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第四章 傷痕編
108話 夢
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「逃げろ! ミノタウロスだ!」
「西へ! 東はだめだ! 西へ逃げろ!」
その日、リブ村が一級魔物ミノタウロスに襲撃された日。
東からジガルゼルドの放ったミノタウロスは現れた。家を薙ぎ倒し、人を踏み潰し、破壊の限りを尽くした。その一角では……
「じーさん! 逃げよう!」
「リック、クロトはどうしたんじゃ?」
「わからないけどさっきお父さんの手伝いで森に行くって。だから多分まだミノタウロスには襲われてない! とにかく今は早く逃げようってば」
「うむ、リックや。先に逃げなさい。わしはまだやることがある」
「何言ってるんだよ!」
「この能力……ジガルゼルドじゃろう。わしは皆が逃げれるように時間を稼ぐ」
「そりゃじーさんは強いけどさ、流石にあの数は無理だよ!」
袖を引っ張るリックの両肩に手を乗せ、リックと同じ目線になるまでローガンは腰を落とす。
「リック、人には必ず“その時”が来る。流れ者のわしがここに住んでいたのはこの時を待っていたからじゃろう。だからわしはここで役目を果たす。リックは逃げろ!」
泣きじゃぐりながらもローガンの話を聞いていたリックの目に三人の影が映る。屋根の更に上を飛び、こちらへ近づいてくる影が。
「それは違うぞ。ローガン・ボルフェノ」
「来たか……ジガルゼルド」
ローガンはゆっくりと立ち上がり、後ろを振り返る。
アリスの土術によって浮かした土の上に三人が乗っていた。当時の四魔王デルドラ、そしてアリス。真ん中に立つのは大魔人ジガルゼルド。
「この村へはお前を消しに来た。お前がここに居たからこの村は襲われたんだ」
「リック、行け!」
「……は、早く来てくれよ! “師匠”!」
リックはジリジリと数歩後ずさり、一気に駆け出した。
「師匠か……生き延びてくれ。リック、クロト……」
「なんだ、孫でもいたのか?」
「いや、村の子供じゃ。わしはここにおる、この村からは手を引け!」
「それは出来ない相談だ。こんなに負のエネルギーが溜まってる」
ジガルゼルドは黒い魔石を取り出す。魔石は一人でに浮き、ジガルゼルドの右手の中で浮遊する。
「それは……」
「負の感情を貯め込む魔石。まぁ、お前が気にする必要は無い。ここで消させてもらうぞ、ローガン」
「……お主達はここで殺す。四十年前果たせなかった約束……ここで果たすとしよう」
「老いたお前に全力を出すのも酷だろう、行け」
ジガルゼルドの合図で両サイドの家からミノタウロスが現れる。強引に来たせいで家が崩れている。
「ギャオオオオオオ」
「ブオオオオオオ」
素手で迫るミノタウロスだが、ローガンは動かない。そしてあと数センチで触れると言う時、ミノタウロスの首が落ちた。
「いくら老いたと言っても、この程度でわしを止めれると思っていたのか? ジガルゼルド」
「フッ……やはり強いな。デルドラ、やれるか?」
「任せてくだせぇよ。ジガルゼルド様。俺があんなじじい、五秒で潰してきまさぁ」
浮遊する土から飛び降りたのは銀髪を刈り上げている男、デルドラ。武器らしきものは持っていないが、この男に武器は必要ない。
「行くぜぇじじい」
「…………遅い」
デルドラが異能を発動しようと両腕を掲げた時、その腕が両方地面に落ちた。既に斬られていたのだ。
「……!? な、何だこいつ」
「ハァ……!」
デルドラのすぐ隣で剣を振り上げていたローガンが剣を振り下ろす。デルドラの首は驚愕の表情を浮かべながら宙を飛んだ。
「デルドラ!?」
「落ち着け、アリス。相手はローガン・ボルフェノ。もう少し腕が鈍ってるかと思ったが、まだまだ健在か?」
