外で言うと特に興味深かったのは種族学だ。
種族学とはその名の通り種族について学ぶ。種族とは例えば俺達人間族。他には妖精族や獣人族、魔族なんかがいる。これらは流れる血によって決まっているというのが、今の帝国での最も定石な説だそうだ。中には魔力に種族を決定付ける要因があるだろうと唱える学者もいるそうだが、やはり血液説を覆す事は出来ないそうだ。
この世界に存在する血の種類は人血、竜血、妖血、獣血、魔血の五種類。名付けは人間が後から行ったものらしいので、地方では別の呼び方をする場合もあるらしい。
人血が流れていれば人間族と決定されるそうだが、人血が流れている種族の中にも、人血と獣血で獣人族などもいる。基本的に人血が流れていれば亜人か人間かに分類されるそうだ。
その要領で妖血が流れていれば妖精族。エルフやドワーフがここに当たる。エルフは人血と妖血が流れているので判断が難しいが、妖血の方が多く流れているので妖精族らしい。
魔血が流れていれば魔族。魔族は魔物と魔族、魔人に分かれている。魔族も人血と魔血のハーフらしいが、この魔血というのが特殊な性質を持っていて、人血を侵食していくそうだ。なので、魔族として長く生活していれば、いつかは人血の量がかなり少なくなって、魔人になる。
とは言っても、数十年前に起きた第一次魔人大戦で、北の大陸に生息していた魔族の殆どは死んでいしまっていて、この数十年は魔人どころか魔族すら殆ど見られていない。
意外と驚いた話だが、人間族と人間族の子供だから必ず人間族、と言うわけではないらしい。まぁ九八パーセントの確率で親の種族を受け継ぐから、滅多に無い事らしいが、人間の夫婦から突然魔族が生まれ、迫害されるという事件もあったそうだ。
そういった子供を突然変異児と呼ぶそうだが、それと同様に七老会が定めていない組み合わせの血を持つものはハーフと呼ばれ迫害を受けたりするらしい。勿論七老会が進んで迫害を推奨しているわけでは無く、地方の村では純粋に気味悪がってそういった風潮が生まれてしまっている。
さらに血にはそれぞれ固有の力や特性を有している。
人血は少量の魔力と人型を形成する力。竜血は高い生命力と魔力、竜特有の体質を形成する力。血そのものが回復薬になる効果もある。
妖血は魔術相性が良く、やや高めの魔力を有する。更に、長寿の傾向にある。獣血は犬、熊、猿など獣血の中でも分かれており、共通して体力と腕力に優れている。魔血は闇属性と相性が良く、高い魔力を有する。
この血の特性はそのまま種族の特性に出ている。
以上が基本的な種族学の知識だ。
今まで魔物なら数回見たが、それ以外の種族は見た事が無いので、かなり面白く聞く事が出来た。
さっきも言った通り魔族は北の大陸に住んでおり、第一次魔人大戦の折に絶滅に近い数まで減っているそうだから、まぁ、この先も見る事は無いだろう。妖精族は大魔森に住んでいる種族が多いが、ガイナ曰く妖精族のエルフが公爵の中にいるらしい。
大魔森とは大陸の西側に広がる森の事だ。二級から超級までの強力な魔物が生息しており、魔粒子が濃いため通常よりも強い傾向にある。
境界を武闘男爵と名高いベルガラック男爵家と最強の武闘派公爵のアルバレス公爵が守っているらしい。それまでガイナの家の話なんて聞いたことも無かったが、月に一度か二度は魔物がその境界線を越えようとしてくるので、爵位を継ぐにあたって武力は必要不可欠なんだそうだ。意外と大変なんだなと、少しガイナの見る目が変わった。
話を戻して、最後の魔術学科。問題はここで起こった。
あれは魔術学科の初めての授業の日。
俺達は第二演習場に来ていた。魔術学科の授業は基本的にここで行う。この第二演習場は七老会の張った特別な結界術が組み込まれているらしく、魔術が暴発しても外にまで被害がいかないようになっているらしい。そして同時に、この学園内で唯一魔術の使用が学校側から許可されている場所だ。
「私が諸君らの魔術を指導する事になった龍騎士団の魔術隊長、アイリーンだ。温い授業をするつもりは無いので、そのつもりで臨むように」
初見の印象は高圧的な言葉や態度から、怖そうな人、だった。
白い髪をくるくると巻いた若い女の先生……いや、騎士と呼ぶべきなのか。キリっとした目元が特徴的で、言葉や態度、いや、もはや全身から高圧的な印象を受ける。
