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第五章 神威編
139話 最強の”突き”
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「随分ボロボロじゃねーか」
その言葉はハザックにも、シエラ達にも言えた事で、お互いの様子はまさに瀕死。
だが身体的ダメージの大きいハザックと魔力を失ったシエラ、リンリとではボロボロの類が違う。これ以上の戦闘が厳しいシエラ達に対してハザックはまだ戦う気だろう。
「こいつはおれが倒すつもりだったんだが……」
ハザックの傷口や火傷を見てここまでのダメージを与えた人物をすぐに理解する。
「随分強くなってるな、リンリ」
何気にレオがリンリの名前を呼ぶのは初めての事だ。リンリもどことなく遠慮していた節があり、この二人が仲良く喋っている姿というのはシエラも想像ができない。
リンリがクロト達と行動を共にするその直前でリンリはレオと戦い、そしてリンリが敗れているということもあり、溝があったのだろう。
「その状態のお前を倒しても意味なさそうだな」
「それはナメ過ぎではないですか?」
「そんな状態のお前じゃ……すぐ首が取れちまう」
「自惚れを……アルバレス支部で私に手も足も出なかったのをお忘れですか?」
「なーに、その時と今とでは状況が違うんでね。目にもの見せてやるよ」
静かな睨み合いが続き、レオの先制で戦いが始まった。
◇
「この取り囲んでいる盗賊団を潰すわよ」
「潰すって言ってもどうやって? 多分セバルツァ支部、シルバス支部、コムラ支部から総動員されたウェヌス盗賊団本隊だよ」
「こういうのは大体統制を取ってるやつがいるのよ。でないと荒くれ集団をこんな綺麗に配置出来るわけがない」
「だったらあそこじゃない?」
リュウが指差したのは北を封鎖している盗賊団だ。
「わかるの?」
「今は竜鎧装着けてるからね 魔力を感じ取れる。さっきレオを降ろしたところにでかい反応が一つ、そのすぐ近くに三つ。そしてあの辺に三つ、他と比べて大きな反応がある」
「当たりね。向かって!」
◇
「オレはこの程度では殺せねぇよ」
エヴァの作り出した嵐神槍に亀裂が走り、上空からゼノンの声が響く。直後、氷は砕け、空からゼノンが降ってくる。衝撃と砂煙を起こしながら着地したゼノンは全く聞いてない様子で首の骨をバキバキと鳴らしている。
「いやぁ、大した規模の一撃だ。だが、時間稼ぎにもならなかったな」
エヴァが氷に閉じ込めてまだ大した時間は経っていない。
チラッと空を旋回するリュウの姿が見えた気がしたが、それも本当にリュウだったかは判断がつかない。リュウとレオが来てくれればかなり状況は変わるが……
「エヴァ、あの技を使う」
小声でエヴァに話しかける。
毒が攻撃を無効化するなら毒も追いつかない速度の攻撃をするか、毒を突き破って攻撃するしかない。だが、速度重視の紫電一閃は防がれた。ならば後者である毒を突き破った攻撃をするしかない。
「でもあれって……」
「それで決まれば問題ない。それに……それ以外に有効な手段もない」
「……わかった。無理はしないで、お願いだから」
「ああ、任せろ」
シュデュンヤーを鞘に納め、右手の指先までピンと伸ばして突きの構えを取り、そのまま獄気で硬化させる。そこに高電圧の雷を纏い、貫通力を底上げする。
「私が時間を稼ぐ!」
〈氷術 雹絶帝砲〉
エヴァはゼノンの周りを旋回しながら氷塊を飛ばし、注意をそらす。ゼノンもそれに合わせて向きを変え、氷塊を素手で砕いてはいるがこちらへの注意を完全に反らすことはできない。それもそうだろう。明らかにこれからなにかしますと言っているようなものだ。
だが、いい。何か別の事に気を取られていれば必ず隙はある。
〈毒蛇〉
ゼノンの両手の平から細い管の様な毒が伸び、エヴァへ迫る。それを飛んで走って避けながら負けじとエヴァも氷塊を繰り出す。
「今だ……っ!!」
一気に踏み込み、速度を上げてゼノンに接近する。
自分の体質が雷である最大のメリットは恐らくこの速度だろう。電流が流れるのと同じ速度で動けるわけだ。
「はぁ!!」
ゼノンも咄嗟に振り返り、手の平から毒を噴射してガードする。そこへなんの躊躇いもなく右手の突きを放ち、魔力を開放する。
この技は一ヶ月前、デルダインが使った恐らく最高レベルの技。高圧の電気を放ちながら一点に突く。
〈武雷針〉
〈武雷針〉はデルダインの奥の手でもあった技。ただ、この技はただ雷を纏って放つ突きじゃない。雷による肉体の活性化が必須であり、調整を間違えれば体が痙攣し、動けなくなる。故にこの技の習得にはここまでの時間がかかった。
纏った雷が毒を弾き、奥へ奥へと手を進ませる。これがゼノンの体に届けば致命傷は確実。行け……届け!!