「おかげさまでのぉ」
ローガンは剣先をジガルゼルドに向け、左手を柄に添える。空気感がガラッと変わり、剣が少しキラキラと輝きを帯びる。
「またその技か」
「忘れてはなさそうじゃな。四十年前、お主の腹に穴を開けた技じゃ」
「忌々しい……」
「奥義、狼……」
〈土術 土牢〉
アリスの詠唱で地面が盛り上がり、ローガンの下半身に食らいつく。魔力で凝縮された土が足に纏わりつき、思わずローガンは集中が切れる。
「やはり老いたか? 昔のお前なら避けれていただろう」
その場の緊張感が解け、剣の発光も止まる。
「はぁ……はぁ……技を出してもいないのに息切れとは……そう言うお主らは何も変わらんのぉ」
「魔族の寿命は妖精族を次いで生物の中で二番目。四十年程度では何も変わらないさ」
ローガンは下半身を土に掴まれたまま剣を鞘に戻す。
「しかし、四魔王を一人削られた。やはりお前には散々な目に合わせられるようだ。……デルドラ、お前の死は無駄ではない。お前を殺した事でローガンは体力を使い、今この状態があるわけだからな」
「今更この体ではお主は殺せない……じゃが、わしの意志は必ずどこかで繋がる」
「お前にはこいつの力を見せてやる。その減らず口もきけなくなるほどの絶望をな」
ジガルゼルドの掲げた右手の上で魔石が光る。
黒い光を放ちながら、魔石からどす黒い魔力が漏れ出す。
「リック、クロト……この技はお主らの訓練中に教えている。後は気づけ、知れ、この技を……わしはここまでじゃが、わしの意志、想いは……頼んだぞ」
「死ね、ローガン・ボルフェノ!」
◇
「……ッ!! なんだ……今の……」
デルダインとの戦いから三日目の夜。ようやく傷の痛みもましになってきた頃、眠っていた俺は突然目を覚ました。
長い夢を見ていた気がする。ローガン師匠がいたような……頭が痛い。今のは、夢だったのか?
「……スゥ……スゥ……」
隣で眠るエヴァは未だ目を覚まさない。考えても仕方ない、か。明日も早いし、回復の為にも今日は寝よう。
◇
「やめろっ!」
リックが机を拳で叩き、リヴァの話が止まる。
「そんな話はどうでもいい」
「ここからだと言うのに……」
「ここへ来て何度も聞かされた。もういい。それより、お前らの話を聞かせろ。何故お前らはジガルゼルド様の下についているんだ?」
「ふむ……そうじゃな。わしは元々老後をのんびりと暮らしておった。だが、四十年前の戦いで娘、息子、そしてその家族……更には孫までもを人間に殺された。その復讐故じゃ」
「私は元々ジガルゼルド様に使えていたから、そのまま成り行きでって感じね。フロリエル君は四十年前の戦いで捕虜として人間に捕まって。何をしても再生する体を人間が面白がって尋問と称して散々いたぶったそうよ。それで人間への憎悪が爆発し、そこをジガルゼルド様に拾われたのよね」
「……そうか」
「なんじゃ?」
「いや、元人間の俺から言う事は無いだろう」
「ふぉっふぉっふぉっ……リックもそろそろ完全な魔族になる頃かもしれんぞ」
「なに?」
「いつまでもハーフの期間は続かないわ。いずれ魔族の部分が人族の部分を食い潰し、完全な魔族となる」
「……そうか。異能が使えるようになるならそれはそれでいい」
「集まっているな」
丁度そこへ、フランケンポールの根城へ行っていたジガルゼルドが帰還した。
「これからの方針について伝える。人を集めろ」
◇
奇妙な夢を見てから更に四日、デルダインと戦ってから一週間が経った頃、重症組も全員が目を覚まし、動ける程度には回復していた。
そして現在は全員でブルーバードの再建工事をしている。俺も含めて戦った六人はヴァランとレッグに平謝りだったが、ヴァランも事情を知っているので許してくれた。レッグも地下の酒が無事だったらしく、特に怒っている様子はない。