「と、授業を始める前に……クロト・アルフガルノ、エヴァリオン・ハルバードの両名、その場で立て」
どんな授業が始まるのかと少しワクワクしながら待っていると、俺とエヴァの名前が呼ばれる。一体何故呼ばれたのか理解出来ないまま俺達はその場で立ち上がる。周りの生徒がなんだなんだと俺達の方を見ていて、少し……いや、かなり嫌だ。
「何故貴様らがここに居る? 雷属性と……悪魔が」
俺とエヴァを順番に指差し、見下した目で見てくる。そして放った言葉。それが俺の耳に入り脳が理解した瞬間に俺の中でこいつが敵となる。
正直、イーニアスやシリウスの時は短気が過ぎたと俺も反省していた。エヴァに怒られた事すらある。だが、こいつは許せない。噂を信じて疑わないイーニアスや誤解で呼んでしまったシリウスは百歩譲ってもういいとしても、こいつは皆の前で、わざと馬鹿にするように言い放った。
冷静な話をすれば不遇と言われる雷属性の俺が魔術教官に嫌悪されるのは分かる。だが、エヴァは魔術において人理限界まで持つほど優秀な子のはずだ。それを噂だけで断定して蔑視を向けてくるのは我慢ならない。
テンペスターに手をかけ、アイリーンに飛びかかろうとしたその瞬間、寸前の所で俺の腕をエヴァが掴んで止める。
「アイリーン先生、なぜ私達はここに居てはいけないのでしょうか?」
「そんなのは決まっている。魔術学科は魔術の才能ある者達を育成する場だ。雷属性属性なんて私の授業を受ける資格は無い。悪魔なんて言わずもがなだろう? 私に将来大量虐殺をするかもしれない悪魔を育てろと……?」
「大量虐殺をする……? その可能性を考慮するのであれば、この場に居る全員が該当すると思いませんか?」
「偉そうな口を利くな。お前は所詮、親殺しの悪魔だろう?」
「おい!」
「ん? 何だ、アルフガルノ」
「黙って聞いてりゃ偉そうに……」
「はぁ……お前も口の利き方すら知らんのか? この場において私は魔術学科の担当教員。この場でなければ龍騎士団の魔術隊長だぞ。お前達が軽口を聞いていい相手じゃない」
「俺の事だけを馬鹿にするならまだ許せた。だが、仲間を馬鹿にされて黙ってるわけにはいかねーんだよ。偉い偉い担当教員でお強い魔術隊長様なんだろ? だったら勝負しろよ。俺が勝ったらエヴァが悪魔じゃないと認めて謝れ。お前が勝ったら大人しく出ていく」
「ふっ……雷属性如きが随分と大口を叩くな? その腰に下げた剣があればそこまで強気に出れるのか? ……おまけに何でもかんでも勝負勝負って……」
「怖いのか? 負けるのが」
「私が雷属性に負ける? 面白いジョークだな、いいだろう……来い!」
こんな簡単な挑発に掛かってくれるような奴で良かった。
しかし疑問だ。なんでアラン団長はこんな女を魔術隊長にして龍騎士団に置いてるんだ……
けど、とりあえずそんな事はどうでもいい。最弱がどんなもんか見せてやる。
「いくぜ……」
「軽くひねってやる」
周りの生徒達が俺とアイリーンを残して一斉に場を空ける。おかげで回りが邪魔にならずに済んでいい。エヴァだけは最後まで俺を心配そうに見ていたが、大丈夫だ。こんな奴に負ける程、イザベラさんの鍛え方は甘くない。
俺は手のひらに雷を集め雷丸を作り、それを細長く伸ばして槍型に変形させる。
魔力を濃縮した雷丸を伸ばした事で全体的に魔力が薄くなっているところを更に魔力を込め、威力を上げる。雷砲に比べても消費魔力は上がるが、槍状にする事で一点における火力と貫通力はそれ以上になる。
〈雷術 雷槍〉
雷槍をアイリーン目掛けて投擲の要領で投げる。魔力が乗ってる分、普通の槍よりも投げやすいし、雷の速度補正が乗るから格段に速くなる。
〈炎術 火柱〉
アイリーンの手のひらから魔法陣が展開し、火柱が放たれる。二つの技がぶつかり合うその瞬間。誰かが間に入ったのが見える。誰かまでは特定出来なかったが、生身で突っ込めば無事では済まないはずだ。
それはアイリーンも理解しているだろうが、もはやお互いの魔術を止める術も無い。
〈結界術奥義 球状聖域〉
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