〈毒蜘蛛〉
エヴァの氷塊をガードしていた右手と俺の武雷針をガードしていた左手を合わせ、両手の平を組むと同時に俺の周囲に毒が溢れ出す。
毒は俺を包むように広がり、そして迫ってくる。
突きだけを重視していた為に反応が遅れている上、突きの体勢から動けない。目の前が紫に染まり、そして暗く……
視界の暗転と共に俺の意識もすぅっと遠のいた。
◇
クロトが毒に飲み込まれ、思わず足を止める。
獄化・地装衣を発動していたとしてもあれだけの毒を受けて無事な可能性は低い。
「ぁ……ぁぁ……」
「まずは一人ィ……」
首の関節をポキポキ鳴らしながら振り返り、ゼノンは私に狙いをつける。
クロトが敗れたというデルダインの超技、武雷針を持ってしても貫けない毒。そしてクロト自身も今は毒にまみれて地面に倒れている。私が戦わなきゃ……ここで動かないと、みんな殺される……
「まァそう泣くなや。すぐに同じところに行けんだからよォ」
若干困ったようにも取れる表情でゼノンは言う。自分でも気づかないうちに涙が頬を伝っていた。クロトの助かる可能性はゼロに近い……けどゼロじゃない。いくら毒に侵されていても、クロトはいつだって普通の人とは違った。
あのガイナ達でさえも最初は私に関わろうとはしなかった。でもクロトは違った。普通雷属性って言われたら魔術の道はみんな諦める。でもクロトは違った。いつだってクロトは諦めないし、毒なんかで死ぬわけない。
……だったら私は、今ここで戦って勝つ。クロトも助ける……!
〈氷術 雹絶世界・攻〉
両手を地面に付き、周囲の地面を凍てつかせる。地面から尖った氷塊が突き出る攻撃特化の雹絶世界。
「うお、やる気かァ」
〈氷術 氷結下界〉
指を鳴らすと地面から突き出た氷塊が上空に突き上がり、散弾。一定範囲に霰を降らせる。それにより視界は悪くなり、ゼノンと言えど私の姿を完璧には捉えられなくなるはず。
「チィ……遅延行為に意味があるのかァ?」
私に向かって叫んでいるんだろうけど返事はしない。苛立ったゼノンは向けて右手を突き出して毒を噴射する。あれを食らったら私も終わりだ。
〈毒蛇〉
さっきよりも太い管のように伸びた毒蛇は霰で影しか見えないであろう私を捉え、肩から毒の蛇に噛みつかれる。
〈氷術 生贄〉
噛み砕いたはずの私の体は氷になって砕け散る。
以前私が使っていたただの人形を作り出す氷の身代わりと違い、攻撃を食らってから自身と氷の位置を入れ替える術。魔力の消費もかなり多い上に失敗する可能性もある賭けの術だけど、確実に相手に隙を作れる。
「なに……?」
「そこ……」
〈氷術 武器具現 『トマホーク』 氷斧両断二投撃〉
背後に回り、それぞれの手から氷の斧を作り出して、ゼノンへ向けて回転しながら発射する。
「うお……」
両サイドから迫ってくる斧を両手を広げ、毒でコーティングして受け止める。
回転した斧は毒を弾き飛ばして迫るが、溢れ出る毒を完全に弾き飛ばすことは出来ず、停滞している。
「もう一度……!」
〈氷術 武器具現 『トライデント』 氷槍猪突猛進撃〉
そこへ続けざまに氷槍を生成し、ゼノンの心臓めがけて飛ばす。
斧を弾き、両腕を氷斧で防いだところへ決定打を打ち込む。氷結下界や生贄で隙を作り、大技二連続で確実にトドメを刺す私が即興で考えた戦法。
「こりゃ……やべぇなァ!」
ゼノンに氷槍が突き刺さる直前、ゼノンの全身から今までの比にならない量の毒が溢れ出し、氷槍はおろか氷斧をも飲み込んだ。氷結下界の効果時間も終わり、視界も通るようになる。
そして現れる、まさに怪物。
紫の毒は足の無い化け物を象る。上半身は大きく、尻尾は長い。顔は蛇の骸骨に似ており、蛇で言えば胸にあたる所から太い二本の腕が生えている。中心にいるゼノンは嬉しそうな笑みを浮かべながら叫ぶ。
「まさかこれを使わされることになるとは思わなかったぜぇ……」
〈奥義 毒大蛇〉
「これで沈めた街はいくつになるっけなァ」
