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第一章 学園編
33話 迫る驚異の影
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「さて、改めて名乗ろうか。私はハンター隊の隊長で、ハングル公爵のアイリス・ハングルだ。お前達は? 毎年恒例の雪山合宿に来た帝国の学生って事は分かるが……」
「私達は氷の姫というチームで、私がリーダーのエヴァリオンです」
「俺はクロトだ」
「ベルガラック男爵家長男ガイナだ」
「僕はレイグと言います」
「私はエルネア公爵家長女マナティアです」
「うん、多分覚えた。エルネア公爵とは友人だ、それにベルガラック男爵ともな。……ふむ、では君達からの質問を聞こうか? 色々聞きたそうだからね、特に君」
と、俺を指差す。そんなに顔に出てただろうか……
「じゃあ早速で悪いんだが、あんたらの事を教えてくれ」
「私達の事?」
怪訝そうに聞き返すアイリス。
「そもそもハンター隊ってなんだ? 公爵って屋敷でふんぞり返ってるんじゃないのか?」
「ふむ……」
アイリスはむむっと考え込む。
「……私達は元々公爵家ではなく、ハングル族という狩人だった。ま、今も大して変わってないが…… その頃からこの山には強力な魔物が住み着いていて、それを相手に狩りをしていたんだ。で、まぁ色々あってこの山に来た皇帝が魔物に襲われていたのを助けたのがきっかけで爵位を貰ったと言うわけだ」
「へぇ、しかし、なんというか」
「公爵っぽくないか? 正直なやつだな。ま、私も公爵だのなんだのは好きじゃないんでね。名ばかりの公爵だ」
へへっと笑う。
「屋敷でふんぞり返っているんじゃないかと言っていたが、この領に私の屋敷なんてものは無い。昔から自然で生きていくのが私達の流派だからな」
「なるほど。ハングル領を通った時、都市が全然無いと思った」
「私達は常に自然と共にある。……というのが先代ハンター隊隊長の遺言だからな。この領に村よりでかいものはないぞ。そして私達はこの山で狩りをし、生計を立てるハンター……だからハンター隊だ」
「なるほどな。お前ら知ってたのか?」
振り返ると四人ともうんと頷く。
やっぱり、俺とこの四人では根本的に差があるんだなと痛感するよ。
「さて、質問はもう無いか? ならさっさとやってしまおう」
「ん? やるって何を?」
「狩りの仕方からキャンプの張り方まで、この山での生活の仕方を教える。お前たちは見込みがありそうだし、ここで助けておけば後々の収穫に繋がりそうだ」
「本当か? 有難い、助かるよ」
「ふ、そういう顔もするんだな」
「……? なんの事だよ」
「いや、仲間を想う気持ちは素晴らしいが人としてはイマイチだな。さ、行くぞ」
「…………なんだよ」
◇
同時刻。
クロト達がキャンプを張っている場所よりも少し離れたところで、二人の人影がエルトリア学園の生徒を見下ろしていた。
「ひぇひぇひぇひぇひぇ、ちらほらいますねぇ」
「フロリエル、わしらの目的はお前さんをボロボロにした黒髪の雷使いと金髪の氷使いじゃ。余計な事をして目立つのはゴメンじゃぞ」
「わかってますよ。ん?」
「グォォォォォォォォ」
フロリエルの背後に白い毛の巨大な熊、ホワイトベアーが現れる。
ホワイトベアーの動きは迅速で、素早くフロリエルに狙いを付けると強靭な爪がついた腕を振り上げ、そのまま斬り裂く。何の抵抗も無く引き裂かれたフロリエルはブシャっと血しぶきを上げ、若干よろける。
ホワイトベアーの攻撃で顔面から胴体にかけて巨大な傷が出来ている。
「ひぇひぇひぇひぇひぇ。ここの魔物はなかなか強いですねぇ」
が、フロリエルにただの攻撃は無意味だ。ホワイトベアーが付けた致命傷も煙と共に再生してしまう。
「ひぇひぇひぇひぇひぇ」
〈闇術 衝撃〉
次の攻撃のため腕を振り上げていたホワイトベアーは、不意に衝撃波を食らい、ドスンと倒れる。
〈闇術 痛み〉
フロリエルの指先から滴り落ちる様に滲み出た魔力の小球が、ホワイトベアーに向かっていき、浸透。
「グ、グォゥゥ グォォ、グォォォ」
途端、ホワイトベアーが苦しみに悶える。
「ひぇひぇひぇひぇひぇ、さようなら。お馬鹿な獣さん」
〈闇術 消滅〉
フロリエルの手から放たれた黒い魔粒子がホワイトベアーの体に付着すると同時に砂のようにポロポロと崩れ始め、ほんの五、六秒で塵となって消えてしまう。