再建工事と言っても、ヴァランが街の大工に頼むのを頑なに嫌がった為、俺達素人集団が酒場一軒を建てる事になった。
費用はマスターボウの好意で〈シルク・ド・リベルター〉が持ってくれ、何気に稼いでいたレオもいくらか出したそうだ。
「さて、今日もやるか」
「おう、クロト! さっさと手伝いやがれ」
「わかってるよ」
昼間はサーカスをしているため〈シルク・ド・リベルター〉は参加出来ない。エリックやビリー達飲んだくれ集団も夜には来てくれるが、昼間は来れない。
だから俺達一行四人とナイアリス、ヴァラン、レッグ。アジェンダと、ふらりと帰ってきたマルスの計九人で建て直しをしている。夜は人が結構集まるので、壁や屋根を直しているが、昼間は地味なところだ。
昨日は床の張り替えがやっと終わったところ。今日はカウンターや棚、机に椅子を作る。
「おいマルス、木材どこだ?」
「その辺にあるだろ」
「その辺ってどこだよ」
修行もしたいが、今はこっちが優先。
俺は木材が積んである場所から適当なのを引っ張り出し、自分の前に並べる。木材に釘を打ち込んで形を作るのはヴァラン、レッグ、マルスの仕事。細かく削ったりや装飾を付けたりするのはシエラが得意らしいのでシエラの仕事だ。リンリもそっちを手伝っている。
俺、レオ、ナイアリス、アジェンダはひたすら木材を斬る。それぞれ使うものによってサイズもバラバラ。今ではある程度感覚で斬れるものの、何日かは苦労した。
「フッ……っと、ほんでハッ……っと……」
椅子の足になる部分を四等分に斬る。これをマルスに渡して、次は椅子の座る部分を斬る。これの繰り返しな為、単調ではある。力仕事なので基礎体力を付けるにはいい機会かもしれないが、根っからの戦闘狂であるレオは不満げだ。
アジェンダは豪快なもので、巨斧で積んである木材をまとめて両断している。これでサイズが正確だからまたすごい。
「レオ! どこ行こうとしてるんだ」
さりげなーくこの場を離れようとしていたレオを呼び止める。
「……わかってる」
相当退屈らしい。
レオには悪いがこれも原因を辿れば俺達のせい。早く仕事すれば早く再建が完了する。今は黙ってやる事をやるだけだ。
「西へ! 東はだめだ! 西へ逃げろ!」
その日、リブ村が一級魔物ミノタウロスに襲撃された日。
東からジガルゼルドの放ったミノタウロスは現れた。家を薙ぎ倒し、人を踏み潰し、破壊の限りを尽くした。その一角では……
「じーさん! 逃げよう!」
「リック、クロトはどうしたんじゃ?」
「わからないけどさっきお父さんの手伝いで森に行くって。だから多分まだミノタウロスには襲われてない! とにかく今は早く逃げようってば」
「うむ、リックや。先に逃げなさい。わしはまだやることがある」
「何言ってるんだよ!」
「この能力……ジガルゼルドじゃろう。わしは皆が逃げれるように時間を稼ぐ」
「そりゃじーさんは強いけどさ、流石にあの数は無理だよ!」
袖を引っ張るリックの両肩に手を乗せ、リックと同じ目線になるまでローガンは腰を落とす。
「リック、人には必ず“その時”が来る。流れ者のわしがここに住んでいたのはこの時を待っていたからじゃろう。だからわしはここで役目を果たす。リックは逃げろ!」
泣きじゃぐりながらもローガンの話を聞いていたリックの目に三人の影が映る。屋根の更に上を飛び、こちらへ近づいてくる影が。
「それは違うぞ。ローガン・ボルフェノ」
「来たか……ジガルゼルド」
ローガンはゆっくりと立ち上がり、後ろを振り返る。
アリスの土術によって浮かした土の上に三人が乗っていた。当時の四魔王デルドラ、そしてアリス。真ん中に立つのは大魔人ジガルゼルド。
「この村へはお前を消しに来た。お前がここに居たからこの村は襲われたんだ」
「リック、行け!」