両腕が地面を掴み、威嚇するように吠える。毒が空気すらも溶かす音が、生物の咆哮のように聞こえるのだ。
毒が象っているだけのはずなのに、命を持った生物と変わらない程の迫力。むしろこっちの方が怖い。
「こいつはオレの体を完璧に守り、触れるもの全てを毒に侵す。まさに攻防をいっぺんに行える最強の毒さ」
ゼノンの言っていることは多分真実。
それに私の氷ではきっとあの毒は貫けない。でも、黒氷なら……まだ可能性はある。
まだまだ練習段階。でも、今ここを破るならこれしかない。
「はぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」
胸の魔石に触れ、全身から魔力を解放させる。私の魔力量と魔力の器じゃこの術は使えなかった。でも、闇の魔石を器として活用すればそれも可能になる。魔石を器に、そして長い時間をかけてそこに魔力を溜め続けていた。
「クロトの為に悪魔にでもなると覚悟を決めた。でも、私は……クロトが私に付けてくれた名前を忘れない!」
「な、何だこの魔力……」
黒氷術を戦闘で使うには魔力がまるで足りない。だから強力な魔力増幅の術を編みだす必要があった。ネグラが表に出ている時は魔石に蓄積された膨大な魔力を使うから問題なかったけど、私が自分の意思で使うなら話は別。だからネグラと同じように魔石の魔力を引っ張り出す!
〈氷術奥義 氷纏・姫装束〉
服が氷で作られた真っ白なドレスに変わり、髪の毛が金から黒へ変化する。魔力がとめどなく溢れ、失った体力も戻ってきている。
クロトの様に体質ごと属性に変換する事は出来なかったけど、天装衣の魔力増幅だけを行い、その氷を着る事にした。それが氷纏・姫装束。
「これが私の新しい力!」
頭に何か乗った感触がしたので、触れてみると氷のティアラが乗っていた。お姫様みたいでちょっと恥ずかしいけど、この姿なら負けない。
クロトは私が助ける。
その言葉はハザックにも、シエラ達にも言えた事で、お互いの様子はまさに瀕死。
だが身体的ダメージの大きいハザックと魔力を失ったシエラ、リンリとではボロボロの類が違う。これ以上の戦闘が厳しいシエラ達に対してハザックはまだ戦う気だろう。
「こいつはおれが倒すつもりだったんだが……」
ハザックの傷口や火傷を見てここまでのダメージを与えた人物をすぐに理解する。
「随分強くなってるな、リンリ」
何気にレオがリンリの名前を呼ぶのは初めての事だ。リンリもどことなく遠慮していた節があり、この二人が仲良く喋っている姿というのはシエラも想像ができない。
リンリがクロト達と行動を共にするその直前でリンリはレオと戦い、そしてリンリが敗れているということもあり、溝があったのだろう。
「その状態のお前を倒しても意味なさそうだな」
「それはナメ過ぎではないですか?」
「そんな状態のお前じゃ……すぐ首が取れちまう」
「自惚れを……アルバレス支部で私に手も足も出なかったのをお忘れですか?」
「なーに、その時と今とでは状況が違うんでね。目にもの見せてやるよ」
静かな睨み合いが続き、レオの先制で戦いが始まった。
◇
「この取り囲んでいる盗賊団を潰すわよ」
「潰すって言ってもどうやって? 多分セバルツァ支部、シルバス支部、コムラ支部から総動員されたウェヌス盗賊団本隊だよ」
「こういうのは大体統制を取ってるやつがいるのよ。でないと荒くれ集団をこんな綺麗に配置出来るわけがない」
「だったらあそこじゃない?」
リュウが指差したのは北を封鎖している盗賊団だ。
「わかるの?」
「今は竜鎧装着けてるからね 魔力を感じ取れる。さっきレオを降ろしたところにでかい反応が一つ、そのすぐ近くに三つ。そしてあの辺に三つ、他と比べて大きな反応がある」
「当たりね。向かって!」
◇
「オレはこの程度では殺せねぇよ」
エヴァの作り出した嵐神槍に亀裂が走り、上空からゼノンの声が響く。直後、氷は砕け、空からゼノンが降ってくる。衝撃と砂煙を起こしながら着地したゼノンは全く聞いてない様子で首の骨をバキバキと鳴らしている。