闇術は相殺や崩壊、消滅の類に秀でた魔術で、当然より多くの魔力量を持つ者には効果が殆ど無い。しかし、この辺りに生息する魔物達ではフロリエルの前には塵芥も同じとなってしまう。
「終わったかの? そろそろ行くぞ」
「ひぇひぇひぇひぇひぇ」
「それと、嗜虐趣味に口を出す気はないが、あまり魔力を無駄遣いしない事じゃ。下手すればまた敗北する羽目になる」
「ひぇひぇひぇひぇひぇ、大きなお世話と言っておきましょう」
◇
それから数日はまたたく間に過ぎた。
俺達はアイリスらハンター隊にこの山での生活の仕方を一通り伝授してもらった。狩りの様子をもう一度見たかったのだが、一通りキャンプの仕方を教え終わるとそろそろ行くぞと早々に出発してしまった。
その次の日。
「ふぁぁ……おはよう」
「おはよう、クロト」
「とりあえずは、飯にするか」
と、俺達は外に出る。
数日前までなら朝は寒すぎて外に出られなかったが、今では別だ。
ハンター隊にホワイトオークの革を使った防寒具の作り方や肉の処理の仕方、調理法などを学んだ。ホワイトオークの死体を三体とも置いて行ってくれたので十分な量の備蓄を作る事が出来たし、これで数週間は食糧の心配をせずに済む。
「しかしホワイトオークがこんなに美味いとはな」
「あぁ確かになぁ。魔物ってだけで抵抗あったが、食ってみると美味いもんだ」
と、笑いながら頭の丸焼きにかぶりつくガイナ。
「だからって頭の丸かじりはやめなさいよ!」
マナはまだ抵抗がありそうだ。
比較的ただの肉って感じの部分を食べている。多分お腹の所だな。ちなみに俺は右腕を丸々食べている。指の部分が若干気持ち悪いが美味い。
ここはかなり寒いので特に腐る心配もなく放置しているが、流石に肉の塊を持ち歩くわけにもいかず、干し肉にして持ち歩くことにしている。
干し肉の作り方もハンター隊に教えてもらったのだが、かなり難しい。脂肪の部分は削ぎ落として赤みの部分だけを薄く切って風通しの良いところに干せばいいんだが…………
雪山は雪がよく降るので乾燥させる事がなかなか厳しい。ガイナの土術とマナの炎術の組み合わせで、燻製にしてみたりと試行錯誤の毎日だ。
「さて、今日は何しましょうか?」
「んー、やっぱり狩りか?」
「いや、薪と水がかなり減ってる。これを補充しよう」
「えぇ、暴れ足りねぇぜ」
「じゃあチームを分けよう。僕とガイナ、クロトで狩りに行くよ」
「じゃあ私達は薪と水ね」
「じゃあ、日が暮れるまでにはここに落ち合おう。もし危険に陥ったら魔術を空に打ち上げて合図を!」
『おう!』
◇
「グォォ……」
その場に途切れ途切れの断末魔を残し、ホワイトオークが絶命する。
「流石にハンター隊の矢みたいに特殊加工されてないと、まだ一体狩るのでもきついな」
「俺はあの仕組み未だによくわかってないぜ」
「それは俺もだ」
「何を聞いていたんだ、君達は」
やれやれといった顔のレイグ。
「そろそろ戻るか。だいぶ魔力も使ったしな」
「ホワイトオーク一匹にホワイトベアー一匹。これならまた数日は持つだろう」
俺達は獲物を担ぎ上げ、キャンプ地へ引きずって行く。重いな……なんて考えていると、周囲から謎の気配を感じる。
「どうやら簡単に帰してくれる気はないらしい。ほんとにこの山は俺たちに厳しい」
俺はホワイトベアーをドスンと落とし、テンペスターを抜く。木々の間からウルフ……いや、ホワイトウルフが姿を現す。ざっと数えても十五体。しっかりと群れに遭遇してしまったようだ。
「アオーン」
俺達に予め狙いを定めていたらしく、一匹が号令すると同時に残り全員が一斉に飛びかかって来る。
「くそ、やる気満々かよ。……二人共、伏せろ!」
「え、あ、おう!」
俺はテンペスターに魔力を流し込み、腰に添える。
「豪傑流の断斬を基に俺流のアレンジを加えてみた新技」
〈雷帝流 雷撃一閃〉
雷を纏ったテンペスターを円形に薙ぎ払い、飛び込んでくるウルフ達を撃退していく。
「ガウ……」
「キャン……」
「グォォ……」
首、あるいは胴体、あるいは足を雷の斬撃に斬られ、ウルフ達は怯み、一歩、また一歩と下がっていく。
膠着状態に入るかと思ったが、ウルフ達は一目散に逃げ出した。ウルフは賢い魔物だから、一度の攻防で自分達が不利だと悟ったんだろう。
「よし、数体は仕留めたな」
「また現れねぇうちに行っちまおうぜ」
「おう」
◇
「おーい戻ったぜぇ」
「あら、早かったのね。こっちも薪は集め終わったところよ」
俺達はキャンプ場に戻り獲物の処理を始めた。マナは薪を縛り付けながらてきぱきと整理整頓していく。そういえば、マナとエヴァは薪と水の調達だったはず……エヴァはどこに居るんだ?
