最弱属性魔剣士の雷鳴轟く

愛鶴ソウ

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第二章 地獄編

70話 シエラ・アグリアス

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 俺はシエラの意図がわからないままに、決闘に応じる。何の意味も無しにこんな事を言うやつには見えない。
 立ち上がってシエラに近づく。シエラも頷き、二人で台の上へあがる。


「お、なんだ? 決闘かー?」

「いいねー!もっとやりな!」


 周りからは酔もあるだろうが、けしかけるような声援が飛んでくる。
 よく考えれば二ヶ月前、偶然会っただけだが、随分長く一緒に居た気がする。何を思っての決闘かまでは読み切れない。だが、本気で悩み、考え、その末にこの結果導き出したに違いない。確信はない。ただ目から伝わってくる。
 ならこっちも、本気で応えないと失礼だよな。


「全力で行くぞ」


 俺はテンペスターを抜く。
 ロックドラゴンの腹部に刺さっていたこいつをシエラが持って帰ってきてくれたらしい。正直失くしたと思ってへこんでたから、かなり嬉しかった。


〈雷術奥義 雷化・天装衣ラスカディグローマ


 “仲間を守る時”
 イザベラさんと約束したこの術の使用条件。きっとイザベラさんなら許してくれる。これは、この戦いは、仲間シエラの誇りを守る戦いだから。


「行くぞ」

「来なんし」


 シエラは矢を番え、弦を目一杯引き絞る。俺はテンペスターを両手で握り、走り出す。


〈雷帝流 雷鋼剣〉


 雷を纏った剣を大きく振りかぶりシエラに接近。矢を構えていたシエラはフッと力を抜き弓矢を捨てた。
 俺は慌てて止まろうとするが、シエラの目を見て再び振り下ろす手に力を込める。その目は手加減など望んでいない。「本気で来い」と目が訴えかけている。


〈結界術 滅力結界〉


 赤い光を放つ結界が張られ、俺の雷鋼剣とぶつかる。ぶつかった瞬間、結界に吸い込まれるような感覚がして、雷鋼剣の勢いが止まった。
 力を吸収、減少させる結界か。


「本気の刃でぶつからなければ、わからない事もあるでありんす」


 結界が消え、自由になったテンペスターはその場に留まる。強い力をかけていた反動もあり、振り下ろせない。
 シエラは腰にさしてあるナイフを抜き、魔力を高める。俺は左手をテンペスターから離し、腰にさしたままのシュデュンヤーを握る。


〈聖術 聖なる一撃セイクリッド・ナイフ


〈黒帝流 打上剣狼〉


 逆手で抜いたシュデュンヤーをそのまま上へ斬り上げる。シエラも逆手で持ったナイフを横一閃に振り払う。
 シエラのナイフには眩い光が纏われ……激しい金属音を伴い二つの技がぶつかり合う。



 光が収まると俺もシエラも無傷でその場に立っていた。
 俺は右手にテンペスターを、左手に逆手でシュデュンヤーを持っている。雷化はまだ解けていない。シエラもナイフを逆手に持ったまま立っていた。


「やはり……思った通りの男でありんすな」

「え?」

「手練同士の戦いなら剣を交えただけでお互いの事がわかるものでありんす。試すような真似をしてごめんなんし」

「それはいいが、なんの話をして……」

「クロトが誘ったじゃありんせんか。ずっと悩んでおりんしたが、やっと決心がついたでありんす。わっちを一緒に連れて行ってくんなまし」

「……本当か! 嬉しいよ、よろしくな」


 テンペスターとシュデュンヤーを鞘にしまい、俺は右手を出す。


「うむ」


 シエラも右手を出してそれに応える。
 その後、夜が明けるまで飲み、笑い、騒いで盛大に宴は続いた。途中から俺はほとんど記憶が無いけど、楽しかったのは覚えてる。後から聞いた話、アイリスは宴の前にシエラからハンター隊を脱退したいとの願いを受けていて、そこで俺達の旅に同行する話を聞いたらしい。
 この二ヶ月程の疲れが取れていくのを実感しつつ、空が白むのを眺めていた。隣ではエヴァが完全に酔い切って、眠っていた。
 テリア山から下山中の一ヶ月、エヴァは塞ぎ込んでいた。いや、正確には今も。恐らくは自分の未知の力のせいだろう。いつ暴走するかもしれない未知の力、言うなれば爆弾を抱えているようなものだ。エヴァは俺達にそれが降りかかる事を懸念しているんだろう。
 黒い氷の力。あれも未だに制御どころか自分の意志で出す事さえ出来ない。何か未知数な力がエヴァにはあるんだろう。
 俺は隣で眠るエヴァの頭を撫でながら半分ほど顔を出した朝日を見つめ、出発の準備をする為に立ち上がった。





 そして夜が完全に明け、とうとう出発する時が来た。


「またな、シエラ」

「今まで、本当にお世話になりんした。今まで育ててくれた御恩は、いつか必ず返すでありんす」

「ああ、楽しんでこい! クロト、エヴァリオン、レオ。お前達にも何も礼が出来なくてすまない」

「そんな事ないさ」

「食料分けてもらっちゃったし!」

「ロックドラゴン討伐、そしてグラキエースドラゴンの撃退、ハンター隊だけでは遂行出来なかっただろう。本当に感謝する」


 アイリスは言い終えると深々と頭を下げた。周りに立っていたハンター隊もだ。


「やめてくれよ、俺達としてもメリットはあったんだ。お互い様って事で」

「ああ、すまない」

「またな!」

「じゃあね~!」

「ぐがーー」

「寝るな!」


 そして俺達は馬車に乗り込み、ゴンザレスとエリザベスに引かれ、テリア山を後にした。





「うっ……ぷ……」

「今日はいつもより盛大に酔ってるな」

「大丈夫でありんすか?」

「気にするなよ、いつもの事だ。そんな事より眠いから寝るぜ」

「さっきまで寝てたろうが。エヴァは酒に弱いのに調子に乗って飲むから……」


 二日酔いプラス乗り物酔いは辛いだろうな。でもあと一週間程度は耐えてもらうぞ。
 ヘレリル公爵領に行く前に、まずはレオ公爵領に寄らないといけないからな。路銀も不足してるし、諸々の道具もこのままじゃヘレリル公爵に着く前に尽きる。ここらで一度、大きめの街に立ち寄るのもいいだろう。


「もう……無理……うっ……」
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