「いやぁ、大した規模の一撃だ。だが、時間稼ぎにもならなかったな」
エヴァが氷に閉じ込めてまだ大した時間は経っていない。
チラッと空を旋回するリュウの姿が見えた気がしたが、それも本当にリュウだったかは判断がつかない。リュウとレオが来てくれればかなり状況は変わるが……
「エヴァ、あの技を使う」
小声でエヴァに話しかける。
毒が攻撃を無効化するなら毒も追いつかない速度の攻撃をするか、毒を突き破って攻撃するしかない。だが、速度重視の紫電一閃は防がれた。ならば後者である毒を突き破った攻撃をするしかない。
「でもあれって……」
「それで決まれば問題ない。それに……それ以外に有効な手段もない」
「……わかった。無理はしないで、お願いだから」
「ああ、任せろ」
シュデュンヤーを鞘に納め、右手の指先までピンと伸ばして突きの構えを取り、そのまま獄気で硬化させる。そこに高電圧の雷を纏い、貫通力を底上げする。
「私が時間を稼ぐ!」
〈氷術 雹絶帝砲〉
エヴァはゼノンの周りを旋回しながら氷塊を飛ばし、注意をそらす。ゼノンもそれに合わせて向きを変え、氷塊を素手で砕いてはいるがこちらへの注意を完全に反らすことはできない。それもそうだろう。明らかにこれからなにかしますと言っているようなものだ。
だが、いい。何か別の事に気を取られていれば必ず隙はある。
〈毒蛇〉
ゼノンの両手の平から細い管の様な毒が伸び、エヴァへ迫る。それを飛んで走って避けながら負けじとエヴァも氷塊を繰り出す。
「今だ……っ!!」
一気に踏み込み、速度を上げてゼノンに接近する。
自分の体質が雷である最大のメリットは恐らくこの速度だろう。電流が流れるのと同じ速度で動けるわけだ。
「はぁ!!」
ゼノンも咄嗟に振り返り、手の平から毒を噴射してガードする。そこへなんの躊躇いもなく右手の突きを放ち、魔力を開放する。
この技は一ヶ月前、デルダインが使った恐らく最高レベルの技。高圧の電気を放ちながら一点に突く。
〈武雷針〉
〈武雷針〉はデルダインの奥の手でもあった技。ただ、この技はただ雷を纏って放つ突きじゃない。雷による肉体の活性化が必須であり、調整を間違えれば体が痙攣し、動けなくなる。故にこの技の習得にはここまでの時間がかかった。
纏った雷が毒を弾き、奥へ奥へと手を進ませる。これがゼノンの体に届けば致命傷は確実。行け……届け!!
〈毒蜘蛛〉
エヴァの氷塊をガードしていた右手と俺の武雷針をガードしていた左手を合わせ、両手の平を組むと同時に俺の周囲に毒が溢れ出す。
毒は俺を包むように広がり、そして迫ってくる。
突きだけを重視していた為に反応が遅れている上、突きの体勢から動けない。目の前が紫に染まり、そして暗く……
視界の暗転と共に俺の意識もすぅっと遠のいた。
◇
クロトが毒に飲み込まれ、思わず足を止める。
獄化・地装衣を発動していたとしてもあれだけの毒を受けて無事な可能性は低い。
「ぁ……ぁぁ……」
「まずは一人ィ……」
首の関節をポキポキ鳴らしながら振り返り、ゼノンは私に狙いをつける。
クロトが敗れたというデルダインの超技、武雷針を持ってしても貫けない毒。そしてクロト自身も今は毒にまみれて地面に倒れている。私が戦わなきゃ……ここで動かないと、みんな殺される……
「まァそう泣くなや。すぐに同じところに行けんだからよォ」
若干困ったようにも取れる表情でゼノンは言う。自分でも気づかないうちに涙が頬を伝っていた。クロトの助かる可能性はゼロに近い……けどゼロじゃない。いくら毒に侵されていても、クロトはいつだって普通の人とは違った。
あのガイナ達でさえも最初は私に関わろうとはしなかった。でもクロトは違った。普通雷属性って言われたら魔術の道はみんな諦める。でもクロトは違った。いつだってクロトは諦めないし、毒なんかで死ぬわけない。
……だったら私は、今ここで戦って勝つ。クロトも助ける……!