「マナ、エヴァはどこに行ったんだ?」
「確かに遅いわね、そんなに遠くには行ってないと思うんだけど……」
「俺が様子を見に行ってくるよ。ガイナ達は作業しててくれ」
「おうよ」
「気をつけてね」
キャンプ場から離れ、森の中にある川を目指す。
「おーい、エヴァー!」
居ない。
普段水汲みに使っている川まで来てみたが、この辺には居そうにない。
「お前さんが、黒髪の雷使いか?」
「……ッ!? 誰だ!」
突然背後から声をかけられ俺は咄嗟にテンペスターを抜き、声のした方へ切っ先を向ける。そこには白髪の上に白いローブ、白いマフラーをした初老の男が杖をついて立っていた。
「好戦的じゃのぉ」
男が一歩足を踏み出すと、途端に全身から冷や汗が流れる。本能的に強烈な死の気配を感じ取らされ、脳が警報を鳴らしている。
「一応自己紹介をしておこう。わしは四魔王が一角、『死者ノ王』リヴァ。よろし……ッ!」
俺は警報を無理矢理黙らせ、死の気配を振り切る速度で斬りかかる。
「お前もあいつと同じ魔族……」
「良い判断と思い切りのいい踏み込みじゃ」
杖にしていたのは仕込み刀で、俺の動きに反応すると同時にそれを抜き去り、俺の斬り込みも軽々と受け止めてくる。やっぱり一筋縄じゃ行かないな。
「来い、若造」
「魔王? 強いってんなら出し惜しみはなし! 最初っから全力だ!」
〈雷術奥義 雷化・天装衣〉
「私達は氷の姫というチームで、私がリーダーのエヴァリオンです」
「俺はクロトだ」
「ベルガラック男爵家長男ガイナだ」
「僕はレイグと言います」
「私はエルネア公爵家長女マナティアです」
「うん、多分覚えた。エルネア公爵とは友人だ、それにベルガラック男爵ともな。……ふむ、では君達からの質問を聞こうか? 色々聞きたそうだからね、特に君」
と、俺を指差す。そんなに顔に出てただろうか……
「じゃあ早速で悪いんだが、あんたらの事を教えてくれ」
「私達の事?」
怪訝そうに聞き返すアイリス。
「そもそもハンター隊ってなんだ? 公爵って屋敷でふんぞり返ってるんじゃないのか?」
「ふむ……」
アイリスはむむっと考え込む。
「……私達は元々公爵家ではなく、ハングル族という狩人だった。ま、今も大して変わってないが…… その頃からこの山には強力な魔物が住み着いていて、それを相手に狩りをしていたんだ。で、まぁ色々あってこの山に来た皇帝が魔物に襲われていたのを助けたのがきっかけで爵位を貰ったと言うわけだ」
「へぇ、しかし、なんというか」
「公爵っぽくないか? 正直なやつだな。ま、私も公爵だのなんだのは好きじゃないんでね。名ばかりの公爵だ」
へへっと笑う。
「屋敷でふんぞり返っているんじゃないかと言っていたが、この領に私の屋敷なんてものは無い。昔から自然で生きていくのが私達の流派だからな」
「なるほど。ハングル領を通った時、都市が全然無いと思った」
「私達は常に自然と共にある。……というのが先代ハンター隊隊長の遺言だからな。この領に村よりでかいものはないぞ。そして私達はこの山で狩りをし、生計を立てるハンター……だからハンター隊だ」
「なるほどな。お前ら知ってたのか?」
振り返ると四人ともうんと頷く。
やっぱり、俺とこの四人では根本的に差があるんだなと痛感するよ。
「さて、質問はもう無いか? ならさっさとやってしまおう」
「ん? やるって何を?」
「狩りの仕方からキャンプの張り方まで、この山での生活の仕方を教える。お前たちは見込みがありそうだし、ここで助けておけば後々の収穫に繋がりそうだ」
「本当か? 有難い、助かるよ」
「ふ、そういう顔もするんだな」
「……? なんの事だよ」
「いや、仲間を想う気持ちは素晴らしいが人としてはイマイチだな。さ、行くぞ」
「…………なんだよ」
◇
同時刻。