「……は、早く来てくれよ! “師匠”!」
リックはジリジリと数歩後ずさり、一気に駆け出した。
「師匠か……生き延びてくれ。リック、クロト……」
「なんだ、孫でもいたのか?」
「いや、村の子供じゃ。わしはここにおる、この村からは手を引け!」
「それは出来ない相談だ。こんなに負のエネルギーが溜まってる」
ジガルゼルドは黒い魔石を取り出す。魔石は一人でに浮き、ジガルゼルドの右手の中で浮遊する。
「それは……」
「負の感情を貯め込む魔石。まぁ、お前が気にする必要は無い。ここで消させてもらうぞ、ローガン」
「……お主達はここで殺す。四十年前果たせなかった約束……ここで果たすとしよう」
「老いたお前に全力を出すのも酷だろう、行け」
ジガルゼルドの合図で両サイドの家からミノタウロスが現れる。強引に来たせいで家が崩れている。
「ギャオオオオオオ」
「ブオオオオオオ」
素手で迫るミノタウロスだが、ローガンは動かない。そしてあと数センチで触れると言う時、ミノタウロスの首が落ちた。
「いくら老いたと言っても、この程度でわしを止めれると思っていたのか? ジガルゼルド」
「フッ……やはり強いな。デルドラ、やれるか?」
「任せてくだせぇよ。ジガルゼルド様。俺があんなじじい、五秒で潰してきまさぁ」
浮遊する土から飛び降りたのは銀髪を刈り上げている男、デルドラ。武器らしきものは持っていないが、この男に武器は必要ない。
「行くぜぇじじい」
「…………遅い」
デルドラが異能を発動しようと両腕を掲げた時、その腕が両方地面に落ちた。既に斬られていたのだ。
「……!? な、何だこいつ」
「ハァ……!」
デルドラのすぐ隣で剣を振り上げていたローガンが剣を振り下ろす。デルドラの首は驚愕の表情を浮かべながら宙を飛んだ。
「デルドラ!?」
「落ち着け、アリス。相手はローガン・ボルフェノ。もう少し腕が鈍ってるかと思ったが、まだまだ健在か?」
「おかげさまでのぉ」
ローガンは剣先をジガルゼルドに向け、左手を柄に添える。空気感がガラッと変わり、剣が少しキラキラと輝きを帯びる。
「またその技か」
「忘れてはなさそうじゃな。四十年前、お主の腹に穴を開けた技じゃ」
「忌々しい……」
「奥義、狼……」
〈土術 土牢〉
アリスの詠唱で地面が盛り上がり、ローガンの下半身に食らいつく。魔力で凝縮された土が足に纏わりつき、思わずローガンは集中が切れる。
「やはり老いたか? 昔のお前なら避けれていただろう」
その場の緊張感が解け、剣の発光も止まる。
「はぁ……はぁ……技を出してもいないのに息切れとは……そう言うお主らは何も変わらんのぉ」
「魔族の寿命は妖精族を次いで生物の中で二番目。四十年程度では何も変わらないさ」
ローガンは下半身を土に掴まれたまま剣を鞘に戻す。
「しかし、四魔王を一人削られた。やはりお前には散々な目に合わせられるようだ。……デルドラ、お前の死は無駄ではない。お前を殺した事でローガンは体力を使い、今この状態があるわけだからな」
「今更この体ではお主は殺せない……じゃが、わしの意志は必ずどこかで繋がる」
「お前にはこいつの力を見せてやる。その減らず口もきけなくなるほどの絶望をな」
ジガルゼルドの掲げた右手の上で魔石が光る。
黒い光を放ちながら、魔石からどす黒い魔力が漏れ出す。
「リック、クロト……この技はお主らの訓練中に教えている。後は気づけ、知れ、この技を……わしはここまでじゃが、わしの意志、想いは……頼んだぞ」
「死ね、ローガン・ボルフェノ!」
◇
「……ッ!! なんだ……今の……」
デルダインとの戦いから三日目の夜。ようやく傷の痛みもましになってきた頃、眠っていた俺は突然目を覚ました。
長い夢を見ていた気がする。ローガン師匠がいたような……頭が痛い。今のは、夢だったのか?