〈氷術 雹絶世界・攻〉
両手を地面に付き、周囲の地面を凍てつかせる。地面から尖った氷塊が突き出る攻撃特化の雹絶世界。
「うお、やる気かァ」
〈氷術 氷結下界〉
指を鳴らすと地面から突き出た氷塊が上空に突き上がり、散弾。一定範囲に霰を降らせる。それにより視界は悪くなり、ゼノンと言えど私の姿を完璧には捉えられなくなるはず。
「チィ……遅延行為に意味があるのかァ?」
私に向かって叫んでいるんだろうけど返事はしない。苛立ったゼノンは向けて右手を突き出して毒を噴射する。あれを食らったら私も終わりだ。
〈毒蛇〉
さっきよりも太い管のように伸びた毒蛇は霰で影しか見えないであろう私を捉え、肩から毒の蛇に噛みつかれる。
〈氷術 生贄〉
噛み砕いたはずの私の体は氷になって砕け散る。
以前私が使っていたただの人形を作り出す氷の身代わりと違い、攻撃を食らってから自身と氷の位置を入れ替える術。魔力の消費もかなり多い上に失敗する可能性もある賭けの術だけど、確実に相手に隙を作れる。
「なに……?」
「そこ……」
〈氷術 武器具現 『トマホーク』 氷斧両断二投撃〉
背後に回り、それぞれの手から氷の斧を作り出して、ゼノンへ向けて回転しながら発射する。
「うお……」
両サイドから迫ってくる斧を両手を広げ、毒でコーティングして受け止める。
回転した斧は毒を弾き飛ばして迫るが、溢れ出る毒を完全に弾き飛ばすことは出来ず、停滞している。
「もう一度……!」
〈氷術 武器具現 『トライデント』 氷槍猪突猛進撃〉
そこへ続けざまに氷槍を生成し、ゼノンの心臓めがけて飛ばす。
斧を弾き、両腕を氷斧で防いだところへ決定打を打ち込む。氷結下界や生贄で隙を作り、大技二連続で確実にトドメを刺す私が即興で考えた戦法。
「こりゃ……やべぇなァ!」
ゼノンに氷槍が突き刺さる直前、ゼノンの全身から今までの比にならない量の毒が溢れ出し、氷槍はおろか氷斧をも飲み込んだ。氷結下界の効果時間も終わり、視界も通るようになる。
そして現れる、まさに怪物。
紫の毒は足の無い化け物を象る。上半身は大きく、尻尾は長い。顔は蛇の骸骨に似ており、蛇で言えば胸にあたる所から太い二本の腕が生えている。中心にいるゼノンは嬉しそうな笑みを浮かべながら叫ぶ。
「まさかこれを使わされることになるとは思わなかったぜぇ……」
〈奥義 毒大蛇〉
「これで沈めた街はいくつになるっけなァ」
両腕が地面を掴み、威嚇するように吠える。毒が空気すらも溶かす音が、生物の咆哮のように聞こえるのだ。
毒が象っているだけのはずなのに、命を持った生物と変わらない程の迫力。むしろこっちの方が怖い。
「こいつはオレの体を完璧に守り、触れるもの全てを毒に侵す。まさに攻防をいっぺんに行える最強の毒さ」
ゼノンの言っていることは多分真実。
それに私の氷ではきっとあの毒は貫けない。でも、黒氷なら……まだ可能性はある。
まだまだ練習段階。でも、今ここを破るならこれしかない。
「はぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」
胸の魔石に触れ、全身から魔力を解放させる。私の魔力量と魔力の器じゃこの術は使えなかった。でも、闇の魔石を器として活用すればそれも可能になる。魔石を器に、そして長い時間をかけてそこに魔力を溜め続けていた。
「クロトの為に悪魔にでもなると覚悟を決めた。でも、私は……クロトが私に付けてくれた名前を忘れない!」
「な、何だこの魔力……」
黒氷術を戦闘で使うには魔力がまるで足りない。だから強力な魔力増幅の術を編みだす必要があった。ネグラが表に出ている時は魔石に蓄積された膨大な魔力を使うから問題なかったけど、私が自分の意思で使うなら話は別。だからネグラと同じように魔石の魔力を引っ張り出す!
〈氷術奥義 氷纏・姫装束〉
服が氷で作られた真っ白なドレスに変わり、髪の毛が金から黒へ変化する。魔力がとめどなく溢れ、失った体力も戻ってきている。
クロトの様に体質ごと属性に変換する事は出来なかったけど、天装衣の魔力増幅だけを行い、その氷を着る事にした。それが氷纏・姫装束。
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クロトは私が助ける。
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ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。
アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった
騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。
今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。
しかし、この賭けは罠であった。
アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。
賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。
アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。
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