クロト達がキャンプを張っている場所よりも少し離れたところで、二人の人影がエルトリア学園の生徒を見下ろしていた。
「ひぇひぇひぇひぇひぇ、ちらほらいますねぇ」
「フロリエル、わしらの目的はお前さんをボロボロにした黒髪の雷使いと金髪の氷使いじゃ。余計な事をして目立つのはゴメンじゃぞ」
「わかってますよ。ん?」
「グォォォォォォォォ」
フロリエルの背後に白い毛の巨大な熊、ホワイトベアーが現れる。
ホワイトベアーの動きは迅速で、素早くフロリエルに狙いを付けると強靭な爪がついた腕を振り上げ、そのまま斬り裂く。何の抵抗も無く引き裂かれたフロリエルはブシャっと血しぶきを上げ、若干よろける。
ホワイトベアーの攻撃で顔面から胴体にかけて巨大な傷が出来ている。
「ひぇひぇひぇひぇひぇ。ここの魔物はなかなか強いですねぇ」
が、フロリエルにただの攻撃は無意味だ。ホワイトベアーが付けた致命傷も煙と共に再生してしまう。
「ひぇひぇひぇひぇひぇ」
〈闇術 衝撃〉
次の攻撃のため腕を振り上げていたホワイトベアーは、不意に衝撃波を食らい、ドスンと倒れる。
〈闇術 痛み〉
フロリエルの指先から滴り落ちる様に滲み出た魔力の小球が、ホワイトベアーに向かっていき、浸透。
「グ、グォゥゥ グォォ、グォォォ」
途端、ホワイトベアーが苦しみに悶える。
「ひぇひぇひぇひぇひぇ、さようなら。お馬鹿な獣さん」
〈闇術 消滅〉
フロリエルの手から放たれた黒い魔粒子がホワイトベアーの体に付着すると同時に砂のようにポロポロと崩れ始め、ほんの五、六秒で塵となって消えてしまう。
闇術は相殺や崩壊、消滅の類に秀でた魔術で、当然より多くの魔力量を持つ者には効果が殆ど無い。しかし、この辺りに生息する魔物達ではフロリエルの前には塵芥も同じとなってしまう。
「終わったかの? そろそろ行くぞ」
「ひぇひぇひぇひぇひぇ」
「それと、嗜虐趣味に口を出す気はないが、あまり魔力を無駄遣いしない事じゃ。下手すればまた敗北する羽目になる」
「ひぇひぇひぇひぇひぇ、大きなお世話と言っておきましょう」
◇
それから数日はまたたく間に過ぎた。
俺達はアイリスらハンター隊にこの山での生活の仕方を一通り伝授してもらった。狩りの様子をもう一度見たかったのだが、一通りキャンプの仕方を教え終わるとそろそろ行くぞと早々に出発してしまった。
その次の日。
「ふぁぁ……おはよう」
「おはよう、クロト」
「とりあえずは、飯にするか」
と、俺達は外に出る。
数日前までなら朝は寒すぎて外に出られなかったが、今では別だ。
ハンター隊にホワイトオークの革を使った防寒具の作り方や肉の処理の仕方、調理法などを学んだ。ホワイトオークの死体を三体とも置いて行ってくれたので十分な量の備蓄を作る事が出来たし、これで数週間は食糧の心配をせずに済む。
「しかしホワイトオークがこんなに美味いとはな」
「あぁ確かになぁ。魔物ってだけで抵抗あったが、食ってみると美味いもんだ」
と、笑いながら頭の丸焼きにかぶりつくガイナ。
「だからって頭の丸かじりはやめなさいよ!」
マナはまだ抵抗がありそうだ。
比較的ただの肉って感じの部分を食べている。多分お腹の所だな。ちなみに俺は右腕を丸々食べている。指の部分が若干気持ち悪いが美味い。
ここはかなり寒いので特に腐る心配もなく放置しているが、流石に肉の塊を持ち歩くわけにもいかず、干し肉にして持ち歩くことにしている。
干し肉の作り方もハンター隊に教えてもらったのだが、かなり難しい。脂肪の部分は削ぎ落として赤みの部分だけを薄く切って風通しの良いところに干せばいいんだが…………
雪山は雪がよく降るので乾燥させる事がなかなか厳しい。ガイナの土術とマナの炎術の組み合わせで、燻製にしてみたりと試行錯誤の毎日だ。
「さて、今日は何しましょうか?」
「んー、やっぱり狩りか?」
「いや、薪と水がかなり減ってる。これを補充しよう」