「……スゥ……スゥ……」
隣で眠るエヴァは未だ目を覚まさない。考えても仕方ない、か。明日も早いし、回復の為にも今日は寝よう。
◇
「やめろっ!」
リックが机を拳で叩き、リヴァの話が止まる。
「そんな話はどうでもいい」
「ここからだと言うのに……」
「ここへ来て何度も聞かされた。もういい。それより、お前らの話を聞かせろ。何故お前らはジガルゼルド様の下についているんだ?」
「ふむ……そうじゃな。わしは元々老後をのんびりと暮らしておった。だが、四十年前の戦いで娘、息子、そしてその家族……更には孫までもを人間に殺された。その復讐故じゃ」
「私は元々ジガルゼルド様に使えていたから、そのまま成り行きでって感じね。フロリエル君は四十年前の戦いで捕虜として人間に捕まって。何をしても再生する体を人間が面白がって尋問と称して散々いたぶったそうよ。それで人間への憎悪が爆発し、そこをジガルゼルド様に拾われたのよね」
「……そうか」
「なんじゃ?」
「いや、元人間の俺から言う事は無いだろう」
「ふぉっふぉっふぉっ……リックもそろそろ完全な魔族になる頃かもしれんぞ」
「なに?」
「いつまでもハーフの期間は続かないわ。いずれ魔族の部分が人族の部分を食い潰し、完全な魔族となる」
「……そうか。異能が使えるようになるならそれはそれでいい」
「集まっているな」
丁度そこへ、フランケンポールの根城へ行っていたジガルゼルドが帰還した。
「これからの方針について伝える。人を集めろ」
◇
奇妙な夢を見てから更に四日、デルダインと戦ってから一週間が経った頃、重症組も全員が目を覚まし、動ける程度には回復していた。
そして現在は全員でブルーバードの再建工事をしている。俺も含めて戦った六人はヴァランとレッグに平謝りだったが、ヴァランも事情を知っているので許してくれた。レッグも地下の酒が無事だったらしく、特に怒っている様子はない。
再建工事と言っても、ヴァランが街の大工に頼むのを頑なに嫌がった為、俺達素人集団が酒場一軒を建てる事になった。
費用はマスターボウの好意で〈シルク・ド・リベルター〉が持ってくれ、何気に稼いでいたレオもいくらか出したそうだ。
「さて、今日もやるか」
「おう、クロト! さっさと手伝いやがれ」
「わかってるよ」
昼間はサーカスをしているため〈シルク・ド・リベルター〉は参加出来ない。エリックやビリー達飲んだくれ集団も夜には来てくれるが、昼間は来れない。
だから俺達一行四人とナイアリス、ヴァラン、レッグ。アジェンダと、ふらりと帰ってきたマルスの計九人で建て直しをしている。夜は人が結構集まるので、壁や屋根を直しているが、昼間は地味なところだ。
昨日は床の張り替えがやっと終わったところ。今日はカウンターや棚、机に椅子を作る。
「おいマルス、木材どこだ?」
「その辺にあるだろ」
「その辺ってどこだよ」
修行もしたいが、今はこっちが優先。
俺は木材が積んである場所から適当なのを引っ張り出し、自分の前に並べる。木材に釘を打ち込んで形を作るのはヴァラン、レッグ、マルスの仕事。細かく削ったりや装飾を付けたりするのはシエラが得意らしいのでシエラの仕事だ。リンリもそっちを手伝っている。
俺、レオ、ナイアリス、アジェンダはひたすら木材を斬る。それぞれ使うものによってサイズもバラバラ。今ではある程度感覚で斬れるものの、何日かは苦労した。
「フッ……っと、ほんでハッ……っと……」
椅子の足になる部分を四等分に斬る。これをマルスに渡して、次は椅子の座る部分を斬る。これの繰り返しな為、単調ではある。力仕事なので基礎体力を付けるにはいい機会かもしれないが、根っからの戦闘狂であるレオは不満げだ。
アジェンダは豪快なもので、巨斧で積んである木材をまとめて両断している。これでサイズが正確だからまたすごい。
「レオ! どこ行こうとしてるんだ」
さりげなーくこの場を離れようとしていたレオを呼び止める。
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相当退屈らしい。
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