「えぇ、暴れ足りねぇぜ」
「じゃあチームを分けよう。僕とガイナ、クロトで狩りに行くよ」
「じゃあ私達は薪と水ね」
「じゃあ、日が暮れるまでにはここに落ち合おう。もし危険に陥ったら魔術を空に打ち上げて合図を!」
『おう!』
◇
「グォォ……」
その場に途切れ途切れの断末魔を残し、ホワイトオークが絶命する。
「流石にハンター隊の矢みたいに特殊加工されてないと、まだ一体狩るのでもきついな」
「俺はあの仕組み未だによくわかってないぜ」
「それは俺もだ」
「何を聞いていたんだ、君達は」
やれやれといった顔のレイグ。
「そろそろ戻るか。だいぶ魔力も使ったしな」
「ホワイトオーク一匹にホワイトベアー一匹。これならまた数日は持つだろう」
俺達は獲物を担ぎ上げ、キャンプ地へ引きずって行く。重いな……なんて考えていると、周囲から謎の気配を感じる。
「どうやら簡単に帰してくれる気はないらしい。ほんとにこの山は俺たちに厳しい」
俺はホワイトベアーをドスンと落とし、テンペスターを抜く。木々の間からウルフ……いや、ホワイトウルフが姿を現す。ざっと数えても十五体。しっかりと群れに遭遇してしまったようだ。
「アオーン」
俺達に予め狙いを定めていたらしく、一匹が号令すると同時に残り全員が一斉に飛びかかって来る。
「くそ、やる気満々かよ。……二人共、伏せろ!」
「え、あ、おう!」
俺はテンペスターに魔力を流し込み、腰に添える。
「豪傑流の断斬を基に俺流のアレンジを加えてみた新技」
〈雷帝流 雷撃一閃〉
雷を纏ったテンペスターを円形に薙ぎ払い、飛び込んでくるウルフ達を撃退していく。
「ガウ……」
「キャン……」
「グォォ……」
首、あるいは胴体、あるいは足を雷の斬撃に斬られ、ウルフ達は怯み、一歩、また一歩と下がっていく。
膠着状態に入るかと思ったが、ウルフ達は一目散に逃げ出した。ウルフは賢い魔物だから、一度の攻防で自分達が不利だと悟ったんだろう。
「よし、数体は仕留めたな」
「また現れねぇうちに行っちまおうぜ」
「おう」
◇
「おーい戻ったぜぇ」
「あら、早かったのね。こっちも薪は集め終わったところよ」
俺達はキャンプ場に戻り獲物の処理を始めた。マナは薪を縛り付けながらてきぱきと整理整頓していく。そういえば、マナとエヴァは薪と水の調達だったはず……エヴァはどこに居るんだ?
「マナ、エヴァはどこに行ったんだ?」
「確かに遅いわね、そんなに遠くには行ってないと思うんだけど……」
「俺が様子を見に行ってくるよ。ガイナ達は作業しててくれ」
「おうよ」
「気をつけてね」
キャンプ場から離れ、森の中にある川を目指す。
「おーい、エヴァー!」
居ない。
普段水汲みに使っている川まで来てみたが、この辺には居そうにない。
「お前さんが、黒髪の雷使いか?」
「……ッ!? 誰だ!」
突然背後から声をかけられ俺は咄嗟にテンペスターを抜き、声のした方へ切っ先を向ける。そこには白髪の上に白いローブ、白いマフラーをした初老の男が杖をついて立っていた。
「好戦的じゃのぉ」
男が一歩足を踏み出すと、途端に全身から冷や汗が流れる。本能的に強烈な死の気配を感じ取らされ、脳が警報を鳴らしている。
「一応自己紹介をしておこう。わしは四魔王が一角、『死者ノ王』リヴァ。よろし……ッ!」
俺は警報を無理矢理黙らせ、死の気配を振り切る速度で斬りかかる。
「お前もあいつと同じ魔族……」
「良い判断と思い切りのいい踏み込みじゃ」
杖にしていたのは仕込み刀で、俺の動きに反応すると同時にそれを抜き去り、俺の斬り込みも軽々と受け止めてくる。やっぱり一筋縄じゃ行かないな。
「来い、若造」
「魔王? 強いってんなら出し惜しみはなし! 最初っから全力だ!」
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